第760回 BRICS決済通貨はどうなるのか?統合しつつある中ロの経済圏、グリア博士のインタビュー その2
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▼今回の記事
今回は、「BRICS国際決済通貨」の導入の可能性について検討する。どこまで現実性があるのかどうか、詳しく見て見る。次に、スティーブン・グリア博士の最新インタビューの続きを掲載する。極めて興味深い内容だ。
▼ニジェールの状況
メインテーマを書く前に、ニジェールの状況について一言書いておきたい。日本ではまったく報道されていないので重要な情報だと思う。
7月28日、西アフリカの内陸国、ニジェールで軍事クーデターが発生しアブドゥラハマヌ・チアニ将軍が全権掌握を宣言してから緊張が続いている。西側諸国はこの動きを強く非難し、民主主義的体制に戻すよう呼びかけている。特に、クーデターで成立した軍事政権に実質的に同国から追い出された旧宗主国のフランスの怒りは激しい。戦争も辞さない構えで事態に臨んでいる。
また、欧米寄りの「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」は、クーデターが起きたニジェール情勢の沈静化に向けた軍事介入の可能性を示唆しつつ、緊張状態が続いている。さらに、ヌーランド米国務次官もチアニ将軍に即刻の民政移行を強く要求したが、無視された。一方、チアニ将軍は3年以内に改めて選挙を実施し、民政移行を表明してもいる。
ニジェールは「ノードストリーム」に代わり、西アフリカの石油や天然ガスをヨーロッパに輸送する「サハラ砂漠横断パイプライン」の通過点にある地域なので、アメリカ、フランス、ロシア、中国などの大国の利害が衝突する地域になっている。
そうした中、ロシアとの関係は強化されている。一昨日の情報だが、すでにロシアの民間軍事組織、「ワグネル」の部隊がニジェールで展開している。主な任務はナイジェリアなどと接する南部の国境警備だ。一方、アルジェリアやリビアに隣接した北部の国境はいまだにフランス軍が警備している。フランス軍は戦闘機を飛ばし、軍事政権に圧力をかけている模様だ。
前々回の記事では、ニジェールで軍事政権の阻止を狙うフランス軍と、軍事政権を支援するロシアの「ワグネル」が軍事衝突する可能性があることを指摘したが、実際にそうなってもおかしくない状況になっているようだ。
しかし、興味深いことに、北部国境を警備しているのは、「フランス外人部隊」の契約兵だ。なんとその多くがロシア人のようだ。もし南部の「ワグネル」と北部の「フランス外人部隊」が衝突するようなことがあれば、それはロシア人同士の戦闘となる。この状況は戦闘の抑止効果を持つ。「ワグネル」、「フランス外人部隊」の両者ともよく理解しているので、戦闘に陥らないように調整しているとの情報もある。
これがニジェールのいまの状況だ。ただ、下手をすると「フランス外人部隊」と「ワグネル」が戦闘状態に陥らないとも限らない。とにかくこの地域について日本で報道されることが少ないので、今回はまずこれを書くことにした。
▼BRICS首脳会と新しい国際決済通貨
それでは今回のメインテーマを書く。「BRICS首脳会議」と、新しい国際決済通貨が発表される可能性についてである。
8月22日から24日まで、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの「BRICS首脳会議」が、南アフリカのヨハネスブルクで開催されている。中国とロシアが主導しているBRICSにはすでに約20カ国が公式に加盟を申請しており、拡大BRICSがどこまで実現できるかが、1つの焦点になっている。
第759回 やはりアメリカは不況になる可能性大、スティーブン・グリア博士の最新インタビュー その1 予告
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第759回 やはりアメリカは不況になる可能性大、スティーブン・グリア博士の最新インタビュー その1
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▼今回の記事
まず今回は、ウクライナの戦況について簡単にお伝えしたい。明らかにウクライナ軍の反転攻勢は失敗している。次にメインテーマとして、アメリカ経済が年内か来年早々にも不況に入る可能性について紹介する。最後に、「ディスクロージャー・プロジェクト」を主催しているスティーブン・グリア博士の最新インタビューを紹介する。長いので2回に分けた。今回はその1である。
▼ウクライナの戦況
それでは今回はメインテーマを書く前に、ウクライナの戦況について書く。日本や欧米の主要メディアではウクライナ軍の反転攻勢の進展は遅いながらも、確実に領土を奪還しているという、明らかにウクライナ寄りの報道が中心だ。しかし、実際に詳しく調べて見ると、ウクライナ軍の反転攻勢は成功しておらず、領土の奪還もできていない状況だ。7月29日にビデオ配信のヤスの勉強会を行ったが、2週間経ってもそのときに紹介した戦況とほとんど変化がない。したがって、メルマガでも、勉強会で紹介した戦況を転載する。
●ウクライナの戦況(7月29日から8月16日)
・ウクライナ軍の反転攻勢は基本的に失敗。
・ウクライナ軍はロシア軍の防衛線を突破できていない。
・6月4日から始まったウクライナ軍の反転攻勢では、ロシア軍が占領しているウクライナの領土、13万2000平方キロのうち、253平方キロを奪還したに過ぎない。これは、ロシア軍が占領している領土の0.19%に過ぎない。それも、ロシア軍が防衛線の外側に緩衝地帯として設置している「セキュリティーゾーン」の集落ばかりだ。
・むしろロシア軍はハリキュー、ルガンスクで支配地域を拡大。
・ロシア軍の地雷原と、ドローンのランセット3に西側が提供した兵器がやられる。
・西側の兵器支援が限界にきている。
●NATOとロシアの今後の対応
こうした、ウクライナ軍の反転攻勢が限界にきている状況で、アメリカを中心としたNATOも新たな対応を迫られている。著名なモスクワ在住の調査ジャーナリスト、ジョン・ヘルムスは独自のネットワークから得た情報から、今後の展開を次のように予想している。
・カナダ情報筋によると、ゼレンスキーが11月までに勝利できる可能性を証明できなければ、クリスマスまでにNATOの支援は縮小。
・クリスマス以降、ウクライナ軍崩壊の可能性。NATOは介入しない。
・ロシアが黒海穀物イニシャティブを破棄した理由はウクライナが協定を隠れ蓑にして兵器を輸入したからだ。
・穀物輸出拠点のオデッサ港がクリミア攻撃の拠点。
・これが理由でロシアはオデッサをミサイル攻撃。
・オデッサの海上インフラをすべて切断することでウクライナ経済の息の根を止め、オデッサが経済的に使えなくなるようにする。
●西側が報じないロシアの目的
このように、ウクライナ軍の反転攻勢が失敗しているにもかかわらず、欧米や日本の主要メディアではロシア軍が負けているとの報道がなされている。その基本的な理由は、ロシア軍の支配領域がほとんど拡大していないからだ。ロシアの支配地域は、東部のドネツク、ルガンスク、そして南部のサボリージャー、ケルソンの4州に限定され、首都のキーウなどがある西部には拡大していない。この状況を日本の主要メディアはロシア軍が苦戦している証拠だと報道している。
しかしこれは、ロシアの目的の誤った認識に基づく判断である。プーチン大統領は昨年の2月から「特別軍事作戦」を行ってから、再三再四演説でこの戦争の目的を明確に主張してきた。それは以下の3つである。
1) 東部と南部のロシア語話者の権利擁護
2) ウクライナの脱ナチス化
3) ウクライナ軍の壊滅
そしてプーチンは、「ウクライナ西部の領土は求めない、領土拡大はしない」と何度も声明している。このような状況から見ると、ロシア軍の支配領域がドネツク、ルガンスク、サボリージャー、ケルソンの4州に止まっていることは、ロシア軍が負けているからではなく、これがロシアの目標だからだ。1年半にわたってこれら4州の占領をロシアが続けているということは、ロシアがすでにこの目標を達成しているということを表している。
ロシアのこのような目標を前提にすると、ロシア軍がいま実施している戦略が見えてくる。2)のウクライナの脱ナチス化は、昨年5月のネオナチ部隊の「アゾフ大隊」の司令部があったマリウポリを占領し、この部隊を壊滅させてことで半ば達成している。いまは3)のウクライナ軍の壊滅が中心的な目標になっている。領土拡大ではない。
このためロシア軍は、ロシア軍にとっては占領をする価値のないロシア軍の防衛線の外側にある集落にウクライナ軍をおびき寄せ、これを殲滅してウクライナ軍の壊滅を進める作戦だ。これがいまロシア軍が実施している作戦である。この結果、ウクライナ軍は壊滅し、ヘルムスの言うように、12月にはNATOも支援を引き上げるかもしれない。
そうした中、ウクライナが領土を放棄し、その見返りとしてNATO加盟を受け入れることが解決策になりうるとのアイデアが、NATOのストルテンベルグ事務総長の首席補佐官であるスティアン・イェンセンからも出るようになっている。おそらく水面下ではすでに交渉が行われている可能性が高い。
▼アメリカ経済の実態
それでは今回のメインテーマを書く。アメリカ経済の実態についてだ。このメルマガではこのテーマを何度も書いているが、やはり非常に重要なので今回も記事にすることにした。
メルマガ752回の予告
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第752回 プリゴジンの反乱で実際にはなにがおこっていたのか?日本では報道されていないこと、コルマン博士の語るAIの起源 前半
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▼今回の記事
ロシアの民間軍事会社、「ワグネル」を率いるプリゴジンが反旗をひるがえした。この事件について詳しく調べると、日本では報道されていない事実があまりにも多い。今回はこうした事実を紹介しながら、実際に何が起こったのか書く。最後に、マヤカレンダーの解釈で知られるコルマンインデックスから見たAIの起源とその行方を紹介する。記事が長くなるので、これは2回に分けた。今回は前半である。
●「ワグネル」は「ロシア軍情報機関(GRU)」の産物
これが事件の概要である。しかし、今回の事件がロシア国内のクーデターの発生と、プーチン政権の転覆の可能性を示唆するものではないにしても、その実態は報道されているよりもはるかに深い。
そして、ここで重要な点は、プリゴジンだけに焦点が当たっているが、実は「ワグネル」の指導者はプリゴジンだけではない。
周知のようにプリゴジンは、スタンドのホットドッグ売りから身を興し、レストランのオーナーとなった人物だ。その後、ケータリングサービスの企業を成功させ、プーチンとの関係ができた。このようにプリゴジンにはまったく軍歴がない。
そのような人物が、戦闘集団である「ワグネル」をなぜ設立できたのだろうか?筆者にはナゾであった。プリゴジンは「ワグネル」の実力者では確かにあるものの、「ワグネル」を動かしている別な人物や勢力がいるのではないかと思っていた。
実は「ワグネル」の背景を調べると、ドミトリー・ウトキンという共同創立者がいたのだ。むしろ、「ワグネル」の本当の実力者はウトキンなのかもしれない。事実、占拠した「ロストフ・ナ・ドヌ」からモスクワに進軍していた3200人の部隊を指揮していたのがウトキンだった。ウトキンの動向から今回の反乱を見ると、まったく知られていなかった事実が見えてくる。
実は「ワグネル」は、「ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)」の産物なのである。単なる民間軍事会社ではない。「GRU」はロシア軍の最高情報機関である。プリゴジン自身は軍歴がないものの、もう一人の共同設立者であるドミトリー・ウトキンは、「GRU」の特殊部隊、「スペツナズ」の特殊工作員だった。
「スペツナズ」は少なくとも1949年以来、おそらくそれ以前から存在している。彼らは通常、敵陣の背後で秘密裏に作戦を遂行する。彼らは最新の装備で武装しており、ロシアの敵の裏庭に小型核兵器を仕掛けることができると疑われてきた。
インターネット上では、「ロシア保安局(FSB)(KGBの後継組織)」、ならびに「スペツナズ」の隊員の多くが親ワグネル派であることが確認されている。つまり、軍内、おそらくは「FSB」内でも権力闘争があった可能性があり、現在の軍指導部の交代だけでなく、プーチンに屈辱を与え、交代させることが真の目的だった可能性があるのだ。
●6カ月前からプリゴジンは準備、ウクライナと内通
まず、作戦を開始するために、プリゴジンは過去6カ月以上前から準備していた。その中には、バフムトで戦うための十分な弾薬が手に入らないという、証明可能なほど虚偽の告発があった。それとともに、プリゴジンは、ロシア陸軍指導部は腐敗しており、バフムト作戦中に「ワグネル」の側面を守ることを拒否し、ウクライナ戦争で大敗していると告発した。これらの非難はどれも真実ではなかったことが証明されている。
そして、「ツイッター」、「テレグラフ」、「サブスタック」などで流れている未確認情報によれば、それ以上のことがあったようだ。
プリゴジンは、少なくとも昨年1月以来、「ウクライナ軍情報部」と連絡を取り合っていた。一部の情報筋によれば、プリゴジンはウクライナ情報部幹部と会談するために、「ワグネル」が活動するアフリカにも飛んだという。同様に、プリゴジンはロシア国内の多くの特殊部隊にも連絡し、自分に加わるよう求めていたという情報もある。
プリゴジンがウクライナの情報機関に伝えたとされる情報には、プリゴジンの最終目標が含まれていた可能性がある。報道では、これも確たる証拠はないが、プリゴジンはウクライナに対して、ロシアの主要な司令部がどこにあるのかを明らかにすると約束し、ウクライナを利用して彼らを壊滅させることを狙ったとも言われている。
●プリゴジンは治安組織に浸透、ロシア軍の犠牲
現時点では確証はないが、プリゴジンは、警察、軍隊、諜報機関を含む数千人の支持者によって正義の行進が埋め尽くされるよう、一般的な蜂起を望んでいたようだ。もちろん今となっては、蜂起などなかったし、プリゴジンの気の遠くなるような探求に加わりたいと申し出る者もいなかった。
メルマガ751回の予告
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第751回 変化するグローバルトレンド、文明の風は東アジアから吹いている、プレヤーレンが警告する新たな変異株
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▼今回の記事
まず今回は、日本ではほとんど報道されていないので、ウクライナの戦況について簡単に紹介する。次にメインテーマとして、巨視的な視点からいまの変化の方向性を分析することにした。まさに文明の風は東アジアから吹き始めた感じだ。最後に、プレヤーレンが警告する中国発のコロナの新しい変異株について紹介する。
▼日本では伝えられないウクライナの戦況
それではまず始めに、日本では伝えられていないウクライナの戦況を簡単に紹介する。ウクライナ軍の反転攻勢は続き小さな集落の獲得はできているものの、決定的な領土の回復には至っていない。また、ロシア軍の防衛線も突破できていない。
●全体の状況
・特に南部、サボリージャ州でウクライナ軍の反転攻勢が一時的に停止している。この機会をとらえてロシア軍は攻撃に転じている模様。ウクライナ軍の反転攻勢の一時的な停止の理由はよく分からない。戦況を分析し、戦術の再評価のために行っているのかもしれないし、ロシア軍をおびき寄せて殲滅する罠かもしれない。
・ただ多くの分析者が一致していることは、これまでの作戦でウクライナ軍は多くの損失を出しており、たとえ一部の戦闘では勝っているものの、現状ではサボリージャ州全体を奪還する兵力が不足するということだ。ウクライナ軍もこの状況を認識しており、目標実現のために戦略の再評価を行っている模様。ウクライナ軍が、ロシア軍に占領されている主要都市を奪還するためには、現状の軍の配置では無理だという判断だ。
・一方、この機会を捉えて、ここ数日で全体の戦況地図が変化している。南部から東部のあらゆる戦線で、ロシア軍の攻撃が激しくなっているからだ。
・ウクライナ軍にとっての最大の問題は、ロシア軍の航空戦力だ。KA-52のような戦闘ヘリコプター、そしてFPVやランセットなどのドローンの攻撃力だ。特にKA-52戦闘ヘリコプターの打撃力は大きい。遠方からウクライナ軍の戦闘車両をホバリングしながら攻撃できる。この航空戦力を撃退する方法がないと、ウクライナ軍の反転攻勢の成功はない。
(中略)
▼明らかに文明の風は東アジアから吹いてる
それでは、今回のメインテーマを書く。コロナのパンデミックとウクライナ戦争で、アメリカの覇権は衰退し、欧米諸国は政治的、経済的な主導権を急速に失いつつある。これを底流に進む政治・経済的な日々の変化のニュースに我々は翻弄されがちだ。もちろん、そうした動きを追い、状況の変化を的確につかむことも非常に重要だ。
しかし一方、こうした動きの深層で進む社会の大枠での変化を追うことも重要だ。意外な変化が目に入ってくる。それは、象徴的に表現するなら、文明の風が明らかに東アジアから吹き始めたという変化だ。
●TikTokのトレンドに見る変化
筆者は年甲斐もなくTikTokを見るのが好きだ。ここ5年くらいだろうか、ほぼ毎日TikTokを見ている。すると、コロナのパンデミックとウクライナ戦争という2つに大きな出来事を挟んで、それ以前と以後では大きな変化が見られるようになったと思う。客観的なデータがあるわけでもなく、筆者の印象だが次のように変化している。
・2020年くらいまでのパンデミック以前
パンデミック以前は明らかにエンタメのパーフォーマンスが中心だった。また、日本を訪れる外国人旅行者の投稿も多く、その中心的な内容は、アニメ、ファッション、おしゃれな小物、グルメ、風景、旅館など観光客にありがちな投稿動画だった。消費対象としての日本というイメージだ。
・2020年から2022年のパンデミック最中
それが、コロナのパンデミックになると傾向が大きく変わった。社会の変化に苦しむ人々の声が数多く投稿されるようになった。孤独、精神崩壊、自殺願望、先の見えない不安などだ。むろんエンタメ系の動画もあるが、めっきり見なくなった。また、どの国もロックダウンしているので、外国人観光客による投稿動画は激減した。
・2022年のウクライナ戦争
そうした中で、2022年から急速に増えたのがウクライナ戦争に関連した動画である。ウクライナ、ロシア双方が動画を投稿している。リアルな戦闘シーン、戦争の被害、平和への訴え、ロシア、ウクライナ双方の憎しみの叫びなどの動画だ。これに他のコンテンツは圧倒された感じだった。
・2023年のポストパンデミックとAIの爆発
それが2023年のパンデミック後になると、トレンドはまた大きく変化している。ウクライナ戦争関連の映像は多いものの、AI関連の動画が爆発的に増加している。ChatGPTはもちろんだが、あらゆる種類のAI関連アプリの紹介動画だ。こうした動画は筆者がAIを学習する重要なリソースになっている。YoutubeよりもTikTokの方がAIの紹介動画は多い印象を持つ。
そうした中、外国人観光客の動画に顕著な変化が見られる。日本の外国人観光客は1年前の100倍になっているが、彼らの投稿する動画のコンテンツも大きく変化しているのだ。欧米の旅行者の動画がとても多い。
もちろん、これまでのようなアニメやグルメもあるが、むしろ日本の社会環境のよさに注目する動画が中心だ。どこに行っても安全で落ち着きがあり、生活しやすい環境は現在の欧米と比べると雲泥の差があるというのだ。
●日本に住みたい欧米人、荒れるアメリカ
なにもこの傾向は日本に限られたものではない。中国や韓国についても同じような動画が見られる。TikTokの投稿者のイメージでは、豊かな中国、かっこいい韓国、安全と落ち着きの日本というところだろか。
第749回 ウクライナの戦況はどうなっているのか?予想以上に好調なロシア経済、コルマンインデックスの見通し
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第749回 ウクライナの戦況はどうなっているのか?予想以上に好調なロシア経済、コルマンインデックスの見通し
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▼今回の記事
ウクライナの反転攻勢が始まったのかもしれない。日本では報道されれいないことがあまりにも多いので、実際になにが起こっているのか様々な情報源からの情報を紹介する。最後に、マヤカレンダーの解釈の一つであるコルマンインデックスが提示する見通しについて紹介する。
▼ウクライナの反転攻勢は始まったのか?
それでは今回のメインテーマを書く。これまで数カ月の間、期待されれいたウクライナの反転攻勢がいよいよ始まった可能性がある。南部と東部で戦闘が激化しているのだ。ウクライナ軍の戦火を過大視し、ロシア軍のそれを過小視するか、またはまったく報じない日本や西側の報道では出ていない情報を中心に、なにが実際に起こっているのかまとめる、情報源はスペインの「Ejectoro」のような軍事専門や地政学専門のシンクタンク、そして軍出身の軍事アナリストである。すると、以下のような戦況の全体像が分かった
●ウクライナ軍の攻勢
この2~3日でウクライナ軍の攻勢が激しくなっている。6月7日現在の状況で以下のようになっているが、ウクライナ軍の領土奪還は進んでいない。ロシア軍に撃退されるケースの方が多いようだ。
・ドネツク州
ドネツク州南部でウクライナ軍の激しい攻勢があった。ロシア軍に占領されていた同地域のノボダリエフカ、ネスクチュネ、ノボドネツキの3つの町をウクライナ軍は一時奪還した。しかし、ロシア軍の激しい攻勢に合い、6月6日にはウクライナ軍は退却し、ロシア軍が再占領した。
・バフムト近辺
ロシア軍が全面的に奪還した激戦地、バフムトで戦闘は続いている。ウクライナ軍は同市の南部を攻撃している模様だ。ただ、この地域の奪還には至っていない。しかし、バフムト近辺にあるベルキフカ貯水池をウクライナ軍は包囲し、近隣の村、ベルキフカを占領した模様。ただ、このまま占領を維持できるかどうかは疑問。
・ドネツク州、マリンカ
バフムトと並ぶ激戦地になっていたドネツク州、マリンカは、ロシア軍が全市の80程度を掌握した模様。しかし、ウクライナ軍の反攻は依然として続いている。
・ロシア、ベルゴロド州への親ウクライナ派の侵入
ウクライナのハリキュウ州に隣接したロシアのベルゴロド州に反プーチン勢力の「自由ロシア軍」と「ロシア義勇軍」が侵入したが、ロシア治安部隊に撃退された。しかし、その後も同州のシェベキノ地区への砲撃が続いている。
●両軍の死傷者
このように、この数日間で一部の地域でウクライナ軍の攻勢が行われているが、これが反転攻勢の開始なのかどうかはいまのところ分からない。敵の防備が弱い戦線の発見や、敵の燃料基地やインフラの攻撃を行い、将来の反転攻勢の条件を作る形成作戦の一環であるとも見られている。西側ではそのような報道がほとんどだ。
しかし、ロシア国防省はそのようには見ていない。南部や東部でウクライナ軍の反転攻勢が始まったと声明している。ロシア国防省はほぼ毎日戦況を発表しているが、それによるとウクライナ軍の反転攻勢はほとんど失敗しており、死傷者数も増大しているとしている。以下が6月6日にロシア国防省が発表したウクライナ軍、ロシア軍双方の損失だ。
・ウクライナ軍
6月4日以降のウクライナ軍の損失は、人員3715人、戦車52両、装甲車207両、自動車134台、航空機5機、ヘリコプター2機、野砲48門、ドローン53機。破壊された28両の戦車のうち、8両はドイツ製の「レオパルド」、さらに3両はフランス製の車輪付き「AMX-10」であった。
・ロシア軍
ロシア軍は死者71名、負傷者210名、戦車15両、装甲車9両、自動車2台、大砲9門を破壊する被害を被った。
日本を含め西側のメディアでは、ロシア軍のこうした発表はほとんど報道されていないか、または報道されたとしてもロシアによる情報戦の一環として報道され、プロパガンダであるとする論調になっている。しかし、軍出身の軍事アナリストや軍事系のシンクタンクでは、ロシア国防省の報道をすべて信じるものではないものの、実際の戦況やテレグラムなどのSNSで現場の部隊が投稿している動画や画像の内容と一致しているので、一定程度の信用性はあると見られている。これほどの損失ではなかったとしても、ウクライナ軍は苦戦を強いられていることは間違いなさそうだ。
ちなみにロシア国防省の発表ではんウクライナ軍は52両の戦車を失ったとしているが、これはかなりの数である。たしかにテレグラムには、破壊されたドイツ製の「レオポルド2」、イギリス製の「チャレンジャー1」、そしてアメリカ製の「ブラッドレー歩兵戦闘車」の画像や動画が多くアップされている。これまでウクライナは、欧米から300両前後の戦車を供与されているが、このうち最近の戦闘で52両を失ったとすれば、非常に大きな損失だ。ここ数日の戦闘さけで、供与された戦車の6分の1を失っている。
●ロシア軍は兵器不足には陥っていない