いったい何が起ころうとしているのか?5
世界経済の動き
楽観的な観測
すでに周知のようにFRBは3月18日の0.75%の利下げを皮切りに、資金繰りに窮した金融機関の保有する値崩れした証券類をFRBが米国債と交換する緊急対策を発動した。これにより、サブプライムローン問題で大損失を被った金融機関は、米国債を担保に他の金融機関から資金の融資を受けることができるようになり、これにより当面の破綻の危機は避けられた。
さらに、3月後半から4月始めに米大手証券会社の決算が相次いだが、大きな損失は出したものの市場の予想よりも小さかったため好感され、証券会社の破綻はさらに遠のいたとの印象が広がった。
事実、これに呼応してニューヨークダウは持ち直した。さらに、株価の下落を嫌った資金の逃避先となり、一時は大幅に高騰していた金や原油、それに穀物などの商品先物相場は大きく下落した。これにより、資金が株式市場に戻り市場のバランスが回復したとの観測も出始めた。緊急政策の発動から3週間ほどたつが、この傾向は今も継続している。ベアスターンズの破綻で、一時はクラッシュの可能性さえ指摘されていた金融システムはこれで危機を脱し、米国経済の成長は、低いながらも続くのではないかとの楽観的な観測さえ出るようになった。このブログでよく紹介するストラトフォーが最近出した3カ月予想でも、「米国経済は危機を脱し、マイルドな成長を今後も続ける」との観測を出している。
金融危機の予想
しかしながら、こうした楽観的な予想の反面、前々回の記事で取り上げたように、ベアスターンズの破綻はほんの氷山の一角であり、本格的な破綻はこれから起こるとの予測も多い。
そもそも今回の金融危機の発端は、住宅価格の下落によって低利のローンへの借り換えができず、多くの借り手が支払い不能に陥ったことが原因だが、住宅価格は回復するどころかどんどん下がり続けている。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が3月25日発表したデータによると、「1月の米中古住宅価格は20地域中で16地域で過去最大の低下となり、住宅価格のバブル地域のみならず他の地域も過去最大の下落幅」となっている。
さらに、米国住宅ローンの残高は1300兆円もあり、これは日本の政府と地方の負債総額の1100兆円よりも大きいといわれる。当然これの融資を行っている金融機関が存在するわけだが、仮に20%が支払不能になったとしても260兆円の損失となる。米欧の主要金融機関の自己資本は合計でも200兆円だといわれているから、すでにこの段階で金融機関の破綻は免れないようだ。メルマガ『ビジネス知識源』より
だが実際は、金融機関の資産担保証券の含み損の合計はおそらく400兆円になっているといわれ、米連銀や欧州中央銀行がいくら資金供給をしたとしても追いつかないだろうとも考えられている。
こうした情勢に伴い、伝説的なな投資家のジョージ・ソロス氏はブルームバーグとのインタビューにおいて次のように発言した。
「現在の金融危機は大恐慌以来最悪で、市場は若干持ち直しているものの再び下落に転じるだろうとの見通しを示した。<中略>同氏は、米国経済がリセッションに向かっているため、一時的な市場回復は6週間から3ヶ月程度しか続かないとの見通しを示している。」
また、すでにさまざまなサイトでも紹介されているのでご存知の人も多いかと思うが、昨年の11月、米国会計検査院(GAO)の長官デービッド・ウォーカーは会計検査院の職を辞し、「米国の累積赤字の規模から見て実質的に破産状態にあり、さらにこれに昨年から徐々に始まっているベビーブーマ世代への年金や健康保険の支出が加わると、40年後にはこれらの支出だけで政府予算のすべてを食い尽くすことになる」との警告を発し、今すぐに対策をとらないと大変なことになるとして全国的なキャンペーンを行っている。すでにCBSやABCなどの大手三大テレビ局でも大きく取り上げられ、話題になっている。
George Walker
さらに、このような警告は一般の経済情報専門のサイトを越え、本来金融とは一切関係のないあらゆる分野のサイトでも行われるようになった。それはニューエイジ系のスピリチュアルサイトにも及んでいる。
このブログでも何度か紹介したサイトに「Conscious Media Network(CMN)」がある。ここは、量子力学のノーベル賞学者から著名な占星術師までをカヴァーする、米国でももっともクオリティーの高いスピリチュアル系の情報を紹介しているネットテレビだが、ここでも4月の緊急特集として、米国の経済崩壊が近いので、出来るだけ家族を中心とした自給自足的なライフスタイルに心がけるように強く警告している。
ヘッジファンドの危機
前々回の記事で銀行から貸し剥がしを受けたヘッジファンドの危機が進行していることを紹介したが、これがさらに進展している模様である。英フィナンシャルタイムスは4月4日の記事で以下のように伝えた。
「ヘッジファンドは銀行からの突然の融資枠取り消しや追加担保の要求で資金繰りが悪化しているが、今度は顧客の投資家から資金償還が殺到し、それに応じるため、保有資産を投げ売りせざるを得なくなっている」(「ヘッジュファンドニュース」より)
New cloud on horizon for hedge funds
金融破綻は近いのかもしれない
迫り来る決算日
4月の半には大手商業銀行の決算日が近づいている。
4月17日 メリルリンチ
4月18日 JPモルガン、シティ、バンクオブアメリカ
これに呼応してか、日本の著名な投資家の松藤民輔氏は以下のように警告している。
「ワーニング!!4月17日、全ての市場が大きな転換点になります。」
また、前々回の記事で紹介した「Web Botの予言」は4月15日前後が大きな転換点となると予言している。
「事態は4月15日前後までどんどん悪化する方向に向かう。」
これは当たることになるのだろうか?あと一週間だ。
チベット情勢
チベット情勢も緊張の度合いを増している。世界を巡るオリンピックの聖火は、中国に対する抗議行動のかっこうの標的となっているが、チベット情勢は今後扱いを間違えると大変な事態となりかねない危険性がある。この問題を調べて行くと、今の中国政府が内包するある可能性がはっきりと見えてくるような気がする。
歴史的背景
まず、「ストラトフォー」「ビデオニュースドットコム」「大紀元」などで提供されている情報からチベット問題の歴史的な背景の要点をまとめる。
・1642年
ダライラマ政権樹立
・1728年
清はモンゴル騎馬軍団を支配する目的から彼らの信奉するラマ教(チベット仏教)の保護者をかってでため、チベットは清の保護国となることを了承。
・1842年以降
清はアヘン戦争に敗れるが、これ以降清の官僚は西欧をモデルとした近代化を目指すようになり、欧米各国に中国内のより広範な自由を許すようになった。
・1876年
ヒマラヤを越えた陸路の通商路を開きたがっていた英国に、清はチベットの通行許可を与える。チベットはこれに反発し、清との関係が悪化する。
・1905年
日本の躍進に刺激された清は、チベットの近代化政策を打ち出し、これを断行する。チベットはこれに強く反発し、清との関係は修復困難となる。
・1912年
孫文の辛亥革命により清は滅亡し、中華民国が樹立される。
・1913年
中国の混乱を期にダライラマ政権は独立を宣言する。清朝の領土の継承を主張する中華民国はこれを認めず、チベットは自治邦となる。
ここで重要なポイントは、間接的ながら、日本の存在が清朝とチベットとの関係悪化に大きな影響を与えたという事実だ。「ビデオニュースドットコム」の出演した平野聡氏(東京大学大学院准教授)がこの点を指摘している。
①清朝の近代化を志向しながらも儒教を信奉する官僚層は、近代化のモデルとして日清・日露の両大戦に勝利した日本をモデルにした。
②日本が近代化に成功した理由として、1)民族が日本人という共通したアイデンティティーのもとに結集し、2)国家としての強力な統一の維持に成功したからだと考えた。
このため清朝は、日本に見習い、「中国人」としての共通した民族アイデンティティーの形成に強くこだわり、国内に55ほど存在している少数民族の独自性は一切認めず、これらをすべて「中国人」の共通したアイデンティティーのもとへと統合することを強く志向するようになった。この段階で「チベット文化の独自性」は完全に無視され、「中国人」としての文化が強要されるようになった。これがチベットが強く独立を志向する理由となった。
1913年から1959年まで
中華民国の樹立は、近代化の必要性から共通アイデンティティーとしての「中国人」のさらなる強化を打ち出したが、国内の混乱が深まりその実現は難しくなった。
1940年代の後半になると、ダライラマ政権は設立間もない国連に働きかけ、チベットの独立の承認を勝ち取ろうとしたが失敗した。一方、ダライラマとチベット人は、この時期の中国共産党が喧伝する共産社会に仏教が唱導する理想的な共同体の姿を重ねてみており、強い親近感を感じていたという。ダライラマ自身、中国共産党への入党を希望していたといわれている。このため、1951年に人民解放軍がチベットに侵入したときは何の抵抗もなく向かい入れられた。むしろチベット人の歓呼の声とともにラサに入場した無血占領であったといわれる。
だが、共産党もやはり近代的なアイデンティティーとしての「中国人」の形成に強くこだわっており、この当時全国で実施していた人民公社による集団農場化をチベットでも実施した。チベット人の文化はここでも完全に無視された。当初は共産党に好意を抱いていたチベット人も次第に共産党の政策に反発を強め、とうとう1959年の暴動となって爆発した。
暴動は大変な流血の後徹底的に弾圧され、ダライラマは10万人の支持者とともにインドのダラムサラに亡命し、亡命政権を樹立し現在に至っている。
CIAの資金援助
ところで、チベットの独立運動にはかなり早い段階からCIAが関与していたことが知られている。
チベット、誰も言わない2,3のこと(伊Megachip)08年4月3日 by Sabina Morandiより
「CIAがチベットで大々的な工作を開始したのが56年。数万人の犠牲とダライ・ラマおよび従者たちのインド・ネパールへの亡命をもたらし不成功に終わった59年の大蜂起に繋がった。この最初の頓挫で国務省はより穏健な考え方になったかといえば事実はその逆で、コロラド州リードヴィルにチベタンゲリラ訓練キャンプを設営し66年まで稼動させていた。CIAのチベタン・タスクフォースによる工作活動は74年まで続けられ、おそらく最後のプログラムとしてニクソンと北京のリーダーとの歴史的会談が用意されていた。これに言及した99年のワシントンポスト記事は、CIAの失敗はチベットの人々の過去の体制に対する恨みといった、明らかにアナリストの過小評価がもたらした状況によるものであったとしている。」
近代中国人の共通アイデンテキティーと少数民族の文化的なアイデンティティ-の衝突
要するに、今回のチベット暴動の背景には、近代化を強く志向し、そのために共通した民族アイデンティティーの形成を推進し、これに他の民族を無理に同化させようとする中央政府の政策と、これに反発して文化の独自性を維持しようとする少数民族との対立が存在し、それが最近の経済成長で拡大した漢民族と少数民族との所得格差によって増幅され暴発したと見ることができると思われる。
そして「中国人」としての共通アイデンティティーの中核となるのが「漢民族」である。その意味では、「中国人」のアイデンティティーの強化はそのまま「漢民族ナショナリズム」となって表れる構造になっているようだ。
現在の中国政府が抱えるトラウマ
他方、現在の中国政府は過去の歴史から受け継いだ深刻なトラウマを抱えているとも言われている。
清朝がアヘン戦争で敗北した1842年から中華人民共和国が樹立される1949年までの100年ちょっとの期間、それぞれの時期の程度の差こそあれ、中国は近代化に失敗し、国内の統制を失った混乱状態の中にあった。このため、外モンゴルや沿海州などを支配していた清朝の領土は3分の2となり、現在に至っている。清朝の版図は現在の中国よりもはるかに広大であった。以下を参照。
また、49年の独立以降も、米国の中国孤立化政策やソビエトとの関係悪化などにより、国連に復帰する1971年まで国際的に完全に孤立化した状態が長く続いた。
一方、現在の中国はこのような過去の状態とはまったく異なっている。まがりなりにも近代化に成功しただけではなく、年間10パーセントを超える驚くべき経済成長を達成した。世界経済の牽引力の一つとなっている。
さらに、世界経済における日本の地位の相対的な低下から、中国が今後「大中華圏」を形成し、その中心として経済圏の盟主となることも決して不可能な目標ではなくなった。事実、日本の地位の低下はわれわれの想像を超えて進んでいる。通貨価値の面から寺島実郎氏はこれを以下のように指摘する。
「中国人民元は管理された枠組みの中にあるにも関わらず円に対して一九・〇%高くなった。同様に香港ドルは九・二%、シンガポール・ドルは二五・一%高くなり、つまりこれらの国から日本を訪れる人にとって、この七年で日本の物価は極端に安くなったと受け止められるはずである。この間に国民所得が倍増している中国の場合、購買力に対する日本の物価は六~七割安くなったという受け止めであろう。」
だがこのような成功も現在の中国政府から見ると、「中国人」としての共通のアイデンティティーにほころびが出て国内の統合に失敗するようなことがあれば、「大中華圏」構想は空中分解するのみならず、中国本土の統一も難しくなり、これを契機に海外からの侵略を受ける過去同様の状態になるのではないかという深刻なトラウマがあるという。
このトラウマが原因となり、中国政府はチベット問題に対し、これを対話的に解決する姿勢を取れないでいるというのだ。
欧米のイメージ
他方、欧米のチベット問題に対する中国政府への攻撃は次第に激しくなりつつある。ストラトフォーなどの戦略研究所は、もし同じことがイスラム教の新彊ウイグル自治区などで発生した場合、欧米はこれを完全に無視したか、むしろ中国政府に同情的な態度をとっただろうという。それは以下の固定観念の連鎖が彼らを支配しているからだという。
「新彊ウイグルの独立運動」→「イスラム」→「テロリスト」→「アルカイダ」
これに対し、チベットは以下のような連関で見られている。
「チベットの独立運動」→「仏教」→「平和主義と神秘性」
つまり、欧米の勝手な思い込みによる暴走という側面も指摘されているようなのだ。
攻撃されればされるほど硬化する中国政府
先にトラウマに深く浸透されている中国政府は、このような欧米各国による非難と攻撃が強くなればなるほど国内の統一が脅かされるという危機感を強くし、過剰反応しやすくなるだろうと言われている。その結果、統合の中核としての「中国人」の概念、いやさらに拡大しかつての清王朝の版図を包含するような「大中華圏」の中核となる「新中華民族」のアイデンティティーを強く押し出してくる可能性がある。中国民族問題研究会会長の殿岡昭郎氏は以下のように指摘する。
「中国には少数民族が55あり、漢民族を入れると56になるのだが、中国にはこれらの少数民族を併合して新しい中華民族を創りたいとの野望に基づいた大きな国策があるのが事実だ。チベット人自治区に関して言えば、その言語と宗教という二つの標的を攻撃し、チベット語は第二外国語として家庭内のみの限定的な使用に追いやられ、宗教は無神論が押し寄せて寺院での祈祷もままならなくなり、肉体的にも結婚奨励策などでかなりの部分で同化政策が進み民族的な危機となっている」
もしオリンピックでなにかあったら?
このような状況のときに、オリンピックでなにかあったらどのような事態が想定されるのだろうか?もしオリンピックが中止になるか、または中止にならなくても中国が屈辱されるような事件が発生した場合、中国政府は少数民族の統合を、軍事力などはるかに強硬な手段を使って進めるだろうということである。それとともに「大中華圏」の中核としての「新中華民族」のアイデンティティーを対外的にも強く主張することにもなってゆくかもしれない。
これはタイター的なシナリオなのだろうか?
Web Botの予言
ところで、最近アップデートされた「Web Botの予言」に以下のような記述が存在する。
「2008年の春は、「中国の外交政策」に関する「発表」によって「国際社会」は「混乱」する。「中国」は「国際社会がどうあるべきか」独自の「ビジョン」を公表する。これは「各国のリーダー」を「驚かせ」、大きな「心配の種」となる」
「Web Botの予言」に対する評価は分かれるところだが、最近次のような的中していると思われる例があった。
今年の元旦「Coast to Coast AM」が行った年頭予言スペシャルで「Web Bot」の予言に以下のような項目が含まれていた。これは、番組に出演したプロジェクトのリーダー、クリフによって公表された。
「5月か6月に在郷軍人が国家の記念碑をのっとるような事件が起こる」
時期はずれたが、「戦争に反対する在郷軍人の会」はイラク戦争開戦の5年目にあたる3月19日に「国立公文書舘」を占拠し、イラク戦争の即時終結と撤退を求めるアピールを行った。以下の画像で確認できる。
IVAW seizes National Archives Building
予測できたはずだとの意見もあるが「国家の記念碑の占拠」までは予想は難しいのではないだろうか?もし「Web Bot」のこの予言が的中したと考えるなら中国政府から近いうちに何かの発表があるのだろうか?
やはり目が離せない。
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