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    2013-06

    大きな歴史的転換点、激変する世界経済と進行する我々の意識変化、第6回

    6月26日

    メルマガの記事の執筆に全力投球してしまっているため、今回も記事の更新が遅れてしまった。いつも記事を読んでくださっている読者の方々に感謝する。

    アネモネ講演会のご案内

    またアネモネの考案会を依頼された。今回は極めて刺激的な内容になると思う!よろしかったらぜひどうぞ!

    案内リンク

    2013年7月14日(土)
    14:00~16:00(開場13:30)
    会 場 アリアル五反田駅前会議室 
    東京都品川区西五反田1-2-9 アリアル五反田駅前ビル
    ■各線「五反田駅」より徒歩1分
    料 金 前売3,000円/当日4,000円(各税込)

    ・世界再編成の動きと第3次産業革命
    ・まったく報道されていないTPPの真の実態
    ・アベノミクスが終焉?
    ・果たして日本は生き残れるのか?
    ・社会的断層と我々の集合無意識
    ・中国の現実
    ・戦前と似てきたヨーロッパ
    ・ウェブボット最新報告書


    高松の講演会

    以下の日程で高松の講演会を行います。お近くの方はぜひどうぞ!今回の講演会は面白くなりそうです!

    日時  平成25年7月26日(金)18:30受付 19:00~公演開始
    場所  高松テルサ  

    テルサ会場内の掲示板にて部屋の確認をお願いいたします
    〒761-0113 香川県高松市屋島西町2366-1
    Tel: 087-844-3511   Fax:087-844-3524

    会費   ¥3000/人

    講演会後、高島先生を囲んでの懇親会を予定しております。場所 未定ですが高松市内にて行う予定です。

    主 催  里坊会計事務所 里坊昌俊
    実行委員 有限会社ウエストフードプランニング小西啓介、ソニー生命保険株式会社 山下智幸、株式会社京蔵 京兼慎太郎、株式会社クリード インテグレーション平野伸英

    内容
    ・岐路に立つ日本、アベノミクスの逆回転はあるのか?
    ・中国のバブル崩壊の可能性は?
    ・資本主義2.0の社会とは?集合意識と集合無意識
    ・アメリカの根本的な変化
    ・我々の向かう精神的な変化
    など


    船井メールクラブ・オフ会 vol.1

    フナイメルマガを書いています。オフ会を行うそうです。よろしかったらどうぞ。

    船井メールクラブオフ会告知ページ

    日  時:8月23日(金)開場18:30 スタート19:00 終了21:30~22:00頃
    参加費:会員様 5,000円(税込) ご同伴者様(非会員様) 6,500円(税込)
    ※お飲み物(アルコール含む)・軽食込みの会費です^^
    会 場: JR四谷駅より徒歩3分のオフィスビル内(ご入金いただいた方に直接ご案内いたします)
    タイムスケジュール:
    18:30   開場
    19:00~ 高島康司先生ご講演
    「実はいまこそが歴史の転換点。水面下で進む新しい国際秩序の形成」
    20:00~ 船井勝仁との対談・皆様との懇親会(終了21:30~22:00頃予定)


    新刊本のご紹介

    また本が出ます。すごく面白い本だと思います。よろしかったらどうぞ!

    日本、残された方向と選択~緊急分析!! 近未来の予測・予言を大解明!
    houkou

    むちゃくちゃうまい醤油!

    筆者は、隔月で高松の経済団体で講演会を行っている。そのとき、高松で評判になっているおいしい醤油のことを教えられた。小豆島の醤油である。早速、注文して見たが濃厚な味でものすごくうまかった!世の中にはうまいものがあるののだと思った。よろしかったらどうぞ。

    金両醤油

    お知らせ

    5月21日、ウエブボットの報告書の最新版が発表になりました。いま詳細な要約の作業を続けていますが、これまでのように「予言解説書」のような体裁で出すことはしないことにいたしました。詳細な要約はすべてメルマガに発表いたしますので、最新報告書の内容を知りたい方は、メルマガを購読なさってください。

    記事全文の音声ファイル

    記事全文を音声ファイルにしました。よろしかったらどうぞ。7日で削除されますので、お早めにどうぞ。

    音声ファイル

    有料メルマガのご紹介

    前回と今回のメルマガでは非常に重要な内容を解説した。我々の社会は「資本主義2.0」と呼ばれる新しいシステムへと急速に進化している可能性がある。

    資本主義社会は歴史的な環境の変化に適応して幾度となく変化してきたが、これまでの資本主義では変わらないものが存在した。それは、「生産者と消費者」「作家と読者」「製作者と鑑賞者」というような社会的な主体の分断である。サービスや製品の供給は、生産者から消費者へというように、あくまでも一方の主体からもう一方の主体へと一方通行に行われた。この関係は、どの時代の資本主義でも不変のまま止まった。

    しかしながら、フェースブックやツイッターなどのSNS、そしてBBSなどの発達により、これまで固定されていた社会的主体の分割線が解体され、「消費者」が「生産者」、「生産者」が「消費者」となるような入れ替わりが可能となる状況が出現した。

    それというのも、SNSやBBS、またブログの投稿欄では社会的な立場ではなく、すべての参加者が個人へと還元されてしまうからである。そうしたサイトでは、一方的な情報提供ではなく、個人による対話こそが中心になる。そのような対話的な状況から多くの人が共有するさまざまな考えやアイデアが「意味」として現れるので、そうしたサイトは総称して「意味場」と呼ぶことができる。

    「意味場」では、参加者の数と会話の頻度がある臨界点に達すると興味深いプロセスが起こる。そのプロセスとは、繁雑な会話内容を一貫してストーリーにまとめる「会話内容のまとめ」と、そうしたストーリーが現実に起こり得ることを示す「現実のリンク」という2つのプロセスである。この2つのプロセスを通過すると、「意味場」における単なる会話内容に過ぎなかったものが、あたかも本当に起こった出来事であるかのようなリアリティーをもち、一人歩きを始める。それは、小説やエッセー、映像や音楽などとして商品化される。

    さらに、3Dプリンターの開発により、「意味場」からあふれ出した内容がデジタルを越え、「もの」として製作されるようにもなった。

    このようなものは、「意味場」で現れた多くの人々の意識を反映している。その意味では、これは「集合意識」と呼ぶことができるはずだ。「意味場」を通して「集合意識」が出現すると、大変な社会的影響力を及ぼす。抗議運動などさまざまな集団的な社会運動が、なんの前触れもなく突然と出現し、社会を変化させる力になるのである。いま荒れ狂っているトルコやブラジルの抗議運動も、「集合意識」のこのような出現を経て起こったことは間違いない。

    このような状況のため、「資本主義2.0」の社会は権威や権力、そして権威的な階層秩序の組織が存在しにくい社会になりつつある。それは、「意味場」から現れた我々の「集合意識」が現実を変化させる社会、つまりは我々の想念がそのまま現実となる社会になっている。

    一方CIAは、ネット上に存在する有力な「意味場」をモニターし、「集合意識」の出現からどのような集団行動が発生するのか予測するプログラムも開発している。このとき、参加者の感情の強さも分析している。おそらくこれは、ウエブボットが時代遅れになるようなプログラムだ。

    前回はこのような内容を解説した。

    今週のメルマガの予告

    今週のメルマガは、まず新たな金融破綻の可能性について解説する。いま中国では、株は暴落し金融機関の連鎖倒産を懸念する状況になっているが、新たな金融危機の引き金を引くのは、実は中国ではない可能性が高い。引き金はまったく違うところからやってくる可能性がある。これを解説する。

    やはりどうもいまは、めったにない歴史的な転換期に突入したようだ。

    日本も含め現在のグローバルな世界経済は、1989年から始まった長期の4つのトレンドが作り出したものであることは間違いない。中国のような新興国の成長もこの長期トレンドの現れであった。

    しかし2013年になって、この長期トレンドが終了しつつある。これまでのようなグローバリゼーションの世界ではなくなるかもしれない。

    日本のこれからも含め、これがどういうことなのか詳しく解説する。

    今回の記事

    何人かの読者の方から、アベノミクスの現状を簡単に整理し、これからどのようなことが起こるのか書いてほしいというリクエストを得た。今回は、これに応える記事である。長いので、記事を2回に分ける。

    安倍政権の海外の評価

    では、本題に入る。

    メルマガやこのブログに何度も書いてきたことなので詳述はしないが、海外の安倍政権の評価は決して高いものではない。というよりも、安倍政権を積極的に評価する記事はほとんど見たことがないというのが実情だ。安倍政権の歴史認識に関しては、特にそうである。

    安倍首相と韓国のパク・クネ大統領の訪米時における扱いの違いを見れば、オバマ政権の安倍首相に対する拒否反応は明白だ。

    安倍首相は、ジャパンハンドラーの拠点で軍産複合体のシンクタンク、「CSIS」の主催する国防総省の次官級クラスが集まる小さな会合のスピーチがせいぜいであったのに対し、韓国のパク・クネ大統領は上下両院特別会議におけるスタンディングオベーションであった。

    安倍首相のスピーチ



    韓国、パク・クネ大統領のスピーチ



    グローバルな常識となった認識

    安倍政権に対する拒絶反応が強いのは、戦前の日本軍を欧米の植民地からのアジアの解放者として見る安部政権の歴史観は、グローバルに共有されている認識とはあまりに異なり、受け入れられる余地はほとんどないからだ。

    インターネットとSNSが発達した現代では、共通の常識を共有するグローバルな市民社会が明白に存在している。それは、アラブの春やオキュパイ運動、チベットの反人権運動、そしてトルコやブラジル、ヨーロッパ各地で起こっている抗議運動のような大きな出来事が起こると、グローバル市民社会の大きさを実感することができる。

    そこには、広く共有される常識と歴史観が存在している。日本に関してもそうだ。それがどのようなものか、海外のさまざまなメディアや記事を読むと次のような歴史観であることが分かる。

    アジアを侵略した忌まわしき過ちの歴史と決別し、戦後の焼け野原というマイナス状況から出発しながらも、戦争や紛争を一切引き起こすことなく、民主主義と人権を重んじる平和国家として経済大国となった偉大な国が日本である。

    このような歴史観だ。これを見ると、グローバル市民社会は、戦後の日本に最大の価値を見いだしており、反対に戦前の歴史を、「侵略の過ちを繰り返した忌まわしき歴史」として強く排除していることが分かる。

    この立場から見ると、なぜ安倍政権が戦後の価値を放棄し、あえて忌まわしき戦前に回帰したいのかまったく理解できない。安倍政権の姿勢は、戦前のドイツが犯したホロコーストにもよい点はあったと主張するようなものとして映るのだ。

    普遍的な価値とグローバル市民社会

    グローバル市民社会というのがなんのことなのかはっきりしないので説明してほしいというリクエストがあったので、以下の解説を追加する。

    グローバリゼーションというと、基本的には経済の国際化をイメージする。グローバル化の進展に伴い、日本やアメリカのような先進国では、競争の激化、格差の拡大、社会保障の縮小と崩壊、大量失業などの社会矛盾が発生するというマイナスのイメージを持ち安い。

    たしかに、グローバリゼーションは、あらゆる産業の生産拠点を労働力の安い地域に配置するグローバルな生産システムを実現するので、車や家電などの耐久消費材の製造業を中核に発展してきた先進国は、没落を余儀無くされた。その結果が競争の激化や格差の拡大である。

    しかし、グローバリゼーションにはこれとは違った側面が存在する。上が経済のグローバリゼーションであるとすれば、もうひとつは価値観と意識のグローバリゼーションである。

    グローバリゼーションは、ネットによるソーシャルメディアなどを駆使して、個人が国籍や国境に関係なく世界と自由につながることのできる環境を形成する。ここでは、情報は一瞬のうちに共有されるので、チベットで撮影された人権弾圧のビデオが、フランスで大きな抗議デモを巻き起こすなどということはしょっちゅう起こる。

    このようなグローバル化した世界では、グローバル市民社会と呼べる状況が出現しており、そこでは国や文化の違いに関係なく尊重されるグローバルな価値観が台頭している。それは、「人権の尊重」「言論の自由の尊重」「民主主義」「自由と平等」などのとてもシンプルな価値だ。

    このような価値に違反する政権は批判され、生き残ることが難しくなっているのが現代という時代なのだ。「アラブの春」で多くの独裁政権が崩壊したり、どれだけ経済的に発展しようとも、「民主化要求運動」や「チベット独立運動」などを平気で弾圧する中国政府に人気がないのは、こうした普遍的な価値に明白に違反した行動をしているからだ。

    これらの価値は、エルドラン政権に講義する民衆のプラカードや、ニューヨークのオキュパイ運動のスピーチような、世界各地の抗議運動が体現しているだけではなく、スローフードやロハスなライフスタイルを唱えるヨーロッパのNGOなど、民衆が自主的に始めた世界各地のあらゆる種類の運動や団体が共有している。

    そのひとつは以下のサイトだ。日本ではさほど大きくはないが、海外では巨大化している。「この指とまれ」方式で現実を変えてゆくためのサイトだ。

    「変えたい」を形にするソーシャルプラットフォーム change.org

    また、個人が個人に資金援助をするマイクロクレジットの「KIVA」も超有名だ。

    KIVA

    こうしたサイトや団体、また運動を見るとよく分かるが、これらの活動の前提になっているのが、先の普遍的な価値というわけである。

    これはアメリカの価値観で、アメリカが世界に押し付けたものだという考えが日本では強いが、実はそうでもない。これらの価値観は、ネットワーク化したグローバル市民社会の運動から自然に出てきたものだ。それはアメリカにも厳しく適用され、断罪され、生き残れなくなった団体や企業が多くなっている。

    世界で起こるさまざまな出来事はこれらのグローバルな価値観を基準に判断され、また厳しく断罪される。そのため、インターネットが存在せず、事件が起こった後に事後的に伝えられた20年前では、「しょうがない」と諦められ、さほど非難されなかった出来事も、グローバルな価値観が支配し、ネットを通して出来事がリアルタイムに伝えられる現代では、すさまじい非難と抗議運動を呼び起こす。

    このため、20年前までは安泰であった各地の独裁政権とそれによる人権弾圧も、いまでは世界的な抗議運動の拡大から、存続することは不可能に近くなっている。「アラブの春」などはこのよい例だ。

    このような環境では、どの国の国内問題も一国の範囲に止めておくことは不可能だ。「オキュパイ運動」、「アラブの春」、「プーチン抗議運動」、「中国の民主化要求運動」、「チベット人権弾圧抗議運動」など、近年発生したどの抗議運動も、一瞬のうちに世界に拡大し、世界的な規模で市民の共感と賛同を得た。「アラブの春」のように、そのうねりのなかで、多くの独裁政権を連鎖的な崩壊へと追い込むことに成功した運動もある。

    これが、いま出現しつつあるグローバル市民社会のイメージだ。

    異なった歴史観を主張することは可能

    もちろん成功する可能性はかなり低いが、グローバル市民社会の常識とは大きく異なる歴史観を、安倍政権が説得的に提示することは不可能ではない。

    海外の多くの人々にアピールできる論理性と説得力のある内容であれば、それなりに受け入れられる可能性はある。

    日本の指導層の説明能力

    世界的にすでに常識になっている歴史観とは異なる内容を提示するのである。よほどの説得性がないと無理なことははっきりしている。安倍政権の周辺にいる人々に、そうした説得力は期待できるのだろうか?

    しかし、これがはかない夢であることを証明する出来事が最近起こった。国連拷問禁止委員会で、アフリカ モーリシャスの代表が日本で逮捕された被告が警察による尋問中に弁護士を同席できない問題点を指摘すると、上田大使は激昂し「日本は中世の国ではない、日本はこの分野で世界で最も先進的な国の一つだ」と言い、「笑うな!何故笑っているんだ?黙れ!黙れ!」と言った。以下である。



    もしこれがいまの日本の政府や省庁の周辺にいる人々の説明力の水準なら、グローバル市民社会に対抗する歴史観の提示という極めて微妙で神経質な扱いを要求する問題で、説得力のある論理を展開することは、土台不可能であると言わねばならない。

    ところで、上田人権人道大使の発言には「無礼な!日本は偉大な国だ。何を言うのか!」というプライドが前面に出た態度が伺われる。この態度とトーンは、日本の国際的孤立の出発点になった「日本の主張が認められないならば国際聯盟脱退はやむをえない」として国際連盟脱退を宣言した1933年の松岡洋介外相の演説とよく似ているように思う。以下がそうだ。

    1933年、松岡洋介外相の国際連盟脱退演説



    安倍政権の歴史観の見直しは命取り

    このような状況なので、もし今後も安倍政権が「河野談話の見直し」「歴史観の見直し」、そして「憲法改正」などを自分たちの内部的な論理で行おうとするなら、各国のみならずグローバル市民社会から袋だたきに合い、葬り去られることだろう。

    安倍首相個人のスキャンダルが急にマスコミをにぎわし、あっと言う間に引きずり落とされることにもなりかねない。

    「従軍慰安婦発言」で橋下共同代表がどのような状況に陥ったのか見れば、歴史認識の問題に触れることがどれほどリスクがあるかよく分かる。

    もし自民党が参院選で勝利した後、安倍政権が経済に専念すれば延命するだろうが、ちょっとでも「歴史認識」の修正を行うそぶりを少しでも見せると、国際的な非難の嵐から、政権の存続も難しくなる状況になる可能性も出てくるだろう。

    アベノミクスの現状と整理

    他方、拒絶反応一辺倒の「歴史認識修正問題」とは対照的に、賛否両論はありながらも比較的に受け入れられているのが、1)異次元的量的緩和、2)防災インフラ関連中心の公共投資、3)成長戦略の3本の矢のアベノミクスである。

    アベノミクスがどういうもので、いまどのような状態にあるのか、簡単に整理する。すでに散々報道されているので周知なことだろうが、一度分かりやすく整理して見よう。

    異次元的量的緩和のねらい

    まず、市場に存在する国債の70%に相当する毎月7兆円の国債を日銀市場から購入する異次元的量的緩和だが、当初は、日銀が国債購入のために市場に流す資金は株式市場へと投資されて株価が高騰し、また日銀が国債を買うので国債の価格は上昇し、その結果、長期金利は低下すると予想された。

    長期金利が低下すると、企業が銀行から金を借り安くなるので、設備投資は増加する。すると、本格的な景気回復に入ると期待された。

    期待が外れる

    だが、これも周知のことだろうが、この期待は外れた。当初の予想とはかなり異なる展開となった。

    日銀が大量の国債を購入した結果、金融機関は手持ちの国債を一斉に売り、株を購入した。その結果、株は高騰したものの、逆に国債は下落し、長期金利は上昇した。これで銀行の貸し出し金利も上昇するので、設備投資は減少した。

    このような状況になったため、株価は上昇したものの、景気回復のカギとなる設備投資は起こる方向に向かっていない。

    可能性のあった予想、個人消費循環

    他方、このような状況にあっても、設備投資には依存しない景気回復の方向に向かっているのではないかとする希望的な観測もあった。4月にはこのブログもそのような見方を取り、それを紹介した。

    戦後の日本の経済成長は、大手製造業による巨額の設備投資が支えてきた。大型の設備投資が始まると、周辺産業に大きな波及効果をもたらす。それが日本国内で行われると、国内の雇用は伸び、所得も伸びる。すると国内の消費も伸びるので、景気を一層後押しする。これを設備投資循環と呼ぶ。

    一方、アメリカなどの個人消費がけん引する国では、多くの国民が株を保有しているため、高い株価や住宅価格の高騰で、富裕層を中心とした個人消費が伸びる。すると、サービス業を中心とした非製造業が伸びるので、この分野の雇用の伸び、その結果、ゆるやかに景気回復する。これを個人消費循環と呼ぶ。

    デパートなどの売上が急速に伸びていたので、日本もアメリカに似た個人消費循環に突入する可能性があるのではないかとも言われた。

    消えた希望的観測

    だが、そのような状況にはならなかった。個人消費の伸びが継続したのは3月から4月のみであった。5月23日には株が暴落し、その後は株価の乱高下が始まり、市場は不安定化した。

    また国債の下落と長期金利の上昇で、設備投資の減少傾向にも歯止めがかからなかった。

    さらに、日銀がこれだけ大量の資金を供給しているものの、デフレが改善している気配もまったくない。以下は東京大学大学院経済研究科が発表している東大日次物価指数のデフレ数値である。

    原計数      1.11%の下落
    過去1週間の平均 0.82%の下落
    (2013年06月23日:前年同日比)


    株価の暴落と乱高下の背景

    さらに、5月23日には株価はマイナス7%を越えて暴落し、その後も乱高下が続いている。これも散々報道されていうので周知だろうが、暴落の原因は2つであった。

    1)QE3の終了

    いま米経済は確実に回復している。いま米FRBは景気を支えるために大規模な量的金融緩和(QE3)を行っているが、これを終了させる懸念が出てきた。金融緩和を止めると市場に資金が供給されなくなるので、景気が失速する懸念が出てくる。その結果、株価が下落して、ドル安と円高になり、日本の株価が下落した。

    しかしもっと深刻なのは、次の原因だ。

    2)第3の矢の「成長戦略」が期待外れ

    6月14日に安倍政権は、第3の矢となる「成長戦略」を発表したが、これに市場は大きく失望した。

    市場は、大規模な構造改革や大幅な規制緩和、そして新しい産業の立ち上げなどを期待していたが、発表された「成長戦略」は、薬のネット販売などが目玉になるような決め手に欠けるものであった。その結果、市場は失望し、株価は下落した。

    その後も続くマイナスのニュース

    その後、株価はちょっとした変化で乱高下しながら、アベノミクスに関する明るいニュースはほとんどないのが現状だ。

    まず輸出だが、円安と高い株価にもかかわらず、逆に貿易収支は悪化している。これは、大手製造業の生産拠点の多くはすでに海外に移転してしまっており、円安の効果が薄いことを示唆している。

    一方円安により、輸入エネルギーと原材料価格は上昇し、国内企業を圧迫している。そのため、景況感の悪化も止らない。

    円安になっているので、ドル建てで実施している海外への投資収益が増加しており、これがなんとか貿易収支の赤字を補填しているのが現状だ。

    さらに日銀が、設備投資の活性化を期待して、市場を通して銀行に注入した資金は、その多くが国債の購入に使われ、企業への貸し出しはほとんど伸びていないことが分かった。このような状況が続くなら、設備投資は起こらず、本格的な景気回復は実現しないことになる。

    ジム・ロジャースの警告

    株が乱高下しながらも、一向に実質的な景気の改善が見られない状況に対し、世界的に著名な投資家のジム・ロジャースは、長文のインタビューで以下のように述べた。

    「今は、アベノミクスによって、円は25%も価値が下がり、輸出関連産業は息を吹き返しました。しかし、日本は原料、原油、銅、綿など、多くのものを輸出に頼っている国家です。円安が止まらなくなれば、それらの輸入価格がどんどん上がっていく。インフレが起こり、物価が上がって生活はどんどん苦しくなることは必至です。これまでの歴史を振り返ってみても、無制限に印刷された紙幣が、どれだけ最悪のインフレを起こしてきたか、想像するのも恐ろしい。安倍首相にはそれが見えないのか、あるいは、ないふりをしているのか。借金とインフレに基づいた経済システムは、いずれ崩壊するでしょう」

    設備投資は起こるのか?


    ジム・ロジャースはかなり厳しいことを言っているが、これはひとつの意見にしか過ぎない。これとは大きく楽観的な見方も存在しているが、やはりカギを握っているのは、設備投資の波が起こるかどうかである。

    これがアベノミクスの明暗を左右している。

    やはり設備投資は難しい?ファンドによる投資

    だが、やはりいまの日本企業では大規模な設備投資は困難ではないのかとする悲観的な見方が出てきている。

    設備投資は巨額である。したがって日本の企業は、伝統的に銀行との関係を強め、銀行からに融資に依存して設備投資を実行してきた。これは我々の設備投資のイメージでもある。

    しかし世界的な流れとして、銀行の融資には依存しない設備投資が一般的になっている。

    いま西部グループに、利益を上げるために路線の統廃合を提案した投資ファンド、「サーベラス」が問題となっているが、資金だけ融資をする銀行ではなく、リストラや経営の合理化、そして新規プロジェクトなどを会社に提案する投資ファンドによって、新規の設備投資が実現するのが主流になっている。もはや、銀行ではなくなっている。

    だが、今回の西部グループのケースにも見られるように、投資ファンドが経営の方法に介入することを日本の会社は極力嫌う。

    おそらく、日本企業への設備投資に資金を投資する意思のある海外のファンドは、多く存在しているだろうが、経営に介入するそのような投資を受け入れる準備は、日本の企業にはできていないのだ。

    日本人としては、外資系ファンドの介入を排除したい気持ちはとてもよく分かるが、このような構造のため、積極的な設備投資が日本国内で起こることはかなり難しいのだ。

    だとするなら、設備投資の大きな波は日本では起こらない可能性が高い。もしそうなら、アベノミクスは最終的になにをもたらすのだろうか?実は、それほど悪い状況ではないとする見方もある。ちょっとびっくりする見方だが、どのようなものだろうか?いま言えることは、少なくとも年内に日本経済がクラッシュするようなことはまずないということである。

    次回に続く。できるだけ早く更新する。

    むちゃくちゃおもしろかった講談

    筆者は月刊ザ・フナイの連載を書いていたが、読者の方に講談師の方がおり、会う機会があった。筆者は講談はこれまで聞く機会がなかったが、実におもしろかった!今後はスピリチュアル系の講談をやるそうである。サイトに音声ファイルがあるので聞いて見たらよいだろう。

    田辺鶴瑛

    筆者のいとこのブログ

    筆者にいとこがスピリチュアル系のカウンセラーになっていたのを最近知ることとなった。以下にリンクする。よろしかったらどうぞ。

    ねもとまどかの「宇宙のゆりかご」

    このブログの基本方針

    このブログの基本方針を掲載しました。記事をお読みになる前にかならず一度はお読みになってください。

    基本方針リンク

    読むとくドットコム

    筆者がコンサルティングにかかわっている会社が子供用の国語音声教材の提供を始めた。子供用だが、実によい名作がmp3の音声ファイルで聴くことができる。大人の心の琴線に触れる作品がとても多い。よいサイトだと思う。よかったらどうぞ!

    読むとくドットコム

    驚異的な前世リーディングサイト
    遠い記憶・前世からの約束

    前世リーディング問い合わせ電話番号
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    筆者の友人の作家のブログ

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    駒村吉重のブログ。いつもの飯、酒、より道、脱線、思いごと


    便利な学校検索サイトです!

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    投稿に関しては以下の方針に従い、どうしても必要な場合以外は削除しないことにしておりますが、他者の人格を傷つける不適切な表現がある場合は例外とし、予告無しに削除し、投稿禁止にする場合もあります。

    意味産出の現場としてのBBSやブログ

    また、私はいま日本で起こっている変化を以下のようにとらえております。もしよろしければこちらもどうぞ。

    いま何がおこっているのか?

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    テーマ:歴史と予言 - ジャンル:学問・文化・芸術

    大きな歴史的転換点、激変する世界経済と進行する我々の意識変化、第5回

    6月12日

    いつものようにすごく遅い更新だが、今回もなんとか更新できた。いつも読んでくださる読者の方に感謝する。

    アネモネ講演会のご案内

    またアネモネの考案会を依頼された。今回は極めて刺激的な内容になると思う!よろしかったらぜひどうぞ!

    案内リンク

    2013年7月14日(土)
    14:00~16:00(開場13:30)
    会 場 アリアル五反田駅前会議室 
    東京都品川区西五反田1-2-9 アリアル五反田駅前ビル
    ■各線「五反田駅」より徒歩1分
    料 金 前売3,000円/当日4,000円(各税込)

    ・世界再編成の動きと第3次産業革命
    ・まったく報道されていないTPPの真の実態
    ・アベノミクスが終焉?
    ・果たして日本は生き残れるのか?
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    ・中国の現実
    ・戦前と似てきたヨーロッパ
    ・ウェブボット最新報告書


    高松の講演会

    以下の日程で高松の講演会を行います。お近くの方はぜひどうぞ!今回の講演会は面白くなりそうです!

    日時  平成25年7月26日(金)18:30受付 19:00~公演開始
    場所  高松テルサ  

    テルサ会場内の掲示板にて部屋の確認をお願いいたします
    〒761-0113 香川県高松市屋島西町2366-1
    Tel: 087-844-3511   Fax:087-844-3524

    会費   ¥3000/人

    講演会後、高島先生を囲んでの懇親会を予定しております。場所 未定ですが高松市内にて行う予定です。

    主 催  里坊会計事務所 里坊昌俊
    実行委員 有限会社ウエストフードプランニング小西啓介、ソニー生命保険株式会社 山下智幸、株式会社京蔵 京兼慎太郎、株式会社クリード インテグレーション平野伸英

    内容
    ・岐路に立つ日本、アベノミクスの逆回転はあるのか?
    ・中国のバブル崩壊の可能性は?
    ・資本主義2.0の社会とは?集合意識と集合無意識
    ・アメリカの根本的な変化
    ・我々の向かう精神的な変化
    など


    新刊本のご紹介

    また本が出ます。すごく面白い本だと思います。よろしかったらどうぞ!

    日本、残された方向と選択~緊急分析!! 近未来の予測・予言を大解明!
    houkou

    むちゃくちゃうまい醤油!

    筆者は、隔月で高松の経済団体で講演会を行っている。そのとき、高松で評判になっているおいしい醤油のことを教えられた。小豆島の醤油である。早速、注文して見たが濃厚な味でものすごくうまかった!世の中にはうまいものがあるののだと思った。よろしかったらどうぞ。

    金両醤油

    お知らせ

    5月21日、ウエブボットの報告書の最新版が発表になりました。いま詳細な要約の作業を続けていますが、これまでのように「予言解説書」のような体裁で出すことはしないことにいたしました。詳細な要約はすべてメルマガに発表いたしますので、最新報告書の内容を知りたい方は、メルマガを購読なさってください。

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    記事全文を音声ファイルにしました。よろしかったらどうぞ。7日で削除されますので、お早めにどうぞ。

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    有料メルマガのご紹介

    前回は、安倍政権とアベノミクスを包括的な的な視点から分析し、これからどのような危機が起こるのか、解説した。

    異次元的な金融緩和で高株価を実現したアベノミクスでは、富裕層の個人消費が伸び、これまでの設備投資循環とは異なる新しい成長パターンになる可能性があるのではと期待された。だが、株価上昇のトレンドが収まるにつれ、富裕層の個人消費も縮小し、そうはならないことがはっきりした。

    逆にアベノミクスは、第3の矢である「成長戦略」への失望、減少傾向に歯止めがかからない設備投資などのマイナス要因が重なり、日本経済に対するリスクの方が高くなる可能性が指摘されている。

    異次元的金融緩和で円安を誘導することは、G20やG8では禁じ手とされている。禁じ手が日本に限り許されたのは、長い間デフレで低迷する日本が、金融緩和をカンフル剤としながらも、日本経済が実際に成長するなら、世界経済にとって大きな利益になると判断されたからにほかならない。

    しかし、6月5日に発表になった成長戦略は期待を裏切るものであった。世界が期待する目玉となる戦略には乏しく、期待はずれに終わった。これが引き金となり、株価は下落し、また日本は禁じ手である他国を犠牲にした円安誘導を行っているのではないかという非難が出始め、アベノミクスの先行きに暗雲を投げかけた。

    さらに、安倍政権の戦前の歴史を美化する歴史認識に基づく外交政策は、アメリカの「安倍政権は反米ではないか」とする疑念を深めている。一方オバマ政権は、米中の安定した軍事的な関係を模索しており、安倍政権は基本とする「中国封じ込め政策」を完全に放棄した感がある。安倍政権の外交政策はハシゴを外されている。

    このように、安倍政権とアベノミクスは、経済と外交の両面から徐々に難しい状況に直面しつつある。

    前回はこのような内容を詳しく解説した。

    今回の記事

    今回はTPPの実態を解説し、本当の危機がどこにあるのか見て見る。いま国内では、TPPの賛成論と反対論で二分している状況だが、本当の危険性は国内で報道されている内容とはかなり異なっている可能性がある。

    TPPの実態については、過去のメルマガの記事で詳しく解説した。この記事は重要だと思うので、ブログにも掲載することにした。メルマガの読者の方々は、今回の記事を後半部分に注目して読んでほしい。新しく加筆した部分だ。

    TPPとはいったいなんなのか?

    安倍政権がTPPの交渉に参加を表明してからというもの、国内ではTPP反対派と賛成派の間で激しい論争が起こっており、その様子は毎日マスメディアで報道されている。

    反対派は、TPPに参加すると、無関税になるので農業に大きな影響が出るだけではなく、国民皆保険のような日本独自の制度が非関税障壁として変更が強制されることを恐れ、一方賛成派は、アメリカの市場が無関税になるので、米国への輸出によって日本の製造業も農業も大きく成長するとして歓迎している。いまこのような議論が延々と続いている状況だ。

    反対派と賛成派の議論に限定される

    しかし、TPPとは実際にはどのようなものなのだろうか?その本質がなかなか見えてこないのが現実だ。筆者は、基本的にTPPに反対する立場だ。だが、TPPを詳しく調べるうちに、日本ではほとんど報道されていないTPPの実態が見えて来た。

    日本では、TPPの内容は「農業が壊滅し、日本の制度が強制的に変更され、アメリカに支配されてしまう」という反対派の視点か、ないしは「米国市場が開放されて日本製造業の躍進し、経済成長の期待できる」という賛成派の視点に限定されて論じられている。つまり、「TPPはアメリカの日本支配の道具である」という立場と、「TPPこそ日本が成長軌道に乗るための救世主だ」という立場のぶつかり合いだ。

    だが、この2つの立場とも日本の利害にポイントをおいた見方でしかない。「TPPはアメリカの日本支配の道具だ」ないしは、「TPPこそ日本成長の希望の星だ」ということだ。だが、日本中心の視点ではTPPが基本的になんであるのか、その本質は見えてこない。

    いったいTPPとはなんなのだろうか?「日本」という視点を外して見ると、驚くべきものが見えてくる。

    WTO(世界貿易機構)の行き詰まり

    TPPが基本的になんであるのか理解するためには、WTO(世界貿易機構)が行き詰っていることを知らなければならない。これの破綻がTPPが出て来た大きな背景のひとつなのだ。

    いまのグローバル経済の基本的な原則は、各国の関税や非関税障壁を可能な限り低め、世界中のどこでも同じ条件で輸出入と投資ができる自由貿易体制の維持である。各国が自国の利害を最優先する保護貿易を採用していると、グローバル経済の発展はあり得ないので、自由貿易の原則が必要となる。

    この自由貿易の原則を国際的に維持しているのがWTO(世界貿易機構)である。これは、中国などの新興国の台頭が著しいので、これに対応するために、戦後長い間自由貿易の基本的な国際ルールを決めていたGATTを1995年に発展的に解消して設立された機構だ。新興国を包含した自由貿易の秩序を策定することが目的だ。中国は2001年、ロシアは2012年に加盟を果たしている。

    一方、新興国の加盟が増えるにしたがって、WTOは問題を抱えるようになった。新興国は自国の産業を保護するための例外規定を盛り込むことをWTOに強く求めるようになったため、合意ができなくなってきたのだ。

    WTOのルールは、「ラウンド」と呼ばれるテーマを決めた多角的貿易交渉で決定される。加盟国すべての合意が必要なので、ひとつの「ラウンド」は何年も続くことが多い。いまは2001年から始まった「ドーハ・ラウンド」の交渉が続けられている。

    しかし交渉開始から10年経った2011年、WTOは、新興国と先進国の理外の開きがあまりに大きいため、もはや「ドーハ・ラウンド」の妥結は不可能に近いと交渉の決裂を宣言した。

    この交渉決裂の宣言は大変な意味をもつ。これは、WTOは限界に来ており、新興国が急速に台頭する状況では、もはやWTOだけでは自由貿易の国際的なルールを維持できないと言っているに等しい。

    アメリカの経済覇権の前提はドルの基軸通貨制と自由貿易体制

    ところでアメリカの経済覇権の前提は、アメリカが他の国々を市場として直接的に支配することにあるわけではない。そうではなく、アメリカを中心に世界経済がうまく循環するルールを作ることが覇権を維持する方法なのだ。

    それを実現している前提こそ、ドルの基軸通貨制と自由貿易体制である。この2つは、アメリカの経済覇権を支えている車の両輪だ。

    ドル基軸通貨体制でアメリカは国力維持

    第2次大戦後、世界経済をけん引できる国力があった唯一の国はアメリカであった。そのため、ドルが基軸通貨となった。

    ドルが基軸通貨である限り、アメリカは輸入した製品の代金を自国通貨のドルで支払うことができる。

    他方、ドルを受け取った他の国々はこれを自国通貨に転換するわけには行かない。なぜなら、外国為替市場における通貨の価値は、通貨に対する需要と供給の関係で決定されるためだ。ドルを大量に売って自国通貨に転換すると、その国の通貨は高騰してしまい、輸出には不利になる。そのため、どの国も輸出で得たドルはドルのままアメリカに再投資する他はない。

    すると、アメリカには大量のドルが投資として自然に流入する。アメリカの金融機関は、これを世界の他の地域に投資することで、世界の投資循環の中心となる。これで、アメリカを中心にして世界への投資が調整されるシステムが形成される。もちろんこのシステムで、莫大な投資の利益がアメリカにもたらされる。

    また、米政府にとってもこれは重要なシステムだ。アメリカは、これで国力を維持することができる。ドル建てで再投資しなければならない各国にとって、米国債は格好の投資対象だ。米国債の買手はいくらでもいる。米政府は莫大な財政赤字や貿易赤字をさほど気にすることなく、世界覇権の維持に必要な莫大な予算を比較的に容易に調達することができる。

    ドル基軸通貨体制の維持に必要な自由貿易体制

    他方、このようなドル基軸通貨体制は、自由貿易の体制が確保されているからこそ存在できるシステムだ。ドルが基軸通貨となるとは、世界のあらゆる貿易やサービスの支払い手段としてドルが使われるということだ。それは莫大な額だ。そもそも、その需要を満たすに十分な量のドルが存在しなければ、ドルが基軸通貨となることは実質的に不可能である。

    世界が必要とするドルを供給しているシステムこそ、自由貿易の体制である。アメリカは、世界最大の米国市場を世界に開放することで、支払い手段としてのドルを世界にばらまくことができる。これをドル散布という。

    このように、自由貿易体制によって支払手段として十分なドルが世界に供給される。それを前提として、基軸通貨としてのドルが維持されるので、アメリカを中心とした世界的な投資のシステムが形成されるというわけだ。

    これがアメリカの経済覇権の重要な条件だ。ドルの基軸通貨制と自由貿易体制はまさに経済覇権の両輪である。

    WTOの行き詰まりと中国の台頭

    このようなアメリカを中心に循環するシステムに世界を編成するカギとなる機構こそ、自由貿易の新しいルールを決めるWTOなのである。もし「ドーハ・ラウンド」の失敗によってこの機構が行き詰まると、新興国を中心に、アメリカ中心の自由貿易のシステムにはかならずしも包摂されない地域が出現してくる。

    中国の動きを見るとこれははっきりしている。WTOの行き詰まりが明白となるほぼ同じタイミングで、中国は、オセアニア、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパなどの各地域の国々とFTA(自由貿易協定)を締結した。2010年には、中国と東南アジアの11カ国が加盟した「中国ーアセアン自由貿易協定」も締結された。交渉中のものも含めると、いま中国が推進している自由貿易協定には以下のものがある。

    ・アジア太平洋貿易協定
    ・中国と香港の経済・貿易関係緊密化協定
    ・中国とマカオの経済・貿易関係緊密化協定
    ・中国と台湾の海峡両岸経済協力枠組協定
    ・中国と日本、韓国の自由貿易協定
    ・中国とASEANの全面的経済協力枠組協定
    ・中国と湾岸協力理事会の自由貿易協定
    ・中国と南アフリカ関税同盟の自由貿易協定
    ・中国とチリの自由貿易協定
    ・中国とパキスタンの自由貿易協定
    ・中国とニュージーランドの自由貿易協定
    ・中国とオーストラリアの自由貿易協定
    ・中国とアイスランドの自由貿易協定
    ・中国とシンガポールの自由貿易協定
    ・中国とペルーの自由貿易協定
    ・中国とコスタリカの自由貿易協定
    ・中国とノルウェーの自由貿易協定
    ・中国とコロンビアの自由貿易協定
    ・中国とスイスの自由貿易協定


    これらの地域では中国が最大の貿易相手国となるため、条件さえ整えば中国の元が基軸通貨として使える状況にある。もし元が基軸通貨となると、いまのアメリカと同じように、中国を中心として投資が循環するシステムが形成される。

    この中国を中心としたシステムから、アメリカはおそらく意図的に排除されている。アメリカには一切依存しない新たな経済システムの形成へと道を開く結果につながる。

    アメリカにとってこれは脅威である。日本は海洋国家として南シナ海と東シナ海のシーレーンが中国に独占され、中国の内海となることをとても恐れている。シーレーンが中国の完全なコントロール下に入ると、中国のお伺いをたてないと日本は生存できなくなるからだ。尖閣の領有権問題で日本が強い姿勢に出ているのは、これが理由だ。シーレーンが中国の内海化すると、日本の生殺与奪権は中国が握ることになる。

    WTOが行き詰まり、中国の自由貿易協定圏が急速に拡大する現状にオバマ政権が抱いている危機感は、日本が中国に感じている危機感とよく似ている。アメリカ中心の自由貿易圏に、中国が主導する異なった経済圏が突如出現するのである。

    WTOを補完する新しい自由貿易のルール、TPP

    これにオバマ政権はどのように対処しようとしているのであろうか?中国はアメリカにとっても失うことができない経済的なパートナーだ。将来、基軸通貨が元になる可能性のある経済圏を中国が形成し、これがアメリカの脅威となるからと言って、敵対的な関係になることはできない。

    オバマ政権にとって残された道は、行き詰まったWTOを補完するか、これに代ることのできる新しい自由貿易の国際的なルールを多くの国々の参加のもとで立ち上げ、それに中国を引きずり込むことである。

    中国はすでに存在して機能していたWTOに、2001年に加盟した。これで中国は、アメリカ中心の自由貿易体制とドル基軸通貨体制に組み込まれた。もちろんこれで中国の一層の成長が実現したわけだが、アメリカの経済覇権も維持された。

    今度はTPPを立ち上げ、これに中国を引き込み、アメリカ中心の体制に中国を包含してしまうという非常にダイナミックな戦略が、TPPに隠された真の意図である。

    実は本当に怖いのはTPPではなく、日米並行協議

    このように見てくると、TPPにおけるアメリカのターゲットは、最終的に中国を引き込むことなのだ。

    では賛成派が言うように、TPPはアメリカの広大な市場を日本企業に開き、日本経済を成長させる起爆剤になるようなものなのだろうか?実は、TPPだけを見ていては、TPPに隠された本当の危険が見えてこないのだ。

    最近やっと報道されてきたが、安倍政権がTPPに参加表明した後、アメリカのTPP交渉の窓口である通商代表部(USTR)は、日本が「日米並行協議」に応じることをTPP参加の条件としてきた。

    「日米並行協議」とは、TPPと並行して協議しながらも、あくまで日米二国間だけで協議する交渉である。実質的にこれは、日米自由貿易協定(FTA)だ。

    TPPのような多国間協定では、決められたルールはすべての加盟国に適用されるため、複数の国々で連帯し、自国に有利なルールを設定することが可能だ。

    たとえば日本は、米を関税撤廃の例外にしたいが、カナダは乳製品を例外にしたい。ニュージーランドから安い乳製品が大量にカナダに流入すると、カナダの酪農産業には壊滅的な打撃があるからだ。

    日本とカナダは連携し、日本がカナダの乳製品の例外化を支持することと引き換えに、カナダは日本の米の例外化を支持するという戦略が可能になる。

    他方、二国間協議である「日米並行協議」では、このような戦略はまったく不可能だ。

    過去のアメリカは、1988年の「日米構造協議」、1994年からはじまった「年次改革要望書」の送付などで日本政府にあからさまな圧力をかけ、国内の制度をアメリカの都合のよいように変更するように要求してきた歴史がある。日本政府はいつも圧力に屈し、制度をアメリカの要求にしたがい変更してきた。

    TPPの交渉と同時に進められる「日米並行協議」は、過去の交渉と同じような結果になる可能性が大きいのだ。以下は「日米並行協議」の内容だ。これまでの報道内容を分かりやすく整理したブログ、「朱鷺の森日記」から引用させていただいた。

    非関税措置の並行協議

    保険、透明性、貿易円滑化、投資、規格、基準、衛生植物検疫措置など9分野の非関税措置の課題を継続協議。協定や法改正などで具体的成果を出すことを約束。

    【保険】―郵貯

    米保険会社が日本で約8割のシェアを持つがん保険などへのかんぽの参入を制限するよう要求。

    日本では、がん保険の7割を米アメリカンファミリー生命保険(アフラック)、医療保険の3割をアフラックと米メットライフアリコが握る。2社は高齢化が進む日本でこれらの保険を広げようとしている。

    かんぽ生命保険のがん保険、ゆうちょ銀行の住宅ローンなど新規業務を凍結。2015年秋としていた上場時期がずれ込む可能性も。東日本大震災の復興財源の手当てにも影響が出そうだ。

    麻生太郎金融担当相(12日の会見)かんぽ生命のがん保険など新商品の申請を「民間生保との適正な競争条件が確立されるまで申請があっても認可しない。(認可まで)数年かかる」

    民間投資家に株を買ってもらうためには成長戦略を示す必要があるが、郵政グループの各事業は縮小傾向が続いている。例えば、かんぽ生命の保有契約件数は過去10年間でほぼ半分に減った。郵政は新規業務参入で投資家に成長の道筋を示す狙いがあった。

    政府は郵政株の売却収入を4兆円と見込んでいる。財政が厳しいなかで国有財産の売却が進んでおり、郵政株は残された大型資産として注目されていた。仮に上場ができなかった場合、政府は代わりの復興財源を捻出する必要が出てくる。

    (共済についてはどうなのか未確認)

    【食の安全】

    食品添加物や残留農薬の認可範囲を広げるよう要求。日本が認める食品添加物は約800種類。米国は3000種類ある。添加物の規制が緩和されれば米国の輸出増につながる。

    日本側は着色料など添加物が健康に影響を与えないよう厳しい基準を維持する構えだが、「日本の基準を緩やかにするよう求める圧力が強まり、国民の健康が脅かされる恐れがある」(日本消費者連盟の共同代表の山浦康明氏)

    【医療・医薬品】

    交渉では、薬の特許を認める期間や薬の価格決定がテーマになっており、米国も強い関心をもっている。

    日本では国民が保険で診療を受けられる「国民皆保険制度」のもとで、厚労省がかかわって薬の価格や医療費を抑えているが、米国は薬の価格を決める過程の「透明化」を求めている。

    もともと米国は保険が使える診療と、保険が使えない高額な「自由診療」を組み合わせた「混合診療」をもっと認めるよう求めてきた。混合診療が広がれば、国民皆保険制度がこわされるのではないかと心配する意見もある。

    TPP交渉では、投資などの分野で「ISD条項」を導入するかどうかも決着していない。導入されれば、米国の製薬会社が国民皆保険制度で被害を受けたと訴える可能性も指摘されている。

    自動車貿易の並行協議

    自動車貿易TOR(仮訳)

    ・米国は段階的な関税撤廃を目指すものの、時期はTPPで認められる最大限後ろ倒し。

    甘利明TPP担当相「(日本車への関税を続ける期間は)韓米自由貿易協定より長い期間を取ってくれということで、どれだけの期間かは交渉で決まる」。

    TPPのメリットとされていた自動車で日本は韓国よりも劣る条件に。

    (TPP交渉に参加している11カ国に対し、日本企業が年間に払う関税は約4700億円。このうち半分を自動車が占める。 米国には年間約800億円の関税を払っている。)

    ・米国は、事前協議で決着したはずの安全基準を改めて議論することも盛り込み、日本のディーラーが米国車を扱うことも要求。補助金制度なども問題視。

    TPP交渉と並行し、自動車貿易に関し両国で交渉を行うことになった。また国土交通省は同日、輸入車の認証手続きを簡素化できる年間販売台数の上限を1型式当たり2000台から5000台に引き上げることを決めた。これも米国が求めていた規制緩和措置。

    ・米自動車業界の本音は縮小する日本市場の開拓よりは米トラック市場を守ること。米国の関税は乗用車2.5%、トラック25%。

    ・協議が進まなければ、米自動車業界も日本市場の閉鎖性を訴え続けることができ、さらに関税撤廃時期を先送りできる可能性もある。

    以上である。

    この内容を見ると、日本がこれらを全部受け入れた場合、それこそ身ぐるみをはがされることになるだろう。ちなみに以下は、「日米並行協議」を強く推進している「TPPを推進する米企業連合」のリストだ。

    TPPを推進する米企業連合

    保険
    ・アフラック
    製薬
    ・ファイザー
    穀物メジャー
    ・カーギル
    金融
    ・シティバンク
    ・コールドマンサックス
    製造業
    ・ゼネラルエレクトリック
    ・ゼネラルモータース
    ・ゼロックス
    IT産業
    ・IBM
    ・マイクロソフト
    ・オラクル
    エネルギー産業
    ・エクソンモービル
    メディア
    ・ニューズコーポレーション
    ・タイムワーナー
    衣料品
    ・ギャップ
    タバコ
    ・フィリップモリス
    飲料
    ・コカコーラ
    小売
    ・ウォルマート


    ニュージーランドからの警告

    最近日本では、「TPPに反対する国際会議」は開催された。ニュージーランドのジェーン・ケルシー教授は以下のように警告している。ぜひ見てほしい。



    続く

    むちゃくちゃおもしろかった講談

    筆者は月刊ザ・フナイの連載を書いていたが、読者の方に講談師の方がおり、会う機会があった。筆者は講談はこれまで聞く機会がなかったが、実におもしろかった!今後はスピリチュアル系の講談をやるそうである。サイトに音声ファイルがあるので聞いて見たらよいだろう。

    田辺鶴瑛

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