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    2008-07

    もしかしたらいまがぎりぎりの分かれ道?1

    今回はいままでにないくらい大幅に更新が遅れてしまった。夏の暑さにはめっぽう弱く、集中力が衰えてしまった。いつものように、ここにお詫びしたい。

    恐ろしく速い変化

    あたかも「マヤカレンダーの進展に伴い時間が加速する」というコルマンインデックスの定式が現実化しているかのように、あらゆる状況が予想を越えた速さで進展している。それはあたかもなにかのスイッチが入れられたかのように急に速くなったかのような印象を受ける。

    それがどこに行き着く流れなのかはまだ判然としない。だが、多くの予言が予知している破滅的なシナリオの他に、はるかに楽観的なシナリオも成り立つ余地があることは大きな希望である。

    いまわれわれが、世界の政治経済システムの転換期にいることは間違いない。だが、前々回および前回のブログで説明したように、その転換が減少する資源の争奪を巡る第一次対大戦型の全面戦争をもたらすのか、またはある程度時間をかけながら、生産、流通、消費を地域経済の範囲で自己循環させるローカリゼーションの方向へと進んで行くのかはまだはっきりとはしない。

    どちらの方向に行くのかはそれに決定的な影響力をもつのが、イラン攻撃とサブプライムローンに端を発する信用収縮、ならびに高騰する原油・食料価格の行方、そして世界同時不況に入る可能性が大きい実体経済の動きである。これらの情勢が今後どうなるかによって、「戦争シナリオ」と「ローカリゼーションシナリオ」のどちらになるか、またはまったく別のシナリオになるのかはっきり分かってくるだろう。

    その判断の一助とするために、今回はストラトフォーの最新予測、ならびにジョン・ホーグとゲリー・ボーネルの最新予言をとりあげる。

    世界経済の現状

    原油はすでに147ドルと史上最高水準を突破し、これに起因したインフレも加速度を増すばかりである。これに伴い、どの国でも実質賃金は低下しつつあり、国内消費も急速に減退に向かっている。世界経済の減速はもはや明らかだ。

    加えて、来週からは米国大手金融機関の決算発表が始まるが、シティーなど巨額な損失を計上し、再度破綻の危機まで追い込まれるところは少なくないとも見られている。来週以降、米国大手金融機関の破綻から始まるが信用収縮が実体経済を引き込み、80年前の大恐慌型のクラッシュがあるのではないかとの観測も多い。

    ストラトフォーの最新予測

    このブログでも何度も紹介しているCIAに分析結果を提供している民間の情報分析機関、ストラトフォー(戦略予測有限会社)は、向こう三カ月の政治経済の最新予測、および「新時代」と題する緊急予測レポートを発表した。特に後者のレポートはストラトフォーには珍しい、時代の大きな変化を暗示したレポートだ。以下にそれぞれのレポートの要約を紹介する。

    ストラトフォーの世界経済予測

    ストラトフォーの三カ月予測レポートは、世界経済ののみならず世界のあらゆるエリアをカバーしている。分量もそれなりにある。どのエリアの分析も非常に興味深いが、長くなるのでここでは世界経済の分析のみを取り上げる。

    ところで、ストラトフォーの予測の信頼性だが、筆者はここのレポートを読んで一年になるが、ほとんど外したことはないように思う。今春、サブプライムローン危機により大規模の金融クラッシュが予想されていたときでも、そのようなクラッシュはありえないことを明確に主張していた数少ないメディアの一つがストラトフォーであった。事実、FRBの予想を越えた緊急融資の発動などによって、クラッシュは避けられた。それなりの信用度はあると思われる。以下が要約である。

    ・米国では信用収縮が始まっている。これにより、今の金融バブルは終焉するだろう。一部の金融機関の破綻は免れないかもしれない。

    ・だが、これにより米国の実体経済が破綻するとは考えにくい。確かに減速はするだろうが、それは経済の一般的な循環における減速の規模を越えることはないだろう。破綻までは行かない可能性のほうが強い。

    ・その証拠に、米国の経済成長率は0.9%から1.0%に上方修正されており、また住宅販売も2%の改善をみせている。

    ・米国経済のこうした強さの背景の一つになっているのは、サウジアラビアからの巨額のオイルマネーが戦略的に米国へと再投資されているからである。

    ・3月から4月にかけてFRBは緊急の利下げを行ったため、現在の政策金利は2.0%である。これは現在の欧州中央銀行の利子率よりも低い。なので論理的には投資が米国に還流するとは考えにくい。

    ・だが、サウジアラビアの莫大な投資が呼び水となって、ある一定レベルの投資の水準が維持されている模様だ。これにより、米国経済が下支えされている可能性が強い。

    ・他方、原油や食料の高騰に起因するインフレは加速するばかりである。これによる国内消費の減退はどうすることもできない。

    ・しかし、原油はこれから安くなる可能性がある。原油高騰の背景の一つは原油先物に対する投機だが、これが起こっている原因の一つは、イラク戦争以降強まっている中東の地政学的リスクである。原油の高騰は米国によるイラク侵略から始まった。イラク侵略によって中東全域が不安定化し、原油の生産が将来的に不安定になる可能性が増したため、将来の原油高騰を期待した投機が盛んとなったのである。

    ・ところが、この一カ月ほどの間で中東の知性学的リスクを大いに緩和させる事態が発生しつつある。宿敵であるシリアとイスラエルは、なんらかの相互不可侵条約を結ぶ可能性がでてきた。またイラクでイランと米国の協力関係が樹立されつつあるため、イラク国内のテロの件数は激減している。このように、中東の緊張は緩和しており、これに伴う地政学的リスクはこれまで考えられないほど小さくなりつつある。この結果、短期的には高騰はしても、原油価格は将来的には次第に安くなる方向に向かうとみられる。

    ・中東の緊張緩和をもたらした最大の勢力はやはりサウジアラビアである。サウジは米国に戦略的に投資すると同時に、シリア、レバノンなど、中東の緊張緩和に不可欠なあらゆる勢力に巨額のオイルマネーを散布し、こうした勢力が和平のテーブルにつくように強く即している。

    ・サウジアラビアは、主要先進国の経済に極端なマイナスの影響を与えない程度の水準で原油価格を高値で安定させることを国益としている。したがって、イラン戦争が勃発し原油価格が急騰し、先進国経済が麻痺することは国益に反する。このため中東全域の地政学的リスクを低下させ、地域全体を安定させようとしているわけである。


    どうであろうか?あまりに楽観的で現実に起こっている事態を正確にとらえていないのではないか、との印象を強く受ける読者も多いことだろう。事実筆者自身、そのような印象を持つ。

    だが、ちょっと視点を変えると別な現実が見えてくることも事実であるように思う。米国の覇権を前提とした現在の世界経済システムが崩壊し、より多極的なシステムか、ないしはそれとも異なった別のシステムへと急速に移行しつつあることは論を待たない。それは歴史的なシステム転換である。それに地球温暖化によって激変する環境という要因が重なっているので、現在の変化は単なるシステム転換ではなく、現代文明の衰勢を表す文明史的な転換になるとも考えることができるだろう。

    しかし他方、このようなシステム転換がどのような過程で崩壊し、変化してゆくのかというその実際のプロセスに関しては様々なシナリオが考えられるのかもしれない。金融システムや実体経済の全面的な崩壊やクラッシュがあり、これを境にして無極化的なカオス、ないしは新しいシステンムの形成へといたるハードランディングのシナリオをイメージしやすい。ストラトフォーが提示しているのは、これとは反対のソフトランディングのシナリオかもしれない。米国の信用収縮と実体経済の大幅な原則はもはや避けられないが、オイルイマネーなどの各国の投資資金に還流によって米国経済を下支えし、よりコントロールされた方向でシステム転換を実現するというものだ。

    イラン攻撃

    ハードランディングになるのかソフトランディングになるのか、それを実質的に決定するのは米国やイスラエルによるイラン攻撃が行われ、なおかつそれが全面的な戦争となって拡大するかどうかにかかっているとも言える。もしイラン戦争が起こった場合、それは1バーレルあたり200ドルを超える極端な原油価格の高騰によって各国経済は機能しなくなり、各国はサバイバルとしての資源の争奪戦に入りざるを得ないことにもなってくる。まさにイラン戦争が勃発するかしないかが、鍵の一つであることは間違いない。

    ストラトフォーのイラン攻撃予測

    ストラトフォーは「新時代」と題する緊急レポートを公表した。それは中東の緊張緩和が進み、この地域が新しい時代に入りつつあることを予告したレポートである。以下がその要約である。

    ・イラン攻撃に関しては攻撃がまじかであることを告げるニュースが多い。6月の半ばにイスラエルは地中海でイラン攻撃を目標とした大規模な演習を実施したり、米国議会がイラン国内を混乱に陥れるかく乱作戦の実行に対して巨額の予算を与えたことなどはそうしたニュースだ。

    ・だが実際には中東全域ではこれまで考えられなかったような緊張緩和が急ピッチで進んでいるのも事実だ。イラクをコントロールするために、米国はイランと長期間交渉しており、その成果が出始めている。今年に入ってから、一時はコントロール不可能と思われていたイラク国内のテロの発生件数は大きく減少し、米国兵士の死傷者数も減少している。これはイランによるシーア派抵抗勢力にコントロールがうまく作用した結果である。イラクは、もはやイランの協力なしには維持することはできなくなっていることを米国ははっきりと認識しつつある。

    ・さらに、これまで宿敵関係だったシリアとイスラエルが、何らかの相互不可侵の条約の締結に向けて動き出した。シリアは、この地域で活発に活動しているハマスやヒズボラなどの原理主理的抵抗勢力の強力なスポンサーである。そのシリアがイスラエルと妥協することは、これらの勢力がスポンサーを失って孤立し、その結果、緊張緩和が進む可能性がおおいにある。

    ・また、7月初旬には1979年以来外交関係が断絶している米国は、イランとの間で相互に高レベルの外交官を交換し、ワシントンとテヘランに連絡事務所を開設することを提案した。これに対し、イラン政府は肯定的に回答している。

    ・こうした動きが可能となったのは、サウジアラビアによる巨額なオイルマネーがすべての当事者に渡され、交渉が円滑に進む背景が形成できたからである。

    ・緊張緩和が進む一方、ブッシュおよびアフマディネジャドの両政権は相互の非難を止めてはおらず、両国の間で緊張緩和が進展しつつあるとは考えにくいとの印象を持つかもしれない。だが、こうした相互非難は、①米国、イラン両国には戦争を強く望む勢力が残存しており、②これらの勢力を満足させなければ政権基盤が危うくなるため、③言葉上では相手国を強く非難せざるを得ないという事情がある。


    ・和平を促進する方向に向かう動きが強いが、だからといってこれで安心できるわけではない。数日前、イランはシャハーブ3号ミサイルの発射テストを行った。これにより、イスラエルに対するイランの脅威があらためて確認されたかっこうとなった。これをきっかけに和平への動きが放棄され、いきなり戦争の方向に動いてゆく可能性も決して否定できないことに注意しなければならない。

    戦争の可能性は残っているが、急速に和平が進展しているという観測である。イラン戦争をめぐる攻防戦が水面下で激しく戦われているのだろうが、イラン戦争が起こる可能性は確実に低くなっているというのが現状だろう。

    今後の動き

    今回はストラトフォーの分析をメインに紹介しているが、筆者が入手しているその他の情報などを総合すると、今の時点ではソフトランディングの方向に向かって動いていると考えて間違いはなさそうだ。不確定の要素はまだまだ大きいが、もしこの方向に向かって本格的に動き出すとすると、大きな崩壊や大規模な戦争を経験することなしに、速いペースで異なったシステムへと移行して行く可能性が強いと思われる。

    金融システムの破綻はない?

    米大手金融機関の決算発表は今週から本格化する。サブプライムローンがらみの損失は巨額になることが予想されている。すでにポールソン財務長官は「破綻する金融機関は破綻させる」と明言しているように、今回はいくつかの金融機関の破綻は免れないだろうと考えられている。リーマン・ブラザース、シティグループなどがリストにあがっているが、これらの金融機関は巨大であり破綻の影響は巨大である。そうした事態になれば、証券や債権などあらゆる金融市場が大きく下げることは十分に予想できる。

    だが、だからといってこうした個々の金融機関の破綻やそれに伴う市場の大幅な下げが、金融システムそのものの機能停止や全面的な崩壊に結びつくかといえばそのようにはならない公算のほうがはるかに大きい。金融システムは一部再編されながらも、問題なく機能し続けるだけの体制が整えられることだろう。

    今回のFRBの金融政策

    前回金融破綻が叫ばれた3月18日から4月の半ばまでの時期にFRBは、①大幅な利下げによって流動性を確保し、②破綻しつつあった金融機関をターゲットにして融資を行う直接金融支援の2つを実施した。①の大幅なり下げによってインフレが促進し、これによるドル安からドル建てで取引される原油価格が高騰し、それがインフレを悪化させるという悪循環に入ったことは周知の通りだ。以下の図式である。

    「大幅なり下げ」→「インフレの悪化」→「ドル安」→「原油価格の高騰(原油はドル建てで取引されるため)」→「インフレのさらばる悪化」

    この大幅な利下げによって金融機関の連鎖的な破綻は回避された。だが、その副作用がインフレの悪化であった。今回発動される金融政策は、インフレの悪化を回避するために、①利上げを実施しインフレを抑制しつつ、②金融機関は直接支援(巨額の融資を)で一部救済し連鎖倒産を防ぐ方法がとられるだろうという。

    金融システムの変質

    だが、こうした政策によって金融システムの機能がきちんと維持されたとしても、現在のままの金融システムがそのまま存続するのかといえばそうではない可能性のほうが強い。今回の金融危機を機に、投資銀行や投機的な金融操作に対する規制が強化されるはずである。これにより、すでに田中宇氏の記事などでも指摘されている通り、金融システムの主役が、レバレッジを効かせた金融商品の販売を主要な業務としている投資銀行から、預金者から集めた資金の企業に対する融資を専門に行う通常の商業銀行へと急速に移って行く行く可能性が強い。つまり、現在の日本の都市銀行や地方銀行のような普通の銀行が復活してくるということだ。

    加速化するローカリゼーション

    商業銀行のこうした復活は何を意味するのだろうか?このブログで何度か取り上げているが、いま世界各地でローカリゼーッションへと向かう動きが加速化しつつある。原油高騰による輸送費高騰が引き金となって、一時は中国などの海外からの輸入に圧倒されて壊滅しかけていた地域産業がコスト的に見合うものとなり、その結果、地域経済全体が活性化するという流れがローカリゼーッションである。

    商業銀行の強化という方向は、明らかにこうしたローカリゼーッションの流れと重なるものである。金融機関が商業銀行の業務に集中することで、活性化しつつある地域企業の活動を支援するような形で資金が使われる可能性がある。これまでは、ヘッジファンドや投資銀行が経営状態が思わしくない企業をとことん安く買収し、徹底的にリストラをして株価を上げた後、高値で売り渡して巨額の利益を上げるという方式だったが、そのようは方式は、投資銀行やヘッジファンドそのものの破綻や規制強化とともになりを潜め、逆に地域企業に融資を行い、それを成長させることで利益をあげるという普通の商業銀行の活動が活性化される方向だ。

    ソフトランディングシナリオの全体像

    ここでソフトランディングのシナリオの全体像を素描しておく。以下の図式である。


    「原油価格高騰による輸送費の高騰・食料の高騰」→「地域産業の活性化」→「地域の雇用の確保」→「地域市場の活性化」→「地域産業のさらなる活性化」


    「金融危機の再燃」→「FRBや各国の協調による強力な金融政策」→「米大手金融機関の破綻と金融システムの救済」→「投資銀行への規制強化と商業銀行業務への移行」→「企業融資の活発化」


    上記①と②の動きが重なることで形成されてくるのは、ローカルな地域経済の強化と、これに基づく自己循環型のシステムである。

    これはあまりに楽観的なシナリオであるとも考えられる。そのような印象を持たれる読者の方も多いだろう。だがあながち現実性がないわけではないことも事実だ。

    ハードランディングのシナリオ

    だが、上記のソフトランディングのシナリオこれからなることが確定しているわけではない。これとはまったく逆のハードランディングのシナリオになる可能性も十分に残されている。それは以下の図式である。


    「原油・食料価格の高騰に基づく極端なインフレ」→「実質賃金の極端な低下と国内市場の収縮」→「深刻な不況」


    「金融危機に伴う金融システムそのものの機能不全」→「投資銀行のみならず商業銀行を含むすべての金融機関の業務縮小」→「企業の資金繰りの悪化と倒産の激増」→「深刻な不況」


    極端なインフレによって不況が深刻になっているところに金融システムの機能停止が重なるのである。それはまさに経済崩壊という言葉がぴったりとくるような状態となろう。

    すべてを決するのはイラン戦争

    このどちらのシナリオになるかは以下の2つの条件に依存するだろう。


    あまりに長くなるのでひとまずここで記事を終え、続きは記事を改めることにする。


    投稿に関しては以下の方針に従い、どうしても必要な場合以外は削除しないことにしております。

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