第六の夜にむけて10
忙しさにかまけており、今回はこれまでにないくらい更新が大幅に遅れてしまった。いつものことだと言われそうだが、読者の方にはお詫びしたい。
本の出版のお知らせ

「いったい世の中どうなっているんだ!こんな時はマルクスに聞け」高島康司著
定価¥ 1,470 道出版
体裁としては「資本論」の解説書のような本だが、マルクス礼讚の本ではない。われわれはこれからなんとしてでもサバイバルして行かねばならない。そのための状況認識のための書として有効だと思う。よろしかったらぜひどうぞ!
予言解説書12の有料配信
「予言解説書12」が完成しました。配信をご希望の方は筆者に直接メールしてください。これは12月6日に配信されたALTAのレポート、「来るべき未来の形 0巻3号」の詳細な要約です。
今回のレポートは差し迫ってきた「ドルの死」以降の訪れる社会混乱と秘密の暴露が大きなテーマです。
通貨としてのユーロの崩壊の可能性も示唆されています。
info@yasunoeigo.com
有料メルマガのご紹介
更新が遅れたため、今期は2週分のメルマガをご紹介する。
1月1日の配信分
まず、1月1日に配信した分だ。この記事では、経済の崩壊を予告する崩壊型の短期予測がすべて外れたことを改めて確認した。こうした予測の多くが外れた理由は、予測が状況判断の分析に基づいた論理的な予測であったからにほかならない。論理的な予測が警告する危機とは、いわば想定内の危機のことである。それが想定内であるということでは、政府ならびに関係機関が危機を回避する処置をとることができる。そのようにして多くの予測された危機が実際に回避されてきたというのが崩壊型の予測や予言が的中しなかった理由であろう。
一方、歴史の長期的な傾向分析に基づく長期予測が存在している。コルマンインデックス、チェゼセフスキー博士の太陽黒点周期説、サイクル研究所のサイクル理論などがそうだ。そうした長期予測から明らかになる歴史の傾向性は否定しようもなく、これに基づく予測は状況判断に基づく崩壊型の短期予測よりもはるかに的中率は高い。1月1日の記事では、数々の長期的な傾向に基づいた2010年の予測を行った。
1月8日の配信分
この週はロシアの動きに関する最新の情勢を伝えた。CIA系のシンクタンク、ストラトフォーを始め、多くのシンクタンクは今年はロシア復活の大きな年になると予想している。グルジア侵攻のように、ロシアは資源外交にものをいわせ、旧ソビエトの勢力圏を回復する拡大を続けていた。だが、金融危機以降、ロシア経済は大打撃を受け外延的な拡大は止まっていた。
だが、昨年の後半からロシア経済は次第に賦活し、政府の大規模な不良資産処理が成功して予算に十分な余剰ができたため、今年ロシアは積極的な拡大路線に戻ることが予想されている。
昨年の12月25日、これを証明するかのように、ロシアはカザフスタンとベラルーシの間に関税同盟を結び、ロシア版自由貿易協定(FTA)の形成をねらっている。近い将来的ロシアはこの協定を旧ソビエトの他の共和国にも拡大し、「統一市場経済圏」というEU経済圏とは異なる経済ブロックの創設を目指す計画であることを明らかにした。
前回は、2010年はこの構想に基づき、ロシアの外への拡大が加速する年になることを解説した。
今回の記事
書きたいことはことは山ほどあるが、今回はこれまで続きを書くと約束しながら果たせなかったヒストリーチャンネルがネクスト・ノストラダムスと呼ぶ男、ブルース・ブエノ・デ・メスキータのゲーム理論とその予測手法について書く。
ネクスト・ノストラダムス、ブルース・ブエノ・デ・メスキータ
ブルース・ブエノ・デ・メスキータに関しては以前に記事で書いた。少し前の記事なので内容を忘れた方も多いだろうから、ブルース・ブエノ・デ・メスキータが誰なのか紹介する。
メスキータはネクスト・ノストラダムスと呼ばれているが、サイキックや予言者ではまったくない。ニューヨーク市立大学教授の政治学部の教授であり、CIAの情勢予測の分析官、さらにエール大学ハドソン研究所の主席研究者でもある。また、自分のコンサルティング企業のCEOでもあり、一般企業向けに予測分析を提供している。
90%を越えるメスキータの的中率
メスキータは、数学のゲーム理論を用いて政治交渉やビジネスの交渉の結果を予測し、また自分の望む交渉結果にもって行くための条件を提示する研究を行っている。
メスキータはこの手法に基づいてさまざまな予測を的中させて来た。89年の冷戦終結時期の予測、93年のパレスチナのオスロ合意、94年の北朝鮮との政治交渉、03年のイラク侵略の開始時期などさまざまな交渉や政治情勢の行く末を予測し、CIAの公式発表では90%を越える的中率であるという。
メスキータの手法
メスキータの予測手法はゲーム理論と呼ばれる数学のモデルに基づいている。したがってそれはコンピュータの解析によって導かれる予測であり、複数の国家や利害集団が対立しているような状況であれば、政治やビジネスを問わずどんな場面にも適用可能であるという。
だが、メスキータの手法が複雑で難解かといえばそうではない。逆に驚くほど単純なのだ。
メスキータの理論の前提
メスキータの理論は非常にシンプルだが、現実的な前提から出発する。それは以下の前提である。
どんな交渉でも、それに参加している人間たちは出身文化や背景の違いとは関係なく、以下の2つの利害関心を基本に行動する。
1)結果が自分にもたらす利益
2)自分の名声を高めること
メスキータは言う。「人間が公共の福祉のようななんらかの善意で行動することは非常にまれである。そうしたケースがあったとしても、政治交渉やビジネスの交渉ではほとんど見たことがない。人間は徹底的に利己的であり、自分の利害を追求するためにはとことん合理的になる存在であると理解すべきだ」
そのような利己的な人間たちが交渉に入るとき、次の4つのポイントが重要になるという。
1)交渉に参加している意思決定者(プレーヤー)
2)意思決定者の目的(目的)
3)問題の優先順位(優先順位)
4)意思決定者の影響力の大きさ(勢力)
さらに、交渉に参加している意思決定者には以下のような相互関係が成り立つ。
1)交渉に参加している意思決定者相互の関係
交渉を有利に進めるため、交渉に参加している意思決定者は、何を考えているのか相互に相手の手の内を知ろうとする。例えば、ABCDの4人の参加者がいる協議だとすれば、AはBCDの手の内を、BはACDの手の内をというように、全体では126通りの手の内を知ろうとする関係が成り立つ。参加者が10名の場合であれば、300万通りを越える関係が成り立つという。
2)意思決定者に影響を与える人々
もとより意思決定者は、一人ですべての情報を集め決定しているわけではない。意思決定者には複数の補佐役が存在しており、彼らの意見が意思決定者に大きな影響力をもつ。これら意思決定者はの複数の補佐役の間にも上記の1)から4)の関係が成り立つ。
これらすべての項目の知識を複数の専門家をインタビューして手に入れる。例えば北朝鮮の6カ国協議であれば、北朝鮮問題の専門家、ならびに中国やロシアの専門家から金正日などの指導者と彼らに影響を与えている補佐役の情報を得る。
不要な社会的背景の知識
ここで非常に興味深いことに、メスキータは文化や社会的背景に関する知識は予測にはほとんど必要がないと断言する。メスキータによると、出身文化や価値観がどれほど異なっていても、人間は基本的に徹底的に利己的であり、また合理的に行動するので、どの人間の行動パターンもほぼ近似的なのだという。
数値化
ところで、これらすべての情報を得た後これを数値化する。数値化は任意の数値を割る降ることで行われる。例えば、上記3)の「優先順位が」では、ある意思決定者では問題の優先順位が他のメンバーに比べて相対的に低い場合、1から10のスケールで3とし、その問題に一番高い優先順位を与えているメンバーには10というようにである。これをすべての項目で数値化する。
アルゴリズム
数値化したデータは、特殊なアルゴリズムを用いたソフトで処理され、現在の条件で交渉が続いた場合、最終的にどのような結果になるのか予測される。その最終結果にいたる時期も算定されるという。その予想結果の的中率が90%を越えているのというだ。
メスキータは自分が開発したアルゴリズムは企業秘密として公開していないと言っているが、彼の同僚の研究者の話では、メスキータのアルゴリズムは多くの専門的な論文に掲載されており、研究者であればすぐに手に入れることができるはずだという。
予測結果
メスキータは最近「Predictioneer's Game」という本を出した。日本語だと「予測者のゲーム」という訳になるであろうか。メスキータの注目度が高まるにつれて、本もベストセラーになっている。
筆者も読んだが、実に面白い本であった。この本には、現在の世界の問題のいくつかがこれからどのような展開になるのか予想している。また本には過去に起こった対立や交渉をこのソフトで予測した場合、どのような結果になるのか予測もしている。以下である。
過去からの予測
米ソの冷戦の結果
ちょうど米ソの冷戦が始まった1948年に入手可能なデータだけを使い、冷戦の将来に行方を分析した結果、1989年から90年前後にほぼ70%の確立でアメリカが冷戦に勝利し、冷戦が終結するという結果になった。
1914年の第一次世界大戦
もし1914年夏に、イギリス海軍がエーゲ海に親善の航海を行ったならば、サラエボでオーストリア皇太子の暗殺が起こったとしても、大規模な戦争にはいたらなかったという結果になった。
未来の予測
イランの核兵器開発に関して
イランの権力構造ではアフマディネジャド大統領の順位は決して高くはない。18位である。このまま行くと、イランは2010年後半から2011年前半にかけて、核爆弾を1個だけ作ることのできるウランを濃縮するが、実際には核爆弾の製造は行わない。アメリカもこの状態を容認し、イランを受け入れる。
また、イランの権力中枢で大きな変化が起こり、アフマディネジャド大統領などの強硬派の影響力は決定的に弱まる。強硬派に代って、穏健派、それも「静穏派」と呼ばれているこれまでまったく注目されてこなかったもっとも穏健な宗教者の派閥が権力を握る。
興味深いことに、イランに対する海外からの制裁や圧力などがまったくないほうが、こうした理想的な状態に早く到達する。2010年には実現する。一方、海外からの圧力がある場合、この状態の実現は2011年までずれ込むことになる。
パキスタンのタリバン掃討
パキスタンはいっけん政情がとても不安定なように見えるが決してそうではない。政府がアメリカを援助し、タリバンの掃討に気乗りしないだけである。
その一番大きな理由は、アメリカを援助して得られる利益がタリバンを支持して得られる利益よりもはるかに小さいことが原因だ。したがってもしアメリカがパキスタンへの金銭的な援助を2倍に引き上げるならば、パキスタン政府はタリバン掃討に積極的に協力することになるという結果が出た。
パレスチナ問題
いっけん解決が不可能なように見えるパレスチナ問題であるが、すべてのデータを入力し解決策を探ったところ非常に興味深い結果が出た。パレスチナとイスラエルの紛争地帯に観光客を積極的に呼び込み、そこから得られる収入を6対4の割合でイスラエルとパレスチナで配分すれば長年続いた紛争はおさまる可能性があると出た。
COP15などの温室効果ガス削減交渉
126年間交渉しても参加国の合意には至ることはないという結果になった。削減交渉は完全に失敗である。温室効果ガスを排出しないテクノロジーの開発を急いだ方がはるかに合理的である。
いかがであろうか?これがメスキータのゲーム理論のモデルの予測である。この手法は適用分野が政治や紛争に限定されているわけではない。ビジネスなどあらゆる分野に適用可能だそうである。現在の日本の政治に適用した場合、次の総理が誰になるのか、民主党政権がいつまで続くのか、そして万が一民主党政権が倒れた場合、次はどの政党が政権に就くのかなど、われわれの関心事が90%を越える的中率で予測されてしまうことになる。実に興味深い。
次回の予告
このブログでは旧ソビエトのチェゼセフスキー博士の太陽黒点周期と社会変動とが相関関係にあることを紹介して来た。次回はこれを証明する研究が発表されたのでそれを紹介する。できるだけ早く更新するつもりである。
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