2008-07

    もしかしたらいまがぎりぎりの分かれ道?2

    いつものことだが、早く更新するつもりがまた大幅に遅れてしまった。おわびしたい。

    アナウンスメント

    今回は最初にアナウンスメントをしたい。3月にフォトンベルトの渡邊延郎氏のご好意で氏の講演会にゲストとして出演させていただいたが、今回は筆者単独での講演会の依頼があり、開催する運びとなった。以下の「高島康司講演会」が詳細である。今後やってくるべき激動の時代にわれわれがどう対処したらよいか、みんなで考えるよい機会になればと思っている。

    現状とストラトフォーの予測

    前回の記事では、世界情勢に関するストラトフォーの予測を掲載した。以下がその簡単な要点である。

    原油価格に関して

    ・イランと米国との交渉がさらに一歩前進したことなどを背景に、中東の地政学的リスクは大幅に低下している。

    ・原油の高騰は需給のアンバランスを反映したものではなく、明らかにヘッジファンドなどによる投機が原因だ。

    ・原油価格が上昇に転じたのはイラク戦争前後であり、中東の地政学リスクの増大を見込んだ先物取引が原因である。

    ・したがって、中東に和平が訪れ地政学的リスクが小さくなることは、投機資金を撤退させ、原油価格を押し下げるはずである。


    米国経済と株価に関して

    ・サブプライムローンに端を発した信用収縮によって、米国経済は深刻な不況に入りつつある。

    ・だが、高騰した原油によって儲けた莫大なオイルマネーが米国経済の停滞を嫌うサウジアラビアなどによって米国に再投資され、それが呼び水となって、各国による一定程度の米国投資が維持されている。

    ・このため、信用収縮にともない、パーフォーマンスの悪い金融機関の破綻はあったとしても、米国経済は自体はしっかりと底支えされており、減速はしても大きく破綻することはない。したがって、株式市場のクラッシュなどということもない。


    このようなものであった。今の時点でこの予測をみると、ほとんど的中しているといって間違いないように思う。

    まず原油価格だが、ストラトフォーのいうように、米国政府がイランに高レベルの外交交渉を提案し、バーンズ国務次官をテヘランにおけるEUの直接交渉にオブザーバーとして出席させるという形で結実した。これが、両国の国交を回復す準備となる連絡事務所の開設に結び付くことが期待されている。これは明らかに平和的な交渉に向けての一歩前進である。

    これにともない、一時は1バーレルあたり147ドルをつけていた原油先物価格は、一気に129ドル前後まで下落し、現在も130ドル前後にある。

    これは、ストラトフォーがいうように、投機資金が原油の先物から撤退したと考えてよいだろう。

    さらに、同時にファニーメイとフレディーマックなどの米国の政府系住宅金融公庫の破綻が引き金となり、一時は1万800ドル近辺まで下落した米国株も、1万1400ドル程度にまで回復した。

    このような株価の回復の大きな背景は、地政学的リスクの低下によって原油の先物市場から撤退した投機資金が、オイルマネーの流入で一定程度の投資水準を維持しつつあった米国株式市場へと流れ込み、株価を押し上げたとみることができる。

    今までのところ、大きな金融クラッシュはおこってはない。事態の経過から見て、ストラトフォーの予測は的中したとみてよいだろう。

    これからの予測
    金利上昇、ドル高とインフレの緩和、そして株高


    ストラトフォーのこのような予測を延長すると今後の市場がどのような展開になるのか予想を立てることができる。

    まず、これからも中東の地政学的リスクが低下し続けるとすると、それに伴い原油価格もさらに低下すると考えられる。

    原油価格の低下はインフレを緩和させる。インフレは実質賃金を低下させ、これによって国内の消費は大きく縮小するので、これは、米国をはじめインフレに悩む各国にとってはよいニュースとなる。景気は明らかに減速しつつあるが、悪化のスピードはスローダウンするだろう。

    FRBは、この機会をみて、さらなるインフレの抑制を狙った利上げに踏み切るか、ないしはインフレは収まりつつあるとして金利を据え置くものと思われる。植草教授によると8月5日にも利上げに踏み切るだろうという。

    利上げは通貨の供給量を抑制するため、ドルの価値は上がりドル高となる。原油はドル建てで取引されるため、ドルの上昇は原油価格の低下となって現れる。

    原油価格の下落は、価格の上昇を狙う投機資金の逃避を促進するため、原油価格はさらに下落する。

    原油の先物市場から逃避してきた投機資金は、今度は米国株式市場に流れ込む。その結果、米国株は上昇する。これを図式化すると以下のようになる。

    「中東の地政学的リスクの低下」→「原油先物市場からの投機資金の逃避」→「原油価格の低下」→「インフレの緩和」→「FRBによる利上げ」→「ドル高」→「原油価格のさらなる低下」→「逃避した投機資金の米国株式市場への流れ込み」→「株高」→「減速する米国経済の下支え」

    これから数カ月はこのように推移すると思われる。米国の金融システム、および実体経済の崩壊を予想する意見も多いが、現在の状況をみるとそうはならないとみたほうがよさそうである。

    先週から、メリルリンチ、シテティーバンク、リーマンなどの大手金融機関の決算が発表され、いずれも巨額の損失を計上しているが、すべて想定内だとして市場はほとんど反応しなかった。心配された決算発表も大きな混乱をもたらすことなく終了しつつある。

    また、サブプライムローン危機でまったく動きを見せていなかった住宅販売も次第に回復してきており、今期は9%の回復となった。

    こうした状況から見て、米国経済は近年まれにみる信用収縮を経験しがららも、金融当局の政策で金融システムそのものの破綻や崩壊を避けながら、なしくづし的に減速してゆくものと思われる。大きなパニックはないとみたほうが妥当だ。

    すべてのカギを握るイラン情勢

    だが、このようなシナリオになりかどうかそのカギを握っているのは、明らかにイラン情勢である。

    このシナリオが成り立つ前提は「中東の地政学的リスクの低下」にある。秘密裏には以前からすでに行われているイランと米国との直接交渉が開始される可能性が強く、もしこれが実現した場合、イラン戦争は遠のく。この結果、原油価格はさらに低下し、上記のようなソフトランディングのシナリオになる可能性は強い。

    だが反対に、イラン攻撃が実施されたらどうであろうか?それは前回の記事に詳しく書いた状況になることは明らかだ。

    「原油・食料価格の高騰に基づく極端なインフレ」→「実質賃金の極端な低下と国内市場の収縮」→「深刻な不況」

    ローカリゼーションの条件

    だが、原油価格の高騰は、このブログでなんども書いて来たローカリゼーションを促進し、自己循環型の地域経済の形成を促進させるのではなかろうか?

    確かにそのようにも考えられるかもしれない。だが、そうともいえないのである。原油価格高騰の水準によっては、逆の方向にも動きかねないのだ。

    先の記事でも紹介したが、各国の限界原油価格の概算は以下の通りである。

    米 国  160・1ドル
    日 本  168・1ドル
    ドイツ  172・4ドル
    イギリス 183・8ドル


    もし原油価格がこの水準を越えて突破すると、それは大変なインフレ圧力となって跳ね返ってこらざるを得ない。現在発表されているインフレ率(消費者物価指数)は以下のようになっている。この数値は原油価格が130ドル近辺のときのものだ。

    主要各国の消費者物価上昇率

    中国   8.5%
    インド  7.9%
    インドネシア 9.0%
    ベトナム 21.4%
    韓国 4.1%
    日本 1.2%


    イラン戦争が本当に勃発するとなると、原油価格は250ドルから300ドル近辺まで高騰するといわれているのでそれが引き起こすハイパーインフレも相当なものとなろう。

    すべての価格は上昇する。そしてもし上昇のスピードが速く、なおかつ企業の利益率をはるかに越える水準まで上昇したとすると、エネルギーや食料を地域産業を活性化して置き換えようにも、そこから将来期待できる利益率よりも現在の物価上昇率が上回っていると、投資そのものがなりたななくなってしまうのだ。

    要するにこういうことである。なにも価格がどんどん上昇しているときに非常に高価な投資を行うことはない。同じ資金で原油や食料を先行的に買い、少したって値が上がってから売ればはるかに儲かる。価格上昇
    のペースが速い場合、これを繰り返せばかなりの儲けとなる。生産的な投資を行うことはない、ということだ。

    このような状態では、ローカリゼーションへと向かう投資もとことん減退する。

    では原油価格が下がり、1バーレル、50ドルとか70ドルになればどうなるかというと、当然輸送コストが安くなるので、安い外国製品が流入しローカリゼーションはストップしてしまう。

    ということは、ローカリゼーションが実際に起こるためには、原油価格がある範囲内になければならないことになる。その範囲の具体的な算出は難しいが、太陽発電などの代替エネルギーが原油価格150ドルで採算が取れると言われていることを考えると、90ドル前後から150ドルくらいの範囲なのではないかと思う。

    さて、この範囲に収まるように、推移するだろうか?

    すさまじい的中率で知られている「世見」の照さんは以下のように予言している。

    「ガソリン代、200円代時代到来。もしかすると年内かも知れません。皆さんーーー気を引き締めて 経済動向をしっかり見てください。まだまだ国の政策の甘さが見えて来ますよ。こんな事をしていたのか と思う事がです。「居酒屋タクシー」なァんて小さく見えます。」

    ガソリン代が200円になるとはやはりイラン戦争はおこるのだろうか?イラン戦争を予言しているジョン・ホーグなどはなんといっているのだろうか?次回から様々な予言の内容を分析する。

    投稿に関しては以下の方針に従い、どうしても必要な場合以外は削除しないことにしております。

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    また、私はいま日本で起こっている変化を以下のようにとらえております。もしよろしければこちらもどうぞ。

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    もしかしたらいまがぎりぎりの分かれ道?1

    今回はいままでにないくらい大幅に更新が遅れてしまった。夏の暑さにはめっぽう弱く、集中力が衰えてしまった。いつものように、ここにお詫びしたい。

    恐ろしく速い変化

    あたかも「マヤカレンダーの進展に伴い時間が加速する」というコルマンインデックスの定式が現実化しているかのように、あらゆる状況が予想を越えた速さで進展している。それはあたかもなにかのスイッチが入れられたかのように急に速くなったかのような印象を受ける。

    それがどこに行き着く流れなのかはまだ判然としない。だが、多くの予言が予知している破滅的なシナリオの他に、はるかに楽観的なシナリオも成り立つ余地があることは大きな希望である。

    いまわれわれが、世界の政治経済システムの転換期にいることは間違いない。だが、前々回および前回のブログで説明したように、その転換が減少する資源の争奪を巡る第一次対大戦型の全面戦争をもたらすのか、またはある程度時間をかけながら、生産、流通、消費を地域経済の範囲で自己循環させるローカリゼーションの方向へと進んで行くのかはまだはっきりとはしない。

    どちらの方向に行くのかはそれに決定的な影響力をもつのが、イラン攻撃とサブプライムローンに端を発する信用収縮、ならびに高騰する原油・食料価格の行方、そして世界同時不況に入る可能性が大きい実体経済の動きである。これらの情勢が今後どうなるかによって、「戦争シナリオ」と「ローカリゼーションシナリオ」のどちらになるか、またはまったく別のシナリオになるのかはっきり分かってくるだろう。

    その判断の一助とするために、今回はストラトフォーの最新予測、ならびにジョン・ホーグとゲリー・ボーネルの最新予言をとりあげる。

    世界経済の現状

    原油はすでに147ドルと史上最高水準を突破し、これに起因したインフレも加速度を増すばかりである。これに伴い、どの国でも実質賃金は低下しつつあり、国内消費も急速に減退に向かっている。世界経済の減速はもはや明らかだ。

    加えて、来週からは米国大手金融機関の決算発表が始まるが、シティーなど巨額な損失を計上し、再度破綻の危機まで追い込まれるところは少なくないとも見られている。来週以降、米国大手金融機関の破綻から始まるが信用収縮が実体経済を引き込み、80年前の大恐慌型のクラッシュがあるのではないかとの観測も多い。

    ストラトフォーの最新予測

    このブログでも何度も紹介しているCIAに分析結果を提供している民間の情報分析機関、ストラトフォー(戦略予測有限会社)は、向こう三カ月の政治経済の最新予測、および「新時代」と題する緊急予測レポートを発表した。特に後者のレポートはストラトフォーには珍しい、時代の大きな変化を暗示したレポートだ。以下にそれぞれのレポートの要約を紹介する。

    ストラトフォーの世界経済予測

    ストラトフォーの三カ月予測レポートは、世界経済ののみならず世界のあらゆるエリアをカバーしている。分量もそれなりにある。どのエリアの分析も非常に興味深いが、長くなるのでここでは世界経済の分析のみを取り上げる。

    ところで、ストラトフォーの予測の信頼性だが、筆者はここのレポートを読んで一年になるが、ほとんど外したことはないように思う。今春、サブプライムローン危機により大規模の金融クラッシュが予想されていたときでも、そのようなクラッシュはありえないことを明確に主張していた数少ないメディアの一つがストラトフォーであった。事実、FRBの予想を越えた緊急融資の発動などによって、クラッシュは避けられた。それなりの信用度はあると思われる。以下が要約である。

    ・米国では信用収縮が始まっている。これにより、今の金融バブルは終焉するだろう。一部の金融機関の破綻は免れないかもしれない。

    ・だが、これにより米国の実体経済が破綻するとは考えにくい。確かに減速はするだろうが、それは経済の一般的な循環における減速の規模を越えることはないだろう。破綻までは行かない可能性のほうが強い。

    ・その証拠に、米国の経済成長率は0.9%から1.0%に上方修正されており、また住宅販売も2%の改善をみせている。

    ・米国経済のこうした強さの背景の一つになっているのは、サウジアラビアからの巨額のオイルマネーが戦略的に米国へと再投資されているからである。

    ・3月から4月にかけてFRBは緊急の利下げを行ったため、現在の政策金利は2.0%である。これは現在の欧州中央銀行の利子率よりも低い。なので論理的には投資が米国に還流するとは考えにくい。

    ・だが、サウジアラビアの莫大な投資が呼び水となって、ある一定レベルの投資の水準が維持されている模様だ。これにより、米国経済が下支えされている可能性が強い。

    ・他方、原油や食料の高騰に起因するインフレは加速するばかりである。これによる国内消費の減退はどうすることもできない。

    ・しかし、原油はこれから安くなる可能性がある。原油高騰の背景の一つは原油先物に対する投機だが、これが起こっている原因の一つは、イラク戦争以降強まっている中東の地政学的リスクである。原油の高騰は米国によるイラク侵略から始まった。イラク侵略によって中東全域が不安定化し、原油の生産が将来的に不安定になる可能性が増したため、将来の原油高騰を期待した投機が盛んとなったのである。

    ・ところが、この一カ月ほどの間で中東の知性学的リスクを大いに緩和させる事態が発生しつつある。宿敵であるシリアとイスラエルは、なんらかの相互不可侵条約を結ぶ可能性がでてきた。またイラクでイランと米国の協力関係が樹立されつつあるため、イラク国内のテロの件数は激減している。このように、中東の緊張は緩和しており、これに伴う地政学的リスクはこれまで考えられないほど小さくなりつつある。この結果、短期的には高騰はしても、原油価格は将来的には次第に安くなる方向に向かうとみられる。

    ・中東の緊張緩和をもたらした最大の勢力はやはりサウジアラビアである。サウジは米国に戦略的に投資すると同時に、シリア、レバノンなど、中東の緊張緩和に不可欠なあらゆる勢力に巨額のオイルマネーを散布し、こうした勢力が和平のテーブルにつくように強く即している。

    ・サウジアラビアは、主要先進国の経済に極端なマイナスの影響を与えない程度の水準で原油価格を高値で安定させることを国益としている。したがって、イラン戦争が勃発し原油価格が急騰し、先進国経済が麻痺することは国益に反する。このため中東全域の地政学的リスクを低下させ、地域全体を安定させようとしているわけである。


    どうであろうか?あまりに楽観的で現実に起こっている事態を正確にとらえていないのではないか、との印象を強く受ける読者も多いことだろう。事実筆者自身、そのような印象を持つ。

    だが、ちょっと視点を変えると別な現実が見えてくることも事実であるように思う。米国の覇権を前提とした現在の世界経済システムが崩壊し、より多極的なシステムか、ないしはそれとも異なった別のシステムへと急速に移行しつつあることは論を待たない。それは歴史的なシステム転換である。それに地球温暖化によって激変する環境という要因が重なっているので、現在の変化は単なるシステム転換ではなく、現代文明の衰勢を表す文明史的な転換になるとも考えることができるだろう。

    しかし他方、このようなシステム転換がどのような過程で崩壊し、変化してゆくのかというその実際のプロセスに関しては様々なシナリオが考えられるのかもしれない。金融システムや実体経済の全面的な崩壊やクラッシュがあり、これを境にして無極化的なカオス、ないしは新しいシステンムの形成へといたるハードランディングのシナリオをイメージしやすい。ストラトフォーが提示しているのは、これとは反対のソフトランディングのシナリオかもしれない。米国の信用収縮と実体経済の大幅な原則はもはや避けられないが、オイルイマネーなどの各国の投資資金に還流によって米国経済を下支えし、よりコントロールされた方向でシステム転換を実現するというものだ。

    イラン攻撃

    ハードランディングになるのかソフトランディングになるのか、それを実質的に決定するのは米国やイスラエルによるイラン攻撃が行われ、なおかつそれが全面的な戦争となって拡大するかどうかにかかっているとも言える。もしイラン戦争が起こった場合、それは1バーレルあたり200ドルを超える極端な原油価格の高騰によって各国経済は機能しなくなり、各国はサバイバルとしての資源の争奪戦に入りざるを得ないことにもなってくる。まさにイラン戦争が勃発するかしないかが、鍵の一つであることは間違いない。

    ストラトフォーのイラン攻撃予測

    ストラトフォーは「新時代」と題する緊急レポートを公表した。それは中東の緊張緩和が進み、この地域が新しい時代に入りつつあることを予告したレポートである。以下がその要約である。

    ・イラン攻撃に関しては攻撃がまじかであることを告げるニュースが多い。6月の半ばにイスラエルは地中海でイラン攻撃を目標とした大規模な演習を実施したり、米国議会がイラン国内を混乱に陥れるかく乱作戦の実行に対して巨額の予算を与えたことなどはそうしたニュースだ。

    ・だが実際には中東全域ではこれまで考えられなかったような緊張緩和が急ピッチで進んでいるのも事実だ。イラクをコントロールするために、米国はイランと長期間交渉しており、その成果が出始めている。今年に入ってから、一時はコントロール不可能と思われていたイラク国内のテロの発生件数は大きく減少し、米国兵士の死傷者数も減少している。これはイランによるシーア派抵抗勢力にコントロールがうまく作用した結果である。イラクは、もはやイランの協力なしには維持することはできなくなっていることを米国ははっきりと認識しつつある。

    ・さらに、これまで宿敵関係だったシリアとイスラエルが、何らかの相互不可侵の条約の締結に向けて動き出した。シリアは、この地域で活発に活動しているハマスやヒズボラなどの原理主理的抵抗勢力の強力なスポンサーである。そのシリアがイスラエルと妥協することは、これらの勢力がスポンサーを失って孤立し、その結果、緊張緩和が進む可能性がおおいにある。

    ・また、7月初旬には1979年以来外交関係が断絶している米国は、イランとの間で相互に高レベルの外交官を交換し、ワシントンとテヘランに連絡事務所を開設することを提案した。これに対し、イラン政府は肯定的に回答している。

    ・こうした動きが可能となったのは、サウジアラビアによる巨額なオイルマネーがすべての当事者に渡され、交渉が円滑に進む背景が形成できたからである。

    ・緊張緩和が進む一方、ブッシュおよびアフマディネジャドの両政権は相互の非難を止めてはおらず、両国の間で緊張緩和が進展しつつあるとは考えにくいとの印象を持つかもしれない。だが、こうした相互非難は、①米国、イラン両国には戦争を強く望む勢力が残存しており、②これらの勢力を満足させなければ政権基盤が危うくなるため、③言葉上では相手国を強く非難せざるを得ないという事情がある。


    ・和平を促進する方向に向かう動きが強いが、だからといってこれで安心できるわけではない。数日前、イランはシャハーブ3号ミサイルの発射テストを行った。これにより、イスラエルに対するイランの脅威があらためて確認されたかっこうとなった。これをきっかけに和平への動きが放棄され、いきなり戦争の方向に動いてゆく可能性も決して否定できないことに注意しなければならない。

    戦争の可能性は残っているが、急速に和平が進展しているという観測である。イラン戦争をめぐる攻防戦が水面下で激しく戦われているのだろうが、イラン戦争が起こる可能性は確実に低くなっているというのが現状だろう。

    今後の動き

    今回はストラトフォーの分析をメインに紹介しているが、筆者が入手しているその他の情報などを総合すると、今の時点ではソフトランディングの方向に向かって動いていると考えて間違いはなさそうだ。不確定の要素はまだまだ大きいが、もしこの方向に向かって本格的に動き出すとすると、大きな崩壊や大規模な戦争を経験することなしに、速いペースで異なったシステムへと移行して行く可能性が強いと思われる。

    金融システムの破綻はない?

    米大手金融機関の決算発表は今週から本格化する。サブプライムローンがらみの損失は巨額になることが予想されている。すでにポールソン財務長官は「破綻する金融機関は破綻させる」と明言しているように、今回はいくつかの金融機関の破綻は免れないだろうと考えられている。リーマン・ブラザース、シティグループなどがリストにあがっているが、これらの金融機関は巨大であり破綻の影響は巨大である。そうした事態になれば、証券や債権などあらゆる金融市場が大きく下げることは十分に予想できる。

    だが、だからといってこうした個々の金融機関の破綻やそれに伴う市場の大幅な下げが、金融システムそのものの機能停止や全面的な崩壊に結びつくかといえばそのようにはならない公算のほうがはるかに大きい。金融システムは一部再編されながらも、問題なく機能し続けるだけの体制が整えられることだろう。

    今回のFRBの金融政策

    前回金融破綻が叫ばれた3月18日から4月の半ばまでの時期にFRBは、①大幅な利下げによって流動性を確保し、②破綻しつつあった金融機関をターゲットにして融資を行う直接金融支援の2つを実施した。①の大幅なり下げによってインフレが促進し、これによるドル安からドル建てで取引される原油価格が高騰し、それがインフレを悪化させるという悪循環に入ったことは周知の通りだ。以下の図式である。

    「大幅なり下げ」→「インフレの悪化」→「ドル安」→「原油価格の高騰(原油はドル建てで取引されるため)」→「インフレのさらばる悪化」

    この大幅な利下げによって金融機関の連鎖的な破綻は回避された。だが、その副作用がインフレの悪化であった。今回発動される金融政策は、インフレの悪化を回避するために、①利上げを実施しインフレを抑制しつつ、②金融機関は直接支援(巨額の融資を)で一部救済し連鎖倒産を防ぐ方法がとられるだろうという。

    金融システムの変質

    だが、こうした政策によって金融システムの機能がきちんと維持されたとしても、現在のままの金融システムがそのまま存続するのかといえばそうではない可能性のほうが強い。今回の金融危機を機に、投資銀行や投機的な金融操作に対する規制が強化されるはずである。これにより、すでに田中宇氏の記事などでも指摘されている通り、金融システムの主役が、レバレッジを効かせた金融商品の販売を主要な業務としている投資銀行から、預金者から集めた資金の企業に対する融資を専門に行う通常の商業銀行へと急速に移って行く行く可能性が強い。つまり、現在の日本の都市銀行や地方銀行のような普通の銀行が復活してくるということだ。

    加速化するローカリゼーション

    商業銀行のこうした復活は何を意味するのだろうか?このブログで何度か取り上げているが、いま世界各地でローカリゼーッションへと向かう動きが加速化しつつある。原油高騰による輸送費高騰が引き金となって、一時は中国などの海外からの輸入に圧倒されて壊滅しかけていた地域産業がコスト的に見合うものとなり、その結果、地域経済全体が活性化するという流れがローカリゼーッションである。

    商業銀行の強化という方向は、明らかにこうしたローカリゼーッションの流れと重なるものである。金融機関が商業銀行の業務に集中することで、活性化しつつある地域企業の活動を支援するような形で資金が使われる可能性がある。これまでは、ヘッジファンドや投資銀行が経営状態が思わしくない企業をとことん安く買収し、徹底的にリストラをして株価を上げた後、高値で売り渡して巨額の利益を上げるという方式だったが、そのようは方式は、投資銀行やヘッジファンドそのものの破綻や規制強化とともになりを潜め、逆に地域企業に融資を行い、それを成長させることで利益をあげるという普通の商業銀行の活動が活性化される方向だ。

    ソフトランディングシナリオの全体像

    ここでソフトランディングのシナリオの全体像を素描しておく。以下の図式である。


    「原油価格高騰による輸送費の高騰・食料の高騰」→「地域産業の活性化」→「地域の雇用の確保」→「地域市場の活性化」→「地域産業のさらなる活性化」


    「金融危機の再燃」→「FRBや各国の協調による強力な金融政策」→「米大手金融機関の破綻と金融システムの救済」→「投資銀行への規制強化と商業銀行業務への移行」→「企業融資の活発化」


    上記①と②の動きが重なることで形成されてくるのは、ローカルな地域経済の強化と、これに基づく自己循環型のシステムである。

    これはあまりに楽観的なシナリオであるとも考えられる。そのような印象を持たれる読者の方も多いだろう。だがあながち現実性がないわけではないことも事実だ。

    ハードランディングのシナリオ

    だが、上記のソフトランディングのシナリオこれからなることが確定しているわけではない。これとはまったく逆のハードランディングのシナリオになる可能性も十分に残されている。それは以下の図式である。


    「原油・食料価格の高騰に基づく極端なインフレ」→「実質賃金の極端な低下と国内市場の収縮」→「深刻な不況」


    「金融危機に伴う金融システムそのものの機能不全」→「投資銀行のみならず商業銀行を含むすべての金融機関の業務縮小」→「企業の資金繰りの悪化と倒産の激増」→「深刻な不況」


    極端なインフレによって不況が深刻になっているところに金融システムの機能停止が重なるのである。それはまさに経済崩壊という言葉がぴったりとくるような状態となろう。

    すべてを決するのはイラン戦争

    このどちらのシナリオになるかは以下の2つの条件に依存するだろう。


    あまりに長くなるのでひとまずここで記事を終え、続きは記事を改めることにする。


    投稿に関しては以下の方針に従い、どうしても必要な場合以外は削除しないことにしております。

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    また、私はいま日本で起こっている変化を以下のようにとらえております。もしよろしければこちらもどうぞ。

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    なんとなく様子が変わってきた4

    また大幅に更新が遅れてしまったことをおわびする。読者の方には申し訳ないと思っている。今回は、7月に出る本『考える力をつける 知的論理トレーニング』(アスカ・エフ・プロダクツ)の執筆で忙しかった。この本は1月に出した『一週間で実践 論理的会話トレーニング』の続編にあたる本である。話の内容の効果的なまとめ方に困っている人には便利な本になると思う。

    相場の大幅な下落

    6月26日以来ダウh大きく下落した。26日一日で358ドル下落し、2006年9月以来の大幅下落となった。

    「米国株式市場は急落。ダウ平均株価は350ドル強値下がりし1年9カ月ぶり安値となった。原油が最高値を更新したことや、ゴールドマン・サックスが投資家に対し金融や自動車株の売却を推奨したことで、企業業績に対する懸念が強まった。」

    しかし、その後もダウの下落は続き、本日6月30日で11346ドルをつけている。これは、暴落前の水準から見ると550ドルの大幅下落である。

    相場下落の原因

    今回、これだけ大きく相場が下落した原因ははっきりしている。3月20日以降、多くの金融機関では、サブプライムローンの破綻による巨額の損失計上から何度となく破綻が叫ばれてきたが、FRBによる大幅な利下げや緊急融資などの処置の発動により、金融機関がぎりぎりで救済され破綻が避けられてきた。金融産業を牛耳る「スーパークラス」による事前調整が強く働いたことも理由の一つだろう。

    だが、金融機関のサブプライムがらみの損失はこれで落ち着くどころかさらに拡大し、また、サブプライムローン商品に保険を与えていたモノラインという保険会社の格下げが避けられないことが判明し、今回の暴落に至った。7月にはシティーグループなどの大手金融機関の決算が予定されており、さらに膨らんだ莫大な損失の計上が予定されていることも原因の一つだ。もし損失額の大きさが市場の予想を上回ると、さらに大きな暴落が予想されてしかるべきだろう。

    さらに、今回の背景となったのはインフレ懸念である。原油の先物価格は1バーレル、140ドルを越え史上最高値を記録した。これに呼応し、暴落直前の6月25日、FRBは連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、政策金利を2%に据え置くことを表明すると同時に、インフレに対する強い懸念を表明した。この声明が引き金となり、米国経済の先行きを悲観した投資家の売りが殺到したと見られる。

    ラビ・バトラーと資本主義崩壊説

    ところで2年前の2006年、インドのサイキックな経済学者、ラビ・バトラーは『資本主義最後の5年』という本を著した。読んだ読者の方も多いと思う。この本を改めて読み直してみると興味深いことが書かれていることに気づく。以下はこの本からの引用である。

    「2006年夏……6月から8月にかけ、リセッション(景気後退)が起こり、ダウ・ジョーンズ株価は下落します。それほど劇的な下降ではありませんが、それでも最終的には1990年なみの下落となるでしょう。ドル安、債券安のトリプル安もあり得ます。日本はかなりの影響を受けるでしょう。
    ー2006年夏……6月から8月ですか?そうです、9000ドルまで下がると思われます。1990年なみの下落が起こるでしょう」

    「1990年にイラクがクウェートに侵攻した時、ダウ・ジョーンズ株価指数は最大で483ドルド落した。1987年のブラックマンデー(508ドルの大暴落)に次ぐ大幅だ。(中略)1990年の不況は、8月にフセインがクウェートに侵攻したことから始まった。原油は10月までの2カ月で、それまでの2倍に跳ね上がり、1バレル50ドル大台に乗せた。湾岸危機のさなか、日本経済を覆っていたバブルが崩壊、日経平均株価は暴落、日本の不動産相場は下落の底に沈んだ。(中略)2006年夏に予測されるリセッションは、湾岸危機の時ほどドラマチックなものではないが、景気後退の性格は深刻だ。(中略)

    2006年夏に始まるリセッションは、劇的なものではない。だがフセインがクエートに侵攻した両棲の原油高騰時期なみの、ダウ株価のド蕗をともなう公算が大きい。私が480ドル台の下落幅を想定しているのは、そのためである。」


    ラビ・バトラーは、ダウのこのあまり劇的ではない暴落が引き金となり、資本主義は長期的な低迷期に入り、最終的には消滅へと向かうというシナリオだ。

    550ドルの下落率

    当然、2006年にこのようなことは発生しなかった。2006年はサブプライム危機が発生する以前であり、各国の金融機関は大幅な増益を計上していた。

    だが、これでこの予言が外れてしまったのかというとそうとは言えないかもしれない。この本でラビ・バトラーが指摘している下落率は480ドルである。今回の暴落は550ドルである。これは時期がずれて実現しつつあるとは言えないだろうか?もしそうだとするなら、今回の暴落は破綻のほんの始まりにすぎないことになる。だが、はたしてそのような可能性はあるのだろうか?

    金融政策のジレンマ

    今回の暴落に際して、FRBは3月や4月の時点のような莫大な緊急融資を行う体制にはないことははっきりしているようだ。

    FRBは今回の声明で、政策金利を2%に据え置いたが、それというのもインフレを懸念してのことである。すでに米国のインフレ率は高い水準に上昇しているが、これの原因は1バーレル、140ドルを突破した原油高にだけではない。3月後半から4月にかけての金融危機では、金融機関を救済する必要から、1)政策金利を大幅に下げ、2)なおかつ巨額の緊急融資を行ったことにある。これにより、膨大な額のドル紙幣が市場に流通し、これによってインフレが誘発された側面が強いのだ。以下の図式である。

    「金融政策によるドルの散布」→「インフレおよびドル安」

    現代の資本主義のガン、インフレ

    このブログで何度も記しているように、一度インフレが加速するとそれは資本主義の経済のガンになりかねない。以下の図式である。

    「インフレの悪化」→「実質的な賃金の低下」→「国内市場の収縮」→「不況への突入」

    そして、インフレ率はが企業の利益率を越えるようなことでもあれば、状況はさらに悪化する。

    「生産部門から投資が引き上げられ、商品の投機へと向かう」→「生産全体の縮小」

    したがって、過度のインフレはなんとしても抑制しなければならない目標となる。

    原油高も手伝い、米国でインフレはすでに加速している。もし前回同様のドル散布と緊急融資による救済策をFRBがとると、インフレはさらに悪化してしまう。このような政策は今回は採用できない。

    反対に、インフレを抑制しようとして政策金利を上げるとどうなるだろうか?政策金利の上昇にはあらゆるローンの金利が連動している。サブプライムローンも当然そうである。金利の上昇は、ローン金利をさらに押し上げ、それによってこれまでなんとか支払い続けてきた借り手までも破産に追い込む可能性がある。そしてそれは、サブプライムイローンだけではなく、中程度の所得者用のプライムローンにも波及する恐れさえある。

    このような事情から、FRBは、金融機関を救済しようと思えばインフレを悪化させざるを得ず、また反対に、インフレを抑制しようとするならサブプライム危機を悪化させかねないというジレンマにおかれている。前回のようなドル散布による救済は困難であろうとの声が強い。

    状況をさらに悪化させている原油高 経済はどこまでの原油高に耐えられるか

    さらに状況を悪化させているのが止まることを知らない原油高である。各国経済にとって原油高はすでに深刻なレベルに到達しつつあるというのがおおかたの見方だ。以下は最近試算された「限界原油価格」、すなわち各国経済が耐えられるか原油価格の上限である。以前の記事でも紹介したが、再度掲載する。

    先進国の限界原油価格試算

    米 国  160・1ドル
    日 本  168・1ドル
    ドイツ  172・4ドル
    イギリス 183・8ドル


    すでに現在140ドルを突破しているので、この水準を越えるのは時間の問題かもしれない。4月にゴールドマンサックスは向こう2年間の原油価格を予想したが、それは180ドルー200ドルの範囲であった。原油価格上昇のスピードからみて、この予測ははるかに早い時期に実現する可能性すらあるだろう。

    限界価格の突破はなにをもたらすか?

    原油価格が上記の限界価格を突破すると何が起こるのだろうか?それは、急激なインフレをもたらし、先に記した図式を一層加速させる結果となる。そしてそれでも原油高に歯止めがかからない場合、生活防衛のための賃上げ要求が強まり、これがさらに企業の利益率を低下させながらインフレが激化するというコントロールのつかないスパイラル型のインフレに陥る可能性が出てくる。

    「限界原油価格の突破」→「急激な物価上昇」→「実質賃金の低下」→「賃上げ要求の激化」→「企業の利益率のさらなる低下」→「利益率を確保するための価格転嫁」→「インフレのさらなる激化」→「実質賃金の低下と経済のいっそうの収縮」→「多発する企業の倒産」→「長期的な慢性不況」

    今回は、このような流れに前述した金融危機の可能性が加わるのである。たまったものではないはずだ。金融機関が健全な場合、本来こうした危機は、企業に対する緊急融資の発動などの柔軟な対応によって緩和することができるので、不況が長期化することも避けられる。だが、金融危機で多くの金融機関に資金の余裕がないとき、そのような対応は難しい。不況はより深刻となり、長期化せざるを得ない。

    それでも原油高が収まらない場合

    そして、このような事態を迎えても原油高が収まらない場合、別な展開を考えなくてはならなくなる。多くの国では、長期的な不況による生活水準の低下から、政府は国民の支持を失い、政権基盤を安定させるためにはなんとしてでも原油や食料を手に入れなければならない状況に置かれるだろう。もしそのときに、支払い可能な価格でこれらを手に入れることができなければ、次の手段に訴えるしかなくなる。

    次の手段とは、武力の行使による資源の略奪である。それは、ヨーロッパの多くの国々が植民地の争奪戦に明け暮れ、その極点で迎えた第一次大戦のような戦争の形態になるかもしれない。

    投機の抑制

    だが、原油価格の今後の成り行きに対して楽観する意見も多いことも事実だ。こうした意見は、1)現在の原油価格高騰の第一の原因は投機であり、需給の逼迫に起因していないため、2)各国政府が共同して投機の規制を行えば、原油価格は実需を反映した1バーレル、70ドル近辺に落ち着くだろうと指摘されている。

    だが、ストラトフォーは最近レポートを発表し、実際はこのような規制は困難であることを報じた。以下がレポートの主要部分の要約である。

    Geopolitical Diary: Oil, Speculators and Politics

    ・明らかに原油の高騰は、サブプライム危機などよって低迷したマーケットから逃避してきた投機資金の流入によって引き起こされている。
    ・投機資金が原油の先物買いに集中したことが原因だ。
    ・だが、原油の先物を購入しているのは投機的な資金だけではない。
    ・原油の安定供給を必要としているあらゆる機関が先物の購買を行っている。
    ・こうした先物の購買は、原油の安定供給を確保するためにはなくてはならない。
    ・だが、こうした安定供給のための先物の買いと、投機的な買いとは実質的に区別がつかない。
    ・投機買いのみをターゲットにした先物売買の規制は実質的に不可能だ。先物取引の規制は、先物全体に及んでしまう。
    ・その結果、先物取引の規制は原油の安定供給を確保する目的で行われている先物買いをも規制してしまうため、原油の供給システムに大変な影響を与てします。
    ・先物買いが難しくなると、あらゆる機関は今の市場で手に入るだけの原油を確保しよう市場に殺到するため、原油価格ははるかに高騰する可能性がある。
    ・したがって、先物買いの規制はよほど慎重に行わないと逆な結果を引き起こしかねない。


    これが事実だとすると、そう簡単には投機の規制は行うことはできないことになる。ということは、原油価格の高騰はまだまだ続くと考えたほうが妥当なようだ。だとするなら、「原油・食料価格の高騰」→「インフレの悪化による世界同時不況」→「資源の争奪戦争」という図式もかなり現実味を帯びてくる感じがするがどうであろうか?

    ラビ・バトラーとエノック予言

    今回の暴落は、ラビ・バトラーの言うような資本主義の崩壊の序曲なのだろうか?また、これとともに発生している原油・食料高とともに、各国の資源争奪戦という第一次大戦のような無極化した戦争へと向かってゆくのだろうか?確かに、以前紹介したビリー・マイヤーのエノック予言を資源争奪戦として解釈するならいっそう現実味を増すような感じもする。以下を再度引用する。

    エノック予言

    ヨーロッパ
    ・第3次大戦の開始前からすでに、ヨーロッパでは局地的な戦争が勃発する。フランスとスペインの関係が悪化し、武力衝突へと発展する。
    ・フランス国内が騒乱状態になる。その原因は、EUが導入する政府の権限を強化する法案の制定、国内のネオナチなどのギャング化した集団の暴徒化、および国外から流入してくる移民との対立である。
    ・移民問題はヨーロッパ各国で騒乱を引き起こす。イギリスもその例外ではない。アイルランド、ウェールズなどは内戦のような騒乱状態になる。

    ロシアのヨーロッパへの侵攻
    ・ロシアはヨーロッパ全土へと侵攻する。最初は北欧諸国に侵攻し、そこから南下する。この攻撃は夏に行われ、それはロシアのスカンジナビア半島に隣接した都市「アルハンゲルスク(Arhangelsk)」から行われる。
    ・この侵攻が行われる一月ほど前には北ヨーロッパは巨大な竜巻に襲われる。
    ・ロシアのヨーロッパ侵攻が行われる年には巨大な自然災害がイタリアを見舞う。これに伴いベスビオス火山が大噴火を起こし、大きな被害をもたらす。
    ・ロシアは中東の支配をもくろみ、トルコとイランにミサイル攻撃を行う。
    ・ロシアはヨーロッパの石油産出地帯を支配することを目指すため、南ヨーロッパに南下しこの地域を攻撃する。ロシア軍はバルカン半島に侵攻する。


    だが、はたしてわれわれはいま、本当にこのような破局的なシナリオに前に立っているのだろうか?確かに、インターネットではこうしたシナリオが圧倒的に多い。これ以外のシナリオは本当の存在しないのだろうか?

    これとはまったく異なるシナリオ

    だが、これとはまったく反対の楽観的なシナリオも存在することも事実だ。それはシナリオとしては整理されていないが、様々な論者の観測記事や予測記事をもとにすると透けて見えてくるものだ。

    インフレがもたらした予想しなかった事態

    上でも述べたように、原油ならびに食料を中心とするインフレ圧力は、各国経済低迷の最大の原因である。今回のダウ暴落の原因は、サブプライム危機とともに原油・食料価格高騰に伴うインフレ懸念であった。

    しかし、今回のインフレはこれまで誰も予想していなかった事態をもたらしつつある。それは、地域産業の活性化だ。

    グローバリゼーションからローカリゼーションへ

    原油価格の高騰は、製品の輸送に伴う燃料費を高騰させる。燃料費の高騰は、本来は価格的に圧倒的に有利であった中国製品の輸入価格を吊り上げる。

    NHKBSの報道によると、高騰した燃料費を関税率に置き換えた場合、それは米国では11%になるという。現在の米国の関税率は3%なので、これは大幅な上昇だ。関税率は80年代から各国経済がグローバリゼーッションに突入するにしたがって下落し現在に至っているが、11%という関税率は、各国経済がさまざまな障壁によって保護され、自由化される以前の1970年当時の関税率になるという。

    このため、企業は中国などからの輸入製品ではなく、地元の企業から製品を購入するようになり、その結果、中国などの新興国の輸入攻勢によって壊滅しかけていた地域産業が活性化しつつあるというのだ。

    さらに原油の高騰は、コスト高が理由でいったんは放棄された石炭の採掘をコスト的に見合う水準に引き上げつつある。このため、いったん閉鎖された炭鉱が再開され、これによって一度は炭鉱の放棄によって荒廃した地域経済が活性化されつつある。すでに中国、豪州、米国など各国で再開されているが、日本でもこれは進みつつあるようだ。閉山していた北海道美唄市の三井鉱山は炭鉱を再開し、また財政破綻した夕張市の夕張炭鉱も再開の計画があるという。

    さらに原油価格が限界価格の1バーレル、160ドルから180ドルに接近すると、輸送費の高騰から、ローカリゼーションの波はあらゆる産業分野に及んでゆく可能性がある。現在高騰している製品の筆頭が食料であることを考えると、ローカリゼーションはまず地域の農業を活性化するのではないだろうか?地域の農産物が、輸送費と食料価格の高騰によって、輸入製品に対してコスト的に十分見合うものになりつつある。

    サバイバル生活圏としての地域経済

    こうした動きが指し示す方向はなんであろうか?それは「地域経済」がわれわれの「生活圏」として再構築される可能性があるということである。それはいわばわれわれの生活を守る「サイバイバル圏」の創出ということになるのかもしれない。

    こうした「サバイバル生活圏としての地域経済」が、市場原理に支えられ、あらゆる製品が海外から安く流れ込む現在のグローバル化されたシステムと根本的に異なることは、それが自己循環型のシステムであるということだ。すなわち以下の図式である。

    「原油・食料価格の高騰」→「地域経済による生産増大」→「地域経済の活性化」→「雇用の創出」→「地域市場の活性化」→「地域経済のさらなる活性化」

    つまり、地域経済の活性化は雇用の創出につながるので、それがまた地域経済の活性化を促進するという、かつての高度経済成長のときに日本が経験した循環である。

    政府の方向転換

    だが、こうした地域経済圏が有効に機能するためには、一部はすでに壊滅状態にある地域産業を再構築するための政府による援助が必要になるだろう。つまり、大幅な公共投資の再開である。

    方向転換し始めるオバマ政権

    このブログでもよく紹介している著名な歴史家、イマニュエル・ウォーラスティンはこのたびオバマ政権になった場合の基本政策を予想した。それは、オバマの公約や選挙キャンペーンでの発言、そして現在の政治力学から導き出されたものである。以下はその主要部分の簡単な要約である。

    「このまま行くとオバマ政権になる公算は非常に大きい。一言で言えばオバマは1930年代の大恐慌時に登場したフランクリン・ルーズベルト大統領の再来となるはずだ。ニューディール政策に近いものを実施するはずである。彼が実施するのは、健康保険の導入、税金や年金システムの再構築、雇用の安定的な確保などである。さらに彼は、ブッシュが作り上げた警察国家化した現在の米国のシステムを解体した大統領として歴史に残るだろう。」

    オバマに関しては様々な意見が存在している。肯定的な意見ばかりではないことも事実だ。だがオバマがウォーラスティンのいうように、ニューディール政策に近いものを実施するのであるとすれば、それは公共投資をメインにして地域経済の再活性化と雇用の安定を目標とし、地域経済を守る様々な規制を導入するいわゆる「大きな政府」の登場である。もしそうだとするなら、オバマ政権の政策は、これから始まる可能性がある「生活圏としての地域経済」の形成を強力に後押しする可能性もある。

    イラン攻撃

    だが、他方、第一次大戦型の資源争奪戦への方向を加速しかねない動きもある。それはイラン戦争である。

    先々週、イスラエルは地中海沿岸でイラン攻撃を目標にした大規模な演習を行った。それ以来イスラエル政府はイラン攻撃の意図を隠さず、米ABC放送などによると、「イランが濃縮ウランの抽出に成功した時点で攻撃する」と明言している。

    さらに、雑誌「ニューヨーカー」のシーモア・ハーシュ記者によると、米国政府はイランの反体制勢力を使ってイラン国内をかく乱する工作に400億円の支出を決定したとのことである。

    もしイラン戦争が本当に起こるとすると、イランはタンカーの40%が通過しているホルムズ海峡を封鎖することは間違いないだろうといわれている。

    原油価格258ドルの世界

    ホルムズ海峡が閉鎖されると、原油価格はさらに高騰することは間違いない。ある試算によると258ドルまで高騰してもおかしくはないという。

    しかし他方では、ブッシュ政権は国交のないイランに対して相互に外交官を交換し、ワシントンとテヘランに大使館の準備ともいえる連絡事務所の開設を申し出てきた。これをイラン政府は受け入れる見込みだとも言われている。これが実現すれば、今までにない高いレベルでの外交交渉が可能となり、外交関係再開へと道を開くことにもなりかねない。これは明らかにイラン戦争を遠のかせる方向である。

    もしかしたらいまわれわれはぎりぎりの転換点にいるのかもしれない。もし本当にこの水準まで高騰したのなら何が起こるのだろうか?上記のような地域経済活性化の方向がさらにいっそう加速化し、グローバリゼーションは終焉してゆくのだろうか?それとも、ナショナリズムの高揚によって国家をまとめ、壮絶な資源の争奪戦が開始されるのだろうか?一言で言えば、それはローカリゼーションか第一次大戦かの選択、ないしは予言の文脈では「マシュー君のメッセージ」か「エノック予言」かの選択となろう。

    続く

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