リンゼー・ウィリアムスは外れたのか?大きく変化する状況、アメリカの復権?
今回はまたいつも以上に極端に遅い更新になってしまった。極端に忙しく、メルマガの更新だけで手一杯の状況だった。いつも読んでくださっている読者の方には感謝する。
講演会のご案内
また、講演会を依頼されました。よろしかったらぜひどうぞ!
ヤスのしゃべり場 vol.2
いよいよマヤカレンダーが本格的に終了します!一体なには起こるでしょうか?!
第2回のゲストは、某大手出版社ベテラン編集者の登場です。2007年からはじまった「ヤスの備忘録」から重要なテーマを絞り出し、編集者独特の観点から、眠っているヤスの魅力を引き出していただきます!
日程:12月22日 (土)
会場:お申込の方に直接ご案内いたします(東京都内)
料金:5,000円
予定時間:13:30〜16:40
13:30〜15:15 ヤストーク
12月22日はマヤカレンダーが終了する日本時間です!政治経済、スピリチュアルを含め、とことん話すつもりです。日本は本当の岐路に立っています。多くの日本の指導者は中国を甘く見ています。私の得ている情報では、中国は本気です。ブログなどでは絶対に話せない情報を話すつもりです。
15:30〜16:40 ヤス&川島克之氏 対談&質問タイム
◎川島克之氏とは?
東京大学卒、某大手出版社編集者。
「高島康司氏に早くから注目し、高島氏のマジメな経済予測とトンデモ系予言への関心がどこでつながっているかが、とっても気がかり。
その奥にナニがあるのだろうか、それはもしかして新しい現実を思いのままに生み出してしまうカッキ的試みなのでは、との問いを胸に、
高島氏に迫りたいと思っている。」
17:00〜懇親会
申込希望の方は,必要事項をご記入いただき、下記までメールにてお願い致します。
yasunoshaberiba@gmail.com
おってご案内をお送り致します。
【氏名・ふりがな】
【〒・住所】
【連絡先(携帯優先)】
【参加人数】
【懇親会参加 有無 人数】
※懇親会料金は別途お知らせします(5,000円前後)
主催:しゃべり場事務局 島田
お知らせ
5月21日、ウエブボットの報告書の最新版が発表になりました。いま詳細な要約の作業を続けていますが、これまでのように「予言解説書」のような体裁で出すことはしないことにいたしました。詳細な要約はすべてメルマガに発表いたしますので、最新報告書の内容を知りたい方は、メルマガを購読なさってください。
記事全文の音声ファイル
記事全文を音声ファイルにしました。よろしかったらどうぞ。7日で削除されますので、お早めにどうぞ。
音声ファイル
お知らせ
講談社のサイト、プロジェクト・アマテラスに作品の投稿を求められました。以下のサイトで読むことができます。「試論、そもそも予言とはなにか?1」です。画面右側の「このプロジェクトの投稿」から見ることができます。よろしかったらどうぞ!
未来はどうなるのか
http://p-amateras.com/project/61
新しい本の紹介
「神霊の世界に覚醒して」サンドラ・インガーマン、ハンク・ウエスルマン著、高島康司、豊田泰士訳

このブログでも何度も紹介したことのあるシャーマンで人類学者、ハンク・ウエスルマン博士の名著、「Awakening to the Spirit World」の翻訳が完成した。2010年にアマゾンで1位になった本である。
本には、シャーマンの世界をトランス状態で経験しやすくさせるCDが付いている。本は、CDの使い方と、シャーマンの世界で体験する内容の解説書だ。筆者もCDを聞いて見たが、聞ききながら寝ると、たしかに多くの夢を見て、会ったことのない多くの人物が現れる。興味深い体験だった。
よろしかったらぜひどうぞ!
新しい本の紹介
また、ハンク・ウエスルマンの新書の翻訳が出ます。人類の起源など、ハワイの精神的な指導者から非常に興味深いスピリチュアルな事実が伝えられます。実に興味深い本です。ぜひどうぞ”
ハワイの長老が語り伝える先住民族の聖なる知恵

今度、ウィリアム・スティックエバース氏と対談本を出しました。かなり面白い本だと思います。よろしかったらどうぞ!
宇宙の設定を読み解く[BlackBox]超予測

また新しい本が出ます。今度は様々なサイクルに注目し、コルマンインデックス以後どのようなことが起こるのか解説した本です。ブログやメルマガの内容を大幅に加筆修正しました。
コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル

よろしかったらぜひどうぞ!
有料メルマガのご紹介
過去のメルマガの記事で詳しく解説したように、日中の武力衝突の予言はかなり多い。今回はそのようなことが現実的に起こる可能性があるのかどうか、そして起こるとしたらどのような条件下でそれが起こるのか具体的に検討して見た。
このような検討を行うためには、できるだけ正確に現実を把握することが重要になる。しかし一方、中国を把握する上で日本が陥り安い思考の罠が存在しており、まずそれから自由にならない限り、現実を客観的に把握することは難しい。
その思考の罠とは、中国を一方的に日本の脅威として認識することである。
たしかに、中国の防衛費は毎年急速に増加している。公式の数値から見ても、24年前の1988年の30倍、6年前の2006年と比べても2倍の増加である。中国は増大する軍事力を背景に、東シナ海や南シナ海で領土紛争を引き起こし、権益の拡大をねらっている。
これは、明らかに日本のような周辺諸国にとっては脅威である。この脅威に対処するためには、日米同盟を強化し、米軍に軍事力を利用して日本の安全を確保しなければならないと考えるのは自然だ。「戦後史の正体」のような名著がヒットし、日本がいかにアメリカの従属下にあるのかが具体的に明らかになったが、中国の脅威が現実的に存在する以上、アメリカに守ってもらわなければならないので、対米従属は受け入れざるを得ないという論理が日本では社会通念として広く共有されている。
これはもっともな結論に見える。しかし、この論理はあくまで日本だけの視点から導き出された結論だ。相手の中国はまったく別の視点から現実を見ており、それを考慮に入れないと現実はなかなか見えてこない。
中国の視点を考慮に入れるとは、中国にとって逆に日本が脅威であるかどうか問うことである。
答えは明らかにイエスだ。日本人は「日本は小さな防衛力しかもたない平和国家」だというイメージで自国をとらえているようだが、そのイメージは現実を反映したものであるとは言い難い。日本はアメリカ第7艦隊の母港でもあり、総勢5万人の兵力を擁している。これは韓国の2倍の兵力だ。米軍の東アジア最大の軍事拠点であるというのが日本の現実だ。
明らかにこれは、中国にとって最大の脅威である。他方中国は、1842年のアヘン戦争以来、本格的に国際社会に復帰する1970年代まで、侵略、内戦、内乱、飢餓を経験してきたトラウマの強い国である。領土を拡大し、覇権を奪取する侵略的な攻撃性はないものの、気を許したら外国から侵略されてしまうのではないかというトラウマを背景にした防衛的な攻撃性の強い国である。
したがって、日本が中国の脅威に対処するために日米の軍事同盟を強化することが、逆に中国の過剰な防衛的攻撃性を強く刺激し、日中の武力衝突の可能性を増大させることにもなりかねない。
武力衝突が起こるとしたら、日中双方のこのような脅威論の行き違いが背景になる可能性がある。次回のメルマガでは、どのような状況で武力衝突が発生するのか、具体的にシミュレートしてみる。
最後に、9月30日に配信されたウエブボット最新報告書の要約の第3回目を掲載した。
今回のポイントは「沿岸部の水位の上昇」というキーワードである。第170回配信のメルマガでも紹介したように、リモートビューイングを科学的に研究している応用数学者のコートニー・ブラウン博士は、2013年6月1日の光景を遠隔透視している。世界各地を洪水が襲っていた。「沿岸部の水位の上昇」というキーワードも同じような洪水が起こることを暗示していた。
前回はこのような内容を解説した。
今回の記事
シェールオイルとシェールガスの開発によるエネルギー革命の進行でこれまでの世界情勢が根本的に変化しつつある。どのように変化するのか解説する。
次に、メルマガで紹介した中国の変化しつつある状況を解説する。
リンゼー・ウィリアムスの情報は的中するのか?
数年前からリンゼー・ウィリアムスは、軍産エネルギー複合体のグローバルエリートからのリーク情報として、これから次のようなことが起こるとしていた。
1)デリバティブを崩壊させるなどして、2012年の末までにドルを無価値化させる。
2)中東全域、ならびにサウジアラビアなどを混乱させてイスラム原理主義政権を樹立し、、原油価格を1バーレル、200ドル近辺まで上昇させる。
3)大幅に減価した米国内の主要な資産をグローバルエリートが買い占める。
4)その後、米国内の巨大油田を開発し、米経済の再生を図る。
これがグローバルエリートの計画だという。リンゼー・ウィリアムスはこの情報を、2006年くらいから言い続けていた。
たしかに、2006年から比べるとドル安は進んでおり、またアラブの春では、エジプトのムバラク政権が打倒され、イスラム原理主義のムスリム同胞団によるモルシー政権が誕生した。
原油価格の急騰はないものの、中東の混乱が拡大したということでは、2)はかなりの程度的中しているように見える。
財政の崖とリンゼー・ウィリアムスの情報
すると、気になってくるのは「2012年末までのドルの無価値化」を中心とした他の計画である。
このリーク情報が単純な陰謀論ではないことをいわば証明しているのは、いま大きな話題になっているアメリカの「財政の崖」である。
周知のように「財政の崖」とは、1)ブッシュ政権による富裕層への減税処置の終了、2)予算自動削減処置による緊縮財政の実施の2つである。これを回避する法案が議会で可決されない限り、これらは2013年初頭には実施される。
すると米経済は、ー3%からー4%という大幅なマイナス成長になると見られている。いま「財政の崖」は避けられず、米経済の停滞は回避できないとも見られており、すでにあらゆる分野で投資が先行的に手控えられている。
いまオバマ政権と野党の共和党との間では、回避に向けた交渉が続けられているが、かなり難航することも予想されている。
もし妥協できず、「財政の崖」が本当に発動した場合、リンゼー・ウィリアムスの「2012年末までのドルの無価値化」させるという計画も、あながち現実離れした話ではなくなる。
もし同じタイミングで、デリバティブを含む金融市場になんらかの混乱が起これば、リンゼー・ウィリアムスのリーク情報の現実性は高まるだろう。
「財政の崖」が大きな焦点になっているいま、リンゼー・ウィリアムスの言う方向に動いているようにも見える。
「財政の崖」は回避できる
しかし、いろいろ情報を収集してみると、「財政の崖」の発動による米経済の失速を懸念して、以前にくらべると共和党も妥協に向けてはるかに積極的に動いている。
もちろんこれから、民主、共和両党の対立で議会が混乱するだろうが、最終的には「財政の崖」は回避できる可能性が高いように思う。あまり大きな問題にならないかもしれない。
リンゼー・ウィリアムスの「2012年末までのドルの無価値化」とは逆の方向に動き、逆にドル高になる可能性も十分に出てきた。
シェールオイルとシェールガスによる米経済のブーム
それというのも、第2期目のオバマ政権にはシェールオイルとシェールガスによるエネルギー革命が起こることが確実であり、これを米経済の活性化の目玉にすることがほぼ決定しているからである。以下がシェールオイルとシェールガスの油田だが、ほぼ全米を網羅する規模である。

シェールガスは2008年頃から大増産の体制に入っており、シェールオイルがこれに続いている。
以下のIEA(世界エネルギー機関)の長期予測のビデオにあるように、これからアメリカは2015年にはロシアを追い越し、世界最大の天然ガス供給国となり、2017年には世界最大の産油国となる。そして2030年にはアメリカは原油を輸出し、2035年にはエネルギーの完全自給を達成する見込みだ。
第2期目のオバマ政権は、このようなエネルギーシフトを経済政策の主軸に据えることで、米経済の回復と好景気を誘導することを目標にする可能性が非常に高い。
シェールオイルとシェールガスがもたらす好景気がどのくらいのものになるかは、いま開発が進んでいるノースダコタのバッケン油田の現状を見るとイメージがわく。英語のビデオしかないので申し訳ないが、失業率は1%、一般の労働者の年収が平均で約700万円だ。全米から失業者が押し寄せたため、住宅が不足し、住宅建設ブームが起きている。
全米のシェールオイルとシェールガスの油田開発が進むと、こうしたブームは全米に及ぶ可能性も指摘されている。
好景気のこのような可能性が出てきたので、共和党も民主党も「財政の崖」のような法的な手続きに無駄な時間をさくのではなく、エネルギー革命の歴史的なブームに乗り、好景気を確実なものにしたほうがよいという雰囲気が強くなっているのだ。
今回、オバマの勝利の背景のひとつになったのは、共和党の主流派であるティーパーティー派が、一切の妥協を拒否してオバマの景気刺激策に反対したため、アメリカの景気を押し下げたと見られたからだと言われている。もし共和党が、今回も強硬に反対して「財政の崖」を発動させてしまうと、共和党はさらに支持を失うことにもなりかねない。
「財政の崖」を発動させて景気回復の足を引っ張るるよりも、目の前にある米経済のブームのチャンスに乗り、経済の活性化に向けて努力をしたほうが、支持を回復するにはよいという雰囲気だ。
したがって、ある程度の混乱は予想されるものの、「財政の崖」の危機はなんなく乗り越えられる可能性のほうがはるかに高くなっている。
「2012年末までのドルの無価値化」はない
このように見ると、リンゼー・ウィリアムスの「2012年末までのドルの無価値化」はまずないことになる。軍産エネルギー複合体のグローバルエリートの計画は頓挫しそうだ。
これは、軍産エネルギー複合体の力が衰えていることの証左でもある。
意外な事実
しかし、リンゼー・ウィリアムスのリークしていた情報を再度見ると興味深いことに気づく。
シェールオイルとシェールガスの油田開発が本格的に始まる前の2006年ころから、リンゼー・ウィリアムスは以下のような情報をリークしていた。
米国内の埋蔵原油について
原油価格が200ドルになった時点で、石油資本はかねてからの計画を実行する。それは、私が1976年に教えられたように、ガルアイランドをはじめとした米国内の油田の掘削を開始することである。原油の掘削が行われる油田は以下である。
ウィリストン盆地
別名、バッケン油田の名で知られている、ノースダコタ州からサウスダコタ州、そしてモンタナ州にかけての地域にある油田。推定埋蔵量は5兆30億バーレルに上る。掘削コストは1バーレル、16ドル程度。高品質の原油。ここの油田だけでアメリカの全消費量を2041年まで賄うことができる。
スタンズベリー油田
ロッキー山脈の地下1000フィートにある油田で、高品質の原油が採掘可能。推定埋蔵量は2兆バーレル。これはサウジアラビアの埋蔵量の8倍。
※注意
リンゼー・ウィリアムスは「スタンズベリー油田」と言っていたが、これは間違いのようだ。「スタンズベリー」は「スタンズベリーレポート」という原油に関するオンラインレポートの名前だ。
「スタンズベリー油田」が実際どの油田のことなのかは不明だが、ロッキー山脈にはバッケン油田のほか多くの油田が集中しており、だいたい深度1000フィートにある。これらの油田のひとつのことだろう。
ガルアイランド
アラスカ州北部にある小島。
北極圏野生生物保護区
アラスカ州北部にあり、米国政府が野生動物の保護区に指定しているのが北極圏野生生物保護区である。現在は掘削は不可能だが、原油の供給が逼迫すると保護指定が解除され、掘削が可能になるはずだ。
原油価格が200ドルになると、国内のこうした油田から一斉に供給が開始されるので、アメリカが原油の供給に困ることはない。だが、1バーレル、200ドルなので、国内の原油価格も相当に高い状態が長く続く。
以上である。
改めてこの情報を見ると、ウィリストン盆地のバッケン油田はシェールオイルの油田だ。リンゼー・ウィリアムスが誤って「スタンズベリー油田」と呼んでいるロッキー山脈下の油田、さらにガルアイランドや北極圏野生生物保護区もすべてシェールオイルの油田だ。
ということは、グローバルエリートは、シェールオイルの開発を本格的に行うと言っていたことになる。
もちろんシェールオイルは、いま開発が進んでいるので、ドルを無価値化させてから開発を行うとしたタイミングは決定的に外れたことになる。
これはなにを意味するのだろうか?あまりに長くなるので、次回に詳しく書くことにする。
中国の共産党体制は限界なのか?
では、次のテーマに行く。メルマガの第199回に書いた記事の一部を掲載する。中国の変化に関するものなのでブログでシェアすることにした。
中国では新しい習近平体制がスタートした。汚職や既得権益など共産党内部にはびこる矛盾を率直に認めて抜本的な改革を約束すると同時に、2020年までに中国国民の所得を倍増することを約束した。
中国は低迷する世界経済のけん引力であるだけに、習近平の新体制がこの目標を実現できるかどうか注目されている。
しかし、この目標の実現は想像以上に難しく、改革が軌道に乗る前に社会が不安定になり、現在の体制が危機に陥るというハードランディングのシナリオになる可能性も指摘されている。
中国を代表する経済学者の警告
もちろん、共産党一党独裁は限界に達しているとの見方と分析は、アメリカをはじめ多くのシンクタンクから出されている。
たとえば、いまのオバマ政権の外交政策に大きな影響力がある民主党系のシンクタンク、「センター・フォー・アメリカンプログレス」も、「共産党内部の汚職は構造的な問題であり、汚職を引き起こしている当事者の共産党がこれを自ら解決できるかどうかは疑問だ」とし、習近平政権が将来ハードランディングに向かう可能性もあるとしている。このシンクタンクの分析は、オバマ政権の中国に対する見方を反映していると見られている。
しかし、現在の共産党体制はすでに限界に近づいており、よほどの根本的な改革を断行しないと、最悪のハードランディングのシナリオになると現代中国を代表する経済学者も指摘するようになった。
中国政府の経済コンサルティング機関である「中国国務院発展研究センター」に所属するウー・ジンラン教授は、中国の独立系経済誌「財経」のインタビューに答え、次のような最大級の警告を行った。
「汚職のような、現代の中国社会に蔓延している社会悪の原因は経済を政府が管理しているから起こっていることだ。コネと縁故主義が原因だ。自由な市場経済を導入するならば、このような矛盾の多くは解消される。
しかし、改革に抵抗する人々は、逆に汚職と社会悪の原因を市場経済の導入が生んだ格差が原因だとして改革派を攻撃し、既得権益を握る自分たちが生き残ろうとしている。
多くの国民はこのような説明を信じてしまい、彼らの望む方向に誘導されている。しかし、このまま改革が進まないと、中国は限界を向かえ、大変な危機が発生するはずだ」
このように、中国政府を代表する経済学者も大変な危機感を持つようになっている。
実際は何が起こっているのか?
上の解説だけでは少し分かりにくいかもしれない。共産党幹部の汚職や既得権益に激しく抗議する運動やデモが起こっていることは日本でもよく知られている。
だが、これがどれほど深刻で何が問題なのかと改めて問われると、はっきりしたイメージがわかない場合が多い。
経済成長の一般的なパターンと中国の問題
第194回のメルマガでは中国の抱える問題を、経済成長の一般的なパターンから解説した。分かりやすくするために、一部を再度掲載する。
大抵、新興国の経済成長をけん引するのは、国内の安い労働力を使った輸出主導の製造業である。
こうした製造業に労働力を供給するのは、周辺の農村地域である。製造業の成長が続くと、都市には農村地域から職を求めて多くの人口がなだれ込み、都市のスラムが形成される。スラムでは、犯罪、伝染病、不衛生な生活環境などが大きな社会問題となる。
しかし、経済成長がさらに続くと、都市のスラムの住民は企業の正社員や熟練工として吸収され、所得が安定し生活水準も上昇する。第2世代になると大学教育の修了者が増加し、企業の管理職としてキャリアを築くものが多くなる。
この結果、分厚い中間層と消費社会が形成され、安い労働力に依存した輸出主導の成長モデルから、中間層による内需に依存した持続可能な成長モデルへと転換する。
分厚い中間層は、政治的には市民社会の形成を意味する。したがって80年代の韓国や台湾のように、経済成長が軍事独裁政権の手で行われている地域では、市民社会の形成が基盤となり、民主化要求運動が起こってくる。民主化要求運動は、市民の広範な支持を得るため、軍事独裁政権は打倒され、選挙で選ばれた民主主義的な政権に移行する。
これが、経済成長がもたらす社会変化の一般的なパターンだ。
形成が阻止された市民社会と農民工
だが中国は、こうした一般的なパターンにははまらないかなり特殊なケースである。
それというのも、中国には農民戸籍と非農民戸籍が2つの戸籍が存在しているからだ。都市に労働力として流入した人々は、都市では行政や社会保障、そして医療のサービスには制限を受けるため、定住しにくい仕組みになっている。最終的には、出身の農村に帰ることが期待されるいわば出稼ぎ労働者でしかない。こうした人々は農民工と呼ばれ、2億人ほどいるとされる。
共産党政権は、このような戸籍システムを維持することで、1)都市に膨大な農村人口が流入して社会が不安化することを回避し、2)分厚い都市中間層と市民社会の形成を抑制し、民主化要求運動の基盤ができにくい状態にすることで、共産党の一党独裁体制の温存を目標にした。
この結果、中国では分厚い中間層を基盤とした民主化要求運動ではなく、中間層から排除された農民工を中心とした、貧しくても平等であった毛沢東時代を理想化する運動が主流である。
分厚い中間層の形成は避けられない
10月31日の記事ではこのように解説した。
要するに、普通の経済成長と社会変化のパターンでは、安い労働力を利用した輸出依存の成長から、国内の分厚い中間層に支えられた内需依存の安定成長へと移行するが、中国では、中間層を基盤にした民主化要求運動を防止するため、農民工を使い、中間層と市民社会の形成を抑制してきた。したがって、現在は農民工を主体とした平等社会を目指す政治運動が中心である。このようなことである。
しかし、いま中国では、共産党が警戒している中間層の形成は避けられない段階にある。
上に解説したように、これまで中国は安い労働力を使った輸出依存の経済で高い成長率を達成した。そのため、中国の海外市場への依存率は非常に高くなっている。いわばこれは、安い製品を大量に海外に輸出する大量生産の体制である。
しかしながら、周知のように、中国の第一の貿易相手であるEUの経済は、財政危機と信用不安で急速に失速し、このあおりで世界経済全体も不況に入りつつある。これに伴い、輸出依存型の中国経済もゆるやかだが減速している。海外への輸出にはこれまでのように依存できない状況だ。
したがって、中国がこれから先も経済成長を続けるためには、国内の中間層を基盤とした内需依存の経済成長以外に道は残されていない。輸出志向から内需依存に転換できるかどうかが、中国にとって最大の焦点になる。
もちろん、分厚い中間層の存在は民主化要求運動を結果的に激化させる。しかし、早いうちに内需依存の経済成長へと移行しないと、経済停滞から社会はもっと不安定になり、農民工を主体とした激しい抗議運動で、共産党政権はもっと早い次期に存亡の危機に立たされることも十分にあり得る。
大量生産から多品種少量生産への移行
では、内需依存型経済とはどのような経済なのだろうか?一言で言うとそれは、大量生産型から多品種少量生産型経済への移行である。
安い労働力を使い、安い製品を大量に海外に輸出する生産体制は、大量生産の体制である。中国では海外の企業が中国の安い労働力を利用して、世界に向けてあらゆる製品を安く大量に生産していた。
しかし、国内の中間層をターゲットにした内需依存型の経済は、これとは異なった生産体制を要求する。それぞれの地域市場の違いや、顧客の好みに細かく対応した製品の開発がとても重要になる。大量生産ではなく、顧客のニーズに敏感に反応した多品種少量生産の体制がとても重要になる。
日本では1970年代の後半から転換
大量生産から多品種少量生産への転換は、経済成長の一般的なパターンなので、もちろん日本でも過去に起こった。70年代の後半から80年代はじめの時期である。オイルショックが終わり、バブルの数年前までの期間だ。
40代以降の読者の方であれば覚えていると思うが、80年代の始めには、これまで一種類しかなかったビールや清涼飲料水の品種がやたらと増えた時期だ。同じ製品なのに、多様なモデルと品種が爆発的に増える現象は、耐久消費材、化粧品、衣料品などあらゆる分野で起こっていた。
すると消費者は、TPOに合わせて多様な製品を使い分け、そうすることで自分の好みとアイデンティティーを表現することができた。いまでは当たり前となっているが、この当時ヒットした田中康夫の「なんとなくクリスタル」という小説は、多様な品種の製品を使い分けて自己を演出する方法のバイブルとなった。
いま中国では、このような転換が要求されているということなのだ。
市場経済と民間企業でないと難しい
輸出志向の大量生産から内需依存の多品種少量生産への転換は、日本のみならずどの国も経験しており、転換が完了するまで一時的に経済が停滞することがある。1997年のアジア経済危機が襲ったころの韓国、マレーシア、台湾などの国々がそのような転換に直面し、一時的な停滞を余儀無くされた。
しかし、日本をはじめどの国も転換は比較的にスムーズに進み、大きな問題を引き起こさなかった。
それというのも、どの国も資本主義経済であり、転換を担っていたのは民間企業だったからだ。経済の主体が民間企業である場合、中間層が増大して国内市場が拡大すると、これまでの輸出志向の大量生産から、市場のニーズに細かく対応した製品の開発と販売へと移行する。こちらのほうが利益率が高いならば、この以降はスムーズに進む。
複数の企業がいっせいにこのような転換を行うので、市場では競争が激化する。すると、より優秀で多様な製品が安く市場に出回るようになる。これでさらに国内市場は拡大するので、さらに多くの企業が市場に参入し、雇用はもっと伸びるという循環だ。
経済の崩壊を防いでいる内需
もちろん、日本が内需依存に転換したのは30年以上前である。内需依存のモデルだけでは、いまの日本の成長は限界を向かえている。むしろ、「失われた20年」という言葉に象徴されるように、労働力の安い国々に主力産業であった耐久消費材産業の生産拠点が移動してしまい、長期の停滞に苦しんでいる。
しかし、相当に困難な状況で、デフレの進行が止まらないにもかかわらず、アメリカやヨーロッパに比べると、社会的な格差は比較的に小さく、国民の生活水準も極端には低下していない。失業率も4%台とかなり低い。
このような状況に日本がいられるのは、それなりに豊かな内需に日本が支えられているからである。
中国経済を支えているのは国営企業
では中国は、このような豊かな中間層に支えられた内需依存型の発展に転換できるのだろうか?
実はいま、これから大変な困難に直面するのではないかと見られているのだ。
これまで見たように、内需依存型の多品種少量生産への転換が成功するためには、消費者のニーズを的確に反映する発達した市場経済と、このニーズにいち早く対応できる民間企業が経済を全面的に担う必要がある。
一方、現在の中国では、トップ500企業のうち、実に70%が国営企業である。これらの国営企業の多くは、共産党中央のみならず、地方の共産党組織と癒着した関係にある。農民から土地を取り上げて開発しているのも、国営企業であることが多い。
こうした国営企業がもたらす巨大な富こそ、いまの中国共産党の権力を支える基盤である。
先のウー・ジンラン教授は、「汚職のような、現代の中国社会に蔓延している社会悪の原因は経済を政府が管理しているから起こっていることだ。コネと縁故主義が原因だ。自由な市場経済を導入するならば、このような矛盾の多くは解消される」と言っているが、これはこのことを意味している。
国営企業では多品種少量生産は無理?
旧ソビエトではやはり分厚い中間層が存在していた。しかし、医療や教育、そして食料や住宅にはほとんど金はかからなかったものの、産業は国営企業が担っていたため、市場には1930年代と変わらない製品があふれ、消費者としての中間層のニーズはまったく無視されていた。
言論の自由を求める民主化要求運動とともに、国民のこれへの不満がソビエト崩壊の背景になったと考えられている。
もちろん、グローバルな市場に安い製品を大量に供給する経験を持つ中国の国営企業が、もっぱら国内だけに製品を供給していたソビエトの国営企業とを同じようには扱えない。別な存在である。
しかし、共産党と癒着し、共産党が既得権益を維持する手段となっている国営企業が、中間層のニーズに的確に反応し、激しい市場の競争のなかで、ニーズにあった製品を開発し生産できるかと言えばそうではないだろう。
国営企業は、消費者のニーズではなく、共産党の意向で動くはずである。そのような企業が、消費者のニーズに最大限敏感になることが要求される多品種少量生産体制を担えるのかどうかは疑問である。
共産党は自らの基盤を切り崩せるのか?
このように見ると、習近平政権の困難がよく見えてくる。つまり、いま中国は、世界経済の低迷により、輸出主導の大量生産型の経済から、中間層を主軸にした内需主導の多品少量生産体制へと移行を迫られているが、これを実現するためには、経済の主軸を国営企業から民間企業に全面的に移して行かねばならない。
国営企業は共産党の富の源泉なので、民間企業への移行は、共産党が自分の権力の基盤を自らの手で切り崩すことを意味する。
言って見ればこれは、生き残るために自己の存在を否定するということだ。はたしてこのようなことを習近平政権はできるのだろうか?
転換が失敗したらどうなるのか?
もちろん、転換に成功するのなら中国は内需主導の新しい成長軌道に乗り、共産党政権であるかどうかにかかわらず、政治的な民主化もかなり進み、それこそ新しい中国が現れることだろう。そうした中国は世界経済のけん引力であり続けるはずだ。
だが失敗するとどうなるのだろうか?最近発表されたオバマ政権に大きな影響力があるシンクタンク、「センター・フォー・アメリカンプログレス」の中国レポートはおおよそ以下のようなことを述べている。
「もし転換に失敗したら、農民工や中間層の共産党の既得権独占に反対する大規模な運動が起こるだろう。既得権を維持したい保守派は、国民の不満が共産党に向かうのをかわすために、国民の不満を転換する相手を外に求める。それは、アメリカや日本になるだろう」
断層の真上にある尖閣問題
このような見方は日本でも比較的に一般的だが、中国の現状を詳しく見ると、尖閣問題が中国の国内情勢といかに深く連動しているかがよく分かるはずだ。その意味では、尖閣諸島はまさに活断層の上にあると言える。
しかし、中国の国内情勢に大きな変化がない限り、尖閣で人民解放軍が積極的に動くというようなことはないだろう。
米国防省が発表した「中国の軍事力」の2012年度版は以下のように中国の軍事力を評価している。
「中国の指導者らは、中国政府が戦略的余地をもたらすよう経済成長と発展に焦点を絞り、積極的な対外環境構築の推進を第一優先として位置付けてきた。同時に中国の指導者らは、自国周辺の平和と安定の維持を求めており、市場、資本、資源へのアクセスを容易にすべく外交的な影響を拡大し、米国及びその他の国々との直接的な対決を避けてきたのである。この戦略が、経済及び外交の権益の新規開拓とその増大に伴い、世界中に中国の存在感を増大させたのである」
つまり中国は、「自国周辺の平和と安定の維持」を優先しており、他の国々との直接対決は望んでいないということだ。
もし中国の国内情勢が安定し、さらに経済モデルの転換に成功したならば、この報告書のように、尖閣の問題でも中国がいきなり軍事行動に出るというような可能性は少ないかもしれない。
でも、はたしてどうなのだろうか?
新しい本の紹介
また新しい本が2冊出ました。表紙はセンセーショナルですが、中身はけっこうまじめです。これまでのメルマガや雑誌の記事の内容に一部加筆し、修正した内容です。いま日本は大きな転換点になっています。世界の現状を踏まえ、現在の日本の立ち位置を確認するにはよい本ではないかと思っています。よろしかったぜひどうぞ!


むちゃくちゃおもしろかった講談
筆者は月刊ザ・フナイの連載を書いていたが、読者の方に講談師の方がおり、会う機会があった。筆者は講談はこれまで聞く機会がなかったが、実におもしろかった!今後はスピリチュアル系の講談をやるそうである。サイトに音声ファイルがあるので聞いて見たらよいだろう。
田辺鶴瑛
筆者のいとこのブログ
筆者にいとこがスピリチュアル系のカウンセラーになっていたのを最近知ることとなった。以下にリンクする。よろしかったらどうぞ。
ねもとまどかの「宇宙のゆりかご」
本の出版のお知らせ
今度、また講談社から英語の本を出した。筆者も強く感じているが、やはり英語は仕事では必須となりつつある。しかし、実際に英語を使う相手は欧米人とは限らない。中国や韓国なのどのアジア出身の人々も多い。そのような状況のなか、この本では普遍的なコミュニケーションの手段としてのグロービッシュに注目し、これをマスターする方法を解説した。英語に関心がある方にはぜひお勧めしたい!
日本人が「英語ペラペラ」を本当に実現できる本 (講談社+α文庫)

また本が出ます。前著の続編にあたる本です。今度は今のシステムのつっこんだ解説と将来の予測です。よろしかったらどうぞ。
「支配ー被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる コルマンインデックス未来予測[2020年までの歩み] (ヒカルランド)

また本を出版しました。今度は徳間書店からです。今回は、このブログの内容を大幅に加筆修正し、未来予測を行った本です。よろしければぜひどうぞ!
未来予測コルマンインデックスで見えた 日本と経済はこうなる(徳間書店)

今回、講談社から英語本を出版しました。通勤途中に電車の中で軽く読める本です。ちょっと英語に興味がある人はぜひどうぞ!
通じる英語 笑われる英語

「いったい世の中どうなっているんだ!こんな時はマルクスに聞け」(道出版)
体裁としては「資本論」の解説書のような本だが、マルクス礼讚の本ではない。われわれはこれからなんとしてでもサバイバルして行かねばならない。そのための状況認識のための書として有効だと思う。よろしかったらぜひどうぞ!

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