リンゼー・ウィリアムスは外れたのか?大きく変化する状況、アメリカの復権?
今回はまたいつも以上に極端に遅い更新になってしまった。極端に忙しく、メルマガの更新だけで手一杯の状況だった。いつも読んでくださっている読者の方には感謝する。
講演会のご案内
また、講演会を依頼されました。よろしかったらぜひどうぞ!
ヤスのしゃべり場 vol.2
いよいよマヤカレンダーが本格的に終了します!一体なには起こるでしょうか?!
第2回のゲストは、某大手出版社ベテラン編集者の登場です。2007年からはじまった「ヤスの備忘録」から重要なテーマを絞り出し、編集者独特の観点から、眠っているヤスの魅力を引き出していただきます!
日程:12月22日 (土)
会場:お申込の方に直接ご案内いたします(東京都内)
料金:5,000円
予定時間:13:30〜16:40
13:30〜15:15 ヤストーク
12月22日はマヤカレンダーが終了する日本時間です!政治経済、スピリチュアルを含め、とことん話すつもりです。日本は本当の岐路に立っています。多くの日本の指導者は中国を甘く見ています。私の得ている情報では、中国は本気です。ブログなどでは絶対に話せない情報を話すつもりです。
15:30〜16:40 ヤス&川島克之氏 対談&質問タイム
◎川島克之氏とは?
東京大学卒、某大手出版社編集者。
「高島康司氏に早くから注目し、高島氏のマジメな経済予測とトンデモ系予言への関心がどこでつながっているかが、とっても気がかり。
その奥にナニがあるのだろうか、それはもしかして新しい現実を思いのままに生み出してしまうカッキ的試みなのでは、との問いを胸に、
高島氏に迫りたいと思っている。」
17:00〜懇親会
申込希望の方は,必要事項をご記入いただき、下記までメールにてお願い致します。
yasunoshaberiba@gmail.com
おってご案内をお送り致します。
【氏名・ふりがな】
【〒・住所】
【連絡先(携帯優先)】
【参加人数】
【懇親会参加 有無 人数】
※懇親会料金は別途お知らせします(5,000円前後)
主催:しゃべり場事務局 島田
お知らせ
5月21日、ウエブボットの報告書の最新版が発表になりました。いま詳細な要約の作業を続けていますが、これまでのように「予言解説書」のような体裁で出すことはしないことにいたしました。詳細な要約はすべてメルマガに発表いたしますので、最新報告書の内容を知りたい方は、メルマガを購読なさってください。
記事全文の音声ファイル
記事全文を音声ファイルにしました。よろしかったらどうぞ。7日で削除されますので、お早めにどうぞ。
音声ファイル
お知らせ
講談社のサイト、プロジェクト・アマテラスに作品の投稿を求められました。以下のサイトで読むことができます。「試論、そもそも予言とはなにか?1」です。画面右側の「このプロジェクトの投稿」から見ることができます。よろしかったらどうぞ!
未来はどうなるのか
http://p-amateras.com/project/61
新しい本の紹介
「神霊の世界に覚醒して」サンドラ・インガーマン、ハンク・ウエスルマン著、高島康司、豊田泰士訳

このブログでも何度も紹介したことのあるシャーマンで人類学者、ハンク・ウエスルマン博士の名著、「Awakening to the Spirit World」の翻訳が完成した。2010年にアマゾンで1位になった本である。
本には、シャーマンの世界をトランス状態で経験しやすくさせるCDが付いている。本は、CDの使い方と、シャーマンの世界で体験する内容の解説書だ。筆者もCDを聞いて見たが、聞ききながら寝ると、たしかに多くの夢を見て、会ったことのない多くの人物が現れる。興味深い体験だった。
よろしかったらぜひどうぞ!
新しい本の紹介
また、ハンク・ウエスルマンの新書の翻訳が出ます。人類の起源など、ハワイの精神的な指導者から非常に興味深いスピリチュアルな事実が伝えられます。実に興味深い本です。ぜひどうぞ”
ハワイの長老が語り伝える先住民族の聖なる知恵

今度、ウィリアム・スティックエバース氏と対談本を出しました。かなり面白い本だと思います。よろしかったらどうぞ!
宇宙の設定を読み解く[BlackBox]超予測

また新しい本が出ます。今度は様々なサイクルに注目し、コルマンインデックス以後どのようなことが起こるのか解説した本です。ブログやメルマガの内容を大幅に加筆修正しました。
コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル

よろしかったらぜひどうぞ!
有料メルマガのご紹介
過去のメルマガの記事で詳しく解説したように、日中の武力衝突の予言はかなり多い。今回はそのようなことが現実的に起こる可能性があるのかどうか、そして起こるとしたらどのような条件下でそれが起こるのか具体的に検討して見た。
このような検討を行うためには、できるだけ正確に現実を把握することが重要になる。しかし一方、中国を把握する上で日本が陥り安い思考の罠が存在しており、まずそれから自由にならない限り、現実を客観的に把握することは難しい。
その思考の罠とは、中国を一方的に日本の脅威として認識することである。
たしかに、中国の防衛費は毎年急速に増加している。公式の数値から見ても、24年前の1988年の30倍、6年前の2006年と比べても2倍の増加である。中国は増大する軍事力を背景に、東シナ海や南シナ海で領土紛争を引き起こし、権益の拡大をねらっている。
これは、明らかに日本のような周辺諸国にとっては脅威である。この脅威に対処するためには、日米同盟を強化し、米軍に軍事力を利用して日本の安全を確保しなければならないと考えるのは自然だ。「戦後史の正体」のような名著がヒットし、日本がいかにアメリカの従属下にあるのかが具体的に明らかになったが、中国の脅威が現実的に存在する以上、アメリカに守ってもらわなければならないので、対米従属は受け入れざるを得ないという論理が日本では社会通念として広く共有されている。
これはもっともな結論に見える。しかし、この論理はあくまで日本だけの視点から導き出された結論だ。相手の中国はまったく別の視点から現実を見ており、それを考慮に入れないと現実はなかなか見えてこない。
中国の視点を考慮に入れるとは、中国にとって逆に日本が脅威であるかどうか問うことである。
答えは明らかにイエスだ。日本人は「日本は小さな防衛力しかもたない平和国家」だというイメージで自国をとらえているようだが、そのイメージは現実を反映したものであるとは言い難い。日本はアメリカ第7艦隊の母港でもあり、総勢5万人の兵力を擁している。これは韓国の2倍の兵力だ。米軍の東アジア最大の軍事拠点であるというのが日本の現実だ。
明らかにこれは、中国にとって最大の脅威である。他方中国は、1842年のアヘン戦争以来、本格的に国際社会に復帰する1970年代まで、侵略、内戦、内乱、飢餓を経験してきたトラウマの強い国である。領土を拡大し、覇権を奪取する侵略的な攻撃性はないものの、気を許したら外国から侵略されてしまうのではないかというトラウマを背景にした防衛的な攻撃性の強い国である。
したがって、日本が中国の脅威に対処するために日米の軍事同盟を強化することが、逆に中国の過剰な防衛的攻撃性を強く刺激し、日中の武力衝突の可能性を増大させることにもなりかねない。
武力衝突が起こるとしたら、日中双方のこのような脅威論の行き違いが背景になる可能性がある。次回のメルマガでは、どのような状況で武力衝突が発生するのか、具体的にシミュレートしてみる。
最後に、9月30日に配信されたウエブボット最新報告書の要約の第3回目を掲載した。
今回のポイントは「沿岸部の水位の上昇」というキーワードである。第170回配信のメルマガでも紹介したように、リモートビューイングを科学的に研究している応用数学者のコートニー・ブラウン博士は、2013年6月1日の光景を遠隔透視している。世界各地を洪水が襲っていた。「沿岸部の水位の上昇」というキーワードも同じような洪水が起こることを暗示していた。
前回はこのような内容を解説した。
今回の記事
シェールオイルとシェールガスの開発によるエネルギー革命の進行でこれまでの世界情勢が根本的に変化しつつある。どのように変化するのか解説する。
次に、メルマガで紹介した中国の変化しつつある状況を解説する。
リンゼー・ウィリアムスの情報は的中するのか?
数年前からリンゼー・ウィリアムスは、軍産エネルギー複合体のグローバルエリートからのリーク情報として、これから次のようなことが起こるとしていた。
1)デリバティブを崩壊させるなどして、2012年の末までにドルを無価値化させる。
2)中東全域、ならびにサウジアラビアなどを混乱させてイスラム原理主義政権を樹立し、、原油価格を1バーレル、200ドル近辺まで上昇させる。
3)大幅に減価した米国内の主要な資産をグローバルエリートが買い占める。
4)その後、米国内の巨大油田を開発し、米経済の再生を図る。
これがグローバルエリートの計画だという。リンゼー・ウィリアムスはこの情報を、2006年くらいから言い続けていた。
たしかに、2006年から比べるとドル安は進んでおり、またアラブの春では、エジプトのムバラク政権が打倒され、イスラム原理主義のムスリム同胞団によるモルシー政権が誕生した。
原油価格の急騰はないものの、中東の混乱が拡大したということでは、2)はかなりの程度的中しているように見える。
財政の崖とリンゼー・ウィリアムスの情報
すると、気になってくるのは「2012年末までのドルの無価値化」を中心とした他の計画である。
このリーク情報が単純な陰謀論ではないことをいわば証明しているのは、いま大きな話題になっているアメリカの「財政の崖」である。
周知のように「財政の崖」とは、1)ブッシュ政権による富裕層への減税処置の終了、2)予算自動削減処置による緊縮財政の実施の2つである。これを回避する法案が議会で可決されない限り、これらは2013年初頭には実施される。
すると米経済は、ー3%からー4%という大幅なマイナス成長になると見られている。いま「財政の崖」は避けられず、米経済の停滞は回避できないとも見られており、すでにあらゆる分野で投資が先行的に手控えられている。
いまオバマ政権と野党の共和党との間では、回避に向けた交渉が続けられているが、かなり難航することも予想されている。
もし妥協できず、「財政の崖」が本当に発動した場合、リンゼー・ウィリアムスの「2012年末までのドルの無価値化」させるという計画も、あながち現実離れした話ではなくなる。
もし同じタイミングで、デリバティブを含む金融市場になんらかの混乱が起これば、リンゼー・ウィリアムスのリーク情報の現実性は高まるだろう。
「財政の崖」が大きな焦点になっているいま、リンゼー・ウィリアムスの言う方向に動いているようにも見える。
「財政の崖」は回避できる
しかし、いろいろ情報を収集してみると、「財政の崖」の発動による米経済の失速を懸念して、以前にくらべると共和党も妥協に向けてはるかに積極的に動いている。
もちろんこれから、民主、共和両党の対立で議会が混乱するだろうが、最終的には「財政の崖」は回避できる可能性が高いように思う。あまり大きな問題にならないかもしれない。
リンゼー・ウィリアムスの「2012年末までのドルの無価値化」とは逆の方向に動き、逆にドル高になる可能性も十分に出てきた。
シェールオイルとシェールガスによる米経済のブーム
それというのも、第2期目のオバマ政権にはシェールオイルとシェールガスによるエネルギー革命が起こることが確実であり、これを米経済の活性化の目玉にすることがほぼ決定しているからである。以下がシェールオイルとシェールガスの油田だが、ほぼ全米を網羅する規模である。

シェールガスは2008年頃から大増産の体制に入っており、シェールオイルがこれに続いている。
以下のIEA(世界エネルギー機関)の長期予測のビデオにあるように、これからアメリカは2015年にはロシアを追い越し、世界最大の天然ガス供給国となり、2017年には世界最大の産油国となる。そして2030年にはアメリカは原油を輸出し、2035年にはエネルギーの完全自給を達成する見込みだ。
第2期目のオバマ政権は、このようなエネルギーシフトを経済政策の主軸に据えることで、米経済の回復と好景気を誘導することを目標にする可能性が非常に高い。
シェールオイルとシェールガスがもたらす好景気がどのくらいのものになるかは、いま開発が進んでいるノースダコタのバッケン油田の現状を見るとイメージがわく。英語のビデオしかないので申し訳ないが、失業率は1%、一般の労働者の年収が平均で約700万円だ。全米から失業者が押し寄せたため、住宅が不足し、住宅建設ブームが起きている。
全米のシェールオイルとシェールガスの油田開発が進むと、こうしたブームは全米に及ぶ可能性も指摘されている。
好景気のこのような可能性が出てきたので、共和党も民主党も「財政の崖」のような法的な手続きに無駄な時間をさくのではなく、エネルギー革命の歴史的なブームに乗り、好景気を確実なものにしたほうがよいという雰囲気が強くなっているのだ。
今回、オバマの勝利の背景のひとつになったのは、共和党の主流派であるティーパーティー派が、一切の妥協を拒否してオバマの景気刺激策に反対したため、アメリカの景気を押し下げたと見られたからだと言われている。もし共和党が、今回も強硬に反対して「財政の崖」を発動させてしまうと、共和党はさらに支持を失うことにもなりかねない。
「財政の崖」を発動させて景気回復の足を引っ張るるよりも、目の前にある米経済のブームのチャンスに乗り、経済の活性化に向けて努力をしたほうが、支持を回復するにはよいという雰囲気だ。
したがって、ある程度の混乱は予想されるものの、「財政の崖」の危機はなんなく乗り越えられる可能性のほうがはるかに高くなっている。
「2012年末までのドルの無価値化」はない
このように見ると、リンゼー・ウィリアムスの「2012年末までのドルの無価値化」はまずないことになる。軍産エネルギー複合体のグローバルエリートの計画は頓挫しそうだ。
これは、軍産エネルギー複合体の力が衰えていることの証左でもある。
意外な事実
しかし、リンゼー・ウィリアムスのリークしていた情報を再度見ると興味深いことに気づく。
シェールオイルとシェールガスの油田開発が本格的に始まる前の2006年ころから、リンゼー・ウィリアムスは以下のような情報をリークしていた。
米国内の埋蔵原油について
原油価格が200ドルになった時点で、石油資本はかねてからの計画を実行する。それは、私が1976年に教えられたように、ガルアイランドをはじめとした米国内の油田の掘削を開始することである。原油の掘削が行われる油田は以下である。
ウィリストン盆地
別名、バッケン油田の名で知られている、ノースダコタ州からサウスダコタ州、そしてモンタナ州にかけての地域にある油田。推定埋蔵量は5兆30億バーレルに上る。掘削コストは1バーレル、16ドル程度。高品質の原油。ここの油田だけでアメリカの全消費量を2041年まで賄うことができる。
スタンズベリー油田
ロッキー山脈の地下1000フィートにある油田で、高品質の原油が採掘可能。推定埋蔵量は2兆バーレル。これはサウジアラビアの埋蔵量の8倍。
※注意
リンゼー・ウィリアムスは「スタンズベリー油田」と言っていたが、これは間違いのようだ。「スタンズベリー」は「スタンズベリーレポート」という原油に関するオンラインレポートの名前だ。
「スタンズベリー油田」が実際どの油田のことなのかは不明だが、ロッキー山脈にはバッケン油田のほか多くの油田が集中しており、だいたい深度1000フィートにある。これらの油田のひとつのことだろう。
ガルアイランド
アラスカ州北部にある小島。
北極圏野生生物保護区
アラスカ州北部にあり、米国政府が野生動物の保護区に指定しているのが北極圏野生生物保護区である。現在は掘削は不可能だが、原油の供給が逼迫すると保護指定が解除され、掘削が可能になるはずだ。
原油価格が200ドルになると、国内のこうした油田から一斉に供給が開始されるので、アメリカが原油の供給に困ることはない。だが、1バーレル、200ドルなので、国内の原油価格も相当に高い状態が長く続く。
以上である。
改めてこの情報を見ると、ウィリストン盆地のバッケン油田はシェールオイルの油田だ。リンゼー・ウィリアムスが誤って「スタンズベリー油田」と呼んでいるロッキー山脈下の油田、さらにガルアイランドや北極圏野生生物保護区もすべてシェールオイルの油田だ。
ということは、グローバルエリートは、シェールオイルの開発を本格的に行うと言っていたことになる。
もちろんシェールオイルは、いま開発が進んでいるので、ドルを無価値化させてから開発を行うとしたタイミングは決定的に外れたことになる。
これはなにを意味するのだろうか?あまりに長くなるので、次回に詳しく書くことにする。
中国の共産党体制は限界なのか?
では、次のテーマに行く。メルマガの第199回に書いた記事の一部を掲載する。中国の変化に関するものなのでブログでシェアすることにした。
中国では新しい習近平体制がスタートした。汚職や既得権益など共産党内部にはびこる矛盾を率直に認めて抜本的な改革を約束すると同時に、2020年までに中国国民の所得を倍増することを約束した。
中国は低迷する世界経済のけん引力であるだけに、習近平の新体制がこの目標を実現できるかどうか注目されている。
しかし、この目標の実現は想像以上に難しく、改革が軌道に乗る前に社会が不安定になり、現在の体制が危機に陥るというハードランディングのシナリオになる可能性も指摘されている。
中国を代表する経済学者の警告
もちろん、共産党一党独裁は限界に達しているとの見方と分析は、アメリカをはじめ多くのシンクタンクから出されている。
たとえば、いまのオバマ政権の外交政策に大きな影響力がある民主党系のシンクタンク、「センター・フォー・アメリカンプログレス」も、「共産党内部の汚職は構造的な問題であり、汚職を引き起こしている当事者の共産党がこれを自ら解決できるかどうかは疑問だ」とし、習近平政権が将来ハードランディングに向かう可能性もあるとしている。このシンクタンクの分析は、オバマ政権の中国に対する見方を反映していると見られている。
しかし、現在の共産党体制はすでに限界に近づいており、よほどの根本的な改革を断行しないと、最悪のハードランディングのシナリオになると現代中国を代表する経済学者も指摘するようになった。
中国政府の経済コンサルティング機関である「中国国務院発展研究センター」に所属するウー・ジンラン教授は、中国の独立系経済誌「財経」のインタビューに答え、次のような最大級の警告を行った。
「汚職のような、現代の中国社会に蔓延している社会悪の原因は経済を政府が管理しているから起こっていることだ。コネと縁故主義が原因だ。自由な市場経済を導入するならば、このような矛盾の多くは解消される。
しかし、改革に抵抗する人々は、逆に汚職と社会悪の原因を市場経済の導入が生んだ格差が原因だとして改革派を攻撃し、既得権益を握る自分たちが生き残ろうとしている。
多くの国民はこのような説明を信じてしまい、彼らの望む方向に誘導されている。しかし、このまま改革が進まないと、中国は限界を向かえ、大変な危機が発生するはずだ」
このように、中国政府を代表する経済学者も大変な危機感を持つようになっている。
実際は何が起こっているのか?
上の解説だけでは少し分かりにくいかもしれない。共産党幹部の汚職や既得権益に激しく抗議する運動やデモが起こっていることは日本でもよく知られている。
だが、これがどれほど深刻で何が問題なのかと改めて問われると、はっきりしたイメージがわかない場合が多い。
経済成長の一般的なパターンと中国の問題
第194回のメルマガでは中国の抱える問題を、経済成長の一般的なパターンから解説した。分かりやすくするために、一部を再度掲載する。
大抵、新興国の経済成長をけん引するのは、国内の安い労働力を使った輸出主導の製造業である。
こうした製造業に労働力を供給するのは、周辺の農村地域である。製造業の成長が続くと、都市には農村地域から職を求めて多くの人口がなだれ込み、都市のスラムが形成される。スラムでは、犯罪、伝染病、不衛生な生活環境などが大きな社会問題となる。
しかし、経済成長がさらに続くと、都市のスラムの住民は企業の正社員や熟練工として吸収され、所得が安定し生活水準も上昇する。第2世代になると大学教育の修了者が増加し、企業の管理職としてキャリアを築くものが多くなる。
この結果、分厚い中間層と消費社会が形成され、安い労働力に依存した輸出主導の成長モデルから、中間層による内需に依存した持続可能な成長モデルへと転換する。
分厚い中間層は、政治的には市民社会の形成を意味する。したがって80年代の韓国や台湾のように、経済成長が軍事独裁政権の手で行われている地域では、市民社会の形成が基盤となり、民主化要求運動が起こってくる。民主化要求運動は、市民の広範な支持を得るため、軍事独裁政権は打倒され、選挙で選ばれた民主主義的な政権に移行する。
これが、経済成長がもたらす社会変化の一般的なパターンだ。
形成が阻止された市民社会と農民工
だが中国は、こうした一般的なパターンにははまらないかなり特殊なケースである。
それというのも、中国には農民戸籍と非農民戸籍が2つの戸籍が存在しているからだ。都市に労働力として流入した人々は、都市では行政や社会保障、そして医療のサービスには制限を受けるため、定住しにくい仕組みになっている。最終的には、出身の農村に帰ることが期待されるいわば出稼ぎ労働者でしかない。こうした人々は農民工と呼ばれ、2億人ほどいるとされる。
共産党政権は、このような戸籍システムを維持することで、1)都市に膨大な農村人口が流入して社会が不安化することを回避し、2)分厚い都市中間層と市民社会の形成を抑制し、民主化要求運動の基盤ができにくい状態にすることで、共産党の一党独裁体制の温存を目標にした。
この結果、中国では分厚い中間層を基盤とした民主化要求運動ではなく、中間層から排除された農民工を中心とした、貧しくても平等であった毛沢東時代を理想化する運動が主流である。
分厚い中間層の形成は避けられない
10月31日の記事ではこのように解説した。
要するに、普通の経済成長と社会変化のパターンでは、安い労働力を利用した輸出依存の成長から、国内の分厚い中間層に支えられた内需依存の安定成長へと移行するが、中国では、中間層を基盤にした民主化要求運動を防止するため、農民工を使い、中間層と市民社会の形成を抑制してきた。したがって、現在は農民工を主体とした平等社会を目指す政治運動が中心である。このようなことである。
しかし、いま中国では、共産党が警戒している中間層の形成は避けられない段階にある。
上に解説したように、これまで中国は安い労働力を使った輸出依存の経済で高い成長率を達成した。そのため、中国の海外市場への依存率は非常に高くなっている。いわばこれは、安い製品を大量に海外に輸出する大量生産の体制である。
しかしながら、周知のように、中国の第一の貿易相手であるEUの経済は、財政危機と信用不安で急速に失速し、このあおりで世界経済全体も不況に入りつつある。これに伴い、輸出依存型の中国経済もゆるやかだが減速している。海外への輸出にはこれまでのように依存できない状況だ。
したがって、中国がこれから先も経済成長を続けるためには、国内の中間層を基盤とした内需依存の経済成長以外に道は残されていない。輸出志向から内需依存に転換できるかどうかが、中国にとって最大の焦点になる。
もちろん、分厚い中間層の存在は民主化要求運動を結果的に激化させる。しかし、早いうちに内需依存の経済成長へと移行しないと、経済停滞から社会はもっと不安定になり、農民工を主体とした激しい抗議運動で、共産党政権はもっと早い次期に存亡の危機に立たされることも十分にあり得る。
大量生産から多品種少量生産への移行
では、内需依存型経済とはどのような経済なのだろうか?一言で言うとそれは、大量生産型から多品種少量生産型経済への移行である。
安い労働力を使い、安い製品を大量に海外に輸出する生産体制は、大量生産の体制である。中国では海外の企業が中国の安い労働力を利用して、世界に向けてあらゆる製品を安く大量に生産していた。
しかし、国内の中間層をターゲットにした内需依存型の経済は、これとは異なった生産体制を要求する。それぞれの地域市場の違いや、顧客の好みに細かく対応した製品の開発がとても重要になる。大量生産ではなく、顧客のニーズに敏感に反応した多品種少量生産の体制がとても重要になる。
日本では1970年代の後半から転換
大量生産から多品種少量生産への転換は、経済成長の一般的なパターンなので、もちろん日本でも過去に起こった。70年代の後半から80年代はじめの時期である。オイルショックが終わり、バブルの数年前までの期間だ。
40代以降の読者の方であれば覚えていると思うが、80年代の始めには、これまで一種類しかなかったビールや清涼飲料水の品種がやたらと増えた時期だ。同じ製品なのに、多様なモデルと品種が爆発的に増える現象は、耐久消費材、化粧品、衣料品などあらゆる分野で起こっていた。
すると消費者は、TPOに合わせて多様な製品を使い分け、そうすることで自分の好みとアイデンティティーを表現することができた。いまでは当たり前となっているが、この当時ヒットした田中康夫の「なんとなくクリスタル」という小説は、多様な品種の製品を使い分けて自己を演出する方法のバイブルとなった。
いま中国では、このような転換が要求されているということなのだ。
市場経済と民間企業でないと難しい
輸出志向の大量生産から内需依存の多品種少量生産への転換は、日本のみならずどの国も経験しており、転換が完了するまで一時的に経済が停滞することがある。1997年のアジア経済危機が襲ったころの韓国、マレーシア、台湾などの国々がそのような転換に直面し、一時的な停滞を余儀無くされた。
しかし、日本をはじめどの国も転換は比較的にスムーズに進み、大きな問題を引き起こさなかった。
それというのも、どの国も資本主義経済であり、転換を担っていたのは民間企業だったからだ。経済の主体が民間企業である場合、中間層が増大して国内市場が拡大すると、これまでの輸出志向の大量生産から、市場のニーズに細かく対応した製品の開発と販売へと移行する。こちらのほうが利益率が高いならば、この以降はスムーズに進む。
複数の企業がいっせいにこのような転換を行うので、市場では競争が激化する。すると、より優秀で多様な製品が安く市場に出回るようになる。これでさらに国内市場は拡大するので、さらに多くの企業が市場に参入し、雇用はもっと伸びるという循環だ。
経済の崩壊を防いでいる内需
もちろん、日本が内需依存に転換したのは30年以上前である。内需依存のモデルだけでは、いまの日本の成長は限界を向かえている。むしろ、「失われた20年」という言葉に象徴されるように、労働力の安い国々に主力産業であった耐久消費材産業の生産拠点が移動してしまい、長期の停滞に苦しんでいる。
しかし、相当に困難な状況で、デフレの進行が止まらないにもかかわらず、アメリカやヨーロッパに比べると、社会的な格差は比較的に小さく、国民の生活水準も極端には低下していない。失業率も4%台とかなり低い。
このような状況に日本がいられるのは、それなりに豊かな内需に日本が支えられているからである。
中国経済を支えているのは国営企業
では中国は、このような豊かな中間層に支えられた内需依存型の発展に転換できるのだろうか?
実はいま、これから大変な困難に直面するのではないかと見られているのだ。
これまで見たように、内需依存型の多品種少量生産への転換が成功するためには、消費者のニーズを的確に反映する発達した市場経済と、このニーズにいち早く対応できる民間企業が経済を全面的に担う必要がある。
一方、現在の中国では、トップ500企業のうち、実に70%が国営企業である。これらの国営企業の多くは、共産党中央のみならず、地方の共産党組織と癒着した関係にある。農民から土地を取り上げて開発しているのも、国営企業であることが多い。
こうした国営企業がもたらす巨大な富こそ、いまの中国共産党の権力を支える基盤である。
先のウー・ジンラン教授は、「汚職のような、現代の中国社会に蔓延している社会悪の原因は経済を政府が管理しているから起こっていることだ。コネと縁故主義が原因だ。自由な市場経済を導入するならば、このような矛盾の多くは解消される」と言っているが、これはこのことを意味している。
国営企業では多品種少量生産は無理?
旧ソビエトではやはり分厚い中間層が存在していた。しかし、医療や教育、そして食料や住宅にはほとんど金はかからなかったものの、産業は国営企業が担っていたため、市場には1930年代と変わらない製品があふれ、消費者としての中間層のニーズはまったく無視されていた。
言論の自由を求める民主化要求運動とともに、国民のこれへの不満がソビエト崩壊の背景になったと考えられている。
もちろん、グローバルな市場に安い製品を大量に供給する経験を持つ中国の国営企業が、もっぱら国内だけに製品を供給していたソビエトの国営企業とを同じようには扱えない。別な存在である。
しかし、共産党と癒着し、共産党が既得権益を維持する手段となっている国営企業が、中間層のニーズに的確に反応し、激しい市場の競争のなかで、ニーズにあった製品を開発し生産できるかと言えばそうではないだろう。
国営企業は、消費者のニーズではなく、共産党の意向で動くはずである。そのような企業が、消費者のニーズに最大限敏感になることが要求される多品種少量生産体制を担えるのかどうかは疑問である。
共産党は自らの基盤を切り崩せるのか?
このように見ると、習近平政権の困難がよく見えてくる。つまり、いま中国は、世界経済の低迷により、輸出主導の大量生産型の経済から、中間層を主軸にした内需主導の多品少量生産体制へと移行を迫られているが、これを実現するためには、経済の主軸を国営企業から民間企業に全面的に移して行かねばならない。
国営企業は共産党の富の源泉なので、民間企業への移行は、共産党が自分の権力の基盤を自らの手で切り崩すことを意味する。
言って見ればこれは、生き残るために自己の存在を否定するということだ。はたしてこのようなことを習近平政権はできるのだろうか?
転換が失敗したらどうなるのか?
もちろん、転換に成功するのなら中国は内需主導の新しい成長軌道に乗り、共産党政権であるかどうかにかかわらず、政治的な民主化もかなり進み、それこそ新しい中国が現れることだろう。そうした中国は世界経済のけん引力であり続けるはずだ。
だが失敗するとどうなるのだろうか?最近発表されたオバマ政権に大きな影響力があるシンクタンク、「センター・フォー・アメリカンプログレス」の中国レポートはおおよそ以下のようなことを述べている。
「もし転換に失敗したら、農民工や中間層の共産党の既得権独占に反対する大規模な運動が起こるだろう。既得権を維持したい保守派は、国民の不満が共産党に向かうのをかわすために、国民の不満を転換する相手を外に求める。それは、アメリカや日本になるだろう」
断層の真上にある尖閣問題
このような見方は日本でも比較的に一般的だが、中国の現状を詳しく見ると、尖閣問題が中国の国内情勢といかに深く連動しているかがよく分かるはずだ。その意味では、尖閣諸島はまさに活断層の上にあると言える。
しかし、中国の国内情勢に大きな変化がない限り、尖閣で人民解放軍が積極的に動くというようなことはないだろう。
米国防省が発表した「中国の軍事力」の2012年度版は以下のように中国の軍事力を評価している。
「中国の指導者らは、中国政府が戦略的余地をもたらすよう経済成長と発展に焦点を絞り、積極的な対外環境構築の推進を第一優先として位置付けてきた。同時に中国の指導者らは、自国周辺の平和と安定の維持を求めており、市場、資本、資源へのアクセスを容易にすべく外交的な影響を拡大し、米国及びその他の国々との直接的な対決を避けてきたのである。この戦略が、経済及び外交の権益の新規開拓とその増大に伴い、世界中に中国の存在感を増大させたのである」
つまり中国は、「自国周辺の平和と安定の維持」を優先しており、他の国々との直接対決は望んでいないということだ。
もし中国の国内情勢が安定し、さらに経済モデルの転換に成功したならば、この報告書のように、尖閣の問題でも中国がいきなり軍事行動に出るというような可能性は少ないかもしれない。
でも、はたしてどうなのだろうか?
新しい本の紹介
また新しい本が2冊出ました。表紙はセンセーショナルですが、中身はけっこうまじめです。これまでのメルマガや雑誌の記事の内容に一部加筆し、修正した内容です。いま日本は大きな転換点になっています。世界の現状を踏まえ、現在の日本の立ち位置を確認するにはよい本ではないかと思っています。よろしかったぜひどうぞ!


むちゃくちゃおもしろかった講談
筆者は月刊ザ・フナイの連載を書いていたが、読者の方に講談師の方がおり、会う機会があった。筆者は講談はこれまで聞く機会がなかったが、実におもしろかった!今後はスピリチュアル系の講談をやるそうである。サイトに音声ファイルがあるので聞いて見たらよいだろう。
田辺鶴瑛
筆者のいとこのブログ
筆者にいとこがスピリチュアル系のカウンセラーになっていたのを最近知ることとなった。以下にリンクする。よろしかったらどうぞ。
ねもとまどかの「宇宙のゆりかご」
本の出版のお知らせ
今度、また講談社から英語の本を出した。筆者も強く感じているが、やはり英語は仕事では必須となりつつある。しかし、実際に英語を使う相手は欧米人とは限らない。中国や韓国なのどのアジア出身の人々も多い。そのような状況のなか、この本では普遍的なコミュニケーションの手段としてのグロービッシュに注目し、これをマスターする方法を解説した。英語に関心がある方にはぜひお勧めしたい!
日本人が「英語ペラペラ」を本当に実現できる本 (講談社+α文庫)

また本が出ます。前著の続編にあたる本です。今度は今のシステムのつっこんだ解説と将来の予測です。よろしかったらどうぞ。
「支配ー被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる コルマンインデックス未来予測[2020年までの歩み] (ヒカルランド)

また本を出版しました。今度は徳間書店からです。今回は、このブログの内容を大幅に加筆修正し、未来予測を行った本です。よろしければぜひどうぞ!
未来予測コルマンインデックスで見えた 日本と経済はこうなる(徳間書店)

今回、講談社から英語本を出版しました。通勤途中に電車の中で軽く読める本です。ちょっと英語に興味がある人はぜひどうぞ!
通じる英語 笑われる英語

「いったい世の中どうなっているんだ!こんな時はマルクスに聞け」(道出版)
体裁としては「資本論」の解説書のような本だが、マルクス礼讚の本ではない。われわれはこれからなんとしてでもサバイバルして行かねばならない。そのための状況認識のための書として有効だと思う。よろしかったらぜひどうぞ!

このブログの基本方針
このブログの基本方針を掲載しました。記事をお読みになる前にかならず一度はお読みになってください。
基本方針リンク
読むとくドットコム
筆者がコンサルティングにかかわっている会社が子供用の国語音声教材の提供を始めた。子供用だが、実によい名作がmp3の音声ファイルで聴くことができる。大人の心の琴線に触れる作品がとても多い。よいサイトだと思う。よかったらどうぞ!
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友人の飲み屋
筆者の友人の一人が飲み屋を始めました。こちらもよろしかったらどうぞ!
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また、私はいま日本で起こっている変化を以下のようにとらえております。もしよろしければこちらもどうぞ。
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ヨーロッパ国内で起こっている極右の台頭、リンゼー・ウィリアムスの情報検証
今回はことのほか襲い更新となってしまった。あまりに忙しく、情報は集めていたもののブログまで手が回らなかったのだ。いつもブログを読んでくださっている読者の方には感謝する。
講演会のご案内
また、講演会を依頼されました。よろしかったらぜひどうぞ!
アネモネ講演会
申し込みリンク
日 時:2012年11月25日(日)、14:00~16:00(開場13:30)
会 場:アリアル五反田駅前会議室、東京都品川区西五反田1-2-9 アリアル五反田駅前ビル
各線「五反田駅」より徒歩1分
料金:前売3,000円/当日4,000円(各税込)【イベント番号:STY01】
〈内容〉
・最新の地震情報
・放射能汚染と健康被害の報道されない実態
・本当にヤバいアメリカ経済
・これからも持ちこたえるユーロ圏
・緊張する日中韓、武力衝突はあるのか?
・流動化する日本の政治と未来
・リンゼー・ウィリアムスの最新リーク情報
・明らかになってきた我々の精神構造の変化
高松の講演会
以下の日程で高松の講演会を行います。お近くの方はぜひどうぞ!今回の講演会は面白くなりそうです!
日時 平成24年11月27日(火)18:30受付 19:00~公演開始
場所 高松テルサ
テルサ会場内の掲示板にて部屋の確認をお願いいたします
〒761-0113 香川県高松市屋島西町2366-1
Tel: 087-844-3511 Fax:087-844-3524
会費 ¥3000/人
講演会後、高島先生を囲んでの懇親会を予定しております。場所 未定ですが高松市内にて行う予定です。
主 催 里坊会計事務所 里坊昌俊
実行委員 有限会社ウエストフードプランニング小西啓介、ソニー生命保険株式会社 山下智幸、株式会社京蔵 京兼慎太郎、株式会社クリード インテグレーション平野伸英
内容
・米大統領選挙直後にやばくなる財政の崖、実際に何が起こるのか?
・日本の領土問題、本当に日本の経済は大丈夫なのか?欧米シンクタンクの予測
・爆発する欧州のナショナリズム、2013年はどうなるのか?
・コンピュータ予測、ウエブボット最新情報
・背後で進む我々の精神的な変化
など
ヤスのしゃべり場 vol.2
いよいよマヤカレンダーが本格的に終了します!一体なには起こるでしょうか?!
第2回のゲストは、某大手出版社ベテラン編集者の登場です。2007年からはじまった「ヤスの備忘録」から重要なテーマを絞り出し、編集者独特の観点から、眠っているヤスの魅力を引き出していただきます!
日程:12月22日 (土)
会場:お申込の方に直接ご案内いたします(東京都内)
料金:5,000円
予定時間:13:30〜16:40
13:30〜15:15 ヤストーク
12月22日はマヤカレンダーが終了する日本時間です!政治経済、スピリチュアルを含め、とことん話すつもりです。日本は本当の岐路に立っています。多くの日本の指導者は中国を甘く見ています。私の得ている情報では、中国は本気です。ブログなどでは絶対に話せない情報を話すつもりです。
15:30〜16:40 ヤス&川島克之氏 対談&質問タイム
◎川島克之氏とは?
東京大学卒、某大手出版社編集者。
「高島康司氏に早くから注目し、高島氏のマジメな経済予測とトンデモ系予言への関心がどこでつながっているかが、とっても気がかり。
その奥にナニがあるのだろうか、それはもしかして新しい現実を思いのままに生み出してしまうカッキ的試みなのでは、との問いを胸に、
高島氏に迫りたいと思っている。」
17:00〜懇親会
申込希望の方は,必要事項をご記入いただき、下記までメールにてお願い致します。
yasunoshaberiba@gmail.com
おってご案内をお送り致します。
【氏名・ふりがな】
【〒・住所】
【連絡先(携帯優先)】
【参加人数】
【懇親会参加 有無 人数】
※懇親会料金は別途お知らせします(5,000円前後)
主催:しゃべり場事務局 島田
お知らせ
5月21日、ウエブボットの報告書の最新版が発表になりました。いま詳細な要約の作業を続けていますが、これまでのように「予言解説書」のような体裁で出すことはしないことにいたしました。詳細な要約はすべてメルマガに発表いたしますので、最新報告書の内容を知りたい方は、メルマガを購読なさってください。
記事全文の音声ファイル
記事全文を音声ファイルにしました。よろしかったらどうぞ。7日で削除されますので、お早めにどうぞ。
音声ファイル
お知らせ
講談社のサイト、プロジェクト・アマテラスに作品の投稿を求められました。以下のサイトで読むことができます。「試論、そもそも予言とはなにか?1」です。画面右側の「このプロジェクトの投稿」から見ることができます。よろしかったらどうぞ!
未来はどうなるのか
http://p-amateras.com/project/61
新しい本の紹介
「神霊の世界に覚醒して」サンドラ・インガーマン、ハンク・ウエスルマン著、高島康司、豊田泰士訳

このブログでも何度も紹介したことのあるシャーマンで人類学者、ハンク・ウエスルマン博士の名著、「Awakening to the Spirit World」の翻訳が完成した。2010年にアマゾンで1位になった本である。
本には、シャーマンの世界をトランス状態で経験しやすくさせるCDが付いている。本は、CDの使い方と、シャーマンの世界で体験する内容の解説書だ。筆者もCDを聞いて見たが、聞ききながら寝ると、たしかに多くの夢を見て、会ったことのない多くの人物が現れる。興味深い体験だった。
よろしかったらぜひどうぞ!
新しい本の紹介
今度、ウィリアム・スティックエバース氏と対談本を出しました。かなり面白い本だと思います。よろしかったらどうぞ!

宇宙の設定を読み解く[BlackBox]超予測
また新しい本が出ます。今度は様々なサイクルに注目し、コルマンインデックス以後どのようなことが起こるのか解説した本です。ブログやメルマガの内容を大幅に加筆修正しました。
コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル

よろしかったらぜひどうぞ!
有料メルマガのご紹介
今回は3つのテーマを解説した。
まず、CIA系シンクタンク、ストラトフォーに次期オバマ政権の外交政策に関するとても質の高い分析記事が掲載されたので、それを紹介した。執筆者は、CIAの元分析官でストラトフォーのCEOであるジョージ・フリードマンである。フリードマンの地政学に基づいた徹底した分析は大変に定評があり、米政権の世界認識にも一定程度の影響があると言われている。その意味では、米政界の指導層に近い人々が、世界をどのように見ているのかよく分かる記事だ。
財政危機とユーロの信用不安が原因で停滞しているEUや、不安定化しつつある国内情勢で一党独裁を維持できるかどうか分からない中国に比べると、経済は決してよい状態ではないものの、やはりアメリカが相対的に安定している。
もちろん、財政の崖のような問題もあるが、これはオバマ政権と議会が妥協すればよいだけなので、解決の糸口は見えている。
それに対し、EUや中国の問題は解決の出口はまったく見えない。どうなるか分からない状況にある。これらの国々は国内問題で手一杯になるはずだ。
このような状況を見ると、中国やEUに比べアメリカは相対的に安定しているので、まだ余力がある。
さらにシェエールオイルの開発で、アメリカが世界最大の産油国であることがはっきりしてきた。このため、もはやアメリカは中東に依存することもなくなるはずだ。
このように見ると、アメリカはかつてないほど制限を受けない自由な状況にある。次期オバマ政権はより大胆に外交政策を転換する余地がある。
こうした内容だった。
次に、日本の次期安倍政権や、石原や橋下の第3極に対する海外の評価と反応を紹介した。非常にネガティブな記事が多く、一種の拒絶反応に近いものだった。
それは、彼らは「富国強兵」の19世紀型の幻想にのめり込み、グローバル化した21世紀の世界を拒絶した危険なイデオロギーに浸っているというような内容だ。「日本国民は現実を直視し、誤まったリーダーを選んではならない」とまで言い切っている。
これらの記事は、安倍政権の「強い日本、豊かな日本」のスローガンに基づく強い外交姿勢が中韓との関係を悪化させて一層の経済停滞を招き、そして最終的には日本を孤立させることを示唆しているようだ。
最後に、2013年からはじまる日本のさらなる経済停滞に関する予言や特殊能力者のビジョンはかなり多い。そうしたものを詳しく紹介した。もちろんこれらはブログには書くことができない。
以上である。
今回の記事
アメリカではオバマが勝利し、中国では習近平政権が成立した。アメリカの財政の崖も迫っている。このようなテーマで書きたいことはとても多いが、それらに関しては他の機会に譲り、今回はヨーロッパ諸国の国内で起こっていることを解説する。
次に、大統領選挙も終わったので、リンゼー・ウィリアムスのリーク情報を改めて検証して見る。いろいろなことが後で分かってくる。
リンゼー・ウィリアムスのリーク情報を検証する
アメリカの大統領選挙も終わり、少し情勢が落ち着いてきた。リンゼー・ウィリアムスは、アメリカの軍産エネルギー複合体の情報と計画をリークしているが、この情報がどれだけ正確だったのか、検証するにはよい次期かも知れない。
あまりに周知の情報かもしれないが、リークされた情報を安易に信じ込んでしまわないためにも、検証の作業は重要だ。
大統領選挙について
当初は接戦を伝えられていた米大統領選挙だが、ハリケーン、サンディの影響もあり、オバマが難無く勝利した。
選挙の前にリンゼー・ウィリアムスは以下のような情報をリークしていた。その主なものを見て見る。以下である。
・グローバルエリートは、オバマを全力で潰すつもりだ。オバマが大統領になる可能性は低い。彼らはロムニーを全面的にバックアップしている。
・それというのも、グローバルエリートはカナダーアメリカパイプラインの件でオバマに激怒しているからだ。その怒りは私の想像以上であった。
・グローバルエリートは大統領選挙についてさまざまなことを言っているが、私はこれを語ることが許されていない。なので、どちらが勝利するか私の口からは言えない。
・ただ、オバマの支持率は上がっていないことに注意してほしい。その背景のひとつは、オバマに対しグローバルエリートが激怒していることだ。
・ガル島のリバティー油田の原油を輸送するために、グローバルエリートはカナダとアメリカを通るパイプラインの建設を計画した。
・実はオバマはイスラム教徒である。「ムスリム同胞団」からの莫大な献金と引き換えに、このパイプラインの建設を許可する約束だった。
・だがオバマは、実際に献金が行われると態度をひるがえし、パイプラインの建設を保留してしまった。このためグローバルエリートは、「オバマに完全に裏切られた!」として激怒しているのだ。
・大統領選の第一回討論会で、ロムニーの発言に次の3つのキーワードが隠されているので、ロムニーがそれを言ったときのオバマの反応を見るように。キーワードは次の3つだ。
1)カナダーアメリカパイプライン
2)ドット・フランク法の改定
3)アメリカ国内の原油生産
・大統領選挙戦の第一回討論会では、ロムニーはこれらの言葉を言った。すると、それを聞いた途端オバマは氷づいたように緊張して青ざめ、討論会の方向が一気に変わった。オバマはグローバルエリートから脅されており、これらのキーワードは、ロムニーがすでにグローバルエリートのコントロール下にあることを伝えたためだ。
・これが、第一回の討論会でオバマが負けた本当の理由だ。
これを見ると、軍産業エネルギー複合体のグローバルエリートはオバマを徹底的に潰し、ロムニーが当選するように見えるが、これは全部外れた。蓋を開けて見ると、ロムニーは遠くオバマに及ばなかった。
軍産業エネルギー複合体は力を失いつつある?
これは今回の大統領選挙戦だけではない。軍産業エネルギー複合体のグローバルエリートは、9月11日から始まった中東の混乱を仕掛け、実際にそれなりの混乱を引き起こすことに成功した。
だが、彼らが原油価格を1バーレル、150ドル前後にまで引き上げるため、混乱をサウジアラビアにまで拡大させるとしたが、これはまったく起こっていない。このため、原油価格も1バーレル、85ドル前後に落ち着き、決して上昇してはいない。
2008年半ばには、グローバルエリートは原油価格を1バーレル、150ドル近辺まで上昇させるとして、その後、予告どおりに147ドルまで上昇した。また、数カ月後には1バーレル、50ドル近辺まで下降させると予告し、原油価格は実際に36ドルまで下降した。
2008年や2009年まではウィリアムスのリークした情報は比較的に正確であったが、それと比べると大統領選挙も含め、いまはほとんど的中していないことが分かる。
グローバルエリートの計画の全容
とするなら、他のリーク情報も実現しない可能性のほうが大きいと判断してよいだろう。以下がグローバルエリートの計画であった。
1)中東全域で革命を起こして政権を打倒した後、各国でイスラム原理主義の「ムスリム同胞団」の政権を樹立する。
2)これで中東は混乱するので、原油価格は1バーレル、150ドル、金は1オンス、3000ドル、銀は1オンス、750ドルまで高騰し、ドルの価値は大幅に低下する。
3)これとともに、デリバティブの崩壊から、全面的な金融崩壊を引き起こし、金本位制に基づく新世界秩序を導入する。
・しかし、この当初の計画は大幅に遅れている。リビアのカダフィー政権の打倒に手間取り2カ月の遅れが生じた。さらに、シリアのアサド政権では6カ月の遅れが生じている。計画全体では、8カ月遅れている。このため、グローバルエリートは大変に焦っている。彼らは必死だ。
・グローバルエリートの目的は、世界やアメリカを破壊することではない。崩壊した世界をグローバルエリートの手で復興し、彼らが完全にコントロールできるような世界を構築するためである。特にアメリカはそうである。
・2012年末までのドルは無価値化する。ドルという通貨はなくならないだろうが、ドルの価値はほとんどなくなる。それまでに、ドルに基づく一切の投資や預金を引き上げ、金に変えておくべきだ。
・デリバティブの崩壊が起こる前には、いくつかの予兆がある。ひとつは、通貨戦争の始まりである。2012年4月14日、中国は人民元を、これまでの0.5%から、1%の範囲でドルに対してフロートさせる決定をした。このようなことが通貨戦争である。4月11日、ブラジルの大統領は絶対にQE3を絶対に実施しないように要請した。もしQE3を実施するなら、ブラジルは報復して通貨戦争を引き起こすと言った。
・通貨戦争の次に起こるのは貿易戦争だ。これがデリバティブ崩壊の第2の予兆だ。
・連銀が金利を1%引き上げることが、デリバティブと金融崩壊の最後の予兆となるはずだ。
もちろん、これからこのようなリークが実現するかもしれないが、いまとなっては、すべて外れる可能性のほうが圧倒的に高いように思う。おそらく、このようなシナリオにはならないであろう。少なくともいまは、このようなことが実際に起こる予兆はまったくない。
軍産業エネルギー複合体の力は衰えている
ウィリアムスはサイキックではない。軍産業エネルギー複合体の情報をリークするために選ばれた人物である。
これらの情報が的中していないということは、かつては世界を政治的、経済的に動かすほどの力を十分に持っていた軍産エネルギー複合体だが、いまは世界を思う通りに操作できる力を失い、退潮しているとも考えることができる。
あまりに長くなるので、この退潮が何を意味するのか記事を改めて書く。
EU諸国で何が起こっているのか?
次のテーマに行く。EUの情勢だ。
アメリカではオバマが勝利し、オバマ政権の2期目がはじまる。また、財政の崖を回避できるかどうかが瀬戸際に入りつつある。回避できなければ、連邦政府の一時的な閉鎖、米国債の格下げのような状況になる。
また中国では習近平政権が成立した。中国の政権は、以前の権力者が隠然と影響力を及ぼすことが通例だったが習近平政権は、こうした影響力からかなりの程度自由な政権であるようだ。かなり積極的な内政と外交に出てくることだろう。
このようななか、EUは財政破綻と信用不安のニュースが日本では中心で、国内で起こっている変化についてはあまり報道されていない。
しかし、いまEU各国では大きな社会変化が進行している。今後数年間で歴史的な転換を引き起こす種になる可能性もある。
今回の記事の前半部分は、すでに過去のメルマガに掲載した記事と重複している。後半を加筆した。
9月6日以降落ち着いた情勢
ギリシャなどのPIIGS諸国のユーロ圏離脱がきっかけとなり、共通通貨のユーロ、そしてEUの解体まで突き進むことも一時は懸念されていたEUの財政危機だったが、9月6日にECB(欧州中央銀行)が「一層の緊縮財政を受け入れるならば、ECBはPIIGS諸国の国債を無制限に買い取り、また債権も買い取る」との発表の後、EUの財政危機は峠を越えたとの安心感が広まっている。
スペインやアイルランドなど、いくつかの国々では相変わらず財政危機から厳しい情勢が続いているものの、これらの国々がECBの緊縮財政を条件として受け入れれば、ECBが無制限に国債を買い取ってくれることがはっきりしているので、危機はさして深刻な問題だとはみなされていない。
日本でも一頃と比べると、EUの財政危機関連のニュースはだいぶ減ったように思う。
他方、そのような状況のなか、PIIGS諸国の財政危機をきっかけにして、ドイツ主導の財政統合の前提条件が次第に整えられつつある。いまの流れが継続すると、数年後には欧州合衆国のような、ドイツを中核とした高度な統合体が出現する可能性も十分にある。これが実現すると、現在のような各国の財政危機が発生することもなくなる。
いま、このような方向に確実に向かっているとする観測が一般的だ。
EU諸国国内ではなにが起こっているのか?
だが、目をEU諸国の国内に転じると、これから大きな社会変動の予兆となるような出来事が進行中であることが分かる。
それは極右勢力の急速な台頭である。
1930年代の情勢
周知のように、1929年の大恐慌後、経済破綻に苦しむヨーロッパでは極右勢力が急速に台頭し、社会変化が加速して第2次大戦に向かうレールが敷かれた。
1920年代には、ドイツ、イタリア、スペインなどでは中道左派の比較的にリベラルな党派が政権を担当してきた。だが、政府が大恐慌後の困難な情勢にまったく無策であることが露呈したため、政府に対する憤りと怒りから、国民は極右政党をこぞって支持し、極右政党が政権を担う政府が多数誕生した。
ドイツの中道左派の「社会民主党」から「国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)」への政権移行などはその典型的な例である。
極右勢力が率いるこうした政府は、軍需産業への公共投資を中心とした国家管理型の経済政策を推し進めて国内の経済混乱を解消する一方、領土拡大戦争に乗り出し、第2次大戦の引き金を引くことになった。
このような悲惨な歴史があるため、極右勢力の台頭は極度に警戒されている。
弱小であった極右勢力
一方、ヨーロッパ各国の極右勢力はかなり古くから存在している。欧州各国に存在する「ネオナチ」のような党派も決して新しい存在ではない。1950年代にはすでに結成されている。
戦後、社会主義圏だった東ヨーロッパを除いて、ヨーロッパ各国の政権を担当してきたのは、「中道左派」や「中道右派」の穏健で現実主義的な政党だった。
言って見ればこれは、日本の「民主党」や「自民党」が交代で政権を長年担当してきたようなものだ。どちらの党派も、同じような教育を受け、同じようなキャリアを持つ政治エリートが中心だった。
そのため、基本的に同じような価値観を共有しており、どちらの党派も、高度な政治経済的連合体に各国を統合し、ナショナリズムを乗り越えることこそ、ヨーロッパの進むべき方向だとする点では同じ理想を共有していた。
実際にEUの統合は、こうしたコスモポリタンな政治エリートによって実現された。また、政権が「中道左派」や「中道右派」が担当している限り、政策には継続性があり、政治が極端に変化することはなかった。
このような安定した状況だったので、極右勢力が古くから存在したといっても、その影響力は都市や地方の若年失業者層に限定され、選挙では1%を上回る得票率を得ることはほとんど不可能であった。
確かに、ベルリンの壁の崩壊から社会主義圏が消滅した89年以降は、民族主義に基づく移民排斥運動が盛り上がり、極右が主導するデモや抗議集会、また移民をねらった犯罪などが多発し、極右の存在を強く印象づけた。
だが、選挙で多くの議席を獲得し、政権に影響を与えるレベルではまったくなかった。ヨーロッパの極右勢力は、政策にはなんの影響も与えることのできない周辺的な弱小政党という状況に長い間止まらざるを得なかった。
ヨーロッパの本流の政治は、欧州統合を共通の理念としたコスモポリタンな「中道左派」や「中道右派」の政治エリートがコントロールしてきた。
大きく躍進する極右勢力
それがいま、ヨーロッパの信用不安と財政危機を背景として、選挙を繰り返すたびに極右政党は大きく躍進し、政府も無視できない勢力になりつつある。
例えば、将来EUに加盟すべきか、ロシアとの同盟を強化するべきか国内でも世論が分かれているウクライナでは、最近実施された選挙で極右党派「スボボダ」が10%を得票し、なんと33議席を獲得した。
「スボボダ」が掲げるのは、政府は国内にいる移民や外国人ではなく、神から与えられた、生まれながらの権利を持つ民族のみを保護すべきだという、民族主義に基づく移民排外政策だ。「スボボダ」は、「デモクラシー(民主主義)」と「ナショナリズム(国家主義)」の造語である「ナショクラシー(国家民主主義)」をスローガンに掲げ、さらに多くの支持者を獲得しつつある。
これはユーロ圏諸国でも同様の状況だ。泡沫政党にしかすぎなかったギリシャの過激な極右政党、「黄金の夜明け」は、最近の世論調査で14%の支持を獲得した。以下は「黄金の夜明け」が参加した抗議デモだ。ナチスの鉤十字の旗を掲げている。
またハンガリーの極右、「よりよいハンガリー運動」は、2006年にはわずか2%の支持しかなかったのが、2012年には第3党に躍進し、無視できない存在になっている。
そしてフランスの極右、「国民戦線」は、2012年5月の大統領選挙で18%を得票し、ホランド現大統領とサルコジ前大統領に次ぐ支持を獲得している。
またイタリアでもこの動きは加速している。前首相のベルルスコーニは「ドイツの独裁」を強く非難しているし、シシリー島では移民排斥と民族主義を唱える過激な極右政党「五つの星」が初めて議席を確保した。この政党はこれから国政選挙に出る予定だが、すでに世論調査では第2位の支持率を獲得している。
なぜ極右政党が躍進するのか?
これまで極右政党の躍進は、「中道左派」や「中道右派」の本流の政治に対す不満の表明として、こうした極右政党に支持が集まるのだろうと理解されてきた。日本でも自民党の長期政権が続いていた1990年代には、共産党が自民党に対する不満表明の受け皿として選択され、一時的に支持が伸びたことがあったが、これと極右の躍進もこれと同じことではないかと見られていた。
したがってこうした支持は、主流政党のいわば「お仕置き」として極右が選択された結果であって、極右そのものが支持を集めているわけではないという見方が一般的だった。
しかし、いま多くのヨーロッパ諸国でこの状況が根本的に転換しつつある。それは以下の3つの背景から、国民の支持が極右政党の政策に集中し始めているからだ。
1)統合EUに対する幻滅
EUの統合は高い経済成長と生活水準をもたらすものと期待され、推進された。だが、ユーロの信用不安と財政危機で、この理想は完全に消滅してしまった。EUを一度解消したほうがよいのではないか。
2)IMFやECBなどの国際機関、そしてドイツが政府の上に立つ
特にPIIGS諸国では、IMFやECBなどの国際機関、ならびにドイツが上位機関として政府に命令を出している。これは国家の主権が国際機関や他国によって蹂躙されている姿だ。これは耐えられない。
3)緊縮財政と金融支援による生活水準の低下
PIIGS諸国では、度重なる緊縮財政の強要による公的サービスや社会保障の大幅に削減され、またドイツやフランスでは、終了するあてのまったくない金融支援が延々と続き、そのたびに国民の負担が強いられる。このような状態が続くくらいなら、いっそのことEUを離脱し、単独の国家として存在したほうがよいのではないか。
こうした要因が原因となり、極右政党の掲げる1)民族のプライドの回復、2)移民排斥、3)EUの離脱と真の独立の実現、という目標そのものに一般国民から支持が急速に集まるようになっている。
ヨーロッパの「失われた10年」
EU諸国の財政危機の悪化からPIIGS諸国がEUを離脱し、その結果ユーロ圏が最終的に解体するという、今年の初めまで現実味があった危機は当面は起こらないことははっきりした。
だが、これでEUが財政危機を脱し、再度成長軌道に乗ることができるかといえばまったくそうではない。EU圏全体がクラッシュするような急性の危機は回避できたとしても、慢性的な危機はむしろこれから始まると見た方がよい。
それというのも、いまのEUは、バブル崩壊後に日本が経験した「失われた10年」の慢性的な低迷期と同じ状況に陥りつつあるからだ。
バブルの崩壊後、日本政府は公共投資と金融機関への資金注入で景気回復を図ろうとし、銀行が抱えている大量の不良債権の処理は先送りした。不良債権を処理するためには、これを大量に抱えた銀行の破綻処理も実施しなければならず、その覚悟は政府にはなかったからだ。
しかし、大量の不良債権の存在は銀行の経営を圧迫したため、銀行は自己資本を守るために「貸し渋り」や「貸しはがし」などの貸し出しの規制を行った。これは多くの企業の資金繰りを悪化させ、破綻へと追いやった。企業の倒産はさらに多くの企業を破綻させたため、日本経済は脱出困難な慢性的な不況に突入した。
いまECBはPIIGS諸国などの国債や債権を購入するとしているが、これはバブル崩壊期の日本と似た状態になる可能性がある。
つまり、ECBが不良債権を購入することで、経営が破綻している銀行は生き残ってしまう。日本の長銀もそうであったが、こうした銀行はさらに大量の不良債権を抱えている可能性がある。
すると、いつまでたっても銀行は不良債権の呪縛から逃れられないため、自己資本を守る目的で「貸し渋り」や「貸しはがし」などの貸し出し規制を長期に実施しなければならなくなる。
たとえ景気が少しよくなる兆候が出てきても、この規制が大きな障害となり、民間の企業の資金繰りを悪化させ、不況を長期化させるという流れだ。
不良債権が完全に処理できるまで、このような状況は続く。いわば「失われた10年」のヨーロッパ版だ。
ヨーロッパ最大規模のストライキ
このようなとき、EU諸国では最大規模の抗議デモとストライキが11月14日に発生した。
日本でも頻繁に報道されているように、抗議デモやストライキはEU諸国では特に珍しいものではない。2008年のリーマンショック、そして2010年から始まったユーロの信用不安と財政危機の発生以来、特にギリシャやスペインなどのPIIGS諸国を中心に何度も起こっている。2011年のオキュパイ運動はEU諸国に上陸し大規模な抗議デモを引き起こしたし、なかには暴徒化したデモも多い。
しかし、これまで抗議デモやストライキはそれぞれの国単独で実施されており、多くの国々が連帯して同じ時期に抗議デモを実施するということはなかった。
今回、際立っているのは、多くのEU諸国のあらゆる組織が連帯して、同じ日に戦後最大規模の抗議デモとストライキを実施したことにある。ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアなどのPIIGS諸国はもちろんのこと、フランス、ドイツ、イギリス、ベルギー、スイス、ならびに、デンマークやスエーデンの北欧諸国、そしてハンガリーなどの東欧諸国、さらにはトルコも含め、23カ国が参加している。100万人を越える規模のデモも多かった。
スペイン
イタリア(ローマ)
全ヨーロッパ
欧州労働組合連合が中心
さらに、この全欧州の巨大な抗議運動には、これまでどの抗議運動にも不参加だった欧州労働組合連合が中核的な組織として呼びかけていることだ。欧州労働組合連合は、36カ国の85組織、6000万人が参加する巨大な連合体である。
欧州労働組合連合は、社会と生活の安定を第一の目標として掲げているので、どうしても政治色が出る抗議運動には参加して来なかった。
しかし今回は、欧州労働組合連合が中核組織のひとつとなり、全欧州をカバーする最大規模の抗議デモとストライキを実現させた。
抗議デモのみならずストライキが実施されたギリシャ、スペイン、ポルトガルでは、ほとんどの公共機関が停止した。
全欧州で共通の目的、緊縮財政への抗議
これまで個別にバラバラに行われていた抗議運動が、全欧州での連帯に成功したのは、財政危機から援助を受ける側のPIIGS諸国と、増大する税負担に耐えながらこれらの国を援助しているフランスやドイツという、本来なら国民の利害が相反する国々の間で、共通の目的が形成されたからだ。
それは、ヨーロッパの多くの政府が実施している緊縮財政への反対である。財政危機回避のため、また健全な財政維持の必要から、財政の緊縮はドイツを含め多くの国々で実施されている。これは、あらゆる分野で社会保障費を削減しているため、国民の生活水準は低下する。これに対する猛烈な反対運動だ。緊縮財政ではなく、仕事を増大させる成長計画を実施せよ、というのが共通した要求である。
左派とリベラル派のデモ
もちろん今回の全欧州抗議運動を組織したのは、労働組合や市民団体を中心とする左派とリベラル派のデモである。これまで解説してきた極右の影響力はほとんどない。
その意味では、この全欧州の抗議運動が極右の躍進を意味しているわけではない。ヨーロッパの労働組合を中心としたデモである。日本で言えば、労働組合の「連合」が全国的なデモを実施したようなものだ。
1920年代のヨーロッパ
歴史を参照すると、1920年代のヨーロッパでも、全欧州を巻き込むストライキや抗議運動が非常に頻繁に起こっていた。
もちろん、第一次世界大戦終結後の荒廃したヨーロッパだったので、現在とは比べるべくもないが、出口の見えない深刻な経済停滞と高い失業率、そして低下する生活水準という状況は現代と共通している部分もある。
このような状況を背景として極右が急速に台頭してきた。
1920年代の極右
1920年代のヨーロッパでは、左派とリベラル派の勢力が圧倒的に強く、当初はヒットラーのナチスのような極右勢力が入り込む余地はほとんどなかった。
ナチスが正式に結成されたのは1918年であったが、ドイツのどの地方でもナチスが「狂信的な異常者の集団」とみなされ、多くの州で政治活動は禁止されていた。活動が許されていた南部のバイエルン州を拠点にかろうじて活動していたに過ぎない弱小党派だった。
1928年には国政選挙に出馬したが、わずか2.6%の得票率しか得られなかった。5年後の1933年には政権与党となり、ヒットラーがドイツ首相になるとはだれも予想していなかった。この間、なにがあったのだろうか?
最近、BBCが「彼の暗いカリスマ」という興味深い番組を放映した。ヒットラーのカリスマを題材にした番組である。この番組では実際にナチスの台頭する時代を経験した人々の証言が放映されている。
ナチスとヒトラーの台頭前には、多くの人がヒットラーに、人間関係が下手で、知的な討論を苦手とし、単純な言葉を繰り返す狂信者という否定的な印象を持っていた。
第一次大戦の帰還兵、ヘルベルト・リヒターは1920年代に初めてヒットラーの演説を聞いたときの印象を以下のように振り返る。
「私はヒトラーの演説を聞いた途端、この人物を嫌いになりました。彼はただ単純な政治の考えを繰り返すだけでした。とても正常な人物とは思えませんでした。」
これがヒトラーに対する当時の一般的な印象であったのだろう。これは、現在のヨーロッパの極右が多くの国民に与えている印象とよく似ている。
転換点
しかし、「人間関係が下手」で「知的な討論ができず」、「単純なスローガンを繰り返す」というヒトラーの弱みが、逆に多くの人を魅了する強いカリスマの現れとして見られるようになる転換点がやってくる。1929年から始まる大恐慌である。
この転換点とヒトラーに対する印象の変化を、この頃にヒトラーを支持するようになったジュッタ・ルディガーは次のように言う。
「みんなとてもお腹がすいていました。とても大変でした。このような状況で、ヒトラーはまさに救世主であるように見えたのです。私は、ヒトラーこそ自分を顧みないでドイツ国民のために命を捧げる人物のように見えました。」
1920年代、ドイツやイタリア国民の多くは、当初は左派やリベラル派の抗議運動や改革、そして政府の経済政策に期待し、それらを支持したのであろう。
しかし、1929年以降、経済の停滞は予想を越えて深刻になり、左派やリベラル派の運動や政権では問題の解決はまったくできないことが明らかになるにつれ、それこそ雪崩をうったように極右の支持へと回ったのだ。
カリスマがいない現代の極右
いまドイツを除くヨーロッパは、深刻な不況の最中にいる。ギリシャやスペインの失業率は20%を越えている。これは戦前よりも悪い数値だ。
では、これから戦前のように極右が台頭し、しばらくすると極右政権が誕生するのだろうか?
そうとは簡単に結論することはできない。現在のヨーロッパで、緊縮財政の実施で失業率が上昇し、生活水準が低下しているといっても、戦前のように国民が飢える状況ではない。戦前にはなかった現代の社会保障システムはまがりなりにも機能しており、飢えが蔓延するような状況には少なくともない。
ましてや、ヒトラーのような、極右を象徴する暗いカリスマは、現代のヨーロッパにはまだ現れていない。
しかし、今後、EU諸国の経済が一層悪化し、なおかつ戦前のような強い求心力があるカリスマが出現したらどうなるだろうか?
一層躍進する極右、EU分裂は政治から?
ヨーロッパにおける極右勢力躍進の背景には、現在の信用不安と財政危機、そして長期化する不況による統合EUへの信用喪失がある。急性の危機は脱したものの、「失われた10年」を思わせる長期的な不況がこれから続く可能性が極めて高い。
とするなら、極右の躍進する状況はこれからも長く続くと見て間違いない。
もちろん、これから数カ月で状況が激変するというようなことはないだろうが、2013年、14年、15年とEU諸国で毎年選挙が実施されるたびに極右政党は躍進し、与党として政権を担当する極右政党も出現するはずだ。
そのとき、強烈なカリスマ性のあるリーダーが出現したとするならどうなるだろうか?少なくとも、そのときがEUの分裂の危機が本格化するときだろう。
では日本は?
いま日本では、第3極と呼ばれる流れが顕在化しつつある。少なくとも外交政策に関する限り、次期安倍政権とともに、かなり右傾化したナショナリスティックな流れなんるはずだ。
この流れの行き着く方向は、どうなるのだろうか?日本に関してはいずれ徹底して書いてみたい。
続く
新しい本の紹介
また新しい本が2冊出ました。表紙はセンセーショナルですが、中身はけっこうまじめです。これまでのメルマガや雑誌の記事の内容に一部加筆し、修正した内容です。いま日本は大きな転換点になっています。世界の現状を踏まえ、現在の日本の立ち位置を確認するにはよい本ではないかと思っています。よろしかったぜひどうぞ!


むちゃくちゃおもしろかった講談
筆者は月刊ザ・フナイの連載を書いていたが、読者の方に講談師の方がおり、会う機会があった。筆者は講談はこれまで聞く機会がなかったが、実におもしろかった!今後はスピリチュアル系の講談をやるそうである。サイトに音声ファイルがあるので聞いて見たらよいだろう。
田辺鶴瑛
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