第768回 憎しみの対象となるイスラエル、ハルマゲドン神話の活性化
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第768回 憎しみの対象となるイスラエル、ハルマゲドン神話の活性化
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▼今回の記事
今回は激しさを増すイスラエルの「カザ」攻撃がもたらしている思わぬ余波について書く。この出来事は歴史的な転換点になる可能性も高い。次に、前回の記事で紹介した「エゼキエル書」第38章の内容がもたらしている思わぬ影響を紹介する。
▼イスラエルの「ガザ」攻撃とその大変な余波
それでは今回のメインテーマを書く。「ハマス」の攻撃に対する報復として続けられているイスラエル国軍の「ガザ」攻撃がもたらしている大変な余波についてだ。
イスラエルの「ガザ」攻撃が一層激しくなっている。10月18日には「ガザ」の北部にあるキリスト教の団体が運営する病院で大規模な爆発があり、中にいた500人を越す人々全員が死亡した。「ガザ」ではすでに3000人が死亡し、100万人が北部から南部に避難した。いま「ガザ」はイスラエルによって水と電力、そして食料の供給が遮断されているので、大変な人道危機になっている。
イスラエルによる「ガザ」攻撃は初めてではない。21世紀に入ってからも2006年、2008年から09年、そして2014年と3回も起こっている。しかし「ハマス」のイスラエル攻撃の報復として行われた今回の攻撃は、破壊の規模でも死者数でも群を抜いている。2014年の攻撃では50日間の戦闘で1423人のパレスチナ人が死亡しているが、今回はわずか10日間で3000人を越えているのだ。イスラエルは30万人の予備役の動員を終え、地上侵攻を準備している。地上軍の本格的な侵攻となると、「ガザ」の死者数は予想を越えて増大することは確実だろう。
●これまでとはまったく異なる世界の反応
2014年の「ガザ侵攻」のときも筆者は情報を集め、動きを詳しくモニターしていた。そのときも侵攻したイスラエル国軍に対する反発が強く、ツイッターやフェースブックなどのSNSではパレスチナ人に同情し、イスラエルを非難する声は多かった。しかしながら、イスラエルの「ガザ」攻撃はすでに何度も繰り返されているので、戦闘が長引くにつれてSNSの関心も次第に薄れ、それとともにイスラエルへの非難も沈静化した。とにかく、パレスチナ問題の最終的な解決に至る政治的な交渉が一刻も早く進められるべきだとの意見に落ち着く傾向にあった。
しかしながら今回は、そのような2014年当時とは様相がまるで異なる。筆者は「X(旧ツイッター)」、「ユーチューブ」、「テレグラム」などのSNSとともに、「TikTok」を活用している。すると「ガザ」攻撃には、2014年当時とは根本的に異なる反応が見られた。とても激しいイスラエル非難の声である。この攻撃の理由となった「ハマス」のイスラエル攻撃は、すでに忘れ去られたかのような状態である。
やはり、2014年には存在しなかった「TikTok」の拡散力の影響は大きい。コンテンツの審査が非常に厳しくなっている「Youtube」とは異なり、「TikTok」はほぼリアルタイムでライブで動画を配信できるので、「ガザ」でいま起こっていることがつぶさに分かるものすごい数の動画がアップロードされている。「ガザ」でも病院など電力の供給とネットの接続がかろうじて確保されている場所があるのだろう。そうした場所から、英語のできる市民が瓦礫の中で泣き叫ぶ子供たちを背景に、悲痛な声で「TikTok」の視聴者に助けを求めるものが多い。
これを見てショックを受けた多くの人々が反応し、イスラエル非難の大合唱となっている。この動きは18日の「ガザ」北部の病院で500人以上が死亡した事件が起こると、さらに非難は激しくなっている。今回の「ガザ」の攻撃の理由は「ハマス」によるイスラエル攻撃だったが、「ハマス」を非難する声はほとんどない。そもそも、イスラエルが過去70年以上にわたってパレスチナ人の人権を抑圧し、「ガザ」を屋根のない刑務所にして、230万人の人々を非人道的な状態に追い込んでいることが、「ハマス」が攻撃せざるを得なかった原因であるとして、イスラエルの責任を追求する声が多い。
このような声に呼応しているのは一般市民だけではない。これまではイスラエルの政治的な立場に一定の理解を示していたよく知られた専門家やコメンテイターの中にも、イスラエルを非難するものが多くの出てきている。例えば、国連のイラク核査察官であり、国際情勢の著名なアナリストであるスコット・リッターや、トランプ政権の国防省上級顧問でイスラエル軍との関係が強いダグラス・マクレガーなども、「カザ」の空爆で多くの一般市民を殺害しているイスラエルを厳しく非難している。
●共通のアイデンティティーとしての反植民地主義
たしかに今回の「ガザ」攻撃は、前回の2014年当時と比べると、規模も大きく犠牲者の数も多い。イスラエルを非難する声が高まっても当然だろう。しかしながら、今回のイスラエル非難の高まりは尋常ではない。イスラエルは、まさに悪魔であるかのようにたたかれている。
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