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    2010-01

    番外編2、太陽黒点周期と人間

    1月29日

    今回は予想以上に早く更新できた。いつもこうありたいと願う。

    本の出版のお知らせ

    marx

    「いったい世の中どうなっているんだ!こんな時はマルクスに聞け」高島康司著

    定価¥ 1,470 道出版

    体裁としては「資本論」の解説書のような本だが、マルクス礼讚の本ではない。われわれはこれからなんとしてでもサバイバルして行かねばならない。そのための状況認識のための書として有効だと思う。よろしかったらぜひどうぞ!

    予言解説書12の有料配信

    「予言解説書12」が完成しました。配信をご希望の方は筆者に直接メールしてください。これは12月6日に配信されたALTAのレポート、「来るべき未来の形 0巻3号」の詳細な要約です。

    今回のレポートは差し迫ってきた「ドルの死」以降の訪れる社会混乱と秘密の暴露が大きなテーマです。

    通貨としてのユーロの崩壊の可能性も示唆されています。

    info@yasunoeigo.com

    1月31日の講演会

    雑誌「アネモネ」から講演会をまた依頼された。1月31日の日曜日に開催される。

    日時 2010年1月31日(日)14:00~16:00(開場13:30)
    場所 池上会館2F 第2会議室 東京都大田区池上1-32-8
    ■東急池上線池上駅より徒歩7分
    ■JR京浜東北線大森駅西口から池上方面行きバスで
      本門寺前バス停下車徒歩約5分
    料金 前売3,000円/当日4,000円(各税込)


    昨年までは、危機の発生から資本主義のさまざまなシステムが崩壊するという崩壊型の予測が出回っていたが、そうした崩壊型の予測や予言は、実現の時期がずれたか、または的中しなかった。

    システム全体が崩壊する危機はなかった。しかし、それにもかかわらず、地域通貨圏形成への動きなどドル基軸通貨体制がほころびるスピードは予想を越えて加速化しつつある。既存のシステムが崩壊の危機を向かえることなく、急速に別のシステムへと移行するという過程に入っているように思われる。そしてそれは、脱消費社会へと向かう大きな意識変化を伴う可能性がある。

    今回の講演会では、こうした点を徹底的に深め、今後数年間にわれわれがどのような社会に住むことのなるのか解明する。

    有料メルマガのご紹介

    すでに報道されているが、今回は格付け会社、スタンダード・アンド・プアーズによる日本国債格下げの可能性のニュースを扱った。まだ格下げが実施されたわけではないが、もし実施されるとすると、長期金利の上昇から日本経済に甚大な影響が出ることを解説した。

    だが、これはフランスのシンクタンク、LEAP/E2020が予想していたシナリオでもある。LEAPは、先進国が経済を維持するための経済刺激策の実施から財政状況が悪化し、これが原因で国債の格付けが下げられる結果、各国は緊縮財政と社会保障費の削減を実施せざるを得ず、不況はさらに深化すると予想した。そしてこれが背景となり、2010年の春から夏にかけて世界各地で社会不安が増大すると予測している。これを詳しく解説した。

    また最後に、日月神示とは少し異なる日本の予言を取り上げ、今後の日本を占って見た。

    今回の記事

    旧ソビエトのチェゼセフスキー博士は、太陽黒点の周期と人間の活動が相関しており、黒点の極大期には人間の活動が活発となることから、暴動や革命などの社会変動が相次ぐことを実証的に研究した。

    チェゼセフスキー博士の研究をさらに深める研究が行われているのを発見したので、その代表的なものを紹介する。

    特に興味深いのは、黒点の極大期の太陽活動の活発化がなぜ人間の活動に影響を及ぼすのか、そのメカニズムを解明した仮説があることである。

    チェゼセフスキー博士と太陽黒点周期説

    チェジセフスキー博士の理論は以前の記事で紹介済みだが、初めての読者も多いので再度要点だけを紹介する。

    太陽活動がもっとも強まる黒点の最大期には社会変動の数も最大となり、黒点が次第に減少し太陽活動も穏やかになるにしたがい社会変動は起こりにくくなるといのがチェジセフスキー博士の理論である。

    チェゼセフスキーは、11年周期と社会変動の連動を4つの時期に分けて解説している。それは以下の4つである。サイクルマガジンの前掲の論文を一部訳出した。なお、原典であるチェゼセフスキーの著作が発表されたのは1920年代の始めであるため、記載されている出来事も1920年までである。

    第1期(黒点最小期)


    この時期の特徴:

    ・大衆の統合性の欠如
    ・大衆は政治的、軍事的な問題に関心を示さない
    ・穏やかで平和的な大衆
    ・寛容で忍耐強い大衆

    こうした特徴のもたらす結果:

    正しい思想を守るために戦うことの情熱の欠如。闘争を放棄し簡単に断念してしまう。

    この時期に現れる社会的な現象:

    平和条約の締結、降伏、占領、問題解決の場としての議会の活発化、独裁や専制の強化、少数エリートによる統治の強化

    第2期(黒点増加期)

    この期間は複雑な特徴を示す。

    この時期の特徴:

    ・新しい指導者などが出現して大衆は次第に団結する
    ・政治的、軍事的な扇動が行われる
    ・新しい方針や計画が試される
    ・報道機関の影響力の拡大
    ・政治的、軍事的な問題が持ち上がり、大衆はそれに強い関心をもつようになる
    ・大衆は神経質でいらいらしているため、この時期の後期になると社会は次第に荒れて来る

    期間がどのくらい長くなるかは、黒点の活動やさまざまな社会的な要因に依存して変動する。また、この時期には多く見られる政治的、軍事的な現象は、共通の敵に対処するためにいくつかの国々が新しい安全保障条約を締結したり、また、異なった政治団体が共通の敵に対処するために団結して一つになるような現象である。

    この時期には以下の三つの特徴が顕著になる。

    1)大衆を引き付ける新しい思想や考え方の出現
    2)このような思想の新たなグループ分け
    3)思想的な傾向の異なるさまざまな集団が結集することができる統一した思想の出現

    しかし、この時期の大衆運動は特定の指導者が出現することなく自然と盛り上がることがある。これは第三期に大衆運動がどのように発展するのか左右する重要なポイントになる。

    第3期(黒点最大期)

    この時期は、戦争などの国家の狂気が実行されやすい時期であり、また偉大な事業が達成される時期でもある。歴史を決定的に転換した大戦争や大革命などは大抵この時期に起こっている。この時期の特徴は以下の5点に集約される。

    1)政治的、思想的な指導者が出現し大衆に大きな影響を与える
    2)大衆に大きな影響を与える思想の出現
    3)思想の中心センターのようなものが出現し、大衆を鼓舞するゆになる
    4)大衆運動の拠点が多数出現する
    5)大衆は結集して団結し、自己主張を始める

    第2期には何をやっても関心を示さなかった大衆が、指導者の一挙手一投足にも敏感になり、指導者が指示を出すだけで巨大な軍隊が動く。

    このような特徴の結果、この時期には歴史に残る政治指導者や精神的な指導者、または建国の父などのような突出した人物が多数出現する。

    この時期になると、ほんの2~3年前までまったく注目されなかったような思想にいきなり多くの人々がとりこになり、これに基づく社会運動が勃興する。

    大衆ははるかに気が短くなり、自分たちの目標の実現の障害となるものはすべて破壊し突っ走る。暴動、革命、衝突など流血を伴う惨事が相次ぐ。大衆運動に対するいかなる抵抗も無意味に終わる。

    一言で言うとこれは、大衆が無政府主義的になり感情を爆発させてしまうということである。感情のこの高ぶりの中で、大衆は自己防衛の本能さえ失って暴走する。

    しかしながら、このような激しい運動の渦中で困難な社会的な問題が一気に解決されるようになる。

    チェゼセフスキーは、黒点最大期にはこのような特徴の結果として、革命、暴動、大殺戮、戦争、新しい指導者の出現、反乱、社会変革、専制政治への反発、移民、処刑などの激しい現象が発生するとしている。

    第4期(黒点減少期)

    他の期間におとらずこの期間も大変に重要である。第3期に始まった大衆のさまざまな運動は大きな転換点を向かえる。これまでの情熱が消えうせ、その代わりに無関心と無気力が支配し、社会変動にあきあきした大衆の間では平和への機運が高まる。「気力の喪失」というのがこの時期を特徴ずける言葉だろうと博士はいう。

    しかし、革命や内乱などの社会運動は、それが消え去る前の最後の輝きの時を向かえることもある。

    このように、太陽黒点の11年周期のサイクルと社会変動とは無視できないほど連動している。

    むろん、どんな社会的な出来事にも固有の原因と複雑な背景がある。その発生は太陽黒点の増減だけで説明できるような単純なものではないことは確かである。

    だが、社会変動を数百年の長いスパンのサイクルで俯瞰敵に眺めると、太陽黒点の増減周期との驚くべきシンクロが存在しているというのがチェゼセフスキーの説である。

    現在のサイクル


    では、現代の黒点周期と社会変動はどうなのであろうか。そこにはなんらかの連動が見られるのだろうか?

    答えはイエスである。下が近年の太陽黒点の周期である。

    いま

    これに、近年の起こった歴史的な事件を当てはめてみるとやはり黒点最大期に大きな社会変動を誘発する事件が集中していることが分かる。

    代表的な出来事:

    ・1989年 ベルリンの壁崩壊
    ・1990年 東ヨーロッパ社会主義圏崩壊
    ・1990年 第一次湾岸戦争開始
    ・1991年 ソビエト崩壊
    ・2001年 9.11同時多発テロ
    ・2001年 アフガン攻撃開始
    ・2003年 イラク攻撃開始
    ・2004年 スペイン列車爆破テロ

    黒点最小期にも事件は起こっているだろうが、記憶に残るほどの大事件は少ないように思う。ただ1995年は日本でオウム真理教のテロなどが起こった年だが、これは逆に黒点最小期に当たっている。

    チェゼセフスキー理論が説明していない点


    チェゼセフスキー理論は実に興味深いが、説明されていない点もあるのも事実である。それは、太陽黒点周期がどうして人間の活動に影響を与えるのかそのメカニズムの解明だ。

    実は、それを解明する糸口となる仮説を提示しているのは医学や医療の研究者の集団であった。

    ジョージ・クリエ博士とグレゴリウス・ラコフスキー

    チェゼセフスキー博士の理論にいち早く注目し、これを証明する仮説を提出したのがジョージ・クリエ博士とグレゴリウス・ラコフスキーだ。ちょっと内容が複雑だが紹介する。

    クリーブランドの著名な外科医、ジョージ・クリエ博士の理論によると、基本的に細胞は絶縁体と誘導子を備えた発電機であるという。そしてそれは発振回路として作動するのだという。発振回路とは、外部からエネルギーが与えられたとき特定の周波数の固有振動数で振動する回路のことである。その意味では細胞は水晶振動子やセラミック発振子と同じ性質をもつ。そして、この回路の伝導体は、周囲に磁場が形成されるとインダクタンス(誘導子)をもつ。そのような回路からは、波としてエネルギーが放出されるとクリエ博士は考えた。

    また、20世紀の始めから半ばにかけて、代替医療の確立につとめ、さまざまな医療器具を開発したグレゴリウス・ラコフスキーも、細胞の細胞核は発振回路であるという結論に達した。細胞核は、小包体、染色体、ミトコンドリアなどの絶縁体や伝導物質でできており、それは固有振動数をもつ発振回路である可能性が大きいのだという。

    クリエ博士やラコフスキーによると、太陽の放射こそ細胞を振動させているエネルギー源ではないかという。黒点の増大期に入り、巨大な太陽フレアが発生し、磁気嵐が地球に向けて放射されると、人間の新陳代謝が大き影響を受けるという。

    すでに、細胞核内のミトコンドリアは摂取した糖や脂肪、アミノ酸を酸化分解して電子伝達系という経路で電気的な力として蓄えることはよく知られている。これがアデノシン3リン酸(ATP)というエネルギー源だ。これは体内で分解するときに約800カロリーのエネルギーを放出する。このATPの生産は電子とイオンの力を借りて行われる電気的な過程だ。このため、このプロセスが磁気の影響を受ける。

    したがって、黒点極大期に入り、磁気嵐の発生や太陽放射の増大などで磁気が強くなると、このATPが多く産出され、新陳代謝が活発になるというわけだ。

    簡単な要約

    筆者は生物学には弱いのでちょっと複雑な解説になってしまったが、簡単に要約すると、生物の構成単位である細胞は、特定の周波数で振動する電磁気的な発振回路であり、それは高い周波数の放射を放出したり取り込んだりすることができるということだ。このメカニズムに、黒点極大期に増大した太陽放射や磁気嵐が大きな影響を与え、生物の新陳代謝が活発になるというわけである。

    この新陳代謝の活発化ということが背景となり、チェジェセフスキー博士が確認した通り、黒点の極大期に入ると社会的な事件や出来事に対する人間の反応が変化し、暴動や革命などの社会変動の増加となって現れるとことなのかもしれない。

    創造性と黒点の相関関係


    さらに、チェゼセフスキー博士の太陽黒点周期と社会変動との相関関係を確認した研究も行われている。

    1990年、ゲッチンゲン大学のスートベルト・エルテル教授は、西暦600年から1800年までの期間の科学、文学、そして絵画の発展と、黒点周期の相関関係を研究し以下のような結論を得た。

    1)ヨーロッパ、及び中国の調査では、文化の隆盛には明らかな断続性が存在している。そしてそれは明らかに太陽黒点周期と相関している。

    2)黒点周期に合わせて、絵画、文学、そして科学などの分野における創造力の爆発は、10年から15年の期間で断続的に現れている。

    3)この創造力爆発の断続性の周期は、代表的な芸術家や科学者の出現にも見られる。彼らは太陽黒点周期に合わせて周期的に出現し、極小期にまた消え去る。

    このような点から、太陽黒点の極大期には人間は活発となり、創造性も刺激されることが分かる。


    では今年は?

    2009年には、多くの予測が、世界的な不況の深化に国民が激怒し、ウェッブボットの「地獄の夏」のような暴動や反乱が発生すると予測した。

    確かにギリシャなど一部の地域で暴動は起こったものの、世界のどの地域でも国民は比較的に穏やかで冷静であり、予想された社会的な変動は発生しなかった。

    金融危機以降の大変な失業率にもかかわらず国民がおとなしかった背景の一つに、2008年初頭から2009年7月までの約1年半、黒点が完全に消える無黒点期が続き、太陽活動が思いのほか静かであったことが上げられる。

    昨年とはうって変わって、いま太陽活動は非常に活発である。毎日20から40の黒点が出現し、1月24日には久々にMクラスのフレアを発生させた。

    ということは、チェゼセフスキー博士のいう第3期の黒点最大期の次第に突入する可能性が大きい。これから夏にかけて大きな社会変動が待っているのかもしれないのだ。

    コルマンインデックスでは、2010年7月17日から11月3日にかけてコジミックコンバージェンスと呼ばれる現象が発生し、既存の経済システムを国民自らが放棄をするような意識変化が起こるとされる。はからずもこれは黒点の増大期と一致しているのかもしれない。本当に意識変化が起こるのだろうか?

    やはり興味はつきない。

    高島康司講演会

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    テーマ:歴史と予言 - ジャンル:学問・文化・芸術

    番外編 マヤ長老評議会のインタビューなど

    1月25日

    いつものように更新が遅れてしまった。なかなかうまく行かないものである。読者の方々にお詫びするしかない。

    本の出版のお知らせ

    marx

    「いったい世の中どうなっているんだ!こんな時はマルクスに聞け」高島康司著

    定価¥ 1,470 道出版

    体裁としては「資本論」の解説書のような本だが、マルクス礼讚の本ではない。われわれはこれからなんとしてでもサバイバルして行かねばならない。そのための状況認識のための書として有効だと思う。よろしかったらぜひどうぞ!

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    「予言解説書12」が完成しました。配信をご希望の方は筆者に直接メールしてください。これは12月6日に配信されたALTAのレポート、「来るべき未来の形 0巻3号」の詳細な要約です。

    今回のレポートは差し迫ってきた「ドルの死」以降の訪れる社会混乱と秘密の暴露が大きなテーマです。

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    1月31日の講演会

    雑誌「アネモネ」から講演会をまた依頼された。1月31日の日曜日に開催される。

    日時 2010年1月31日(日)14:00~16:00(開場13:30)
    場所 池上会館2F 第2会議室 東京都大田区池上1-32-8
    ■東急池上線池上駅より徒歩7分
    ■JR京浜東北線大森駅西口から池上方面行きバスで
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    昨年までは、危機の発生から資本主義のさまざまなシステムが崩壊するという崩壊型の予測が出回っていたが、そうした崩壊型の予測や予言は、実現の時期がずれたか、または的中しなかった。

    システム全体が崩壊する危機はなかった。しかし、それにもかかわらず、地域通貨圏形成への動きなどドル基軸通貨体制がほころびるスピードは予想を越えて加速化しつつある。既存のシステムが崩壊の危機を向かえることなく、急速に別のシステムへと移行するという過程に入っているように思われる。そしてそれは、脱消費社会へと向かう大きな意識変化を伴う可能性がある。

    今回の講演会では、こうした点を徹底的に深め、今後数年間にわれわれがどのような社会に住むことのなるのか解明する。

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    CIA系のシンクタンク、ストラトフォーは期間が異なる2つの予測を公表した。一つは2010年の予測であり、もう一つは2010年から2020年までの長期予測である。今回の記事では、後者の長期予測を解説した。

    ストラトフォーはアメリカの情報機関系のシンクタンクなので、極めて愛国的な姿勢が強い。そうした姿勢が災いしてか、アメリカに関する予測はあまりに楽観的で参考にはならない。だが、世界全体や他の諸地域に関しては質の高い分析を提供している。

    今回のストラトフォーの長期予測は、アメリカ以外のどの地域にも厳し目の予測を行っているが、中でも日本に関する予測は特に厳しい。2010年以降、労働力人口の減少と国内消費の縮小で日本はさらなる低迷期に入る可能性があるという。そして日本は「なにを国是とした国なのか、その国家としてのアイデンティティーが問われるところまで追い込まれる」だろうとしている。このようなことを詳しく解説した。

    今回の記事


    中国とASEAN(東南アジア諸国連合)との自由貿易協定であるCAFTAがスタートした。これは不気味なほど日本では報道されていないが、海外の主要メディアでは大きく取り扱われている。地域通貨経済圏形成の動きは予想以上のスピードで進展している。この動きを紹介する。

    また、マヤ長老評議会のスポークスマンであるカルロス・バリオスのインタビューが環境異変報告サイト「Earth Change Media」に掲載された。これも紹介する。

    CAFTA(中国ASEAN自由貿易協定)の始動

    日本では不気味なほど報道が差し控えられているようだが、2010年1月1日をもってCAFTA(中国ASEAN自由貿易協定)が始動した。これは昨年の8月、中国とASEAN10カ国が調印した「中国ASEAN自由貿易区投資協定」の合意を受けて設立されたものである。

    CAFTAは、中国とASEANで現在取引されている製品の90%にあたる7000品目の関税を域内で全廃し、完全な自由貿易を実現するとする協定である。

    最初は、中国、タイ、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、フィリッピン、シンガポールの7カ国でスタートし、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの4カ国は2015年に参加する予定だ。

    CAFTAは、EUとNAFTA(北米自由貿易協定)の規模を抜き、19億人の人口と6兆ドルの経済規模を有する世界最大の経済共同体となる。

    このように、CAFTAは中国と東南アジアがまさにEUのように一つの域内市場として統合される経済共同体である。域内貿易の決済通貨はしばらくはこれまで通りドルが使用されるが、将来的には元に変更され、現在のドルをベースにした基軸通貨体制とは異なる元決済圏が誕生する見込みとなった。

    すでに、決済通貨の将来的な変更を見込んで、中国政府は雲南省と広西荘族自治区にASEAN諸国との貿易の決済通貨に元を使用することを許可し、またマレーシアとインドネシアとの間でそれぞれ800億ドルと1000億ドル相当の、中央銀行間で自国通貨を相互に預けあうスワップ協定を締結した。

    韓国と日本

    CAFTAを設立した中国は、この共同体を今度は東アジア全域に拡大すべく、韓国と日本にアプローチしている。

    韓国はこれに近い将来参加すべく積極的な検討を開始し、また日本もオーストラリアとニュージーランドの参加も提案するなど非常に前向きな姿勢を見せている。

    ASEANー東アジア元決済圏の誕生か?

    このような動きがスムーズに進むなら、おそらく遅くとも2015年前後には、中国と東アジア、そして東南アジアの全域をカバーし元を基軸通貨とする巨大な経済圏が誕生する見込みが非常に強くなった。元決済圏ともいえるものである。

    民主党政権

    現在の民主党政権はこうした動きに非常に前向きである。民主党ははるか以前から世界の多極化の動きをにらんだ政策を提示しており、そうした民主党から見ると、東アジアーASEAN共同体への参加は自然な方向である。

    2004年に同党が提示した「創憲案」といわれる新憲法草案の序文などを読むと、民主党は東アジアーASEAN共同体を経済のみならずEU型の政治的な統合体として発展させることも念頭にあるようである。そのためには、EUのように一つの共同体全体として防衛や外交にあたれるように、国家の独立性の前提となっている主権を制限し、これを「縮減」する方向を明確に示している。以下が「創憲案」の序文の一部である。

    21 世紀の新しいタイプの憲法は、この主権の縮減、主権の抑制と共有化という、『主権の相対化』の歴史の流れをさらに確実なものとし、これに向けて邁進する国家の基本法として構想されるべきである。国家のあり方が求められているのであって、それは例えば、ヨーロッパ連合の壮大な実験のように、『国家主権の移譲』あるいは『主権の共有』という新しい姿を提起している

    すなわち、東アジアーASEAN共同体をEU型の政治経済共同体にまで発展させ、それに日本を埋め込むといういうのが民主党のかねてからの政策である。

    日本社会の将来、加速する2極分化

    成長する輸出型企業


    アジア全域が巨大な共同体に統合された場合、むろん日本には参加しないで孤立する選択も残されているだろう。

    だがそうした場合、日本製品にだけ高額な関税が適用されるため、日本は広大なアジア市場から締め出される結果となる。かつては、金融テクノロジーでバーチャルに作り出されたアメリカの消費需要が世界経済の要であったが、金融危機以降はその市場も大きく縮小しているので、日本も東アジアーASEAN共同体の統合市場に依存しなくてはやって行けなくなるはずだ。その意味では、孤立化は現実的には不可能で、日本はこの共同体に参加するほかないことになる。

    では日本が参加したら日本はどうなるだろうか?むろん、日本の企業には広大なアジア市場がアクセス可能になる点ではプラスだ。

    たとえば、いま中国では車の販売が世界で一番伸びており、日本車も軒並みシェアを大幅に伸ばしているが、すべての外国車には100%の関税が課されている。つまり、中国では売られている日本車は日本の国内価格の2倍である。日本の東アジアーASEAN共同体への参加でこうした関税も撤廃となるため、日本車のような日本が比較優位をもつ製品は、東アジアーASEAN共同体でシェア率を大きく伸ばすことができ、そうした製品を製造する日本企業は大きく成長することができるだろう。

    いっそう開かれる労働市場

    さらに、域内関税の撤廃とともに、各国の国内規制の撤廃が促進し、労働力市場も広く開かれたものになる可能性が出てくる。つまり、アジア圏全域で労働力の安い地域に生産拠点を移動させ、そこで生産するというグローバルな生産体制の構築がはるかに容易になるということだ。これにより、国際競争力のある日本企業は、現在よりもさらにいっそう国内に残存している生産拠点の海外移転を行い、競争力の強化をはかるだろう。

    危機に瀕する国内型企業

    しかし、輸出で比較優位をもたない国内型の企業はどうだろうか?こうした企業にはまったく反対の現実が待っている。

    東アジアーASEAN共同体の形成で域内関税が撤廃されるか、または低率になると、アジア圏全域から製品が怒涛のように日本市場に輸入されてくる。それらの製品は低価格で品質の高い製品であることに間違いない。国内型企業は、アジア製のそうした製品に圧倒され、多くの分野で企業の淘汰が進む可能性が大きい。

    加速する2極分化

    海外に生産拠点を移した国際競争力のあるグローバル企業とは大きく異なり、生産拠点をいまだに日本国内にもつ国内型企業は、雇用のもっとも重要な受け皿である。

    しかしながら、こうした企業の停滞と淘汰で雇用は悪化して国内の失業率は増大し、また賃金も下落する可能性が大きくなる。

    また、日本国内でいくら賃金が下落したとしても、中国や東南アジア諸国の水準まで賃金が下落するとは考えにくい。なので、アジア圏の他の国の企業が日本の労働力市場を目当てにして生産拠点を日本国内に移転させる可能性は非常に低い。すると日本では、高失業率と停滞が恒常的な状態として定着する可能性が出てくる。

    すでに日本の経済は、1)国際的な競争力のあるほんの一握りのグローバル企業が主導する領域と、2)国内市場をメインにした国内型企業の領域とに2極分化しつつあるが、東アジアーASEAN共同体への参加で、ほおっておくとこの2極分化がいっそう拡大する可能性が出てくる。そうなると、多くの若年層にとっては、国内で就職の当てがほとんどないので、賃金が安くても生活費がはるかに低い他のアジア圏の地域に移民することすら一つの選択となってもおかしくない。

    国のアイデンティティーの再定義と成長戦略の練り直し

    東アジアーASEAN共同体への参加は、日本にとってはこれだけではバラ色の未来を拓く選択ではないことは明らかだ。だがだからといって共同体への参加を拒否し、孤立を選択するなら、それは巨大な市場から完全に締め出され、さらに窮乏化するといういっそう悪い結果をもたらすことは目に見えている。

    戦後、日本は重化学工業や家電、自動車などの耐久消費材産業に特化し、これの世界の生産拠点となる戦略で発展してきた。それを主導したのは、政府の中央集権的な経済産業政策であった。

    しかし、1990年代の前半以降、1)製造業の新たな拠点としての新興国の成長、2)世界でメインとなる産業のIT産業への移動などの変化で、日本の成長をけん引してきた重化学工業と耐久消費材産業は国際的な競争力を大幅に失い、世界経済の新しい環境に適応できないまま、20年近くの歳月が流れた。

    東アジアーASEAN共同体の創設は、世界の環境がさらに変化することを意味する。そのような激変する国際環境の中で、かつては「製造業大国」として自らをアイデンティファイしていた日本だが、新しい環境の中で生き残り、成長するためには「どのような国になるのか」国家戦略を再定義しなければならないだろう。


    もし、その再定義に失敗し、これまで通りの「テクノロジーが優秀な製造業大国」というアイデンティティーから抜け出せないのであれば、CIA系のシンクタンク、「ストラトフォー」の「2010年~2020年予測」にある以下のような予測が的中してしまう恐れがある。

    「日本はこれから人口の減少に基づく消費需要の低迷と労働力人口の減少に見舞われ、これまで以上の低迷期に入る可能性が大きい。<中略> この結果、2020年までに何を国是にした国なのかという本格的な存在の危機、いわばアイデンティティークライシスに直面せざるを得ない。つまり、自分たちはなにものであり、結局日本はという国はなんなのかという存在論的な問いである」

    こうした問題は時間が経てば自然と解決するという問題ではまったくない。1945年の敗戦に匹敵するような歴史的な決断を行うことが、ここ数年で要求されてくることだろう。そしてその決断いかんによって日本の未来も変わってこよう。

    マヤ長老評議会スポークスマン、カルロス・バリオス師のインタビュー

    1月24日、環境異変報告サイトの「Earth Change Media」はマヤ長老評議会のスポークスマン、カルロス・バリオス師のインタビューを掲載した。

    インタビューは有料の音声ファイルとして入手可能だが、録音状態があまりに悪く、またカルロス・バリオス師のものすごいスペイン語訛りの英語で聞き取りは実質的に不可能な状態である。

    このため、「Earth Change Media」の主催者であるミッチ・バトロスが書いたインタビューの解説記事をもとに要約する。実際のインタビューははるかに長い。いずれインタビュー全文が掲載されるだろうから、そのときに改めて紹介する。

    インタビュー

    マヤカレンダーは2010年12月21日に終わることになっているが、はじめに、マヤカレンダーの終わりが何を意味していないのかを明確にしておきたい。

    第一に、マヤカレンダーの終わりを世界の終わりではない。マヤカレンダーが終了しても、世界はそのまま続いて行くし、われわれの生活も続く。ただ、これまでとは少し違ったルールになるだけだ。

    したがって、2012年12月21日という特定の日に何かが起こるというわけではまったくない。12月21日は19日や22日となんら変わらない普通の日として過ぎるであろう。マヤカレンダーの終了日が表しているのは、変化が集中して起きる特定の日ではなく、変化が現れる全体の期間を指し示しているに過ぎない。

    この変化の期間は、人類が調和を失ったとして(神から)懲罰を受けるということでもない。人間が精神的な成熟過程に入るために、これまでの生き方の方向を転換することが迫られるだけである。

    また、人間には運命を自ら変える力が備わっている。未来の選択はわれわれ自身の手にゆだねられている。

    アセンションへの道だが、これは雲の上で起こるような夢物語りではない。多くの人間にとってそれは、自分の本来の姿に気づくために、困難を現実に経験するという過程となって現れる。

    マヤカレンダーが象徴する変化の過程はすでに始まっている。これから大きな環境変化が多くの自然災害とともにやってくるだろう。それは、カリフォルニアのニューマドリッド断層、米国西海岸のカスカディア沈み込み地帯、プエルトリコ沈み込み地帯、カスカディア火山帯、そしてイエローストーンスーパー火山などのエリアがいっせいに活動を開始することを意味する。

    ハイチの巨大地震はプエルトルコのすぐそばで発生したが、これはプエルトリコ沈み込み地帯の地震ではない。これは別な地震として改めて発生する。

    そうした自然災害と環境異変は、地球がこれまでの汚れを洗い落とし、浄化して調和を取り戻すためにどうしても必要なことなのだ。

    ところで、ハリウッド映画の「2012年」はまったくのファンタジーで、本来のマヤカレンダーの意味をまったく反映してはいない。いまはそのようなファンタジーに恐怖するときではない。現実の変化の過程がすでに始まっているのだ。

    パニックに陥ってはならない。自分が本来なにものであるのかを意識し、われわれが現在の道を歩むことで自分が心から満足するのかどうか、いまこそ真剣に問わなければならないのだ。これには絶対的に正しい一つの正解など存在しない。個人それぞれに異なった解答があってしかるべきだ。

    以上である。ミッチ・バトロスの記事は内容が断片的だったので、それに合わせて翻訳も十分に要を得ないものになったが概要だけは理解していただけたかと思う。要するに、すでにわれわれはマヤカレンダーが終了する大変化の時期に入っており、これから地球が調和を取り戻すための大規模な自然災害がもっと多発するということである。

    さて、どうなるであろうか?

    続く

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    第六の夜にむけて10

    1月15日

    忙しさにかまけており、今回はこれまでにないくらい更新が大幅に遅れてしまった。いつものことだと言われそうだが、読者の方にはお詫びしたい。

    本の出版のお知らせ

    marx

    「いったい世の中どうなっているんだ!こんな時はマルクスに聞け」高島康司著

    定価¥ 1,470 道出版

    体裁としては「資本論」の解説書のような本だが、マルクス礼讚の本ではない。われわれはこれからなんとしてでもサバイバルして行かねばならない。そのための状況認識のための書として有効だと思う。よろしかったらぜひどうぞ!

    予言解説書12の有料配信

    「予言解説書12」が完成しました。配信をご希望の方は筆者に直接メールしてください。これは12月6日に配信されたALTAのレポート、「来るべき未来の形 0巻3号」の詳細な要約です。

    今回のレポートは差し迫ってきた「ドルの死」以降の訪れる社会混乱と秘密の暴露が大きなテーマです。

    通貨としてのユーロの崩壊の可能性も示唆されています。

    info@yasunoeigo.com

    有料メルマガのご紹介

    更新が遅れたため、今期は2週分のメルマガをご紹介する。

    1月1日の配信分

    まず、1月1日に配信した分だ。この記事では、経済の崩壊を予告する崩壊型の短期予測がすべて外れたことを改めて確認した。こうした予測の多くが外れた理由は、予測が状況判断の分析に基づいた論理的な予測であったからにほかならない。論理的な予測が警告する危機とは、いわば想定内の危機のことである。それが想定内であるということでは、政府ならびに関係機関が危機を回避する処置をとることができる。そのようにして多くの予測された危機が実際に回避されてきたというのが崩壊型の予測や予言が的中しなかった理由であろう。

    一方、歴史の長期的な傾向分析に基づく長期予測が存在している。コルマンインデックス、チェゼセフスキー博士の太陽黒点周期説、サイクル研究所のサイクル理論などがそうだ。そうした長期予測から明らかになる歴史の傾向性は否定しようもなく、これに基づく予測は状況判断に基づく崩壊型の短期予測よりもはるかに的中率は高い。1月1日の記事では、数々の長期的な傾向に基づいた2010年の予測を行った。

    1月8日の配信分

    この週はロシアの動きに関する最新の情勢を伝えた。CIA系のシンクタンク、ストラトフォーを始め、多くのシンクタンクは今年はロシア復活の大きな年になると予想している。グルジア侵攻のように、ロシアは資源外交にものをいわせ、旧ソビエトの勢力圏を回復する拡大を続けていた。だが、金融危機以降、ロシア経済は大打撃を受け外延的な拡大は止まっていた。

    だが、昨年の後半からロシア経済は次第に賦活し、政府の大規模な不良資産処理が成功して予算に十分な余剰ができたため、今年ロシアは積極的な拡大路線に戻ることが予想されている。

    昨年の12月25日、これを証明するかのように、ロシアはカザフスタンとベラルーシの間に関税同盟を結び、ロシア版自由貿易協定(FTA)の形成をねらっている。近い将来的ロシアはこの協定を旧ソビエトの他の共和国にも拡大し、「統一市場経済圏」というEU経済圏とは異なる経済ブロックの創設を目指す計画であることを明らかにした。

    前回は、2010年はこの構想に基づき、ロシアの外への拡大が加速する年になることを解説した。

    今回の記事

    書きたいことはことは山ほどあるが、今回はこれまで続きを書くと約束しながら果たせなかったヒストリーチャンネルがネクスト・ノストラダムスと呼ぶ男、ブルース・ブエノ・デ・メスキータのゲーム理論とその予測手法について書く。

    ネクスト・ノストラダムス、ブルース・ブエノ・デ・メスキータ

    ブルース・ブエノ・デ・メスキータに関しては以前に記事で書いた。少し前の記事なので内容を忘れた方も多いだろうから、ブルース・ブエノ・デ・メスキータが誰なのか紹介する。

    メスキータはネクスト・ノストラダムスと呼ばれているが、サイキックや予言者ではまったくない。ニューヨーク市立大学教授の政治学部の教授であり、CIAの情勢予測の分析官、さらにエール大学ハドソン研究所の主席研究者でもある。また、自分のコンサルティング企業のCEOでもあり、一般企業向けに予測分析を提供している。

    90%を越えるメスキータの的中率

    メスキータは、数学のゲーム理論を用いて政治交渉やビジネスの交渉の結果を予測し、また自分の望む交渉結果にもって行くための条件を提示する研究を行っている。

    メスキータはこの手法に基づいてさまざまな予測を的中させて来た。89年の冷戦終結時期の予測、93年のパレスチナのオスロ合意、94年の北朝鮮との政治交渉、03年のイラク侵略の開始時期などさまざまな交渉や政治情勢の行く末を予測し、CIAの公式発表では90%を越える的中率であるという。

    メスキータの手法

    メスキータの予測手法はゲーム理論と呼ばれる数学のモデルに基づいている。したがってそれはコンピュータの解析によって導かれる予測であり、複数の国家や利害集団が対立しているような状況であれば、政治やビジネスを問わずどんな場面にも適用可能であるという。

    だが、メスキータの手法が複雑で難解かといえばそうではない。逆に驚くほど単純なのだ。

    メスキータの理論の前提

    メスキータの理論は非常にシンプルだが、現実的な前提から出発する。それは以下の前提である。

    どんな交渉でも、それに参加している人間たちは出身文化や背景の違いとは関係なく、以下の2つの利害関心を基本に行動する。

    1)結果が自分にもたらす利益
    2)自分の名声を高めること


    メスキータは言う。「人間が公共の福祉のようななんらかの善意で行動することは非常にまれである。そうしたケースがあったとしても、政治交渉やビジネスの交渉ではほとんど見たことがない。人間は徹底的に利己的であり、自分の利害を追求するためにはとことん合理的になる存在であると理解すべきだ」

    そのような利己的な人間たちが交渉に入るとき、次の4つのポイントが重要になるという。

    1)交渉に参加している意思決定者(プレーヤー)
    2)意思決定者の目的(目的)
    3)問題の優先順位(優先順位)
    4)意思決定者の影響力の大きさ(勢力)


    さらに、交渉に参加している意思決定者には以下のような相互関係が成り立つ。

    1)交渉に参加している意思決定者相互の関係


    交渉を有利に進めるため、交渉に参加している意思決定者は、何を考えているのか相互に相手の手の内を知ろうとする。例えば、ABCDの4人の参加者がいる協議だとすれば、AはBCDの手の内を、BはACDの手の内をというように、全体では126通りの手の内を知ろうとする関係が成り立つ。参加者が10名の場合であれば、300万通りを越える関係が成り立つという。

    2)意思決定者に影響を与える人々


    もとより意思決定者は、一人ですべての情報を集め決定しているわけではない。意思決定者には複数の補佐役が存在しており、彼らの意見が意思決定者に大きな影響力をもつ。これら意思決定者はの複数の補佐役の間にも上記の1)から4)の関係が成り立つ。

    これらすべての項目の知識を複数の専門家をインタビューして手に入れる。例えば北朝鮮の6カ国協議であれば、北朝鮮問題の専門家、ならびに中国やロシアの専門家から金正日などの指導者と彼らに影響を与えている補佐役の情報を得る。

    不要な社会的背景の知識

    ここで非常に興味深いことに、メスキータは文化や社会的背景に関する知識は予測にはほとんど必要がないと断言する。メスキータによると、出身文化や価値観がどれほど異なっていても、人間は基本的に徹底的に利己的であり、また合理的に行動するので、どの人間の行動パターンもほぼ近似的なのだという。

    数値化

    ところで、これらすべての情報を得た後これを数値化する。数値化は任意の数値を割る降ることで行われる。例えば、上記3)の「優先順位が」では、ある意思決定者では問題の優先順位が他のメンバーに比べて相対的に低い場合、1から10のスケールで3とし、その問題に一番高い優先順位を与えているメンバーには10というようにである。これをすべての項目で数値化する。

    アルゴリズム

    数値化したデータは、特殊なアルゴリズムを用いたソフトで処理され、現在の条件で交渉が続いた場合、最終的にどのような結果になるのか予測される。その最終結果にいたる時期も算定されるという。その予想結果の的中率が90%を越えているのというだ。

    メスキータは自分が開発したアルゴリズムは企業秘密として公開していないと言っているが、彼の同僚の研究者の話では、メスキータのアルゴリズムは多くの専門的な論文に掲載されており、研究者であればすぐに手に入れることができるはずだという。

    予測結果


    メスキータは最近「Predictioneer's Game」という本を出した。日本語だと「予測者のゲーム」という訳になるであろうか。メスキータの注目度が高まるにつれて、本もベストセラーになっている。

    筆者も読んだが、実に面白い本であった。この本には、現在の世界の問題のいくつかがこれからどのような展開になるのか予想している。また本には過去に起こった対立や交渉をこのソフトで予測した場合、どのような結果になるのか予測もしている。以下である。

    過去からの予測

    米ソの冷戦の結果


    ちょうど米ソの冷戦が始まった1948年に入手可能なデータだけを使い、冷戦の将来に行方を分析した結果、1989年から90年前後にほぼ70%の確立でアメリカが冷戦に勝利し、冷戦が終結するという結果になった。

    1914年の第一次世界大戦

    もし1914年夏に、イギリス海軍がエーゲ海に親善の航海を行ったならば、サラエボでオーストリア皇太子の暗殺が起こったとしても、大規模な戦争にはいたらなかったという結果になった。

    未来の予測

    イランの核兵器開発に関して


    イランの権力構造ではアフマディネジャド大統領の順位は決して高くはない。18位である。このまま行くと、イランは2010年後半から2011年前半にかけて、核爆弾を1個だけ作ることのできるウランを濃縮するが、実際には核爆弾の製造は行わない。アメリカもこの状態を容認し、イランを受け入れる。

    また、イランの権力中枢で大きな変化が起こり、アフマディネジャド大統領などの強硬派の影響力は決定的に弱まる。強硬派に代って、穏健派、それも「静穏派」と呼ばれているこれまでまったく注目されてこなかったもっとも穏健な宗教者の派閥が権力を握る。

    興味深いことに、イランに対する海外からの制裁や圧力などがまったくないほうが、こうした理想的な状態に早く到達する。2010年には実現する。一方、海外からの圧力がある場合、この状態の実現は2011年までずれ込むことになる。


    パキスタンのタリバン掃討

    パキスタンはいっけん政情がとても不安定なように見えるが決してそうではない。政府がアメリカを援助し、タリバンの掃討に気乗りしないだけである。

    その一番大きな理由は、アメリカを援助して得られる利益がタリバンを支持して得られる利益よりもはるかに小さいことが原因だ。したがってもしアメリカがパキスタンへの金銭的な援助を2倍に引き上げるならば、パキスタン政府はタリバン掃討に積極的に協力することになるという結果が出た。

    パレスチナ問題


    いっけん解決が不可能なように見えるパレスチナ問題であるが、すべてのデータを入力し解決策を探ったところ非常に興味深い結果が出た。パレスチナとイスラエルの紛争地帯に観光客を積極的に呼び込み、そこから得られる収入を6対4の割合でイスラエルとパレスチナで配分すれば長年続いた紛争はおさまる可能性があると出た。

    COP15などの温室効果ガス削減交渉

    126年間交渉しても参加国の合意には至ることはないという結果になった。削減交渉は完全に失敗である。温室効果ガスを排出しないテクノロジーの開発を急いだ方がはるかに合理的である。

    いかがであろうか?これがメスキータのゲーム理論のモデルの予測である。この手法は適用分野が政治や紛争に限定されているわけではない。ビジネスなどあらゆる分野に適用可能だそうである。現在の日本の政治に適用した場合、次の総理が誰になるのか、民主党政権がいつまで続くのか、そして万が一民主党政権が倒れた場合、次はどの政党が政権に就くのかなど、われわれの関心事が90%を越える的中率で予測されてしまうことになる。実に興味深い。

    次回の予告

    このブログでは旧ソビエトのチェゼセフスキー博士の太陽黒点周期と社会変動とが相関関係にあることを紹介して来た。次回はこれを証明する研究が発表されたのでそれを紹介する。できるだけ早く更新するつもりである。

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