コルマン論文全訳1
コルマンのNight5に関する論文
今回アップするのは「テツカリポカが支配する困難なNight5」という論文だ。これは2004年4月にコルマンのサイトに掲載されたが、2007年の初旬ころには削除された論文である。
削除の理由はさまざま類推せきるが、コルマンがゲスト出演した「Earth Change Media」や「Next Level.com」などのネットラジオの発言から類推すると、コルマンは、2006年くらいまでは、Day5にIMFや世界銀行、またはWTOなどの、国際経済の枠組みを定めている国際組織のいくつかがなんらかの理由で機能停止に追い込まれ、それをきっかけとして基軸通貨としてのドルが放棄されるが、次のNight5では各国の協調のもとで既存のシステムがぎりぎりのところで維持されると考えていたようである。2007年の7月あたり、つまりDay5の半ばまでの期間には、国際組織の破綻はおこらず、ましてや基軸通貨としてのドルの放棄も発生しなかった。コルマンはこれをみて、自分の解釈のマヤカレンダーの解釈が外れたと考えたようなのだ。このため、今回訳出した論文を削除したと思われる。新たな解釈が必要だと判断したようだ。
だが、コルマンは間違っていなかったことはすでに明らかである。Day5に予告されていた「国際経済システムの崩壊」にいたる過程は、2007年8月のサブプライムローン破綻という形で発生した。それは、当初考えられていたような「国際組織の破綻」という形ではなかったというだけだ。現在。コルマンインデックス通りに進んでいるといってもよいのではないかと思っている。
Night5論文
コルマンは、ある時期にどのような出来事が起こるのか比較的に具体的に例示するのを特徴としているが、Night5に関する論文は、読んで分かるとおり内容は抽象的である。Night5で起こる出来事よりも、マヤカレンダーの終了時点で起こることに焦点が置かれているように思う。
以下が前文の翻訳である。
テツカリポカが支配する困難なNight5
2004年4月執筆
今回は少し未来にジャンプし、Day4とDay5という二つの光の時期のあとに何が起こるのか考えてみたい。2007年11月18日に始まり2008年11月12日まで続き、闇の神テツカリポカが支配するNight5は、西欧、および物質主義に基づく権力のシステムがその支配を維持し、さらにその権力を強化しようと最後の抵抗を試みる時期となる。それは抑圧的な手段を用いるはずだ。
Day5に国際的な通貨システムは崩壊するだろうが、それはすべての経済活動を監視することが可能な中央集権的な電子通貨システムによって置き換えられる可能性すらある。いずれにせよ、マヤカレンダーの宇宙的なスケジュールからみると、Night5は、これまで陰謀論の信奉者が唱えてきたようなシナリオの多くが実現してしまう時期となるだろう。この時期にどのようなことが起ころうとも、Night5は、真実が人々の目から隠される時期となるはずだ。
われわれの一つ前のプラネタリーアンダーワールドのNight5は1932年から1952年までであったが、この時期にはまずナチスドイツとスターリンのソビエトが同盟を結んだが、これから始まるわれわれのアンダーワールドのNight5では、利益の最大化を保証する支配システムの維持に共通の利害を持つ、合衆国と中国の現支配層の同盟となって現れるだろう。
当初、プラネタリーアンダーワールドではナチスドイツとスターリニズムの二つの独裁制が民衆の圧倒的な支持を勝ち得たように、われわれのがギャラクティックアンダーワールドのNight5に結ばれる「民主主義」を看板とする合衆国と、「国民の根強い人気」によって維持されている中国の現政権との同盟は、多くの民衆の支持を勝ち得るだろう。
特に合衆国では、多くの国民が自分たちは自由であるという幻想を信じ切っている。マヤカレンダーの知識を通して歴史のエネルギーの変化を理解している人々は、恐怖によって簡単に操作されることはない。なぜなら歴史の変化の動きをよく知っているからである。
Night5以後にわれわれは、混沌とした世界から解放された世界へ移行して行くのだが、Day6には、直感や、包括的な全体性の認識に導かれて、多くの人々は、既存の階層的な支配構造から離脱することを選択する。このときこそ、既存の支配構造が本格的に崩壊する時期である。それは混乱のさなかで崩壊するに違いない。この混乱は、新しい覚醒された世界が改めて創造されるためにはどうしても必要なものである。
創造は混沌から生まれる。この論文を書いている2004年から2011年の覚醒にいたる道程は、決して一直線ではないのである。覚醒された世界は、Night5のような破壊の時期を内包した、変形のプロセスを経てはじめて現れることができる。
これはパラドックスである。つまり、世界経済を崩壊に導き西欧の政治的な覇権を崩壊させるプロセスこそまさに、覚醒された世界の出現を準備するプロセスなのだ。完全に覚醒した集合的な意識は、バランスのとれた意識を土台にしないと発達することができない。なぜなら、過去5600年の間、人類がおかれたアンバランスな状態は、分裂した意識という、この時期を支配した意識の形態に原因があるからである。
しかしながら、宇宙的な計画がが完成する2011年以後に現れる覚醒した意識は、これまでに存在したいかなる意識とも異なっているだろう。歴史は覚醒された意識を持つ偉大な人物や、精神的進化(アセンション)を果たしたと思われる人々の記録に満ちている。だが、個人的には私は、こうした偉大な人物達の到達した意識の水準は、彼らが生きていた時代を支配していや創造の場(マヤカレンダーのそれぞれのアンダーワールドのこと)にさまざまな意味で拘束されていたと思う。
2011年になってはじめて、人間を神的な力から引き離していたべールが撤去され、ユニバーサルアンダーワールドの超精神的な領域がわれわれに開かれる。ある意味でこれは、人間に関するまったく新たな科学が誕生することを意味している。意識の覚醒ははじめて、よくバランスのとれたグローバルな創造の場(アンダーワールドのこと)で行われるのだ。これは間違いなく、これから覚醒されて行く宇宙的な意識の深さと広さに甚大な影響を与えるはずである。
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予言の評価と今後のシナリオ4
今回は来年の1月8日に出る「一週間で実践 論理的会話トレーニング」という本の執筆に集中していた。若い人向けの話の内容を論理的にまとめるためのスキル本である。話の内容を、相手に伝わるように分かりやすくまとめるのが苦手な人には役に立つ本かもしれない。
来年はブログの更新の遅れはなんとかしたいと思っている。自分にとっても日頃の考えをまとめるためにはなくてはならないブログなので、長く続けて行くつもりである。また、投稿者の方々のまったく異なった視点のコメントに触れ、視野を広められるのもよい点だ。今後もなんとか頑張りたい。
現状
サブプライムローンの破綻以降、市場の崩壊を避けるために各国政府や中央銀行を中心にした莫大な資金供給が続いている。この一週間でも以下のような資金投入が行われた。
12/17 米欧5中銀、協調行動を開始・大量資金供給
12/18 年末資金を大量供給――欧州中銀、2週間に期間延長
12/18 欧州中銀、ユーロ資金57兆円を供給・サブプライム対策
12/19 米モルガン・スタンレー、中国政府系が5700億円出資
12/20 シンガポール政府系、米メリルに出資へ・米紙報道、最大5600億円で交渉
過去、これだけの規模の協調介入は前例がないはずだ。
高まるインフレ懸念
当然、これだけのドルが市場に投入されるのだから、ドルの価値は下落しインフレの発生が懸念されてしかるべきだろう。まだドルは基軸通貨であり、貿易決済のためにはドルが必要となるため、ドルに対する需要が極端に落ち込むことはない。したがって、ドルが突然と紙くずと化してしまうような突然のクラッシュはいまのところ考えられないが、相当なインフレは覚悟しておかねばならないだろう。事実、アメリカのインフレ率もかなり急速に上昇しつつある。
「12月13日発表の米国11月卸売物価指数は、季節調整後前月比+3.2%、前年比+7.2%の上昇、食品・エネルギーを除く指数は季節調整後前月比+ 0.4%、前年比+2.0%の上昇を示した。前月比3.2%の上昇は1973年8月以来、34年3ヵ月ぶりの高いものである。」(今週の内外政治経済金融情勢の展望)
1973年は、もはや敗退が避けられなくなったベトナム戦争の戦費がかさみ、まれにみる高水準のインフレにみまわれた年である。米国経済はものすごい不況のさなかにあった。74年に始まるオイルショックの前年だ。
まだ74年のオイルショック時には及ばないものの、相当に高いインフレ率であることは間違いない。すでに過去の記事で指摘したが、インフレがコントロールが効かなくなり、仮に利益率よりも高くなった場合は以下のような経路で生産の縮小が発生する。
「貨幣量の増加」→「貨幣価値の低下」→「高いインフレ率」→「インフレ率が利益率を超える」→「生産の縮小」→「生活水準の低下」
ここまでインフレが悪化するかどうかはまだ分からないが、その可能性も十分あることを指摘しておくべきだろう。
また、日本の現存するエコノミストの中でももっとも鋭く、これまでにほとんど予想を外したことのない植草教授も以下のように指摘している。植草教授は非常に慎重であり、悲観的な観測はめったに出さない。その教授が以下のように警告している。
「コア指数の上昇率が消費者物価指数、卸売物価指数ともに0.2%上昇を超えたことで、FRBは金融市場のインフレ懸念にも配慮せざるをえなくなった。インフレ心理が強まるなかで利下げを進めれば、ドルそのものに対する信認が低下して、資本の海外逃避を招いてしまうからだ。ドルからの資本逃避が生じれば、ドル安、NY株安、NY債券安の、いわゆる「ドル暴落」図式が表面化する懸念が生じる。FRBは慎重にならざるをえない。」
ここから見て取れることは、アメリカ連銀(FBR)の金融政策がすでにデッドロックに乗り上げつつあるということかもしれない。つまり、サブプライムローンの破綻から市場の崩壊を阻止するためには、金融機関や市場に莫大な資金の投入し、市場金利を低下させることが必要になるが、それはインフレを引き起こしドル安を加速させる。以下の図式だ。
「市場や金融機関への資金投入と利子率低下」→「インフレの悪化」→「ドル安」→「海外資本の逃避」→「株の暴落」→「ドルの暴落」
この先には「基軸通貨としてのドルの放棄」があることは間違いない。
では、インフレの発生とドルの下落を押さえるために資金供給と低金利政策を改めることができるかといえばそうではない。連銀による資金供給の停止と高金利政策は、サブプライムローンの破綻を表面化させ、早晩多くの金融機関を破綻をさせてしまうだろう。これはできない相談である。
「資金供給の停止と高金利」→「株式・債権市場の暴落」→「金融機関の破綻」→「海外資本の逃避」→「ドルの暴落」
やはりこの図式の先にも、前者同様「基軸通貨としてのドルの放棄」があるだろう。
当面のクラッシュは避けられたものの、どちらの政策が採用されるにせよ、もはや基軸通貨としてのドルの放棄は時間の問題なのかもしれない。
失敗した協調介入
その証拠に、先頃行われた先進5か国の中央銀行による市場協調介入は、期待されたほどが効果なく、実は失敗したのではないかという論説がロイターにのった。ロイターの論説によると、「協調介入以降も銀行間の貸し出し金利はこれまでない高い水準を保っており、びくとも動く気配はない」ということである。つまり、潤沢な資金が放出されたのだから、銀行の資金供給も強化され、本来なら銀行間の貸し出し金利は低下するはずだがそうはなっていないというのである。
これは、金融機関がサブプライムローン破綻による将来の市場崩壊や金融破綻を予期しており、貸出先の金融機関の返済能力を信用していないということである。
このような信用不安が継続しているとするなら、協調介入でいくら資金を投入したとしても焼け石に水かもしれない。どこかの金融機関がサブプライムローンによる巨額損失を計上すれば、どの金融機関も自己資本を守る必要から銀行間の貸出を停止する。その結果、損失を計上した金融機関は破綻を余儀なくされる。そしてこれは、多くの金融機関の連鎖倒産の引き金になるという構図だ。
当然、各国の中央銀行はこうした連鎖倒産を避けるめに十分な資金の供給を行おうとするだろうが、もしこのときすでにインフレ率が危険な水準になっていれば、資金の供給は難しくなるだろう。連鎖倒産は避けられなくなる。
LEAP/E2020の最新レポート
以前に何度かこのブログでも紹介したことのあるフランスに本部があるヨーロッパのシンクタンクのネットワーク「LEAP/E2020」がある。
ここは、先頃その分析レポートで、「当面のクラッシュは避けられたものの、各国の協調介入の失敗はすでにはっきりしており、金融市場の崩壊と基軸通貨としてのドルの放棄は最終的には避けられなくなった。このような状態が続くなら、2008年の夏ころには崩壊が始まるだろう。2008年には米国の新大統領が誰になるか明らかになるが、誰になるにせよ新大統領は就任早々、新しい基軸通貨に基づく新しい国際経済の秩序の出現に対応しなければならなくなるだろう」といっている。
内容的にはコルマンインデックスによくにている。
コルマンの論文
コルマンインデックスについてはなんども紹介したのでここでは詳述はしない。コルマンはDay4、Night4そしてDay5についてはその時期になにが起こるのか詳述した論文を発表しているが、Night5についてはそうした文書を書いていない。いや、書いていないというよりも一度発表したがなんらかの理由でサイトでの掲載を取りやめたようなのだ。
今回は、掲載が取りやめになっていた文書が別のサイトで掲載されていたのを発見したのでその内容を紹介する。2004年の始めに書かれた論文である。これまでの内容と重複する部分もあるが確認しておく意味はあるだろう。
テスカトリポカの支配する困難なNight5
この短い論文の題名は「テスカトリポカの支配する困難なNight5」である。マヤカレンダーを構成するDayは光の神であるケツァルコアトルが支配し、それに対しNightは夜の闇の神であるテスカトリポカが支配すると考えられている。コルマンによるとマヤカレンダーは9つのアンダーワールドでできており、今は1999年一月から始まった「Galactic Underworld」にいるが、どのアンダーワールドでもNight5は特別に闇が深い時期とされている。
「それぞれのアンダーワールドにはそのワールドがテーマとしている新しい意識の形態が確実に出現するが、Night5はこの新しい意識と価値観の台頭に対する旧勢力の最終的な抵抗が行われ、その結果それが巨大な破壊を招来する時期である。ひとつ前の「Planetary Underworld」では1932年から1952年がそれに当たっている。」
「まずDay5で基軸通貨としてのドルを崩壊させる大きな事件が発生するが、それはNight5にさしかかる時期ではアメリカと中国との協力によって崩壊は遅延させられ、一時的には何事もなかったようにシステムは再構築されるだろう。だがこれは長くは続かない。Night5の終わりからDay6の始めにかけて早晩崩壊し、新しい意識と秩序の出現に席を譲る」
2004年の論文としてはなかなかの予測であると思うがいかがだろうか?
コルマンの位置
コルマンインデックスはいま世界的にブームになりそうな気配である。このブログの読者で、コルマンインデックスはアメリカでは広く知られているとのイメージを持って入る人も多いかもしれないが、実はまったくそうではないのである。
カール・ヨハン・コルマンはスエーデン人の生物学者で、マヤカレンダーに関してはこれまでに2冊の著作を発表している。
どちらの著作も非常に論理的で実に分かりやすく書かれているが、プロの生物学者の書いたものなので、科学の教科書のような趣がある。
これが災いしてかどうかは分からないが、コルマンの本はあまり売れてはいない。一般受けしなかったようなのだ。このため、スェーデン在住ということも手伝って「Coast to coast AM」のようなもっともポピュラーなラジオ番組にはこれまで取り上げられたことがない。コルマンを取り上げているのは、限られた聴視者に向けられた「Earth Change Media」などのネットラジオなどであった。
しかし、コルマンの著作を丹念に読むと、その解釈の斬新さと合理性に引き込まれる読者が多い。むしろコルマンは、この手の本を丹念に読むことを厭わないスピリチュアル系の分野のプロ達の高い評価を獲得している。このブログでも頻繁に取り上げて入るショーン・デービット・モートンなどのこうしたプロの一人であろう。
だが最近はすでに名の知られているこうした著作家の中で、コルマンインデックスを宣揚しこれを広めるために本を書く人も出てきた。そうした本が大ヒットしたため、コルマンインデックスが最近になって注目を集めてきたというわけだ。
ブームの予感
そうした著作家に一人がバーバラ・ハンドクローというカナダではよく知られた著作家だ。ネイティブアメリカンのチェロキー族の血が交じり、幼少期のころからチェロキー族のヒーラーとしてのトレーニングを受けた人だ。その後、マヤカレンダーをかたくなに守っている「マヤの長老たち」に教えを乞いマヤカレンダーの読解方法も学んだという。すでに10冊の本を出版し、ヒーリングセミナーも世界各地で開催しているようだ。
今年の6月、ハンドクローは「The Mayan Code: Time Acceleration and Awakening the World Mind」という題名の本を出版した。訳すと「マヤコード:時間の加速と世界意識の覚醒」となる。この本の内容をコルマンインデックスの解説と紹介だそうである。一般読者に受け入れられるように、ロジカルになりすぎないようにこころがけたという。
この本は現在大ヒットしているようで、すでに14か国語に翻訳され、フランスではベストセラーに、そしてアメリカではニューエイジ系の本の中でベストセラーになっているそうである。これでコルマンインデックスが一気に広まることになりそうである。
残念ながら日本でコルマンが読めるようになるには、海外で火がついたブームが上陸するのを待たなければならないので、かなり先になることだろう。海外では、あのジュセリーノ氏よりも知られた存在になるのではないかと思う。ちなみに欧米圏ではジュセリーノ氏の存在はほとんど知られていないようである。
こうのような背景から、今回ハンドクローは「Coast to Coast AM」にゲスト出演し、コルマンインデックスとそれに基づくマヤカレンダーの解釈を紹介した。彼女の視点からコルマンインデックスにさらに深い解釈が加えられているのが興味深い。長くなるので、これは次回に譲る。
続く
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予言の評価と今後のシナリオ3
メディアの報道
前回のブログでは、基軸通貨のメカニズムについて説明しドルの基軸通貨として放棄される時期が近い将来来る可能性があることを指摘した。サブプライムローンの破綻以来、ここ数カ月で基軸通貨としてのドルの放棄を示唆する記事が大手を含む多くのメディアで一気に出てきた。例えば以下のよな記事である。
ドル、基軸通貨に揺らぎ・湾岸協力会議
朝日新聞 2007年11月28日
ドル不安㊤ 地位揺らぐ「基軸通貨」 下落進み、世界中に影響
高まるドル崩壊の懸念 「基軸通貨にユーロ」の声も
アジアに共通通貨を 経済統合、市場主導で
【円・ドル・人民元】米国より打撃大きい日本 サブプライム危機で
これらの記事を見ると、基軸通貨としてのドルの放棄は、将来実際に起こり得る事態として、社会的にも広く認識され始めたようだ。
原油産出国の変化
前回のブログでは、ドルの放棄に向かうハードランディングのシナリオとして「戦略商品である原油の決済通過がユーロなどのドル以外の通過にシフトすること」がきっかけとなるだろうと書いたが、それに向けた動きも加速してきている。今回、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアのペルシャ湾岸の6カ国が作る「湾岸協力会議(GCC)」は以下のように決定した。
「ドルペッグの見直しは見送ったものの、GCC加盟国が自国通貨の切り上げを検討していることは、ドルの基軸通貨としての信認が揺らいでいる表れといえる。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題をきっかけにした金融不安、景気減速、利下げ観測の高まりなどドルを取り巻く負の要因は簡単に解消しそうにない。外国為替市場での主要通貨に対するドル安進行に拍車がかかる可能性もある。」
これは、サウジアラビアをはじめとした親米の原油産出国でもドル離れが急速に進んでいることをうかがわせている。この動きは今後も広まるものと考えた方がよさそうだ。
イラン政府の声明
だが、ドル離れの動きはこれだけでは止まらなかった。いつ原油の決済通過としてドルを放棄してもおかしくないといわれていたイランが、12月8日とうとうドル放棄を正式に宣言した。
「イラン学生通信(ISNA)は8日、ノザリ石油相の話として、同国が原油のドル建て決済を完全に中止した、と伝えた。ISNAはノザリ石油相からの直接の引用を掲載していない。ある石油関連の当局者は先月、イランの原油の代金決済の「ほぼすべて」はドル以外の通貨で行われていると語っていた。」
予想されていたとはいえ、これは深刻な事態である。これからもドルの下落が続くとすれば、イランの動きは上のGCC諸国の動きともあいまって、OPEC全体に急速に広まって行く可能性も否定できないところまできている。
イラン攻撃と中東戦争の可能性
原油決済通過がドル以外の通過と変更されることは、その時点で基軸通貨としてのドルが終焉することを意味する。2000年3月、当時のフランスのシラク大統領の誘いに乗り、決済通貨を将来ユーロに変更することに同意したフセイン大統領の決定が、イラク侵略の直接的な原因となったように、今回のイランの決定もイラン攻撃の引き金となることも予想できる。
だが一方、情報の信頼性を評価するため16の機関の総意で作った「国家情報評価」は、12月3日、「イランは2003年以来核兵器の開発を停止している」とのレポートを発表した。この発表によりイランが独自の核開発を行っているとの主張は根拠を失ったため、 もはやイラン攻撃は不可能だろうとの観測も強い。
一方、特にユーロに対しドル安は加速している。いったん落ち着きは取り戻したものの、ドル安ユーロ高の流れは変化する兆しはない。原油産出国でさらにドル離れが本格化すると、これを止めるためにアメリカは中東戦争を本当に仕掛けるかもしれないとの観測も出ている。もしこの方向に進むならば、まさにこれは前回指摘したハードランディングのシナリオであろう。
「アメリカの原油産出国への軍事侵攻」→「油田の独占」→「原油取引通貨のドル化」→「ドル基軸通貨体制の強権的な維持」→「さまざまな反作用」→「想定不可能な世界」
実際に起こっていること
これだけみると、もしかしたらわれわれはいまぎりぎりのところにいるのかもしれないという印象を持つかもしれない。中東戦争から米国の覇権が崩壊し、まさに予言されたカオスへと向かっているとの印象だ。
だが、中長期的にはこの方向に向かっているとしても、現状はそれほど速く事態は進展していないように思われる。サブプライムローンの破たんから住宅価格が暴落してドルの崩壊が起こり、いまにもアメリカへのドルの還流が停止するような印象を持つが、現実はどうもそうではないようだ。植草教授も指摘するように、「米国経済は住宅市場の調整から減速傾向を示しているが、現段階では依然として底堅さを維持して」おり、「米国の政策対応能力の高さを十分に認識すべき」であるとの見方も強い。
最近ベストセラーにもなった名著『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』の著者である水野和夫氏などによると、世界経済の牽引力は米国の住宅バブルが引き金となった旺盛な国内消費だが、サブプライムローンによる住宅価格の下落がすぐにドルの崩壊に結びつくわけではないという。要するに、以下のような二つの図式は単純には成立しないというのだ。
①「ローン破たん者の続出」→「サブプライムローンの破たん」→「米国住宅価格の暴落」→「国内消費の低迷」→「世界同時不況」
②「ローン破たん者の続出」→「サブプライムローンの破たん」→「金融市場と金融機関の破たん」→「相場の暴落を阻止するための政府による市場介入(株や債券の購買)」→「莫大なドルの供給」→「極端なドル安(ドルの紙くず化)」→「各国のドル離れ」
まず、①では「米国住宅価格の暴落」がすぐに「国内消費の低迷」をもたらすかのような印象を持つが実はそうではないという。住宅価格の下落率が10%以内にとどまっている場合はゆっくりと景気が減速し、いわばソフトランディングするだろうということだ。①のような図式が実際に成立するためには、住宅価格が30%下落する必要があるとのことである。
アメリカの実際の住宅価格の下落率は以下のようになっている。
「米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は27日、7―9月の全米の住宅価格が前年同期比で4.5%減少したと発表した。下落率は1987年に同指数の算出を開始して以来の大きさとなった。」
今後サブプライムローンの破たんが相次ぎ、住宅価格の下落率が大きくなるにせよ、30%の下落はあったとしても相当先になるであろう。簡単に発生する事態ではない。
また、②の図式であるが、確かに増田俊夫氏も指摘しているように、米連銀は巨額のドルを連続的に市場に投じた。ヨーロッパ中央銀行による介入と合わせると「世界全体での資金供給額はサブプライムローン問題による信用収縮総額を優に上回っている」という。さらに12月12日には、世界の5中央銀行が資金供給で協調することが決まり、その結果、ダウは急速に上がっている。
ではこうしたドル供給の結果、②の図式のように「極端なドル安(ドルの紙くず化)」から「各国のドル離れ」が発生するかといえば必ずしもそうではないようだ。
つまり、サブプライムローンの破たんから市場が大幅に下げると、投資家は証券市場から撤退して原油や穀物などの商品市場に逃げる。このため商品価格は上昇する。だがドルが基軸通貨である限り、これらの商品もドルで取引される。そのため市場に供給された莫大なドルは今度は商品の売買で使用される。その結果、「ドルに対する需要がある限り、いくら刷ってもドルが紙切れになるはずはないと米通貨当局は安心できる」というのである。ドルが基軸通貨であり続ける限り、「極端なドル安(ドルの紙くず化)」はそう簡単には起こらないことになる。
このように情勢が推移する限り、①の図式も②の図式も発生せず、市場はサブプライムローンの破たん問題を比較的に早く克服し、市場もドルも正常な状態に戻ってしまうことも十分に考えられるのだ。これによりドルの信頼性は維持されるので、「ドルの還流」もストップすることなく継続する。アメリカは依然として海外からの投資を引き付けるのである。「米国への再投資」→「米国金融市場の活況」→「政府財政の依存と借金体質」という循環は今後も続くようにみえる。
コルマンインデックス
ここで再度思い出してもらいたいのはコルマンインデックスである。2004年ころに書かれた論文でコルマンは、「Day5 には、IMFや世界銀行、それに国際金融マーケットのような米国中心の国際秩序を担っている国際的な機関が機能障害を起こし、混乱がはっきりとした形をとって現れる。だがこの混乱は、次のNight5では国際協調による強権の発動によって無理やり修復されいっけん正常な状態に戻るが、それは長くは続かず、 Night5の後半からDay6にかけて最終的に崩壊する」と書いた。コルマンの言葉から受ける印象とはかならずしも一致しない点もあるが、各国中央銀行の協調で収まりつつあるかに見えるサブプライムローン問題は、まさにコルマンのいう「次のNight5では国際協調による強権の発動によって無理やり修復されいっけん正常な状態に戻る」ということではないのか?
もしそうであるなら、逆に破たんは確実にやってくることになる。再度確認するが、Night5は2007年11月18日から2008年11月12日だ。それはどのような破たんなのか?
ロバート・ゴーヴァーの予言
このたび「Coast to Coast AM」に作家としても著名な占星術の研究家のロバート・ゴーヴァーは出演した。彼は占星術を使用した経済や政治の動きの予測を専門にしており、高い的中率を誇っているそうである。今回は2008年以降の予測を公表した。以下である。
・市場の暴落には特定の星座の配置パターンが存在し、それは過去のすべての暴落で見られた。
・その配置パターンからみると、2008年半ばから市場は大暴落を起こし、それが引き金となって1929年の大恐慌以来の経済破たんが起こる。
・この不況と大混乱は2015年になってやっと底を打つが、2025年までは回復しない。もし政治指導者が正しい判断を行えば2018年から2019年までには回復基調に入るだろう。
・マヤカレンダーの2012年12月23日(冬至の日)は非常に大きな意味を持つ日だ。ほぼこの時期を境としてまったく新しい貨幣システムが導入されるはずだ。
・おそらくイラン攻撃は行われないだろう。
・2008年の大統領選挙は、非常に不安定で候補者同士が全面衝突するようなものになるだろう。暗殺も含め、あらゆる事態が想定できる。
どうであろうか?経済破たんの時期はコルマンインデックスと共通している。やはりこれからなにかあるのだろうか?
ロシアの攻撃
ロシアによるヨーロッパ侵攻の予言があまりに多いことはすでに書いた。今回もそのうちの一つを紹介するつもりであったが、長くなるので次回にずる。その代りに面白い予言を紹介する。
実はロシアの侵攻を予言しているのは中央ヨーロッパの予言者だけではない。日本にも多いのだ。たとえば非常によく知られた『日月神示』もそうである。ウィキペディアから引用する。
「日月神示(ひつきしんじ)は神典研究家で画家でもあった岡本天明、1897年(明治30年)12月4日–1963年(昭和38年)4月7日に「国常立尊」(別名、国之常立神)と呼ばれている高級神霊より降ろされたとされる神示、神典である。原文はほとんどが漢数字、かな文字、記号の混じった文体で構成され抽象的な絵のみで書記されている巻も有る。
三千世界の大洗濯や大峠が来る直前(世界が大混乱になる直前)にはいくつかの兆候があるのだと神示には書記されている。まず、天空に異常が現れ本来ひとつのはずの「太陽」が複数個見られる様になるという。また「月」にも異常が現れ太陽はその色が「黒く」月は「赤く」なり、空も赤く染まるのだという。また、北から軍事攻撃されるのが、その始まりになるとも書記されている。これらは次のように述べられている。「北から攻めて来るときが、この世の終り始めなり、天にお日様一つでないぞ、二つ三つ四つ出て来たら、この世の終りと思へかし、この世の終りは神国の始めと思へ臣民よ、神々様にも知らすぞよ。」(富士の巻第十六帖)(参13)。「月は赤くなるぞ、日は黒くなるぞ、空はち(血)の色となるぞ、流れもちぢゃ、人民四つん這ひやら、逆立ちやら、ノタウチに、一時はなるのであるぞ。」(紫金之巻第五帖)と書記されている。
神示には、この北の国はロシアであるとはっきり記されている。「日の出の巻」第七帖で「おろしやにあがりておりた極悪の悪神、愈々?の国に攻め寄せて来るぞ。北に気つけと、北が愈々のキリギリざと申して執念(くどく)気つけてありた事近ふなりたぞ。」と書記されている。また、同じ第七帖で「ろしあの悪神の御活動と申すものは神々様にもこれは到底かなはん思ふ様に激しき御力ぞ。」と述べている。」
ロシアは日本にも侵攻してくるとある。しかし、少なくとも現在のロシアや、EUや日本との関係からは到底考えられることではない。このようなことが本当にあるとしたのなら、これからわれわれの世界認識を根幹から揺さぶるほどの変化が待っているのだろうか?
続く
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予言の評価と今後のシナリオ2
陥り安い罠
サブプライムローンに端を発する今回の金融危機は、最終的には基軸通貨としてのドル放棄にまでいたる可能性があることはさまざまなメディアによって次第に認知されてきたことは前回述べた。予言されてきたような内容が、加速度的に現実味のあるものとして迫ったくるようになったと言えよう。
しかし、予言の内容が一定程度のリアリティーを持つようになったこのようなときには、筆者自身が注意しなければならないことがあるように思う。
それは、予言の提示するリアリティーの方に強く引き寄せられてしまい、現実認識とのバランスを失うことである。そうすると、あたかも予言どおりに現実が進行するのが当たり前であるかように思ってしまい、その結果、未来を過度に恐怖したり悲観するようになってしまうことにもなりかねない。
このようなことが起こるのも、予言の枠組みを前提にして現実を見ているからだろう。予言の枠組みを現実に当てはめて、現実に起こった出来事を評価すると、いまにも予言された未来が起こるかのような印象を持ってしまうのだ。
だが、重要なことは、これとは異なった視点の設定だと思う。立場を変え、現実認識というしっかりした基盤に視点を据え、そこから予言の枠組みを評価してゆくという逆の視点ではないだろうか。このブログの視点をもそうだ。
したがって、これからさまざまな予言を紹介して行くのだが、バランスをとるためにも、その前に一度現実認識の地盤をしっかりと固め、そこからどんなシナリオが導出可能なのか確認しておきたいと思う。
基軸通貨の変更とはそもそも何なのか?
ドルが基軸通貨としての地位を追われ、アメリカの覇権の終焉が将来起こり得る現実性のある事態として多くのメディアが語り始めた。それは、マヤカレンダーのコルマンやショーン・デービット・モートンなどが予言していた事態のようにみえる。コルマンやモートンは2007年11月18日から始まるマヤカレンダーのNight5からドル放棄の流れは加速すると予言していたが、現実にそのようになりつつある。予言が予告した事態が実現しつつあるようにみえるのだ。
だがそもそも基軸通貨とは何であり、ドルがその地位を追われることがどうしてそれほど危機的な事態なのだろうか?今後、予言を将来起り得る事態を読み取るツールとして活用するためには、この問いに明確に答えておかなければならないだろう。
基軸通貨とは何なのか?
当然、どの国も自国独自の通貨を持っており、ものやサービスの流通にはこれを用いている。流通が国内に限定されているときには自国通貨だけでことが足りるが、ものやサービスが国境を越えて国際的に取引されるようになると、国際的な決済手段が別に必要になる。相手国に輸入代金を自国通貨で支払っても、その通貨は相手国では使えないからだ。国際的な決済手段はどの国も受け取りを承認するものでなければならない。長い間、戦前まではこうした国際的な決済手段は金そのものであった。ものやサービスの輸出入の決済は金の現物の移動が伴った。
金本位制
だが、通貨が別の国の通貨と交換できないとなると大きな問題が発生する。それは、国際的な投資ができないということである。ある国が別の国に投資をしようとするとき、それは相手国の通貨で行うほかはない。たとえば、日本の投資家がアメリカの債権を購入するとしよう。その場合投資家は、円をドルに交換してドルで債権を購入しなければならない。なので、通貨を相互に交換できることは投資にとって非常に重要なのだ。
ところで、通貨が相互に交換可能であるためには、すべての通貨の価値が共通の尺度を基準にして算出されなければならない。共通の尺度が存在してこそ、さまざまな通貨は交換可能となる。
戦前まで、この共通の尺度は金であった。すべての通貨の価値は金によって評価されたのである。通貨が金を基準にして価値が算定されるシステムを金本位制という。
金兌換
金本位制のもとでは通貨の価値を保証するものは金である。しかしそれが成り立つためには、各国の通貨と金がいつでも交換できなければならない。通貨が金と実際に交換可能になって始めて、その通貨が金を基準にした価値が実際にあることが分かる。この通貨と金とがいつでも交換可能であることを金兌換という。これを保障したのは各国の中央銀行であった。戦前までは主要な通貨はすべて金兌換が可能であった。
金本位制の問題点
通貨の発行量が金の保有高によって制限される
金本位制は19世紀の前半から戦前まで国際経済を支える基本的なシステムであった。だが、金本位制に深刻な問題もあったことも事実である。
各国の通貨が金といつでも交換できる金兌換を維持するためには、各国の通貨の発行額はその国の金の保有高を大きく越えてはならない。
発行される通貨の額が金の保有額を大きく越えるようになると、貨幣価値は低下しその国の通貨は信用を喪失する。するとその国の国民も含めて、その国の通貨を保有する多くの機関や人々は、通貨の信用が完全になくなる前に金に交換しようと金融機関に殺到する。その結果、その国は金保有を一挙に喪失し、通貨の発行もままならなくなってしまう。
ここまでくると、その国は金という対外的な支払い手段がないので、国際経済から撤退するほかなくなってしまう。以下がその図式だ。
「通貨の発行量が金の保有高を越える」→「通貨価値の下落」→「金交換請求の殺到」→「金保有の激減」→「国際的な決済手段の喪失」→「国際経済からの撤退」
このような事態を避けるためには、通貨の発行量をその国の金保有高という狭い範囲に制限しておく必要性がある。こうすることによって各国の政府は、貨幣の価値を維持した。したがって、特に本来の金本位制の時期には、現代にはあるような極端なインフレはほとんど存在しなかった。本来の金本位制の時期とは1873年から1913年までのパックス・ブリタニカといわれた期間である。
政府の公共投資
一方、経済の安定的な成長の維持には政府の役割は大変に重要である。政府は国内の景気を調整しようとするが、現代ではそのもっとも有効な手段は巨額な公共投資である。
現代の政府は、景気が下降し国内の需要も冷えきった不況期には巨額の公共投資をいくつも発注し、多くの産業を刺激する。すると産業が活性化し、雇用が創出されるので、国内の需要も息を吹き返す。国内需要の回復はさらに産業を活性化させるので、好景気に突入する、という図式だ。
「巨額の公共投資」→「多くの産業を刺激」→「雇用の創出と賃金の上昇」→「国内の需要の増大」→「産業をさらに刺激」→「好景気に突入」
財源の問題
戦後、どの先進国もこの方式で高成長を達成した。日本や旧西ドイツなどの国はその典型である。
だが、政府がこうした巨額の公共投資を行うには財源が当然必要になる。税収や他国からの借金でも賄うが、当然それだけでは巨額な公共投資を長い間賄うためには十分ではない。
そこでもっとも重要になるのは政府の通貨の発行量の増大である。政府が通貨の供給を調整する権限をもっていると、通貨の発行量を増やし、それを財源とすることで公共投資はいくらでも行うことができる。
しかしながら、すでにみたように、金本位制のもとでは、通貨の発行量は金の保有高を越えることは許されなかった。これを越えることは深刻な事態を招いた。
したがって、金本位制のもとでは、戦後可能となったような巨額の公共投資は不可能であった。その結果、一度不況に陥ると政府はなすすべがなく、自然な回復を待つほかなかった。
当然、社会福祉や健康保健や年金、そして失業保険や生活保護などもそれなりに大きな財源を必要とする。通貨の増刷ができない政府は、当然このようなサービスを十分に提供することは難しかった。その結果、不況は激烈なものとなり、不況のたびにデモや騒乱のような社会不安が激増した。図式化すると以下のようになる。
「通貨の発行量が増やせない」→「公共投資や社会サービスの財源が十分にない」→「有効な景気刺激策が打てない」→「激烈な不況」→「社会不安の醸成」
戦後のシステム、プレトンウッズ体制
上記のような社会の不安定な状態がファシズムを台頭させ、第二次大戦の原因の一つになったとの認識から、戦後はまったく異なった体制が作られた。それをプレトンウッズ体制とよぶ。
基軸通貨としてのドル
この体制では金本位制は放棄された。各国の通貨はもはや金を基準にしてその価値を保証されることはなくなった。
これまでの金の地位についたのがドルであった。各国の通貨はドルとの固定した比率での交換が保証され(固定相場制)、これが各国通貨の価値の保証となった。このため国境を越えたものやサービスの取引では、ドルが共通した決済手段となった。
ではドルの価値はなにによってその価値が保証されたのであろうか?それは金であった。ドルのみ、金との即時の交換が保証されており、金本位制下の各国通貨と同じような状態であった。
だが、このシステムは金本位制とはいくつかの点で大きく異なっていた。
まず、ドルが金と交換可能といっても誰でも交換を請求できるわけではなかった。請求権は各国の中央銀行に制限されていた。
さらに、各国の中央銀行と米国との間には紳士協定のようなものが存在しており、各国の中央銀行はよほどの必要性がない限り、保有するドルの金との交換を請求しないことになっていた。
この結果、金との交換はめったに発生しないのだから、アメリカも自国の金保有量に制限されないで通貨を増刷する自由を手にした。
こうした体制をドル本位制という。
ドル本位制
ドル本位制のもとでは各国は金保有量には一切制限されない通貨の自由な発行権限を得た。各国がこの方式で創出した財源に基づき公共投資を行い経済成長を達成したことはすでに述べた。
他方、ドル本位制のもとでも通貨の発行には制限が設定されていた。完全に自由ではなかった。各国ともドルとの固定相場が設定されていたので、これを大幅に上回るような通貨の発行はできなかった。各国は固定相場の維持に努めなければならなかったのである。
このため各国政府は、自国の通貨がドルに対して安くなり過ぎると、為替市場で保有するドルを売り自国通貨を買い、反対に自国通貨が高くなりすぎれば自国通貨がを売ってドルを買うという操作を行った。
各国がこうした操作を行うには、当然ドルを保有していなければならない。もともと保有するドルがなければドルを売って自国通貨を買うという操作も行う余地もない。
アメリカ政府は、これに必要なドルを、援助、超低利の貸し付け、各国の製品の買い取りなどの方法でドルを無尽蔵に散布した。ドル紙幣はアメリカに国内通貨である。それは印刷すればいくらでも刷れるので、アメリカ政府にとってはいたくもかゆくもなかった。ましてや、各国の中央銀行は金との交換を請求してくることはないのだから、これはなんの問題もなかった。図式化すると以下のようになる。
「アメリカ政府によるドル散布」→「各国政府は保有ドルを用いて為替レートを安定させる」→「固定相場制の維持」
ドル本位制の根本的な変質
戦後スタートしたプレトンウッズ体制のドル本位制は、50年代から60年代前半にかけて各国の高度経済成長を実現しつつ、安定した通貨体制として機能した。だが、60年代も後半にはいると、1)日本やヨーロッパ諸国の経済成長、2)ベトナム戦争による巨額の出費などの原因よって、アメリカは各国に対して決定的に競争力を失うにいたった。固定相場制のもとでドルとの交換レートは固定されていたが、このままではドルの価値は大幅な下落を余儀なくされるだろうと各国は考えるようになった。ドル不安の発生である
各国の中央銀行は、これまでの紳士協定を放棄し、ドルの金交換をいっせいに請求しだした。自国の保有するドルやドル資産が急速に減価する可能性があるのだから、実際に減価するまえに金に交換してしまえということだ。
この激しい金交換のラッシュをゴールドラッシュとよぶ。それは60年と68年の二度起ったが、特に68年のゴールドラッシュは巨大だった。
これ以降、アメリカ政府は膨大な金の喪失に耐えられなくなり、とうとう1971年のニクソン大統領の声明によってドルと金との交換は停止した。これにより各国通貨同様、ドルの価値も金によって保証されることはなくなった。これをニクソン・ショックという。
変動相場制の世界
ドルと金の交換停止によって固定相場制も放棄された。これ以降、通貨の価値は外国為替市場における通貨の需要と供給だけで決定されるようになった。かねてから大幅な減価が叫ばれていたドルは、大幅に下落した。
このとき、ドルがもはや基軸通貨としては放棄されるのではないかとの観測が説得性を持ったのもこの時期である。いまも同じ可能性がささやかれているが、実はこれは過去にもあったのである。
ベトナム戦争の失敗による巨額の出費がきっかけとなったことといい、いまのイラク戦争後の状態と非常によく似ている。以前記事に書いたジョン・ホーグやサイクルマガジンなどが唱える40数年のサイクルがここに見られるかもしれない。これについては機会があればいずれ書く。
ドルを基軸通貨とした新たなシステム
だが、周知のように、ドルの放棄は起らなかった。金の後ろ盾を失ったにもかかわらず、ドルは依然として基軸通貨であり続けた。
いまのユーロのように、この当時他に候補となる通貨がなかったからではない。理由はもっと別のところにあった。
ドルのもとで、固定相場制のころ以上に安定したシステムが出現したからである。
意外に安定していた変動相場制下のドル機軸通貨制
変動相場制下ではこれまでには存在していなかった循環が生まれた。
まず、アメリカ政府は、日本やヨーロッパに対して国内産業の競争力が失われつつあるにもかかわらず、自由貿易を堅持し、国内市場を外国製品に開け放っていた。このため、アメリカ国内の産業(特に製造業)は大打撃を受け、倒産と撤退が相次いだ。
だが反対にこれは各国政府からみると、アメリカという巨大市場が出現したこと意味した。これまで以上にアメリカは、世界最大の市場となった。各国は市場としてのアメリカに向けて膨大な製品を輸出してくるようになった。
当然このとき、アメリカの支払い手段はドルである。もはや金との交換は停止されているし、なおかつ変動相場制なので、固定相場の維持の必要からドルの増刷を制限する必要はない。支払い手段が必要であれば、どんどんドルを印刷して支払えば済むのである。
一方、ドルを受け取った各国はドルのやり場に苦慮した。ドルは国内では使えない。使うためには、外国為替市場でドルを売り自国通貨と交換しなければならない。
だが、これは簡単にはできないことであった。変動相場制ではどの通貨の価値も需要と供給のバランスだけで決定される。すると、ドルを売って自国通貨に交換すると自国通貨の需要が高まり、その結果、自国通貨の価値は上がってしまう。円でいうならいわば円高の状態である。
自国通貨の価値が上がると輸出は減退する。例えば、交換レートが1ドル、110円のとき、日本で110円の商品を1ドルで輸出して利益を上げていた企業があったとする。円高のため交換レートが1ドル、50円になったとすると、この企業は、日本で110円で売っている商品をもはや1ドルで販売することはできない。50円しか得られないからである。では2ドルより高い価格に設定すればよいわけだが、それで製品は売れるだろうか?値上げするわけだから売れるはずもない。必然的に輸出は減退する。
自国通貨が高くなることのマイナスの影響は全産業におよぶ。この結果、国内景気は減退する。このため各国政府は、輸出で得たドルを安易に自国通貨と交換することはできなくなる。以下の流れを図式化すると以下のようになる。
「アメリカへの輸出」→「支払い代金としてのドルの受け取り」→「為替市場で自国通貨と交換」→「自国通貨の上昇」→「輸出の減退」→「景気の減速」
ドルのアメリカへの還流
自国通貨の高騰を避け、輸出の減退を回避するためには、安易にドルを自国通貨へと交換することは避けなければならない。
このためには各国は、輸出で得たドルを自国通貨と交換することなく、ドルのままアメリカに戻してやるほかない。これは、米国債、株式、米国市場のさまざまな証券や債権、または不動産などの購買という形で行われた。これをドルの還流という。要するにアメリカへの再投資である。
アメリカにとってはこれは、支払った輸出代金がそのまま戻ってくることを意味する。
基軸通貨国ではない国がドルを得るためには、競争力のある産業を育成し、製品の輸出を通してドルを得るほかはない。競争力のある産業の育成には大変な努力を要する。
だが、唯一の基軸通貨国であるアメリカはこうした産業を育成する努力をする必要から免除されている。各国に国内市場を開放するだけで、ドルは還流してくるからだ。このため、アメリカの金融市場は世界中から投資資金が集まりいつでも活況を呈した状態になった。
この循環をより確実なものにするため、米国政府は投資資金が集まりやすい環境を作った。利回りが他の諸国よりも低くなったとき、投資資金はうま味がある国へ脱げて行く。このため、米国債の利回りや市場金利などを他の諸国よりも高めに設定する必要があった。この条件さえ守っていれば、ドルの還流とその再投資は確実に発生した。
これを図式化すると次のようになる。
「米国への輸出」→「支払い代金としてのドルの受け取り」→「米政府は利回りを高めに設定」→「米国への再投資」→「米国金融市場の活況」
ドルの還流に完全に依存した米国財政
ドルが基軸通貨である限り、上記のようなドルの還流は確実に発生した。このため、米国の政府財政は還流してくるドルに対する依存度を徹底的に深めていった。政府がどれほど巨額の財政赤字を計上しようとも、ドルの還流がある限り、赤字はこの還流によってたちどころに補填された。
この結果、米国政府は財政赤字に対するコントロールを次第に喪失するようになった。つまり、政府がどれだけ使ってもどんどんドルは入ってくるので、赤字の大きさにまったく無自覚になるということだ。それは下記のような図式である。
「米国への輸出」→「支払い代金としてのドルの受け取り」→「米政府は利回りを高めに設定」→「米国への再投資」→「米国金融市場の活況」→「政府財政の依存と借金体質」
各国にとってのインフラとしての米国
変動相場制の導入以降に登場したこのシステムは非常に安定していた。
まず、各国からみると米国は、経済成長を支える巨大なインフラのようなものとして写る。ドルを基軸通貨としたシステムは、このインフラを維持管理するもっとも効率的な方法であった。
また、米国からみるとこのシステムは、なんの努力をしなくてもドルが自動的に入ってくる無尽蔵の自動現金支払い機のようなものとして感じられた。このシステムがある限り、政府支出の上限さえ意識しなくてよい。まさにシャブ中のような状態だ。
このように、これは双方にとって必要なシステムであった。これが、変動相場制以降、金の後ろ盾を失ったにもかかわらず、基軸通貨としてのドルが継続した所以である。
このシステムのアキレス腱
だが、このシステムにアキレス腱のようなものがまったくないかといえばそうではない。むしろ、このシステムが正常に機能するためには、ある重要な条件が存在している。この条件が充足されなかった場合、このシステムは意外ともろいことが証明された。
そのアキレス腱とは、財政赤字の大きさと還流するドルの大きさとのバランスである。それは以下のような条件に整理できる。
財政赤字<還流するドルの総額
(財政赤字が還流してくるドルの総額より小さい)
この場合はなんの問題もない。ドルの還流によって財政赤字は絶えず補填される。
財政赤字>還流するドルの総額
(財政赤字が還流してくるドルの総額を越る)
これは大きな問題が出てくる。財政赤字のほうが還流するドルよりも大きいので、赤字は補填され得ない。還流するドルのかなりの割合が米国債の購入に当てられている。だが結局これはすべて借金である。いつかは利子をつけて返さねばならない。赤字がドルの還流によって補填されている限りは、新しいドルの還流で過去の借金が支払える。だが、補てんが不可能ない場合は支払い不能に陥る。これがこの状態である。
深刻な危機
後者の状態がある期間継続したらどうなるだろうか?各国政府は、米国政府が米国債などの借金の支払いが将来できなくなるとみるやいなや、米国債やその他のドル建て資産が値崩れを起こす前にいっせいに売りに出るだろう。これが行われると、米国債、そしてその他のドル建て証券や債権は一斉に下落する。
この動きでもっとも深刻な影響を与えるのが大幅なドル安である。大幅なドル安はさまざまな悪影響を国際経済に与えるが、ここでは詳しい説明は省く。
だが、売った商品の代金として受け取ったドルが大幅に減価するのである。それもどんどんと減価の幅が大きくなるのである。これではどの国のどの企業もリスクが大きすぎてドル建ての決済から撤退したくもなるだろう。より安定度の高い通貨での決済を要求するようになるはずだ。
基軸通貨としてのドルの放棄
これがさまざまな分野の産業や国々に広まってくると、ドルはもはや決済通貨としては機能を果たさなくなる。ユーロなどのはるかに安定性が高い通貨が決済通貨として使われるだろう。
では、ドルが決済通貨として使われなくなると、米国の財政や経済が完全に依存していたドルの還流はどうなるのだろうか?答えは明白である。ドルの還流のような現象はまったくなくなる。
たとえば決済通貨がユーロになったとしよう。各国は輸出代金をユーロで受け取る。それをそのままEUの金融市場に還流させるだろうが、それをあえてリスクの高いドルに交換して、すでにこの時点では不安定化している米国の金融市場に投資する理由はまったくない。ドル建て市場への投資はストップする。以上のことを図式化すると以下のようになる。
「財政赤字が還流してくるドルの総額を越える」→「ドルの暴落を嫌い各国がドル建て資産を売る」→「ドルの暴落」→「ドル建て取引の放棄」→「安定度の高い他の通貨による決済」→「基軸通貨としてのドルの放棄」→「ドルの還流停止」
確実に食えなくなるアメリカ
ではドルの還流が停止したらアメリカはどうなるのか?まず、財政破綻は免れないだろう。もうドルが還流してこないのだ。ましてや基軸通貨はもはやドルではないのだ。米国債やさまざまな債権は完全に支払い不能になるだろう。つまりデフォルトの状態である。これがはっきりした時点で、ドルは紙くずと化し、他国通貨との交換は停止する。
さらに、投資資金はもはや入ってこないのであるから、米国内のあらゆる金融市場はほぼ機能を停止したような状態になる。
金融市場が破綻すると、当然国内経済もほぼ壊滅状態になる。以下の図式である。
「ドルの還流停止」→「米国政府の財政破綻」→「国内金融市場の破綻」→「国内経済の破綻」
逆行する流れ
これは大変な事態である。ただ、これに逆行する流れがあることも事実だ。
ドルが紙くず同様の価値しかなくなっているので、米国内の労働力は徹底的に安くなる。これを目当てにして、海外から多くの製造業がアメリカに拠点を移してくる。つまり、いまの中国のような立場にアメリカがなるということだ。
だが、ことはそう容易ではない。ドルの還流停止による経済破綻という激烈な変動を乗り越えなければならないのである。そこにはあらゆる政治的社会的なリスクが存在する。タイター的なシナリオもあるかもしれない。他国による投資が再開するにしても、政治的社会的な動乱の時期が過ぎてからになるので、それは相当先の話になるはずだ。
いまの状況
上記のような状態がいま発生しているわけではない。ドルは依然として基軸通貨であるし、ドルの還流も存在している。
だが、基軸通貨としてのドルの放棄が叫ばれているのは、ブッシュによるイラク戦争以来財政赤字が巨額化し、還流してくるドルの総額を越えているからだ。これに伴い、最大のドル資産保有国である中国などは、米国債ならびに保有するドルを積極的に売り始めている。この動きは各国に広まりつつある。
おそらくこのまま進むとドルの放棄の時期も近いかもしれない。
二つのシナリオ
ではドルを基軸通貨とした体制はどのように放棄されて行くのだろうか?これには先に紹介した二つのシナリオが考えられる。
1)ソフトランディングのシナリオ
ソフトランディングといっても、それなりに激烈な混乱は避けようもないが、大きな戦争が回避できるという意味のソフトランディングである。
おそらく基軸通貨の変更は突然と行われる。
現代の世界でもっとも重要な物資は原油である。我々の社会システムは原油を前提に機能しているからだ。サウジアラビアなどの巨大な原油産出国が、原油の決済通貨をユーロに変更することを発表すると、それが引き金となって膨大なドルとドル建て資産の売りが始まり、ドルの価値は限りなく下落する。この時点でドルは基軸通貨のとしての機能は果たすことは不可能になる。そして基軸通貨として放棄される。
ドルの還流が停止するとアメリカはやって行けない。これに対応するため、アメリカはかねてから協議を重ねていた「北米パートナーシップ協議」を格上げし、カナダやメキシコと一緒に「北米共同体」を立ち上げる。それと同時に膨大な対外債務のデフォルトを宣言し、ドルを廃棄してAMEROを導入するす。
この処置により、カナダやメキシコとともにアメリカは、自国経済がやって行けるだけの生存圏を確保し、世界に対するあらゆるコミットメントから撤退する。図式化すると以下のようになる。
「原油産出国などの基軸通貨のシフト」→「これの世界的な拡大」→「ドルの放棄」→「ドルの還流停止」→「北米共同体の樹立とAMEROの導入」→「アメリカの世界からの撤退」→「多極的経済圏の樹立」→「それなりに安定した世界秩序」
はっきりと書かれているわけではないが、田中宇氏の記事がどちらかというとこのニュアンスに近いような印象を受ける。
では次にハードランディングのシナリオをみてみる。
2)ハードランディングのシナリオ
これは基本的にアメリカが基軸通貨の変更に最後まで抵抗し、ドルの還流を保証する既存のシステムに固執するシナリオである。
ドルの大幅な減価からドル売りが発生し、その結果として、サウジアラビアなどの原油産出国が基軸通貨をシフトさせる動きを開始すると、アメリカはそれをやめさせようとあらゆる言い掛かりをつけ原油産出国を攻撃する。イランのみならず、情勢次第ではサウジアラビアなどのいまは親米国である国々も攻撃対象になることが考えられるかもしれない。
こうした行為が何の反作用もなしに、ドルの基軸通貨体制がそのまま維持されるなどということは考えられない。その反作用が、イスラム原理主義運動による攻撃の嵐なのか、ロシアによる覇権を軍事侵攻なのかはまったくわからない。
また、たとえ基軸通貨としてのドルの維持に成功したとしても、かつてのような自由貿易のもとで国内市場をオープンにしてさえいれば、巨額のドルが勝手に還流してくるというような態勢ではないだろう。強大な軍事力の行使によってドルの還流を無理に行う態勢かもしれない。
いずれにせよ、このシナリオではわれわれは、どんなことでも起こり得る想定不可能な世界にほうり出されるようだ。図式化すると以下のようになる。
「アメリカの原油産出国への軍事侵攻」→「油田の独占」→「原油取引通貨のドル化」→「ドル基軸通貨体制の強権的な維持」→「さまざまな反作用」→「想定不可能な世界」
単純化されたシナリオ
このように、現実に起こっている変化を俯瞰的に概観し、国際経済のシステムが変化している方向から論理的に類推すると上記のような2つのシナリオが素描できる。
だがあくまでこれは、他の条件をすべて捨象して描いた粗削りの素描にしかすぎない。実際は、この二つのシナリオを両極とし、この間にさまざまなシナリオを考えることができるだろう。
予言のシナリオ
ここまでシナリオを類推して上で予言にあたると、予言そのものの言葉に驚くのとは少し違ったアプローチが可能ではないかと考えた。
では、予言はどちらのシナリオを予告しているのだろうか?前回すでに書いたが、それは圧倒的に2)のハードランディングのシナリオなのだ。
今回は「アロイス・イルマイル」と「ウォルフガング・ヨハネス・ベック」の予言を紹介する。両者とも大変に長いので、今回はその冒頭部分のみお伝えする。全文はのちに訳出して掲載する。
アロイス・イルマイルの予言
アロイス・イルマイル(1894-1959)は、南ドイツに実在した予言者であること以外はよく分らない。第三次大戦にまつわる予言は、死の数年前、コンラッド・アルドマイヤーとのインタビューで記録されたとされている。
- 何が戦争のきっかけとなるのですか?
すべての人が平和を求める。だが戦争は起こってしまうので。新しい中東戦争が突然に勃発する。地中海で巨大な船隊が対峙し状況は緊張する。だが、危機はバルカンで発生する。大物の政治家が倒れるのが見える。血のりのついたナイフが横たわっている。それから衝撃的な出来事が相次ぐ。
第三の実力者を二人の男が殺す。この男たちは他の人物に雇われた。その後、三つ目の暗殺が起こる。それから戦争が勃発する。
中略
密集した部隊(ロシア軍)は東からベルグラードに侵攻し、その後イタリアまで前進する。その直後、なんの警告もなしに三つの師団(?)がものすごいスピードでドナウの北から西ドイツにラインに向かって進む。これは何の警告もなく起こるので、住民はパニックを起こし西へ逃れようとする。
この予言では 「中近東の緊張ないしは戦争の勃発」「バルカン戦争の勃発」「ロシア軍のヨーロッパ侵攻(特にドイツ)」という出来事の系列が読み取れる。
ワールドビーデルの千里眼の予言
「ワールドビーデルの千里眼」と呼ばれる人物は、これまで紹介した中央ヨーロッパの予言者の中でももっとも最近の予言者である。まだ存命しているそうである。彼の予言はウォルフガング・ヨハネス・ベックが解説している。
戦争の時期には、低高度で爆発する小型爆弾によってニューヨークが破壊されます。強烈な嵐によってなぎ倒されたようになった家々が見えます。爆心では立っているものは何も見えません。これは現地時間で正午頃に起こると思います。
(本人の証言)
第三次大戦が勃発する前には、いくつかの地域で局地的な戦争が勃発する。ニューヨークは破壊されユーゴスラビアとブルガリアで戦争が起こる。イタリアとライン以東のドイツで内戦が発生する。イタリアの内戦が頂点に達したとき、ロシア軍はカリンシアからイタリアへ侵攻する。アメリカはこの侵攻には不介入の姿勢を貫く。
アメリカ軍が参加した全面戦争は、アメリカが中東紛争に関わることを通してサウジアラビアで起こる。だがアメリカ軍は苦戦する。ロシア軍はアメリカ軍に勝利する。ポーランドは西側の同盟国としてロシア軍に反攻する。その後、ロシア軍はドイツに侵攻する。
(ウォルフガング・ヨハネス・ベックの解説)
これには「ニューヨークのテロによる破壊」という出来事が追加されているが、それ以外はアロイス・イルマイルと非常によく似ている。やはり「中近東の緊張ないしは戦争の勃発」「バルカン戦争の勃発」「ロシア軍のヨーロッパ侵攻(特にドイツ)」だ。
これは上記のハードランディングのシナリオが実現するということなのだろうか?なぜソフトランディングのシナリオは予言にはないのだろうか?分からない。
次回以降、順次予言を紹介する。
ヤスの英語
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