2008年と今後の世界3
世界同時株安
本日の1月24日はたまたま上がっているが、年初より始まった米国主導の株安の基調には変化がないものと思われる。一進一退を繰り返しながらも、基軸通貨としてのドルが放棄される流れが確実に加速している。このまま行くとコルマンインッデクスのDay6が始まる2008年11月13日以降くらいから、基軸通貨変更の動きは本格化するだろう。
欧州委員会委員の発言
朝日新聞によると、22日、欧州連合(EU)の行政機関である欧州委員会のアルムニア委員(経済・通貨担当)は「米国の財政赤字と貿易赤字が株安の遠因だ」と述べ、米国の政策を批判した。
このような理解が、多くの政府の金融当局や投資家の共通認識になっているとするなら、今回の株安とドル安は長期化することは間違いないだろう。株安とドル安が景気の変動に伴う短期的なものではなく、巨額の赤字という米国経済のシステムそのものに内在する構造的な要因によって引き起こされているからだ。そのためにはシステムの構造そのものを変革しなければならず、それには長大な時間がかかるからだ。
ブッシュの経済救済策とFRBの利下げ
周知のように18日ブッシュは1400億~1500億ドル緊急経済対策を発表したが、これは企業と個人に対する減税による国内消費の刺激策が柱であった。巨額の減税と所得税の現金による還付を実施し、冷えきりつつある国内消費のテコ入れをしようというものである。
さらに同時にFRBはさらに0.75%の利下げを実施した。市場はブッシュの景気刺激策には反応しなかったもののFRBの利下げには少しだけ反応し、若干値を上げた。
無意味化しかねない経済政策
ただ、今回の不況の原因が米国の巨額の赤字という構造的な要因にあるという理解が一般化しているのであれば、今回のような国内消費の刺激策や利下げは短期的には相場を上昇させることはあっても、基軸通貨の転換と米国の凋落という全体的なトレンドを変えることにはならないと思われる。システムの歴史的な転換の時期は確実に迫っているようだ。
いまの株安・ドル安の基調を変るには、巨額な赤字体質を本格的に転換させる米国の根本的な構造改革を発表するか、または今回のブッシュの刺激策をはるかに上回る巨額の財政出動によって現行のシステムを延命させりかのいずれかであろう。いずれの場合でも、それは真の意味で説得的なものでなければならない。そうでもしない限り、現行の市場のトレンドを変えることにはならないだろうと思う。
コントロール不能の借金体質と米国の世界戦略
しかし、赤字体質の改善といってもそう簡単ではない。すでに以前の記事「予言の評価と今後のシナリオ2」でも書いたように、米国の政府財政は、米国の高い利子率や自国通貨の切り上げを嫌って還流してくる膨大なドルに依存している。
米国への輸出→支払い代金としてのドルの受け取り→米政府は利回りを高めに設定→米国への再投資→米国金融市場の活況
米政府の赤字体質を改めるとは、こうした循環に依存する必要がないほど財政支出を抑えるということだが、これはブッシュ政権下では不可能に近いと言わねばならない。
周知のように米国政府の最大の支出項目は軍事支出である。2001年以降、それは空前の勢いで伸びている。この支出に現在の米国の世界戦略のすべてが依存しているといっても過言ではない。
赤字に依存しない財政とは、海外から還流してくるドルには依存しなくてもよいほど支出を縮小するということである。これを行うことは米国の世界戦略を根本的に変更することを意味する。それはイラクからの全面的な撤退や、撤退を含む米軍の世界的な再編成を必然的に要求するはずだ。
次期大統領はクリントンになる公算が強いが、政権の公約を見る限り、彼女の政権下でもこれは難しいだろう。一部で高い支持を得ているロン・ポールでも大統領にならない限り、世界戦略の転換を前提にした支出構造の根本的な変化はないのではないかと思う。
借金付けになりながら国内消費を支える構造
2001年度の後半など一時的な景気の落ち込みはあったものの、米国経済の景気は絶頂期にあった。こうした国内景気を支えたのは伸び続ける個人消費であった。
だが、個人消費の伸びは、米国の国内産業が成長しており、そこから生み出される雇用や所得の伸びだけによって支えられていたわけではない。米国の個人消費は、住宅価格の上昇を当てにしたローンと、ミニマムペイメントという特殊な支払い方法を採用したクレジットカードローンよって支えられている。
モーゲージローン
米国の住宅価格は91年以来右肩上がりの上昇が続いていた。モーゲージローンとは、日本でいう住宅ローンのことだ。だが日本と大きく異なることは、住宅の所有者が所有する住宅を担保に現金を借りる目的で使っていることだ。住宅価格が右肩上がりの上昇を続けている限り、値上がりした住宅の評価額の範囲でローン会社から現金を借りることができる。つまり、10万ドルで購入した住宅が1年後評価額が15万ドルに値が上がったら、値上がり分の5万ドルの枠で現金を借りることができるというわけだ。
このため住宅価格の上昇が続いていた間、住宅を所有してさえいればほぼ無尽蔵にローンを組むことができ、現金の供給を受けることができた。
住宅価格の上昇がストップし、サブプライムローンが破綻したいまとなってはすでに崩壊したが、これが米国の旺盛な国内消費を支えていた一つの柱でたった。
ミニマムペイメント
さらに、消費を促進させていたメカニズムにミニマムペイメントというローンの支払い方式がある。これは債権者であるローン会社が、月々のローンの支払いを額を利息分に縮小し、最小限の支払いしか要求しないシステムである。当然、ローンの元本はまったく返済されないので、元本は翌月にそのまま移行する。そして移行すればするほど、ローン金利は高くなるという仕組みだ。
それだけではなく、利息の支払いそのものも約2年間待ってくれるのがこの仕組みの特徴だ。現金でローンをしてもすぐには支払いは発生しないのである。
ローンの意識をなくした債務者
こうしたシステムは、モーゲージローンのみならず、米国のほとんどのクレジット会社やその他のローン会社が導入している。その普及は、債務者にいま手にしている現金がローンであることを意識の上から消し去ってしまう。どんなに借金しても支払いは猶予され、支払いが発生したとしても月々わずかな金額しか払わなくて済むのだからそうだろう。
こうした仕組みは一言で言えば、人々が実際に稼ぐ所得をはるかに越えた額の現金を手にするということだ。米国民はそれをすべて消費につぎ込み、米国の巨大な国内消費を支えていた。いわば借金による自転車操業による景気の維持だ。
これがどういうことかよく分かるビデオがある。NHKが2003年に放映したNHKスペシャル、「個人破産-アメリカ経済がおかしい」だ。2003年と言えばイラク戦争が始まった年だが、米国は2001年の軽微なIT不況を克服し、バブルの絶頂を迎えつつあった時期だ。ぜひ見てほしい。
個人破産-アメリカ経済がおかしい
さらに、米国のクレジット会社のからくりを暴いた意かのドキュメンタリーも見てほしい。2004年にNHKBSが放映したものだ。
アメリカ カード社会の落とし穴 ~利子に苦しむ消費者たち~ 1
アメリカ カード社会の落とし穴 ~利子に苦しむ消費者たち~ 2
こうした番組を見ると、米国の経済がこれまで破綻してこなかったほうがむしろ不思議だと言わねばならない。米国の現状からして破綻は当然の成り行きとしてやって来ると見た方がはるかに妥当だ。
この話題に関しては大阪市会議員の辻義隆氏のブログが詳しく解説している。情報がよく整理されている貴重なサイトだ。関心がある人はぜひチェックしてみるとよいだろう。
辻よしたかプレス
破綻はステップバイステップで
米国経済の本格的な破綻は、当然米国主導の世界経済システムの崩壊と直接連動する。それは、自然災害のように突発的にではなく、段階を経ながら危機的な状況が次第に醸成されてくると考えられる。
ではそれはどんな段階なのだろうか?
モノライン保険
サブプライムローンの破綻はどんどん大きくなり今後も拡大する様相だが、いま破綻の焦点になりつつあるのはモノライン保険の破綻だ。これは下手をするとサブプライムローンを上回る巨大な破綻を引き起こすことにもなりかねない。
モノライン保険とは社債や地方債などの格付けが低い証券に対する保険契約のことである。どんな証券もMoodysのような格付け会社によってAAAやBBBなどの格付けを与えられており、それが証券の安全性の目安になっているが、モノライン保険とは、格付けの低い証券が万が一破綻した場合、その元本の支払いを保証する保険のことである。
米国の自治体の発行する地方債や、株式の公開で資金を調達しにくい会社が発行する社債などは格付けが低く、このためよほど高い利回りをつけないと市場では買い手は見つからない。だが、高い利回りの支払いは、ただでさえ資金繰りに苦しんでいる自治体や、社債を発行する企業をさらに苦しめることになる。
モノライン保険は元本の支払いを保証する。そすることで、投資家は安心して格付けの低い地方債や社債を購入することができるようになる。保険で元本の支払いは確実に保証されるので、利回りも低く設定することができ、このため地方自治体や企業は必要な資金を入手することができるようになる。このような仕組みをモノライン保険という。米国の金融市場を支える重要な柱の一つだ。
モノライン保険の破綻
だが、モノライン保険を提供する会社は、サブプライムローンにも同じく保険を提供していた。このためモノライン保険の会社は巨額の支払いを迫られ、経営危機に陥った。経営危機はさらにこうした会社の格付けを極端に下げる結果となったため、モノライン保険の保証を与えても、保険会社そのものが信用を喪失しているため、地方債や社債の利回りは高騰し、発行そのものが難しくなってしまうのだ。そしてこれらの債権の発行が困難になると、地方自治体の倒産や企業の連鎖的な倒産の引き金になる。
米国経済のスパイラル型の不況突入のシナリオ
こうしたことをすべて総合すると、スパイラルを描いたよいうに不況に突入することになる。
すでにみたように、米国の国内消費は、国民の生産的労働ではなく莫大な借金によって支えられているため、一度モノライン保険が破綻し、多くの企業が資金繰りの悪化から連鎖倒産するような事態になると、国民は巨額化したローンをすぐに支払えなくなり、自己破産が激増するようになるはずだ。ローン破綻である。そしてそれは国内消費を極端に収縮させ、簡単には抜け出せない長期の不況に突入する。以下の図式である。
サブプライムローンの破綻→モノライン保険の破綻→多くの企業、地方自治体の資金繰りの悪化と破綻→連鎖倒産とリストラ→自己破産の急増とローンのシステムの崩壊→不況の深化
このような事態が目の前に迫っているように思う。
政府の対応とコントロールが効かなくなるインフレ
いざこのような破綻が起こった場合、米国政府やFRBは、1)金利の低下、2)大規模な減税処置などによって、破綻しつつある金融機関やマーケット、そして個人の世帯にドルを注入し破綻をくい止めようとするだろう。それはいっけん合理性のある政策のように見える。
だが、通過供給の増大は当然早いペースのインフレを招くことになる。ましてやすでに穀物や原油、そしてその他の商品が投機の対象となり、破綻しつつある金融市場からの逃避先になっているときに、通貨供給量が突然と増大するのである。インフレ率は非常に高いものにならざるを得ないだろう。
インフレ率が利益率に近付くと
もしインフレ率が非常に高くなり、利益率に近づくとすでにこのブログでも何回か説明した以下のような事態になる。
怖いインフレ
通貨量の増加→貨幣価値の低下→高いインフレ率→インフレ率が利益率を超える→生産の縮小→生活水準の低下
さらに、生活水準の低下によって国内消費はさらに縮小するため、不況はよりいっそう激化する。
だが、投機が収まらず商品相場の高騰が続くと、インフレはさらに悪化し、生活水準のさらなる低下→国内消費さらなる縮小→不況のさらなる深化という循環は繰り返されることになる。これはまさにスパイラル型とでも呼べるような不況だ。
ここまでくると、1929年の大恐慌の再来ともいえるような規模になる可能性もある。
「Coast to Coast AM」の年頭予言
ではいつこのような底の見えない不況に米国は突入するのだろうか?いまはちょうどモノライン保険ぼ破綻が始まったばかりだ。これが個人破産の激増とあらゆるローンの破綻を誘発することは間違いないとしてもそれはいつ起こるのだろうか?
これまで環境異変の記事を書いてきたため書き時期を逸してしまった感があるが、「Coast to Coast AM」は1月1日の年頭スペシャルではアメリカを代表する多くのサイキックや予言者が出現し、2008年がどうなるか徹底的に予言した。3時間の全放送時間が2008年の予言に当てられたのでここでは全部紹介できないが、本日の話題に関連した部分のみを紹介する。
多くのサイキックは米国の本格的な経済破綻を予言していたが、その中でも特に興味深かったのはこのブログでも紹介した「Web Botプロジェクトの予言」である。「Web Botプロジェクトの予言」とは以下のものだ。以前のブログの内容を引用する。
「「Web Bot」とは、インターネットのディスカッションサイトに目立たない形でしのばせてあるデータ収集用のソフトウェアのことである。このソフトは、特にネットで交わされた会話の単語に注目し、それを収集するように設計されているということだ。
どの収集された単語データも、意味と同時にそれに込められた感情価を持っているという。意味と感情価はかならずしも一致しない。例えば、「離婚した妻が所有権を主張して車に乗って行ってしまった」という文と、「離婚した妻に車を盗まれた」という文はもしかしたら同じ事態を表しているかもしれないが、「乗って行ってしまう」と「盗む」ではその語に込められた感情の値がまったく異なるという。前者は、話者が状況を冷静に把握し感情価は小さいが、これに比べ後者は、予期しない突然の事態の発言であることを予想させ感情価も非常に高い。
さまざまなディスカッションサイトで収集したキーワードの感情価を測定し、それを特別に開発した言語で処理して数値化し、その増減を明らかにするのがWeb Botプロジェクトだ。
ではこの測定によって何が分かるかというと、あるレベルを越えた感情価を持つ単語があった場合、その単語に関係した出来事が将来かならずといってよいほど起るのだそうだ。たとえばスマトラ大津波の前には、「インドネシア、大量の水、破壊、多くの死者、大災害」などの言葉が感情価が高く津波が来ることを予想させた。」
彼によると2008年には次のようなことが起こるという。
・ドルの壊滅的な暴落によって世界経済のメルトダウンが始まる
・冬か春に暴風雨などの自然災害が襲う。季節はずれのハリケーンも注意
・3月の後半、中央アメリカか南アメリカの女性が金融機関に対して反抗しメディアで脚光を浴びる
・5月か6月に在郷軍人が国家の記念碑をのっとるような事件が起こる
これらの予言でもっとも重要なのは、言うまでもなく最初のものである。プロジェクトのジョージ・ウレによると、「サブプライムローンに端を発する金融危機は遅くとも2月には実体経済に大きな影響を与え始め、リストラは進行しアメリカは深刻な不況に突入する。これはドルの極端な暴落を誘発し、下手をするとドルは10分の1にまで減価する。」
ジョージ・ウレとともジェラルド・セレンテとう人物も出演した。セレンテはCNNなどにも出演している「トイレンドの分析家」だそうである。なので正確には予言者ではないと思われる。彼の予言は以下だ。
・2008年は経済の9・11になる。それは29年尾大恐慌を上回る激しさになるだろう。多くの巨大金融機関が倒産する。
・恐慌によって欲望と腐敗が一掃されるため、崩壊したシステムを再建するビズネスには大きなチャンスとなる
・食料品価格と固定資産税の高騰により、生活苦から国民はいまの税金のシステムに対して反抗するだろう
セレンテは1月21日の番組にも出演し、「経済の崩壊はこれから本格化する。まず、ローンがあったらとにかくいまのうちに返済し、それから少しでも資産があれば金を買うように」と強く勧めていた。
昨年の12月27日には陰謀系の人気ラジオ番組「Rnese.com」にやはり以前このブログで紹介した米国のノストラダムス研究の第一人者のジョン・ホーグが出演し、次にように予言した。
・アメリカは相当に厳しい不況に突入するが、国家が崩壊するようなことはない。それは基軸通貨としてのドルの終焉になる
・アメリカがイランを先制攻撃する可能性は小さい。だがイスラエルの先制攻撃からアメリカは戦争に引きずり込まれる
・次期大統領は間違いなくクリントンになる。ロン・ポールもそれなりの支持は獲得するが大統領になるチャンスはまったくない
ジョン・ホーグは1968年以来大統領選挙の結果をすべて当てていることで定評がある。2004年の選挙でも、国民が共和党と民主党に2分され、勝者の予測がまったくつかなかったときから早々とブッシュの勝利を予言し多くの人を驚かせた。今度はどう出るだろうか?
日本
最後に、いずれ詳しく書くとして、日本はどうなるのか一言しておきたい。結論から言うなら、今の政府の政策では崩壊する米国と運命を共にして一緒に撃沈するような運命を政府自ら積極的に選んでしまったというべきだろう。いつまでも小泉の構造改革などという絵に描いたような幻想に拘泥するときではない。日本は構造改革によってセイフティネットをすべてなくしてしまった。そのような日本をこの70年で最大となる米国の不況は直撃する。もはや日本にはこれを防止するシステムすらない。これを防止できるとするならそれはただ一つだろう。緊縮財政を即刻止め、大規模な財政出動による公共投融資以外にない。「バラマキ」などという売国マスコミが垂れ流す言葉で漠然と事態を捉えているときではないのだ。
事態はこれから悪化する。コルマンインデックスのDay6の始まるころには事態の深刻さに誰でも気づくようになるのではないかと思う。
DAY6 2008年11月12日~2009年11月7日
続く
ヤスの英語
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