2017-10

    もしかしてイラン戦争?8

    モートン予言の解説が続いたが、今回からジョン・ホーグのイラク戦争予言に戻ることにする。

    ホーグの視点

    ホーグは文化の集合無意識の内容に注目する。集合無意識は「元型」といわれるイメージや象徴のパターンで構成されている。30年代当時のドイツ人は、台頭するヒトラーやナチをヴォータンというイメージを通して見た。ヴォータンとはゲルマン神話の英雄シンボルのことである。ヒトラーはまさにヴォータンであり、その意味で当時のドイツ人はヒトラーに人間を越える超人のイメージを見た。そしてその象徴とともに破滅の道をたどったのである。

    これとほぼ同じことが9.11以降のアメリカに起こった。アメリカ文化の基底に存在するキリスト教原理主義の象徴の力が復活し、アフガン攻撃、イラク戦争と9.11以降の起こった一連の出来事を、ヨハネの黙示録が実現する過程であるとみた。ヨハネの黙示録は、世界最終戦争のアルマゲドンからキリストの再臨、ユダヤ教徒の改宗、そして千年王国の出現に至る預言である。イラク戦争の後には、アルマゲドンである第3次世界大戦が起こるべきであると考えた。

    彼らにとって第3次世界大戦はなんとしてでも避けなければならない悲劇ではない。それは、キリストが再臨し千年王国という待ちに待った救いの王国が出現するための重要な条件なのだ。それは希望の実現に向けての大きな一歩なのである。これは彼らの文化が破滅に到る第一歩なのかもしれない。

    いずれにせよ、戦前のドイツでも、また9.11以降のアメリカでも、集合無意識の元型は社会の危機がきっかけとなって現れた。これは間違いないようだ。

    ではもう一方の当事者である現代のイスラムはどうなのか?

    近現代のイスラム

    イスラムそのものを語る前に、中東の人々が近現代になにを経験しどのような思いをもっているのかか簡単に抑えておいたほうがよいだろう。

    この地域の歴史は日本ではほとんど知られていないので、多くの日本人は時代遅れの宗教的教義から抜け切れず近代化に失敗した地域との印象をもっていることだろう。事実、多くの日本人はこの地域を単に石油の原産地としてみるか、またはイスラム原理主義やテロリスト集団と関連づけてみている。

    たしかに、この地域には世界の原油生産の約90%が集中している。この事実が中東のユニークで悲劇的な近現代史の前提にもなったのだ。

    明治以降の日本もそうであったが、欧米の植民地や政治的経済的支配を受けることを拒絶し、国の独立を維持するために、急いで近代化しなければならなかった。

    中東でもやはりそうで、1940年代から70年代にかけてはイスラム原理主義ではなく、どちらかというと社会主義のモデルに基づく近代化の政策が圧倒的に優勢であった。

    その意味では、こうした政策を推し進める政府や政党は、宗教とはなんの関係も無い世俗主義の考え方に貫かれていた。イスラムに対してはむしろ敵対的ですらあった。サダム・フセインの出身母体であるバース党や現在のシリア政府の母体であるバース党(名前は同じでも別の政党)などはそのよい例だ。彼らのモデルは国家の力によって上から近代化を一気に推し進めることに主眼がある。それはどちらかというと明治期の日本政府のような存在だ。

    挫折させられた近代化

    だがこの地域が他の地域と大きく異なるのは、中東が最大の原油産出地帯であるという事実だ。それだけ欧米の石油メジャーおよび政府の関心は高く、この地域の支配権を手放すことは絶対になかった。

    いっぽう、中東のどの政府も、50年代から60年代にかけて、急速な近代化を進める必要から、原油の産出権を欧米の石油メジャーから奪い返し、原油の富を国家建設に使おうとした。特に50年代はこうした政策が強く推し進められた時期である。

    だが、石油メジャーや欧米の利害にまっこうから刃向かう民族主義的な政権は徹底的につぶされた。総選挙で選ばれながらも油田の国有化を宣言したため1953年にCIAに暗殺されたイランのモサデク大統領や、やはり油田の国有化ののち1956年にイギリス、フランスなどの欧米連合軍の武力介入から計画が頓挫させられたエジプトのナセル大統領などその例は尽きない。

    ようするに、中東の自前の近代化はとことん挫折させられたのだ。

    米英の傀儡としての独裁制

    そしてこうしうた政府がつぶされた後、押し付けられたのは国民の利益の保護よりも、欧米の利害と強く結びつき、欧米(特に米英)の権益確保を最優先し、そのために樹立された独裁政権であった。モサデク政権がアメリカに潰された後、1979年のホメイニ革命で倒される前まで政権の座にあったイランのパーレヴィ国王などはその典型だといわれている。これらの政権は、王家を名乗ってはいるがその歴史はさほど古くはない。

    イスラム原理主義運動と蓄積された怨念

    とことん追い詰められ危機的な状況におかれた社会では、その文化の集合無意識の元型が息を吹き返すと書いたが、中東もその例外ではないのかもしれない。自前の近代化が挫折させられたあと、英米の完全なコントロール化にある横暴な独裁政権や、イスラエルの建国以来公然と続けられるパレスチナ人の弾圧など、いつ果てるとも知らない悲惨さに直面したあと、もともとはごく限られた運動にしかすぎなかったイスラム原理主義が抵抗の方法として強い説得力をもつようになった。

    以下は9.11同時多発テロの一周年にあたる2002年9月11日にイスラム原理主義のサイトに掲載された一文だ。この一文はその後アラビア語から英語に翻訳され、彼らの内面の声が聞こえるとしてさまざまなサイトで紹介された。この文がイラク戦争の前に書かれたことに留意して読んでほしい。かなり長いが引用する。

    テロリズムの無実の犠牲者に捧げる

    世界が9月11日攻撃の最初の記念日を迎える準備をしているので、我々はテロリズムの無実の犠牲者に敬意を払いたいと思う。何の罪もないのに無残に殺され、彼等の苦境に触れるテレビ・チャンネルも、彼等の写真を載せる雑誌もなく、彼等の略歴を載せる新聞も彼等の名前を記すコットン・キルトもない無実の男たちと女たちと子供達に。

    この日、我々は、ここ12ヶ月の間に、アメリカに強制された制裁の直接の結果として死んでいったイラクの121,237人(WHO統計)のムスリムの赤ちゃんを忘れない。制裁は大切な子供の薬をイラクの病院に届けるのを妨げている。

    この制裁の結果、2001年9月11日の攻撃で殺された人の3倍もの数のイラクの赤ちゃんが毎月死んでいる。

    この日、我々は、去年の10月以降、村や民家やモスク、病院、結婚披露宴に対して行われた米軍用機による無差別爆撃で無残に殺された31,202人のアフガンのムスリム市民を忘れない。

    2001年9月11日の攻撃で殺された人の10倍もの数のアフガン人がアメリカ人に殺された。

    この日、我々は、ここ12ヶ月の間に、インド政府によって組織されたグジャラートの冷酷な馬鹿騒ぎで殺され、焼かれた6,084人のインドのムスリムを忘れない。

    この日、我々は、ここ12ヶ月の間に、アメリカの「テロとの戦い」によって青信号を与えられたロシアの空爆で殺された5,078人のチェチェンのムスリム市民を忘れない。

    この日、我々は、2001年9月以降、イスラエル兵が手にする兵器を介してアメリカ人に殺された3,039人のパレスチナのムスリムを忘れない。

    この日、我々は、アメリカに支援されたカリモフ政権によって真夜中に家から連れ去られ、2度と再び会えなくなった2,170人のウズベクのムスリムを忘れない。

    この日、我々は、中国の東トルキスタンのムスリム地域で、無理やりアルコールを飲まされ、豚肉を食べさせられたあとで、人前で処刑された1,473人の中国のムスリムを忘れない。

    この日、我々は、カシミールの占領地で、ヒンドゥー教徒とシーク教徒の兵士に輪姦された852人と、殺された1,399人のカシミールのムスリムを忘れない。

    この日、我々は、オランダからM-16攻撃ライフルとロケット・ランチャーと資金を提供されたインドネシアのマルク地区のキリスト教徒によって大虐殺された1,261人のインドネシアのムスリムを忘れない。

    この日、我々は、強制的に顎鬚を剃られ、手足を縛られて目と耳を塞がれ、マラリアや熱射病その他の熱帯性気候に起因する病気に罹りやすい状態で、グアンタナモ湾の小さな檻に押し込められている598人のムスリムの聖戦士捕虜を忘れない。

    この日、我々は、上記のものは見えないのに、9月11日に殺された少数の人々には気付く世界中の12億のムスリムの心の死を忘れない。


    これは怨念であろう。それも歴史の中で蓄積された怨念だ。

    社会が危機に直面するとその文化の地下に眠っている集合無意識の元型が活性化すると書いた。この怨念がイスラムの原理主義に点火し、それを活性化させたとしてもさほど不思議ではないかもしれない。

    ホーグによると、イスラムの原理主義の視点に立つと、いま進行している事態はクルアーン(コーラン)で預言者ムハンマドが預言したウンマ共同体の喪失とその回復の過程としてみえてくるという。もしそうだとすると、それは、9.11以降に起こった一連の事件をヨハネの黙示録の預言が実現される過程とみるキリスト教原理主義者の理解非常によく似ていることになる。

    引き裂かれたウンマ

    ウンマとは、教祖ムハンマドを中心に形成され拡大したイスラムの原初的な共同体のことである。唯一神アラーを統治者とし、ムハンマドを地上におけるその唯一の代理人と認めるものたちが形成する純粋な宗教共同体がウンマだ。

    ホーグによると、ウンマの未来は以下のようにクルアーン(コーラン)に預言されており、イスラム原理主義者はこの預言を通して現実を見ているのだという。

    ウンマが金銀であふれもっとも豊かになるとき、イスラム教徒は軽蔑され、弱く無力になる。敵対する国々は飢えた人間が食べ物を貪るように、お互い共同してウンマに襲いかかるだろう。

    この預言は、原油という中東の富が、特に第一次対戦以降ヨーロッパによって略奪され、本来一つの共同体であるべきウンマが欧米の都合で分割され、クェートやイラクなどの数々の人工国家ができることを指している。

    ムハンマドの預言は続く。

    おまえたちはキリスト教の集団と手を結び敵に戦いを挑むだろう。そしておまえたちは勝利を収める。おまえたちは木々が豊かな山間の平野にいるだろう。キリスト教徒は十字架を掲げ勝利をそのおかげにするだろう。これを見たイスラム教徒は怒り十字架を倒すだろう。するとキリスト教徒はこれまでイスラム教徒との間で結んだ協定をすべて破棄し、キリスト教徒は団結してしまうだろう。

    これは、第一次大戦のさなかトルコからの独立を希望していたアラブを、イギリスが将来の独立国家樹立の保証を餌に、トルコに対して決起させたことを預言しているとされる。あのアラビアのロレンス時代だ。その後結ばれたベルサイユ条約では、アラブの独立国家樹立の約束はすべて反故にされ、イスラムは多くの小国家に分割統治されてしまう。

    そして、このような屈辱的な状況を打破する最終的な聖戦(ジハード)が起こるとされる。

    三分の一のイスラム教徒が逃げるだろう。彼らがどれほど後悔しようとも許されることはない。三分の一は殺されるであろう。そして最後の三分の一がイマーム・マフディの指揮のもと不信心者と戦い勝利を収めるだろう。

    当然これはまだ起こっていない。われわれの時代からみても未来に属する預言だ。そして勝利を勝ち取ることになる集団は特定の場所から来ることになっている。

    この集団はクルアサンに属する。彼らは黒いターバンを巻いている。

    クルアサンとはムハンマドの時代(紀元7世紀)のペリシャの東部の地域を指す。なんとそこは現在のアフガニスタンとパキスタン西部である!この地域がタリバン、アルカイダなどのイスラム原理主義戦闘集団の本拠地であることはあまりにも有名だ。本格的なジハードはこの地域から始まる。そしてジハードの波は拡大してゆく。

    東から人々は決起し、地面を踏みつけながらイマーム・マフディを援助するために駆けつけるであろう。

    ジハードの波はどこにたどり着くのだろうか?

    クルアサン(現在のアフガニスタン)から黒い旗が出現する。誰もこの旗から逃れることはできない。旗を担ぐものたちはエルサレムにその旗を立てるまで前進する。

    以下がイスラム原理主義組織、『アルカイダ』の旗と『イスラム革命の守護者』のバナーだ。明らかにこれらの預言の実現を目標にした旗だ。この預言は実現するのだろうか?

    『アルカイダ』の旗
    alqueda.jpg


    『イスラム革命の守護者』のバナー
    guardian.jpg


    だとするなら、イマーム・マフディとは何者なのか?

    続く





    ヤスの英語

    スポンサーサイト

    テーマ:歴史 - ジャンル:学問・文化・芸術

    コメント

    コメントの投稿


    管理者にだけ表示を許可する

    トラックバック

    http://ytaka2011.blog105.fc2.com/tb.php/32-3e3aacd1
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    «  | ホーム |  »

    私はペット殺処分ゼロを応援しています!ピースワンコ・ジャパン

    まぐまぐ大賞2016

    メルマガ登録 月840円

    メルマガ登録・解除
    未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ
    >> サンプル
    詳細ページへ
    powered by まぐまぐプレミアム
     

    WEB検索

    Google

    プロフィール

    ヤス

    Author:ヤス
    普通の中年のおやじです。

    他の活動:ヤスの英語

    ※注意
    投稿欄としての本来の機能を維持するため、本ブログの管理人が内容としてふさわしくないと考える投稿は、予告なく削除いたします。また、投稿する方自らが自粛していただければ幸いです。

    最近の記事

    最近のコメント

    月別アーカイブ

    カテゴリー

    フリーエリア

    リンク

    このブログをリンクに追加する

    ブログ内検索

    RSSフィード

    フリーエリア

    ヤスの本

    翻訳・監修本

    「神霊の世界に覚醒して」 shaman02

    ハワイの長老が語り伝える先住民族の聖なる知恵 bowl

    社会分析

    望みなき時代の幸福論 koufuku

    日本はこう変わる コルマンインデックス未来予測 nihonkawa

    「マルクスに聞け」(道出版) marx

    コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル cycle03

    コルマンインデックスで見えた日本と経済はこうなる koruma

    語学教育

    日本人が「英語ペラペラ」を本当に実現できる本 (講談社) pera

    通じる英語笑われる英語 tsu

    きちんと伝える英語 tsutaeru

    英文社内メール例文集 shanai

    実践 英文ライティング入門 bizw

    音声読み上げソフトで練習する速読即解英文リーディング sokudo

    「確実に意志が伝わる英会話」 kakujitsu

    ビジネスレター実用フォーマット bizletter

    英会話「英訳」トレーニング cd

    ネイティブはゼッタイ使わない nat

    ビジネスコミュニケーション

    論理的会話トレーニング ronri

    知的論理トレーニング chiteki

    対談本

    宇宙の設定を読み解く[BlackBox]超予測 black

    日月神示の緊急未来予測 hitsu01

    日月神示のサバイバルガイド hitsu02

    フリーエリア