イラク戦争とイラン戦争の真の原因
予言の内容に取り掛かる前に、まず基本的な疑問を先に押さえておきたい。これはすでに「ロシア政治経済ジャーナル」の優れた論評やその他の分析記事が発表になっているので、すでに既知の読者の方も多いだろうが、この疑問は確認のため取り上げる価値はあると思う。
その疑問とは、なぜアメリカはイラクを攻撃し、またイランを攻撃しようとしているのかということだ。
イラクに関していえば、その答えは、サダム・フセインという独裁者からイラクの国民を解放するため、大量破壊兵器を隠し持っているイラクの国際的な脅威を取り除くため、イラクに正常な民主主義を広めるためなどと公式には説明されてきた。
すでに米上院情報特別委員会の報告書も公式に認めているように、大量破壊兵器は発見されなかったし、サダム・フセインとアルカイダとの関係もいっさい証明されなかった。両者は敵対関係にあり、むしろサダム・フセインは、アルカイダなどのイスラム原理主義組織の影響力の拡大を防ぐ防波堤の役割を果たしていた。
いまではブッシュ政権の公式説明を信じるものは、サダム・フセインとオサマ・ビンラディンが同一人物であり、9.11の首謀者はみなイラク人であり、日本の首都は香港だと答え、アルマゲドンの後に天からキリストが本当に降臨し、千年王国が実現するとまともに信じている大多数のアメリカ人くらいのものだろう。われわれのような一般の日本人でこれを信じるものはほとんどいないのではないだろうか?
いっぽう、ブッシュ政権の公式発表のような悪質なプロパガンダは問題外としても、アメリカがイラクを攻撃した理由を、それを石油利権などの直接的な利益に求めてもあまり説得的とはいえないように思う。
確かにアメリカの石油・軍事産業や、ハリバートン社やベクテル社などのゼネコンにとってはイラク関連の政府受注は巨大な利益をもたらしている。
だがしかし、こうした一部産業の利益のみによって、イラク侵略のような、その利益に対する見返りがあまりに少ない愚行が実行されたとは考えにくい。ウォーラスティンが賢明にも予見したように、この侵略戦争以降アメリカの覇権と威信は地に落ちている。道理の通らないこれだけの侵略戦争を実行する意志は、このような個別の産業の意志だけでは説明できない。そこには国家の存亡にかかわるとの判断が働いた可能性がある。
通貨戦争としてのイラク戦争
そうなのだ。その国家の存亡にかかわる判断とは、ヤク中国家のアメリカがもはや抜け出せなくなってしまったドルの基軸通貨体制が、崩壊するかもしれないという危機意識だったとの観測が強い。2000年3月、フセインはそれとは知らずその引き金を引いてしまったかもしれない。
モスクワ原油取引所
だが、原油の決済代金を、ドルではなく異なる通貨にする動きは、イラク戦争後も止りはしなかった。むしろ、アメリカの覇権と威信の低下からこの動きは加速することになった。
後に歴史を振り返ると、2006年、6月9日は歴史的な記念日として記憶されることになるのではないかといわれている。「ロシア政治経済ジャーナル」でも詳しく解説されているが、この日、ロシアはモスクワ原油取引所で取引されるロシア産原油の決済手段をルーブルとした。つまり、ロシアをエネルギー大国にすることがプーチンの国家戦略だが、ロシアから原油を買いたければルーブルを持って来いということである。
これ以降、一時は融和ムードだったアメリカとロシアの関係は急速に悪化し、いまでは、ブッシュ政権が東欧に、明らかにロシアをターゲットにしたと思われる中距離ミサイルを配備する計画を発表するほど両国の関係は悪化している。米ソの冷戦の再来がささやかれている。
ドル基軸通貨態勢は徐々に地盤沈下していることはまちがいない。
イラン戦争の公式説明
ではイランの場合はどうなのか?ブッシュ政権はイランのが核兵器の開発を進めていることを口実にイランの攻撃を行おうとしている。イランのようなテロ支援国家が核兵器を持つことは世界にとて大きな脅威だといことだ。
だがこれは、イラク侵略の口実にまったく根拠がなかったと同様、ほぼ完全なデマだといってもよい。
イランが核兵器の原料となるウランの濃縮を行っていることは事実である。これは原子力発電所を持つ多くの国が行っていることである。
ではそこで作られるウランがすぐに核兵器へと転用可能かといえばまったくそうではない。原子力発電所で使用されるウランに必要な濃縮率は3.5%だとされる。
それに対して核兵器の製造に必要となる濃縮率は96%である。両者の間には大きな開きがある。原子力用の核燃料を核兵器の製造にそのまま転用することは絶対に不可能なのだ。
昨年の4月、イランは原子力発電所用のウランの濃縮に初めて成功した。それ以来、多くの遠心分離機を使いウランの濃縮を加速させている。だがそれでも、核兵器の製造に必要な水準の濃縮技術を手にいれ、さらに十分な量の燃料を確保するためには、あと10年はかかるとみられていた。最近、開発が思った以上に加速しているのが発見されたが、それでも5年はかかると見込まれている。核兵器を製造にまでの道程は遠い。
さらに、千歩譲ってイランが核兵器を持ったとしよう。それがどうして脅威になるのかという議論もある。
中東最大の軍事大国はイスラエルである。(※ちなみにイランは中東ではないので注意)イスラエルはすでに50年代半ばから核兵器を保有していることは公然の秘密になっており、いまでは200発から400発前後の核弾頭と、その運搬手段であるミサイルを保有しているとされている。このようなイスラエルの存在は、中東も含めた中央アジア最大の脅威だ。むしろイランが核武装することで、核の抑止力が働き、米ソ冷戦期のような安定した状態になるのでむしろよいだろうという意見さえもある。
つまり、イランが核を保有した場合、実際に核攻撃するとすぐに相手から核で報復されるので、イスラエルもイランもともに自滅してしまう。この危険があるため、両国とも実際には核を使用できない状態におかれる。それゆえ、むしろ反対に両国は、核戦争を未然に防ぐ必要から、例えばイランが影響力のあるハマスやヒズボラなどの原理主義組織に圧力を加えるというように、危機の温床となる組織を管理する方向で互いに調整的に協力することもできる。この結果、まさに冷戦期の米ソのような安定した敵対関係が形成されるだろうというのだ。もし本当にそのようなことが起こり得るのなら、イランの核武装はむしろ歓迎すべき事態だ。
また、これとは反対に、パキスタンに拠点を置く核兵器の闇市場で核兵器は簡単に手に入るので、イランはすでに核武装をしているだろうとの観測もある。
だとするなら、アメリカがイランを攻撃することは大変な報復を招く可能性がある。イランが報復に核を用いる可能性は否定できない。その結果は想像を絶する被害をアメリカにもたらすことだろう。
そして最後に、アメリカやイスラエルは、一方では核拡散防止条約への加盟を拒絶しているパキスタンやインドの核武装を容認しながら、他方ではIAEA(国連原子力委員会)の核査察を受け入れ、これが原子力の平和利用であることを再三再四強調しているイランをなぜ敵対視するのかというシンプルな疑問もある。むしろイランを敵対視することのほうが、イランに脅威を抱かせ、結果的に核兵器の開発へと向かわせるだろうとの意見だ。
このように、どのような方向からみても、イラクのときと同様イラン攻撃にな正当性は主張できない。ブッシュ政権の公式説明を真に受ける人間は、先程の多くのアメリカ人以外、ほとんどいないだろう。
通貨戦争としての可能性
ではイランはイラク同様基軸通貨としてのドルに揺さぶりをかけようとしているのだろうか?下の記事をみてほしい。
「石油大国のイランが石油取引所の国内開設を目指している。取引の通貨がユーロになるとの情報が流れ、オイルダラーに依存する米国の「ドル支配体制」への挑戦ではないかと観測を呼んでいる。」(毎日新聞06年4月17日)
そう、昨年の4月17日にイランもユーロによる決済を求めるテヘラン原油取引所を開設する意向を示したのだ。昨年の暮れになるとこの動きはさらに加速し、「日量238万バレルとなっているイランの原油輸出による収入は現在、約57%がユーロ建てとなっている」ところまで進んだ。これにはすでに、「ほぼ全ての欧州諸国および一部アジア諸国が、米ドル以外の通貨での支払いに合意している」という。
イラン攻撃が行われるとすれば、それはやはりドル基軸通貨体制の防衛というのが真の理由である。その可能性は高い。
覚悟しなければならない膨大な犠牲と損失
しかし、アメリカはその目的を本当に果たせるのだろうか?
イランは、1990年の湾岸戦争以来、国連による禁輸処置で経済は疲弊し、IAEAによる核査察で大量破壊兵器が破壊し尽くされ、なおかつ飛行禁止区域が国土の3分の2に及んでいた弱小国家イラクとは根本的に異なる。1988年のイランーイラク戦争終結以来、イランは大規模な戦争には参加してない。約54万の兵力をそのまま温存したこの地域の軍事大国である。
イラン攻撃があった場合、イランはまずペルシア湾から産出する石油の重要な航路となっているホルムズ海峡を封鎖し、ここに展開する米海軍の艦艇を自爆攻撃のターゲットにするだろうといわれている。
また、最初にアメリカは、ナタンズなど数ヶ所に分散している地下核施設をピンポイントで破壊する計画だろう。攻撃は、イスラエルおよびイラク駐留米軍によって行われるだろうが、これはイラン側からの即座の報復を招き、シリアのような同盟国や、昨夏イスラエルを撃退したレバノンのヒズボラ、それにパレスチナのハマスなどのイスラム原理主義組織の一斉蜂起となり、イスラエルおよび米軍は集中的に攻撃される。そのようにしながら、戦争は周辺地域に一気に広まってゆくだろう。
他方、このようなあまりにも犠牲の多い戦争にたとえアメリカが勝利したとしても、アメリカが基軸通貨としてのドルを維持できる保証はまずないだろうとの観測もされている。イラク戦争の失敗が逆にドル離れを加速させ、モスクワ原油取引所でルーブル建ての原油取引が行われたり、イランのテヘラン取引所でユーロが使われているように、泥沼化が予想されるイラン戦争ではアメリカの威信はさらに一気に低下する。そしてその戦費調達の困難性から赤字は急拡大してドルの信用が失墜し、ドルの基軸通貨体制は本当に終焉してしまうことも可能性としてはある。
イラン戦争の泥沼化→アメリカの戦費調達の必要から財政赤字が急拡大する→ドル不安から各国のドル売りが始まる→極端なドル安→基軸通貨としてのドルの放棄
実際にこのようになるかどうかは分からないが、少なくともその可能性があることを考えると、イラン攻撃はあまりにマイナス面が大きく、メリットはほとんどないといわざるを得ない、という意見も強い。
ジョン・ホーグ
ここでやっとジョン・ホーグの予言を解説するだけの準備が整った。やはり立ち位置は現実の世界の中にしっかり確保してから予言をみたほうがよいのである。
「Coast to Cast AM」や「Rense.com」、さらに彼が毎年発行しているその年の予言「2007 Predictions」や最近出した電子ブックの中でホーグは次のように語っている。
「私はどう論理的に道筋を立てて考えても、この戦争には何の合理性も見出せなかった。アメリカやイスラエルがこれほど理屈に合わない戦争をするとはどうしても思えないんだ。だが、私の予言からみるとかならず戦争は起こる。アメリカのブッシュ、イランのアフマディネジャド、イスラエルのオルメルトなど、意思決定の中枢にいる人物や彼らの支持者達に世界はどう見えているか、彼らの内面を支配している集合無意識からみるなら、この戦争はそれがどんなに狂気に満ちたものであってもかならず起こる!なぜなら彼らは、われわれと同じような合理的な世界は見ていないからだ。彼らは原理主義者なのだ。」
そして2006年の12月に配信された「2007 Predictions」や「War with Iran」には以下のように開戦時期を特定していた。
「もっとも早い時期で2007年、3月。次に6月。そして9月の末。ないしは2008年全半まで」
前の記事で以下のように書いた。
「1967年の第三次中東戦争でイスラエルが不法に占拠しているゴラン高原を今年8月までにシリアに返還しない場合、シリアはイスラエルを攻撃する用意があるとシリア政府高官が明言した。シリアは、昨年勃発したイスラエルによるレバノン攻撃に、イスラム原理主義組織、ヒズボラが効果的に応戦し、結果的にイスラエル軍を撃退したことが、ゴラン高原の返還を求めてイスラエルと平和裏に交渉するよりも、軍事行動に出たほうが目的を実現できると考えた理由だそうだ。この政府高官によれば、攻撃は8月か9月には行われるだろうとのことである。 」
9月に何があるのか?次に、ホーグのいう意思決定の中枢にいる人物の見ている世界と、その集合無意識の具体的なありようをみてみることにする。
続く


























