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第747回 レイ・ダリオの歴史サイクルから見たアメリカの危うさ、レイモンド・ホイーラーの歴史サイクル
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▼今回の記事
まず今回は、ウクライナ情勢で日本では報道されていない内容を紹介する。そしてメインテーマでは、世界的なヘッジファンドのマネージヤーであるレイ・ダリオの歴史サイクル論から見たアメリカの債務上限引き金問題の危うさについて書く。最後に、1932年に出たレイモンド・ホイーラーの歴史サイクル理論について紹介する。
▼反プーチン勢力のロシア攻撃について
今回もメインテーマを書く前に、ウクライナ情勢について書いておきたい。
22日、ウクライナと隣接するロシア南部ベルゴロド州の国境付近で、ウクライナ側から侵入した部隊とロシア軍による戦闘が発生した。ロシア側は「ウクライナ軍による破壊工作」と非難する一方、ウクライナ政府高官は関与を否定。西側のメディアは、反プーチン政権派のロシア人組織による単独行動であると報じている。
ベルゴロド州のグラトコフ知事は、SNSに「ウクライナ軍の破壊工作部隊が国境地帯のグライボロンスキー地区に侵入した」と投稿した。ロシア軍が「ロシア連邦保安局(FSB)」などとともに応戦しているとも主張した。ロシアのメディアによると、ロシア軍は侵入した武装勢力、70人を殺害したとしている。
一方、23日、反プーチン政権派のロシア人組織「自由ロシア軍団」は、「ロシアの完全な解放」が目的だったと強調した。「自由ロシア軍団」は「テレグラム」への投稿で、同州への攻撃は「平和維持作戦」だったと主張。作戦の目的は、ロシアとウクライナの間に非武装地帯を設けること、プーチン政権の治安部隊を打倒すること、抵抗の拠点を作り出すのは可能だとロシア国民に示すことだったと述べた。そのうえで、目的達成に成功したと宣言した。
●日本では報道されていないこと
これが日本で報道されている内容だ。この反プーチン政権派のロシア人勢力はウクライナとは関係のない独立した勢力であるというニュアンスの報道が多いようだが、どうもそれは事実ではないようだ。以下が、に本以外の海外メディアで報道されていることだ。
・反プーチン派の武装組織は「自由ロシア軍」と「ロシア義勇軍」の2つの組織があるようだ。これらの組織はウクライナ軍そのものか、ウクライナ軍の支援を受けている。
・それというのも、今回の攻撃に使われた車両には4輪駆動の対地雷/伏撃防護装甲車の「M1224マックスプロMRAP」が含まれているからだ。これは米軍の装甲車で、アメリカがウクライナに供与したものと同型である。
・今年の3月にも反プーチンの武装集団がロシア西部の国境地帯に侵入した事件があった。この実行組織のメンバーをイギリスの大手経済紙、「フィナンシャル・タイムス」がインタビューしたところ、彼らはネオナチ系の思想を持つウクライナの勢力で、ウクライナの支援を受けていることを認めた。
・4月に米空軍州兵の二等兵がペンタゴンの機密文書を漏洩した事件があったが、この中にゼレンスキー大統領がロシアの攻撃を指示した可能性を示す情報があった。ゼレンスキーは、ロシア西部の一部をウクライナ軍が占領して、ロシアの占領したウクライナの領土との交換を計画していたようだ。また、反転攻勢を実施するにあたり、ロシア軍の目を逸らす目的もあった。
以上である。どうもこれが、今回の攻撃の真相のようだ。
▼歴史的に見た債務上限引き上げ問題の深刻さ
それでは早速今回のメインテーマを書く。いま注目の本、「Changing World Order」から見た債務上限引き上げ問題の深刻さについてである。
債務上限引き上げ問題がかなり厳しい状態になっている。本当に下手をすると、デフォルトさえも覚悟しなければならないのかもしれない。
23日午後、マッカーシー米下院議長(共和)は、米国のデフォルト回避に向けたバイデン政権との連邦債務上限問題を巡る交渉について、妥結にはまだ至っていないと述べて連邦議会議事堂を後にした。また、共和党交渉担当者の1人であるグレイブス下院議員は同日、政権側の担当者との2時間に及んだ協議の数時間後、さらなる会合は予定されていないと語り、話し合いが膠着状態にあることを示唆した。
また、前大統領のトランプは、共和党に対し「自分たちの望むものをすべて手に入れない限り、デフォルトを許容するべきだ。折れてはいけない」と迫った。トランプを支持する共和党内の強硬派も同じ見方をしており、バイデン政権の案に妥協するくらいならデフォルトを選ぶとしている。
このような状態なので、もし本当にデフォルトするようなことにでもなれば、米国債とドル、そして株価は同時に下落し、金利は急騰して米経済はほぼ間違いないく不況に入ることになるだろう。
●債務上限引き上げ問題はさらに深刻
しかし、債務上限引き上げ問題を歴史的な視点から見ると、この問題の別な側面の深刻さが見えてくる。いまレイ・ダリオが昨年の4月に発表した「Changing World Order」という本がここにきて注目されている。
ちなみにレイ・ダリオは、世界最大のヘッジファンド、「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者である。成功哲学のほか、独自の視点で分析した歴史や経済の本を複数出版している。そのうちのいくつかは、ニューヨークタイムスのベストセラーにもなっている。「Changing World Order」はレイ・ダリオの最新作だ。これは、歴史の反復するサイクルをもとにして、アメリカの覇権の衰退と、中国の台頭の必然性を説き、それを回避する方策を提案した本だ。
「Changing World Order」によると、覇権の転換には250年のサイクルがあり、その移行期は10年から20年だという。そして移行期は、新興勢力との対立期になるとしている。
ちなみに、覇権国の盛衰と転換を決定するパラメーターには次に8つがあるとしている。
・盛衰を決定する8つのパラメーター