いったい何が起ころうとしているのか?4
今回は経済関連の話題は一度お休みする。
3月29日、フォトンベルトレポートを主催している渡邊延郎氏の講演会にゲストスピーカーとして招待され、講演を行う機会が与えられた。このブログの読者にも実際にお会いすることができ、実に興味深い体験であった。このような機会を与えてくださった渡邊氏には心より感謝したい。
チベット情勢
チベットで発生した暴動(抗議運動)が四川省などチベット族が居住する周辺地域に広がり、予断を許さない状況になってじる。これに伴い、欧米各国の北京オリンピックボイコット運動も活発化し、ついにフランス外務省がオリンピック開会式の欠席を検討するという段階にまできている。こうした一連の動きはマスメディアでも大きく取り上げられているので、特に詳述を要さないだろう。
ストラトフォーの分析レポート
チベット暴動の発生に伴い、「影のCIA」の異名を持ち、実際にCIAを最大のクライントの持つ国際情勢分析を専門とする民間研究所「ストラトフォー(戦略予測有限会社)」は、複数の分析レポートを発表した。以下がその要約である。
・チベットにおける僧侶の抗議デモは毎年発生しているが、例年であれば、A)治安警察が出動してデモを徹底的に鎮圧し、B)数百名単位でデモ参加者を逮捕し、C)数名の首謀者を残しあとは釈放する、という形で終結していたが、今回は以下の原因でコントロール不能な暴動にまで発展したと見られる。
①デモの発生は当初から予想されていたが、今年は北京オリンピックがあるので、最初当局は国際社会の非難を招くような暴力の過剰使用を制限しようとしていた。
②デモの当日はチベットの地方政府幹部はみな北京で行われている党大会出席のため不在であった。
③このため、デモの鎮圧の指揮をとるチベット自治区の党本部が機能していなかった。
④この結果、デモの鎮圧はこれまでになく遅れたため、デモは暴動化し、漢民族が経営する商店などが標的となった。
・チベット暴動の弾圧には各国の非難が殺到しているが、だからといって中国はチベットの独立を承認することはない。なぜなら、
①中国はインドとの間に長年国境紛争を抱えており、緩和されたといえインドとはいまだに緊張関係が続いている。
②チベットは、人口が密集する中国内陸部に対するバッファーゾーンとしての重要な役割を担っている。
③一方ダライラマはインドに亡命しており、インドとは良好な関係にある。
④したがって、ダライラマを帰国させチベットの独立を承認することは、チベットとインドが友好関係になり中国に敵対する可能性がある。
⑤チベットが独立した時点で中国はバッファーゾーンを失うので、内陸部の人口密集地帯が無防備になってしまう。
・だが一方、チベット暴動は中国にとって利用価値の高い事件であることも事実だ。
・暴動と抗議運動は、チベット族が居住する四川省や甘粛省に飛び火しており、さらに拡大する様相さえ見せている。それは新疆ウイグル自治区などの他の分離独立運動を刺激する恐れがある。
・しかし、チベットにしろ新疆ウイグルにしろそれは少数民族の分離独立運動でしかない。
・したっがって、これらの少数民族の運動に対抗して、逆に漢民族ナションナリズムを喚起することが出来る。
・現在中国では、貧富の差や農地の強制収用を背景とした暴動が年7万から8万件農村地域で発生しているが、それらの暴動は多くがが漢民族地域で発生している。
・なので、漢民族ナショナリズムを喚起し漢民族の一体性を宣揚することは、地方暴動の原因となっている不満を抑えることが出来る。
・各国がボイコットするにせよしないにせよ、北京オリンピックは、高揚した漢民族ナショナリズムを宣揚する一大イベントとなるだろう。
・これは、中国政府の求心力を強めるにはもっとも都合がよい。中央政府の権限は強化される。
この分析にあるように、「漢民族ナショナリズムの高揚による中央政府の求心力の強化」というのがチベット暴動がもたらした意外な結果なのかもしれない。タイターの予言もこの分析を前提に読むと、意外な結果となるような印象を受ける。以下で示す。
ジョン・タイター予言への注目
情勢次第では北京オリンピックの開催がキャンセルされるか、開催されたとしても参加国が限定された規模の小さなものになる可能性がわずかながらも出てきた。これに伴い、ネットを中心にがぜん注目を集め出したのがジョン・タイターの予言である。
米国では、タイターには愛好者も多いが、これが複数の人間が創作にかかわった壮大なフィクションであるとする意見も非常に強い。タイターのメインサイトの管理者であるオリバー・ウィリアムスも「タイターはさまざまな分野の専門家が協同作業で作り上げた架空の人物であるという疑いは消えない」と言っている。
日本でもそうであろう。愛好者もいるが、否定する人も多いに違いない。筆者の印象では、日本では否定する意見のほうがかなり多いように思う。
ここでは、あくまで中立的な立場で扱いたい。タイターに関する判断は読者にお任せしたい。ただ、フィクションの可能性は非常に大きいが、完全には否定できない予言的な内容も十分に含まれているというあいまいさがタイターの尽きない魅力なのではないかと思う。
タイターのオリンピック予言
2001年の投稿でタイターは以下のように予言していた。
(投稿日:2001.1.29)
問い:未来でもオリンピックは開かれているのでしょうか?
答え:いいえ。多くの戦争の結果、2004年以降、公式なオリンピックは開かれていない。でも2040年に再開される見込みである。
タイターの予言には的中したものも多いとされるが、タイターがこの世界にいた2000年11月から2001年3月の時点で予想が可能であったものが多いとする説もある。タイターのオリンピック予言を検討する上で重要になるので、どの程度予想可能だったのか一度確認しておくことにする。
的中した予言(「新科学と健康と雑学」より抜粋)
(1)タイムトラベルの実現
「約1年後にはCERN(欧州原子核研究機構)でタイムトラベルの基礎研究が始まり、2034年にタイムマシンが完成する」(投稿日:2000.11.2)
的中:
タイムマシンの完成は、まだ先であるが、CERNが2007年に完成する大型加速器で、ミニブラックホールを形成できる可能性を発表したことにより、タイムトラベルの基礎となる研究が開始された。
評価:
すでに1999年頃から、CERNの研究者によるミニブラックホールの形成の可能性を指摘するレポートが発表されており、これは十分に予測可能だった。
(2)IBM5100の隠された機能
「私の世界線では、IBM5100はAPLやBASICが普及する前に書かれたIBMのプログラミング言語もすべて解読できるということが判明している」(投稿日:2001.2.2)
的中:
ジョンが投稿するまで、この事実は公開されていなかった。IBM社の元エンジニアのボブ・ダブック氏がインタビューでこの事実を認めており、ジョンがこの情報をどこから入手したのか不思議がっていた。
評価:
タイターがさまざまな分野の専門家集団が作り出した架空の人物であった場合、専門家集団にこの事実を知るものがいたとしても不思議ではない。
(3)新ローマ教皇の誕生
「ローマ教皇は交代したが、名前は知らない」(投稿日:2001.2.8)
的中:
2005年4月2日にヨハネ・パウロ2世が死去し、2005年4月19日にベネディクト16世が新ローマ教皇となった。これは、ヨハネ・パウロ2世が80歳を越えていたことから誰でも予測できたと思われる。
評価:
高齢とともに、すでにヨハネ・パウロ2世はパーキンソン病をすでに発病していたと思われるので予測は十分に可能だった。
(4)ペルー沿岸地震
「ペルー地震を予言することもできるが、それだとその地震で死ぬはずの人が生き残り、生き残るはずの人が死ぬという事態が起こってしまう」(投稿日:2001.2.8)
的中:
2001年6月23日、ペルー沿岸でマグニチュード7.9の地震により大きな被害が発生した。予言でないような言い方であるが、非常に近いタイミングで地震が発生している。
評価:
予測不可能
(5)中国の宇宙進出
「中国は、もうすぐ有人宇宙船を周回軌道にのせるところまできているはずだ。そのうち実現しても不思議ではない」(投稿日:2001.2.19)
的中:
2003年10月15日、中国は初の有人宇宙船「神舟5号」の打ち上げに成功した。あいまいな言い方であるが的中している。
評価:
2001年の前半にはどの程度中国が宇宙開発に成功しているのか示すレポートは手に入った可能性は強い。したがって予測できたものと思われる。
(6)第2次湾岸戦争
「現在イラクが核兵器を持っていることを知ってしまったら、あなたは驚くか? それとも、皆の尻をたたいて次の戦争に備えさせるためのたわごとに過ぎないと思うか?」(投稿日:2001.2.25)
的中:
2003年3月19日、イラクが大量破壊兵器を隠しているという理由で米英連合軍がイラク空爆を開始した。その後、米調査団によって大量破壊兵器は存在しないと発表された。あいまいな言い方であるが、核兵器を理由に開戦したと解釈すると的中している。
評価:
予測不可能。2001年3月当時、イラクの空域の3分の2は米英の監視下にあり、イラクは実質的に無力化されていた。このような状態で米国がイラクを攻撃するとは想像すら出来なかった。
(7)狂牛病の蔓延
「はい、人は絶えず死んでいる。その多くはクロイツフェルト・ヤコブ病(狂牛病)によるものである。この病気がいかに甚大な被害をもたらすかぜひ訴えておきたい。2人の患者が、外科手術の器具でクロイツフェルト・ヤコブ病にかかり、コロラド州で死亡が確認されている」(投稿日:2001.3.24)
評価:
ジョンはアメリカ国内にもクロイツフェルト・ヤコブ病が発生することを示唆している。当時、ヨーロッパを中心に狂牛病と変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の関係が確認されており、専門的なソースに当たれば入手できた情報ともいえる。
このようにみると、「ペルー地震」と特に「イラク攻撃」の2つはタイターが予言を投稿した当時では予測はほとんど困難だったといえる。これをタイターの予言が信じるに値する証拠とみるのか、また反対に、的中した数が少ないので無視する根拠と考えるかは読者の判断に任せたい。
的中しなかった予言
また、的中しなかったとなれる予言も少し細かく見ると面白いことに気づく。
アメリカ内戦勃発
「2004年、次の大統領選挙が近くなるにつれ市民の暴動が多発するようになる。」(投稿日:2000.12.13)「アメリカでは2005年に内戦が始まる。その戦いは、断続的に激しくなったり収まったりしながら10年間続く」(投稿日:2000.11.7)
評価:
当然、まだ内戦は発生していない。内戦が起こるとしたら、その背景には米国の政治的な分裂があるはずだ。ブッシュが勝利した2004年の大統領選挙では、共和党支持の農村部と民主党支持の都市部との間の深刻な分裂状態が明らかになった。ここまで米国が分裂することは、2001年の9月11日の同時多発テロ事件以前では予測不可能であった。その意味ではタイターの予言は興味深い。
タイターの中国に関する予言
さて、上記の内容を考慮すると、タイターの予言は当然すべて受け入れるわけには行かないが、完全には否定しきれないのではないかとの印象を持つがどうであろうか?やはり、タイターはどこまで行ってもアンビバレントな存在だというのが実像なのかもしれない。
ところで、タイターは宇宙進出とともに、中国に関する以下のような予言を残している。
2015年以前 日本、台湾、朝鮮の中国強制併合
「日本、台湾、朝鮮半島はすべて、Nデーの前に強制併合された」(投稿日:2001.2.6)
西側諸国の情勢不安と中国の台頭
「今後、西側諸国の情勢はきわめて不安定になり、中国に拡大する自信を与えてしまう。中国には今、結婚もせずに死にゆく覚悟ができている男性兵士が何百万人もいる。」(投稿日:2001.2.6)
先に書いたように、ストラトフォーの分析が正しければ、いまの中国では漢民族ナショナリズムの宣揚を通して中央政府の権限が強化される流れにある。各国参加によるオリンピックの開催はこのさらなる高揚をはかる機会となるだろうが、もしボイコットが相次いだり、オリンピックの中国単独開催(またはごく限られた参加国による開催)、さらには開催中止などとなった場合、高揚した漢民族ナショナリズムはより荒々しいものとなり、中国を排除した各国に向かう可能性が出てくるだろう。これに以下の2つの条件がタイミング的に重なった場合はどうであろうか?
①すでに進行しつつある基軸通貨としてのドルの放棄、ならびに米国の覇権の凋落により無極化がさらに進み、安定した秩序が失われた状態になる。
②中東で大きな戦争が勃発し、イラクですでに手を焼いている米国がこの戦争に引きずり込まれ、手一杯となる。
当然、無極化した状態は、ロシアや中国(将来的にはインドも?)など覇権を目指す国家にとっては、これを実現する最大のチャンスとなる。これに②の条件が重り、さらにオリンピックが中止か限定開催となった場合、高揚した漢民族ナショナリズムによって求心力をすでに得ている中国は一気に対外的な拡大を開始する可能性があるのかもしれない。
他の予言とのシンクロ
中国の対外的な拡大の可能性を示唆する予言にはことかかない。以前の記事で紹介したビリー・マイヤーのエノク予言も以下のように述べている。
「新しく生まれ変わったロシアは、長い過去の歴史を引き継ぎ、内モンゴルを巡って中国と衝突するだろうからである。その結果、ロシアは領土の一部を中国に譲渡することになるであろう。まさにこの中国が危険な国になるであろう。わけても現在すでに理想的な関係にはないインドに対してである。中国はインドに侵攻するであろう。もし生物兵器が使用されたら、ニューデリーとその周辺だけで3000万人が殺されるであろう。」
確かに、タイターが予言するように、オリンピックが中止されるようなことがあった場合、世界はもっとも危険な方向に驀進してゆく可能性も否定できないのかも知れない。今後、これらの予言は実現する可能性はあるのだろうか?
公表されたタイターのファックス
ところで、今回「Coast to Caost AM」はオリンピックのボイコットの可能性を受け、タイターのメインサイトを管理しているオリバー・ウィリアムスをゲストに招きタイター特集を組んだ。このとき、米国のタイター愛好者にはすでに知られていたが、日本ではまったく存在が知られていないタイターが送信した二通のファックスが読み上げられた。
一通目のファックスは、1998年7月29日、当時「Coast to Coast AM」のメインホストを務めていたアート・ベル宛に送られたものである。二通目は2001年2月15日に送信された。
最初のファックスはアートによって無視されたが、二通目のファックスが送信されたとき、一通目とともに放送中に読み上げられた。昨年まではメンバーであればこのファックスを読み上げた放送を聴くことができたはずだ。だが今は、タウンロードできる一番古い放送は2002年なので残念ながら聴くことはできないが、多くのタイター愛好者が過去にダウンロードした放送を書きとめネットで公開している。
タイターの予言スタイル
実際にファックスを見る前に、タイターの予言のスタイルについて一言述べておく必要がある。
タイターは、まったく文脈に関係のない発言をし、そこで重大な予言をいきなり述べることがよくある。たとえば以下のような具合だ。
2012年に何か変わったことが起こるか聞かれてタイターは次のように答えている。
「私の時間の2012年では、私はフロリダ中部で生活し、川や森の中を走り回って遊んでいた14歳の少年でした。アメリカの内戦は7年目に突入し、世界大戦が始まる3年前でした。はい、確かに普通ではないことが2012年には起こります。ただ、その出来事で世界が終わるわけではありません。残念ながら、私やあなたではどうすることもできないようなことは、私は語らないことに決めたのです。ところで紅海とエジプト人の逸話を知っていますよね?」
紅海とエジプト人の逸話をとは、旧約聖書の「出エジプトの記」の「モーゼはユダヤ人を率いてエジプトを出発する。エジプト軍の追撃を受けるが、奇跡が起きて紅海が二つに分かれたので無事に通過できた。後を追おうとしたエジプト軍は、水が戻ってきたので全滅した」という逸話を示すものだ。これは大洪水の示唆であろう。
「ペルー地震を予言することもできるが、それだとその地震で死ぬはずの人が生き残り、生き残るはずの人が死ぬという事態が起こってしまう」
これも文脈とは直接関係のない発言で、重要なことが示唆されるよう例だ。
次のファックスを見るとき、同じ原則を適用すると意味のある予言が見えてくると考えられている。
一通目のファックス
長文なので全文はいずれ訳出するとして、今回は予言に該当する部分だけを訳す。
自分が過去に移動するとその時点で新しい世界線ができ、そこから新しい未来が発展することを説明した後、以下のように発言した。
「いまあなたが作った新しい宇宙では歴史は変更できます。ただ、ほとんどの場合変更はわずかなものです。そのもっとも古い例は、ニューヨークには存在していない摩天楼なのです。」
これは1998年に送信されたファックスである。2001年9月11日の3年前だ。タイター愛好者の中には、これを同時多発テロによる世界貿易センタービルの倒壊の予言だと解釈する人も多いようだ。
また、同じファックスに以下のようにもある。
「中国が台湾を併合する。イスラエルは自らの存亡を賭けた最大の戦争に勝利する。ロシアは崩壊した原子炉による核の雪におおわれる」
これはいったい何を意味するのだろうか?興味は尽きないところだ。
続く
投稿に関しては以下の方針に従い、どうしても必要な場合以外は削除しないことにしております。
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